【総合感想】

■全体の印象
・一言でいうと「わんこそば」でした。
単調なものが少しづつ切れ目なく出て来るものの、1話1話の内容が薄くて物足りません。食べるペースは配膳係の虚淵さん次第です。大半のキャラが最初から最後まで同じことを考え行動し、結末も序盤で予想できる範囲内で終わってしまい、意外性がゼロでした。

・変化をつけるために副菜を選ぼうにもメニューがありません。サブキャラもメインの話を進めるためだけに存在し、そちらを楽しむこともできません。ダンスや戦国時代といったモチーフに関わる要素でさえ期間限定で終わってしまいました。
提供されるメニューはただ一つ、紘汰の物語だけです。戒斗の物語も光実の物語もありません。彼らは紘汰の当て馬に過ぎませんでした。シドや湊と本質的には大差ありません。

・普通ならば大本の麺(ストーリー展開)は変えられなくても、料理人(撮影スタッフ)がスープを変えたり、盛り付けを工夫したりするものですが、それもありませんでした。
表現を膨らませるどころか、映像の意味がありませんでした。アクションと余計なギャグ以外は何も足せていません。脚本の意図との食い違いのせいで、画面を見ているほうがかえって混乱します。話を理解する上ではむしろ邪魔になっていました。

・メニューは一つだけで幅がなく、料理人もやる気なし。
中身も平凡で、そのくせ変化に乏しく、1年も続ける内容とは思えない。
私にとっての鎧武はそんな印象でした。

■紘汰について
・私にとって、紘汰さんは「お化け」のような存在でした。
序盤では自立の一歩として仕事をしようとし、お姉さんから「仕事とは知らない人の役に立つこと」と言われていたのに、最後は全部自分と知り合いの光実や舞のために動いていました。
1話でオルタナティブ舞=運命に言われた「世界を自分の色で塗り尽くすまで…」に関しても、最後は結局自分の意思を貴虎やインベスにゴリ押ししてしまいました。
毎週ペースで見ていても理解できませんでしたが、振り返って全体を俯瞰してみるとますますわかりません。なんだったんでしょうね、これ?

・途中から紘汰さんが人どころかキャラにすら見えなくなってきました。
ときには台詞の書かれた紙が浮いているように見えることもありました。その時その時に台詞を言うだけで人格が見えません。
各話ごとのつながりがなく、外見はそのままで中身だけ別人と入れ替わっているようでした。
しかし「化け物」というほどの存在感も脅威も感じず掴みどころがないけれど、いても特に困らない「お化け」のような存在に思えていきました。作中だととても迷惑な存在ですけどね。

■変身
・序盤の姉との会話や最終話で語っていた「変身」というのがテーマなのかとも考えたのですが、結論としては違うように思い至りました。
なぜならば紘汰さんの前に、ザックという先駆者がいたからです。
ザックは最初は戒斗の腰巾着の悪党として登場し、18話でベルトを手にしてからは一転してビートライダーズのリーダー格になり、街の自警団としても活躍していました。彼は過去を振りきって立派な変貌を遂げました。これが変身でなければなんでしょうか。

・この時点ではまだテーマと言えなくもありません。成功例は何人いても構いませんからね。
そこで焦点になるのが紘汰さんの必要性です。
しかし紘汰さんがしたことは事態を収拾しないまま遠くの星へ旅立ってしまいました。大きな問題の一つである光実のその後に関しても貴虎に丸投げしました。
私には紘汰さんの行動にザックより優れた点があるようには思えません。

・もう一つ問題があります。それは「普遍性があるか」という点です。
紘汰さんは人類の希望として「変身」を語っていました。
では紘汰たちと同じ境遇で、犯罪に手を染めたレッドホットも変身できるのでしょうか?
初瀬はどうでしょうか? 果実を食べたのが彼の自己責任としても、彼がベルトを失ったのは偶然に過ぎません。紘汰たちも同じ末路を辿っていた可能性は充分に考えられます。
紘汰や光実は助かり、初瀬や戒斗はダメだった、それらは偶然によるものでしかないのでしょうか?

・私には「人は変われる」という話ではなく、「”チャンスがあれば”人は変われる」という話に見えてしかたありませんでした。
チャンスに恵まれなかった人は、初瀬や戒斗のように化け物(インベス)になってしまう末路しか提示されていません。
それが肯定されるべき世界なのでしょうか? 私はそこに希望を見出すことができません。


■長所
短弓のソニックアローは目新しくて面白かったです。
瞬時に遠近を切り替えられて実写向きの武器でした。持ち替えにちょっと手間がかかるところがメリハリが効いてて良かったです。
敵味方同じ武器を使うのも良いアイディアだと感心しました。これなら主人公と敵、どちらが勝つのかを販促に左右されずに済みます。

・カチドキの旗も新しかったのですが、玩具に関係ないせいで全然使われなくて残念でした。
こっちはもろに販促の壁にぶつかってしまいました。

■佐野岳
・長所といえば、こちらも書かないわけにはまいりません。
紘汰役の佐野岳さんのアクションはずば抜けていました。
残念ながら余りにもクオリティが高かったために鎧武とは釣り合わず、作品としては場違いな感じになってしまいましたが、相応しい舞台を用意すれば魅力の一つになり得るものだったと思います。1人、2人しかライダーが出てこない作品だったら、さぞかしかっこよかったでしょうね。

■1話完結
・鎧武開始時の大きな感心事といえばこれですね。厳密には1話”完結”ではありませんが便宜上こう表記します。これまで平成ライダーが「2話完結」のフォーマットでやってきた中、その枠が外れた作品でした。
さて1話完結は良かったのか…
結論からいきましょう、判定不能です。

・残念ながら鎧武からは特色が感じられませんでした。
ただ話が続いたり、続かなかったりする程度ならば平成ライダーの1~3話辺りでもやっています。
知りたいのはそこではありません。重要なのは「1年やっているとどうなるのか」という部分です。

・たとえば2話完結だと、2,3クールになってくると視聴者が前後編に飽きて、前編では「はいはい、終わらないんだよね」となり、後編では「はいはい、解決してめでたしめでたし」と投げやりになってしまうことがあります。
1話完結ならばこれを防げるのか、他の問題は発生しないのか、サンプルとしてはそういうことが知りたかったのです。
しかし鎧武の場合、一年ものの作品としてまず成立していないので1話完結のフォーマットのせいなのか判断できません。ゆえに1話完結が良いのか悪いのかは判定不能でした。

・少なくとも言えることがあるとすれば、怪人の扱いが難しいということですね。
元からどうせ倒される存在なので出たり出なかったりすると、出たときに「こいつ何しに来たの?」と違和感が仕事をしてしまいます。仮にコンスタントに怪人を出すとすると、脚本側で根本的な対策を打たないと酷いことになりそうに思いました。




【個人的な感想】

・ここから本編の方向性に関わらない個人的な感想です。
「そういう話じゃないだろ!」というツッコミは不要です。

■許せないこと
・鎧武で許せないことが一つだけあります。それは終わり方です。
さんざん引き伸ばした挙句に、戒斗は「強者・弱者」と口だけなのは最初から最後まで変わらず終わってみれば湊と同レベル。
光実も「小心者が保身のためにいろいろな渡り歩いては失敗して、最後は行く先がなくなったところを昔の友人に受け入れられて自分の間違いに気づき、絶望する」と、当たり前の末路。
そして極めつけが紘汰さんの唐突なテラフォーミングです。
「これってどうにもならなくない?」と思っていたら、当然のごとくどうにもなりませんでした。
前振りもなしに完全に投げただけでも腹立たしいことこの上ないんですが、問題はそこではありません。

・私が許せないのは、これが視聴者の可能性を奪う行為だからです。
一年付き合ってこんな酷いオチを見たら、「先に期待してくださいという作品=最後はどうせ投げっぱなし」という誤った考えに陥ってしまっても不思議はありません。
つまらないだけならともかく、見た人の可能性まで奪う有害さは許せません!
最後まで見ると面白い作品はたくさんあります。そういう作品を楽しむ余地を奪うなんて最低です。
プロなのに自分が1年間できるかどうかも見極めずに、こんな作品を送り出すなんて信じられません。

■インベスさん超可哀想
・途中からインベスさんが全く話に関わらないと気づいたので黙っていましたが、毎回毎回インベスさんが登場する度に不憫でなりませんでした。

・お腹いっぱい果実を食べられればそれで満足なのに、オバロや戒斗に駒のように使われ、最後は暴君によって光さえない見知らぬ星での強制労働に駆り立てられてしまいました。インベスの赤ちゃんや子供さえもあんな過酷な環境に連れていかれたかと思うとやるせません。地球に迷い込んだ個体が殺されることは仕方ありません。人間を襲うこともありますから当然の対応です。
でもここまで酷い目に合わせることはないでしょう?!
彼らには彼らの生活があるんです。それを否定する権利なんて誰にもないはずです。
否定するとしたら、それこそ「理不尽な悪意」ですよ。

・全くなんでインベスさんをこんな無垢で無害な生物として描いたんでしょうね。
もっと凶暴で凶悪な化け物として描かれていたらこんな思いはしなくて済んだのに。
作中で最も無視された存在が、最も救われるべき存在に見えるとは皮肉です。

■こんな鎧武を想像していた
・当初の印象だと「俺たちの戦いはこれからだ!」エンドを想像していました。
全てが終わって日常に戻ったものの、社会は紘汰たちドロップアウト組に厳しく、倒すべき相手がいない分ヘルヘイムよりも手強い壁として紘汰たちの前に立ちはだかる。それでも今の紘汰たちは希望を胸に歩み出せる。彼らは変われたのだから。

そんな終わり方になるのかと思っていました。
大人と子供とか言ってたのは何だったんでしょうね?
貴虎もダメ人間になったラストのどこに大人がいたのか知りたいです。


■鎧武とは
・最後まで何がしたい作品だったのか、私にはわかりませんでした。
特に売りになる部分が掴めませんでした。
ヒーロー、というだけなら他の作品があります。ザック/ナックルが人気でしたが、あの程度の記号でよければいくらでもいるでしょう。
「鎧武のここがどの作品よりも優れている」「他のところなんてどうでもいい。これさえあれば鎧武は成り立つんだ」
そう思える部分が見つけられませんでした。
ストーリーやキャラなど犠牲になった部分は確認できるのに、そこまでして引き立てた部分が見当たりません。非常に興味深い例です。