『仮面ライダーW』最終回まで見終わって:総合感想
GYAOで配信されていた『仮面ライダーW』を見終わりました。
リアル放送当時も全話見ていたので、見るのはこれで2回目になります。
2回目でも変わらず面白かったです。5年前の作品ですが今見ても全然古い感じがしませんね。
【良かった点】
■二人で一人の仮面ライダー
・「一人では未熟、変身すればヒーローになれる」
これがWの基本コンセプトだと思います。この点は狙い通りに完璧だったと思います。
変身前は未熟なので人間ドラマを描くことができ、変身してからは互いに補い合えるので立派なヒーローとして活躍できます。
・変身ものには「変身できなければただの人」と「変身しなくても元から強いからヒーローになれる」の2つのパターンがあります。前者はノリが普段通りでヒーローらしく見えなかったり逆に普段と違い過ぎて別人に見えてしまったりする問題があり、後者には変身しなくても頼りになるので変身のありがたみがないという問題があります。
・その点Wは上手く両立できていたと思います。
ドラマパートでは等身大の姿を描き失敗もある一方、バトルでは圧倒することが多く、翔太郎たちのキャラを立てつつ、変身にも存在感がありました。
■王道ヒーローもの
・Wは「二人で一人の仮面ライダー」「表の顔は私立探偵。裏の顔は風都を守るヒーロー」と簡単なキーフレーズで充分に語れるほどシンプルです。
王道どころかベタと言ってもいいテーマ性ですが、それでも面白く見えるのがWの一番の魅力だと思います。奇をてらった要素は全くないのに展開に意外性を感じられる点がすごいと思います。玩具のギミックだったり、キャラのキメ台詞に絡めた内容だったり、個々の要素は既に知ってる既存の要素なのに組み合わせることで、あっと驚く展開を見せてくれました。意外性というものは「予想外の展開」だけでなく「予想以上」でも生み出せるものなのだと感じました。
■販促の天才・三条さん
・玩具の展開も作品に取り入れていたのはさすが三条さんだと思います。
俗に中間フォームと呼ばれる基本フォームと最強フォームの間の強化フォームは、たいてい最強フォームが出ると存在価値が無くなってしまいます。Wの中間フォームであるファングジョーカーは、フィリップがメインで変身することで最強フォームのエクストリームと差別化が図られていて、最強フォーム登場以降も存在感がありました。
また2号ライダーのアクセルは通例通り一人で変身しますが、それだけで物語上の意味が生じていました。たとえ玩具であっても、1つの要素を1つのまま完結させずに他の物と絡めて膨らませてい
く姿勢に感じ入ります。
■フォームチェンジの魅せ方
・Wのアクションの最大の魅力はフォームチェンジの説得力だと思います。
基本フォームのサイクロンジョーカーに、圧倒的に強くて頼りがいのあるヒートメタル、トリッキーな能力で使いどころが限定されているルナトリガー。能力に重なる部分がなく、「この場面ならこれしかない!」と思わせる組み合わせになっています。
そのおかげでフォームチェンジするだけでも盛り上がれました。ベストを尽くした戦いはそれだけで見ていて気分がいいです。「なんであれ使わないの?」というツッコミを入れたくなる場面がほとんどなかったのは非凡なことだと思います。最強フォームが登場してからはさすがに、始めから使えばいいのにと思う場面もありましたがその辺りもストーリーの展開でカバーされていることが多く、好感を持てました。
・ビジュアル面では素手と武器と能力のバランスが良かったです。
販促の都合上出番の多いヒートメタルは強く描くことで、「またいつもの販促か」とならずに見せ場として楽しめました。アクション上使いづらい銃のトリガーはストーリー展開でカバーしていました。
・武器を持っている2つのフォームが強い分、別売り商品のない基本フォームのCJは販促の都合上どうしてもやられ役にされがちでした。ヒートジョーカーやルナジョーカーには特徴的なな能力がありましたが、サイクロンジョーカーには目立った特徴はありません。
でもCJには武器も能力もない分、純粋に素手でのアクションが堪能できる利点がありました。そのおかげでアクション目当てでライダーを見ている私にとっては負け戦でも楽しむことができました。アクションを特徴付けに活かすのは映像ならではのことです。当たり前のことですけど、これができてる作品は多くありません。
■衣装に変化がある点
・他の点に比べれば些細なことですが、私はここもポイントだと思っています。
依頼形式によって2話できっちり終わり、依頼事に時間経過が感じられる流れなので衣装も変化があるほうが自然です。毎回同じだったら違和感があったと思います。実写番組でやるにはけっこう大変なことだったと思いますが、それだけの価値はあったと思います。
【残念だった点】
■園咲家の存在感の薄さ
・いわゆる悪の組織にあたる園咲家ですが、正直言って影が薄かったです。
黒幕として言葉の端々には出てくるものの翔太郎たちとの関わりあいが薄く、あまり関心が持てませんでした。しかしながらフィリップのおまけと言うには園咲家の描写に時間が多く取られていて、小物と割り切るのも難しかったです。
テラーの存在を引っ張るなり、幹部クラスを節目ごとにWと戦わせるなり、もっと存在感を出す必要があったと思います。加頭は例外で、キャラ立てに成功していたと思うので余計に残念です。
■無理な販促
・フロッグ、デンデン、エクストリーム、トライアルを12話の間に出すのは無理があり過ぎでした。
あとで出番のあったフロッグはともかく、デンデンは悲惨でした。三条さんは販促が上手ですが、デンデンに関しては失敗だったと断言できます。
原因はバンダイだと思いますが、多くの玩具が有効活用されている分、ただ出てくるだけだった玩具の不自然さが目立ちます。
・強化フォームのエクストリームとトライアルが近い期間に併存しているので、回ごとにどちらが活躍するのか読めず「どうせ強化フォームになって勝って終わりでしょ」とはならず、その点はある意味面白かったです。怪我の功名でしょうか。
■22話~44話の構成
・1話1話が面白い分、全体の進展には難がありました。
特に22話~36話までのウェザー編とそこからミュージアムとの決着編に入るまでの流れは厳しいものがありました。
・ウェザー編がミュージアムと全然関係ないのが主な原因です。
16話も番外編が挟まるのは問題があったと思います。やるならその前にミュージアムの企みを阻止して一旦壊滅したように見せたり、一区切りつけたほうが良かったと思います。
また井坂先生のキャラが濃かった分、園咲家編の薄味が際立ちました。ちゃんとミュージアムも魅力的に描くか、翔太郎とフィリップの物語に徹してミュージアムはおまけ扱いにするか、もっとどちらかはっきりさせたほうが良かったのかもしれません。
・脚本にだけ問題があったのかというと、そうとも言い切れません。
22話~44話の間だけでも、歌回だった「唇にLを」や京都の時代劇セットでの撮影だった「悪夢のH」、中島かずきが登板したゲスト回の「Yの悲劇」、船上ロケがメインだった「Jの迷宮」と3分の1が外部からの要請に基づいた回でした。こういった回が挟まることで話の腰が折られたように思えます。
【全体感想】
■2周目の楽しみ
・見るのはこれで2周目なので初めて見るのとは違う味わいがありました。
若菜の反応や加頭の態度など後の伏線になっている部分も理解することができました。園咲家に関しては2周目のほうが謎に感じました。若菜を筆頭に前半でも時間をかけているのに終盤があんなにあっさりなのが不思議でなりません。ウェザー編はテコ入れで無理やり入れられた展開で、本来あるべき園咲家の話があったのだろうかと疑ってしまいます。
■小物類の原点
・ロックシードやシフトカーなど近年の作品では当たり前になった小物類が本格的に導入されたのはWのガイアメモリからでした。
今見るとシンプルですね。この頃はまだギミックとして扱える範囲だったと改めて思いました。最近は出すのが精一杯なくらいに大量にあって、映像作品としてのライダーには迷惑な存在なのだと痛感します。
■色褪せないもの
・今見てもストーリーもアクションも面白かったです。
作品作りはノウハウやフォーマットの蓄積よりも、アイディア出しと実践が重要なのだと実感しました。ディケイド以降の平成2世代目ライダーの基礎がWで築かれたのは間違いないでしょう。
1つのエポックメイキングとしても、1つの作品としてもWはライダー史上に残る作品だと思います。
リアル放送当時も全話見ていたので、見るのはこれで2回目になります。
2回目でも変わらず面白かったです。5年前の作品ですが今見ても全然古い感じがしませんね。
【良かった点】
・「一人では未熟、変身すればヒーローになれる」
これがWの基本コンセプトだと思います。この点は狙い通りに完璧だったと思います。
変身前は未熟なので人間ドラマを描くことができ、変身してからは互いに補い合えるので立派なヒーローとして活躍できます。
・変身ものには「変身できなければただの人」と「変身しなくても元から強いからヒーローになれる」の2つのパターンがあります。前者はノリが普段通りでヒーローらしく見えなかったり逆に普段と違い過ぎて別人に見えてしまったりする問題があり、後者には変身しなくても頼りになるので変身のありがたみがないという問題があります。
・その点Wは上手く両立できていたと思います。
ドラマパートでは等身大の姿を描き失敗もある一方、バトルでは圧倒することが多く、翔太郎たちのキャラを立てつつ、変身にも存在感がありました。
■王道ヒーローもの
・Wは「二人で一人の仮面ライダー」「表の顔は私立探偵。裏の顔は風都を守るヒーロー」と簡単なキーフレーズで充分に語れるほどシンプルです。
王道どころかベタと言ってもいいテーマ性ですが、それでも面白く見えるのがWの一番の魅力だと思います。奇をてらった要素は全くないのに展開に意外性を感じられる点がすごいと思います。玩具のギミックだったり、キャラのキメ台詞に絡めた内容だったり、個々の要素は既に知ってる既存の要素なのに組み合わせることで、あっと驚く展開を見せてくれました。意外性というものは「予想外の展開」だけでなく「予想以上」でも生み出せるものなのだと感じました。
■販促の天才・三条さん
・玩具の展開も作品に取り入れていたのはさすが三条さんだと思います。
俗に中間フォームと呼ばれる基本フォームと最強フォームの間の強化フォームは、たいてい最強フォームが出ると存在価値が無くなってしまいます。Wの中間フォームであるファングジョーカーは、フィリップがメインで変身することで最強フォームのエクストリームと差別化が図られていて、最強フォーム登場以降も存在感がありました。
また2号ライダーのアクセルは通例通り一人で変身しますが、それだけで物語上の意味が生じていました。たとえ玩具であっても、1つの要素を1つのまま完結させずに他の物と絡めて膨らませてい
く姿勢に感じ入ります。
■フォームチェンジの魅せ方
・Wのアクションの最大の魅力はフォームチェンジの説得力だと思います。
基本フォームのサイクロンジョーカーに、圧倒的に強くて頼りがいのあるヒートメタル、トリッキーな能力で使いどころが限定されているルナトリガー。能力に重なる部分がなく、「この場面ならこれしかない!」と思わせる組み合わせになっています。
そのおかげでフォームチェンジするだけでも盛り上がれました。ベストを尽くした戦いはそれだけで見ていて気分がいいです。「なんであれ使わないの?」というツッコミを入れたくなる場面がほとんどなかったのは非凡なことだと思います。最強フォームが登場してからはさすがに、始めから使えばいいのにと思う場面もありましたがその辺りもストーリーの展開でカバーされていることが多く、好感を持てました。
・ビジュアル面では素手と武器と能力のバランスが良かったです。
販促の都合上出番の多いヒートメタルは強く描くことで、「またいつもの販促か」とならずに見せ場として楽しめました。アクション上使いづらい銃のトリガーはストーリー展開でカバーしていました。
・武器を持っている2つのフォームが強い分、別売り商品のない基本フォームのCJは販促の都合上どうしてもやられ役にされがちでした。ヒートジョーカーやルナジョーカーには特徴的なな能力がありましたが、サイクロンジョーカーには目立った特徴はありません。
でもCJには武器も能力もない分、純粋に素手でのアクションが堪能できる利点がありました。そのおかげでアクション目当てでライダーを見ている私にとっては負け戦でも楽しむことができました。アクションを特徴付けに活かすのは映像ならではのことです。当たり前のことですけど、これができてる作品は多くありません。
■衣装に変化がある点
・他の点に比べれば些細なことですが、私はここもポイントだと思っています。
依頼形式によって2話できっちり終わり、依頼事に時間経過が感じられる流れなので衣装も変化があるほうが自然です。毎回同じだったら違和感があったと思います。実写番組でやるにはけっこう大変なことだったと思いますが、それだけの価値はあったと思います。
【残念だった点】
・いわゆる悪の組織にあたる園咲家ですが、正直言って影が薄かったです。
黒幕として言葉の端々には出てくるものの翔太郎たちとの関わりあいが薄く、あまり関心が持てませんでした。しかしながらフィリップのおまけと言うには園咲家の描写に時間が多く取られていて、小物と割り切るのも難しかったです。
テラーの存在を引っ張るなり、幹部クラスを節目ごとにWと戦わせるなり、もっと存在感を出す必要があったと思います。加頭は例外で、キャラ立てに成功していたと思うので余計に残念です。
■無理な販促
・フロッグ、デンデン、エクストリーム、トライアルを12話の間に出すのは無理があり過ぎでした。
あとで出番のあったフロッグはともかく、デンデンは悲惨でした。三条さんは販促が上手ですが、デンデンに関しては失敗だったと断言できます。
原因はバンダイだと思いますが、多くの玩具が有効活用されている分、ただ出てくるだけだった玩具の不自然さが目立ちます。
・強化フォームのエクストリームとトライアルが近い期間に併存しているので、回ごとにどちらが活躍するのか読めず「どうせ強化フォームになって勝って終わりでしょ」とはならず、その点はある意味面白かったです。怪我の功名でしょうか。
■22話~44話の構成
・1話1話が面白い分、全体の進展には難がありました。
特に22話~36話までのウェザー編とそこからミュージアムとの決着編に入るまでの流れは厳しいものがありました。
・ウェザー編がミュージアムと全然関係ないのが主な原因です。
16話も番外編が挟まるのは問題があったと思います。やるならその前にミュージアムの企みを阻止して一旦壊滅したように見せたり、一区切りつけたほうが良かったと思います。
また井坂先生のキャラが濃かった分、園咲家編の薄味が際立ちました。ちゃんとミュージアムも魅力的に描くか、翔太郎とフィリップの物語に徹してミュージアムはおまけ扱いにするか、もっとどちらかはっきりさせたほうが良かったのかもしれません。
・脚本にだけ問題があったのかというと、そうとも言い切れません。
22話~44話の間だけでも、歌回だった「唇にLを」や京都の時代劇セットでの撮影だった「悪夢のH」、中島かずきが登板したゲスト回の「Yの悲劇」、船上ロケがメインだった「Jの迷宮」と3分の1が外部からの要請に基づいた回でした。こういった回が挟まることで話の腰が折られたように思えます。
【全体感想】
・見るのはこれで2周目なので初めて見るのとは違う味わいがありました。
若菜の反応や加頭の態度など後の伏線になっている部分も理解することができました。園咲家に関しては2周目のほうが謎に感じました。若菜を筆頭に前半でも時間をかけているのに終盤があんなにあっさりなのが不思議でなりません。ウェザー編はテコ入れで無理やり入れられた展開で、本来あるべき園咲家の話があったのだろうかと疑ってしまいます。
■小物類の原点
・ロックシードやシフトカーなど近年の作品では当たり前になった小物類が本格的に導入されたのはWのガイアメモリからでした。
今見るとシンプルですね。この頃はまだギミックとして扱える範囲だったと改めて思いました。最近は出すのが精一杯なくらいに大量にあって、映像作品としてのライダーには迷惑な存在なのだと痛感します。
■色褪せないもの
・今見てもストーリーもアクションも面白かったです。
作品作りはノウハウやフォーマットの蓄積よりも、アイディア出しと実践が重要なのだと実感しました。ディケイド以降の平成2世代目ライダーの基礎がWで築かれたのは間違いないでしょう。
1つのエポックメイキングとしても、1つの作品としてもWはライダー史上に残る作品だと思います。
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