正統派ゾンビ映画『ゾンビランド』:感想

2012年1月3日
映画『ゾンビランド』を見た。
ゾンビランド [DVD]ゾンビランド [DVD]
(2011/02/04)
ウディ・ハレルソン、ジェシー・アイゼンバーグ 他

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前評判通り面白いゾンビ映画だった。
ゾンビ映画には大きく分けて二種類ある。ゾンビが出る映画とゾンビ映画だ。前者はモンスターものの怪物役をゾンビにしただけのもの。後者はゾンビの始祖ロメロ監督のようにゾンビが出る常識や社会通念の通用しなくなった世界を舞台に人間や社会を描くもの。ゾンビランドは後者だ。

といっても、そんな堅苦しい映画じゃない。むしろノリはかなり軽い。DVDのパッケージでも主人公より目立ってる相棒のマッチョ親父、タラハシーはゾンビ殺すのが大好きだけど、もっと好きなのはあるメーカーのスポンジケーキ。ケーキを求めて、ゾンビが居そうなところでもお構いなしに突撃していき、見つからないと店中を破壊して八つ当たりしちゃうイカれたやつだ。
こう言うと『ゾンビ映画舐めてない?』と思うかもしれないけど、心配ご無用。偏執的なこの行為がゾンビの蔓延した絶望的状況での人間の在り方を描いてむしろリアリティがある。

主人公は引きこもりのオタク青年コロンバス。主人公も相棒も変な名前の通り偽名だ。お互い信用してないし知りたくもないから名乗らない。この辺もリアルで気に入った。
ひ弱なオタク青年のコロンバスが生きてこられたのには理由がある。それが『生き残るための31のルール。』だ。これはゾンビ映画のお約束への皮肉が効いてる。たとえば『二度撃ち』。きちっとトドメを刺すこと。それから『車の後部座席の確認』。こんな具合に既存のゾンビ映画を見たことがある人ならニヤニヤしちゃう要素が盛りだくさんな作りになっている。

映画の内容は今風のロードムービー・ゾンビ仕上げ。自分のルールに忠実に慎重に生き延びてきたオタク青年がめちゃくちゃだけどエネルギッシュに今を生きている仲間たちと出会って、変わっていく姿を丁寧に描いている。こう書くと爽やかに聞こえるけど、実際はかなり泥臭い。ヒロインは平気で主人公を騙して捨てるし、主人公もゾンビと間違えて人間を撃ち殺しちゃっても誰も責めない。登場人物の考え方はゾンビのいる極限状況が根底にあるからだ。
ゾンビは脅威だけど、その中で生きなくちゃいけない。それもただ生存するだけじゃなく人間らしく生活できないと生きてはいけない。そういう凡人の精神面を描いたゾンビ映画だと思う。

個人的には、そこまでの流れが丁寧でリアリティがある分、最後のゾンビ大決戦はエンターテイメント要素が強すぎてちょっと興冷めだったかな。タラハシー以外、予備のハンドガンすら持ってないところとかどうも納得いかない。何よりあのハンドガン何発弾があるんだよw

個人的に気に入った点は、『今週のゾンビキラー』。ランキング風にゾンビを愉快に殺す人が映るシーンがあるんだけど、ちょっとだけ他の生存者を描くことで世界観の広がりが感じられて、ぐっと深みが出てた。

正統派ゾンビ映画好きならぜひチェックしてほしい作品。逆にゾンビ映画見慣れてないにもオススメ。本格的な要素を盛り込みながらも、雰囲気は明るいしグロさやスプラッターもほとんどない。最初の一歩にはちょうど良いと思うな。

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