『騎士竜戦隊リュウソウジャー』最終回まで見終わって:総合感想
『騎士竜戦隊リュウソウジャー』を最終回まで見終わったので全体の感想を書きたいと思います。
【良かった点】
■アクション
・毎年のことですが今回もクオリティは素晴らしかったです。
リュウソウジャーの特色としては剣戟に蹴りや肘なども織り交ぜたアクションが挙げられると思います。騎士らしい剣を使った立ち回りと臨機応変に繰り出される手技足技がミックスされていて安定感がありつつも何が起きるかわからないドキドキ感もあって見ごたえがありました。
・小道具の”リュウソウル”も場面を盛り上げるのに役立っていました。
動きが早くなるハヤソウルやよくわからないけど強くなるツヨソウルなど抽象的なものもあれば、身体が固くなるカタソウルや鉄球を振り回すオモソウルなど戦い方が大きく変わるものまでいろいろありました。敵への対策といった頭脳戦も交えて、バトルのバリエーションは豊富でした。
リュウソウルは使うときのモーションと音声が長いという難点はありましたが使ったときの効果は大きめだったので”溜め”としていくらか釣り合っていたと思います。
・個人的にはマックスレッドが良かったです。
実質的なレッドの最強フォームで、武器の爪を駆使した格闘がユニークでした。最強フォームに限らず玩具化される武器というと剣か銃ばかりですからね。最強フォームらしい強さで格闘戦が見られるのは貴重でした。
・スーツのデザインもソウル使用時は左右非対称のデザインになっていて、アクション中の体の向きがわかりやすくて見やすかったです。
上に装着する形にしたおかげか、1,2クール目に登場したけど新しいアイテムを手にいれたからレッドが使わなくなった強化フォームをブルーやブラックが使うこともありました。デザインに関してはデザイン自体も運用も上手くいっていたように見えました。
・巨大戦も良かったです。
従来の戦隊だと身軽なアクションができるのは合体前のレッド単体ロボなど一部でしたが、リュウソウジャーでは合体後もジャンプやキックなど軽快な動きがありました。やっぱりアクションができるほうが映像としては面白いですね。
ジオラマが凝っているやつもいくつかあっていろいろ見れて飽きることがありませんでした。巨大戦は商業的な意味でも映像作品としても大きな見せ場のはずです。見せ場らしい見応えが出せていたことは素晴らしいことだと思います。
・リュウソウジャーに限ったことではないのですが、フォームやロボもメインの見せ場があるのは2,3回だけなのはもったいなく感じます。次々と新しい玩具が出てくるため一つ前のものはすぐにお払い箱にされてしまいます。キシリュウオーもヨクリュウオーももっと見たかったです。
・最強アイテムの扱いは等身大戦も巨大戦も酷かったです。
終盤は6話もかけて最終回に向けた連続した話をやったせいで最強フォームや最強ロボなのに出番が少なく、出ても敵幹部に苦戦するだけで活躍がありませんでした。そのせいで最強アイテムなのに強い印象が全然ありません。ここはダメだったと思います。
・「生身のままロボ無しでも巨大敵と戦う」のはリュウソウジャーのアピールポイントでしたが、これは序盤だけで終わってしまいました。
序盤だけで終わるのはいつものことなので置いておいて、試み自体もまぁまぁ止まりでした。結局、生身の味方はソウルを使った能力で敵の動きを封じるなどロボのサポートをするだけなのでそれほど新鮮味がありませんでした。これだとロボに乗ってアイテムや特殊能力を使って戦うのと大差ありません。よほど良いアイディアがない限りはテンポが悪くなる副作用に釣り合った価値を出すのは難しそうでした。手間の面から考えても幹部を倒すときなど見せ場になるところでときどきやるくらいが限界かなと思います。
【残念だった点】
■1話から出てる准レギュラーのはずなのに要らない子
・「居候先の子供」ポジションのウイが空気でした。
リュウソウジャーのメンバーは人間ではありません。リュウソウ族という種族で見た目は人間そっくりですが、寿命は数百年以上もあり、恐竜がいた時代から文明を築いてきた異種族です。結界で閉ざされた隠れ里に住んでいて、主人公たちが人間に出会ったのも1話が初めてでした。人間のウイはそんな主人公たちにいろいろなことを教えたり、売れないyoutuberという設定を活かして人間との交流で架け橋となる存在になるのだろうかと当初は思っていました。
しかし実際にはメンバーはテレビとかを見て勝手に世間に馴染むし、一番世慣れしてご近所に挨拶するようになるのが早かったのが人型ですらない騎士竜のティラミーゴという斜め上をいく展開が繰り広げられました。挙句の果てにはウイが全くできていなかった狂言回しの役割を途中から出てきた追加戦士の妹に取られてしまいました。その展開をやるならなんでウイにやらせないのだろうと首を傾げるばかりでした。
ウイはほとんど出番がないし、リュウソウジャーともあまり絡まないので同居している意味を全く感じませんでした。住む場所さえあればウイは要らないと思います。もしも長老の店に住む形にしたとしてもストーリーはほとんど変わらなかったと思います。
・ウイにまるで存在感を感じないし出番すらないなと思っていたら終盤に本当に退場してしまいました。
何の前フリもなかったのに突然「海外に行くことになった」と言い出して不自然極まりない展開でした。退場するにしても4クールに入ってからというのはあまりにもタイミングがおかしいので、何かリアル事情が絡んだ一件だったように見えましたが真相は何だったのでしょう。最後まで存在意義が謎なまま終わってしまいました。
■追加した幹部を持て余しまくっていた
・同時に出る敵幹部の数を増やすわりに活かせないどころかむしろ邪魔になっていました。
最初の幹部が倒されて二人目の幹部が出てきてすぐまでは「幹部1人+憎めないマスコットポジションのクレオン」のペアで活動していたのですが、2クール目途中から幹部が2人になったり3人になったりと増え始めました。増えるだけなら別にいいのですが同時に存在する数を増やしておいて差別化できないことは問題でした。その回で活動する幹部が誰でもやることが大して変わらないし、戦隊でよくある幹部ごとの特定メンバーとの因縁すらもありません。幹部がどんどん倒されていくわけでもないので幹部が複数同時に存在する意味がありませんでした。あれなら無難に1人ずつ倒されたら交代で出てくるほうがマシでした。
・最初からワイズルーは生き残らせるつもりで、悪役らしい悪役を務めて死ぬための幹部としてガチレウスやプリシャスを出していたからあんなおかしなことになったのかなと思います。そこが歪みの原因だとすれば納得はいきます。ストーリー構成に欠陥があったことには変わりはありませんが。
■メインストーリーの進展が無い
・一応大目標としては、敵の種族を根絶やしにして地球の平和を守ることが使命なのですが、敵組織の幹部に序列がないし宇宙からやってきていて全部で何人いるのかも不明だから幹部を倒しても変化があまりなく、何をどうすれば事態を終息できるのかわからないままずっと話が続いていきました。
敵のほうも目的は怪人に負のエネルギーを集めてどんどん成長させて地球を壊滅させることのはずなんですが、巨大戦のノルマのためにかなり雑に巨大化を果たしてはロボに負けて倒されてしまうので敵側も話の進展がありません。
客観的に考えると最初から登場しているクレオンを倒せば怪人を量産することを止められるはずなのですがリュウソウジャーはなぜかそういう話はしません。視聴者的にはクレオンは貴重なコメディリリーフでマスコット的ポジションでもあるため積極的に倒すべきとは言いづらい面もありました。
煮え切らない展開がダラダラと続いたまま結局、最後は「私がドルイドンのマザーだ。私を倒せば全部終わるぞー」みたいなコテコテのラスボスが出てきて終わりでした。
・終盤以外もそうでしたが、ストーリーで引っ張った部分があまり機能していなかった点は壊滅的にダメでした。
謎の覆面の男(セトー)やガイソーグ(ナダ)、バンバたちの故郷と師匠など話数をかけて引っ張ってきた要素はいくつかありましたがどれも途中経過はグダグダで消化の仕方もパっとしませんでした。個人的には引っ張った分だけむしろ肩透かし感が強まってマイナスでした。ストーリーのフックやターニングポイントとして使うのならもっと魅力的な展開にしてほしかったです。
・特にガイソーグは悲惨でした。12話で初登場して全部終わったのが32話でした。
2クール近くもかけたのにガイソーグにまつわる具体的なエピソードが全然思い浮かびません。中身のナダの話をやる展開は途中から決まったのだろうかと思うほど序盤から出ていた意味を感じませんでした。3クール目から登場する新幹部ポジションを務めさせつつナダの話もやるほうがマシだったと思います。
■騎士竜の立ち位置が半端
・レッドの相棒のティラミーゴを筆頭に騎士竜全般が微妙な存在感でした。
巨大戦以外でも小型化して人間サイズになってドラマパートに出てきたり、普通に人語をしゃべったり、コミカルな性格だったりしたのでマスコット的ポジションなのだろうかと序盤に思いましたがそんなことはありませんでした。
出番があまりにも少なすぎました。まともに出番と台詞があったのは48話のうち5話程度です。他の騎士竜はもっと悲惨です。レッド以外の初期メンバーの相棒の名前をすぐには思い出せない人も少なくないと思います。
・終盤には騎士竜たちとの絆にちなんだ感動系のお話もあったのですが騎士竜の出番が少ないし、一番目立っていたティラミーゴのメイン回がギャグ回ばかりだったためシリアス展開には説得力を感じませんでした。
ここも中途半端で良くなかったです。レギュラー6人と戦隊では人数が少ないほうなので騎士竜をコンスタントに出しても充分やっていけたと思います。
【総合感想】
■評価に困ったところ
・独特な価値観は良いとも悪いとも言えず評価に困りました。
リュウソウジャーのメンバーは一言で言うと”蛮族”です。一番好青年のように見えるレッドですらでも昔は「とりあえず殴って言うことを聞かせようとする乱暴者」で他人の素振りを見て後天的に優しさを学んだ人物だったりするほど基本的に野蛮です。主要モチーフであり決め台詞にも含まれている「騎士道」に妙な意味で説得力を感じる内容でした。標語に掲げる言葉とは「言って聞かせなければ守らない内容だから」だというのは理にかなっているなぁと納得してしまいました。
異種族だから一般的な人間の価値観と違っていても設定上は特に問題ありません。やり方は乱暴なところがありますが、敵を放っておけばもっと被害が出るので合理的な観点では許容範囲です。
・しかしキャラに共感しづらいところはやはりマイナスだと思います。
「怪人を生み出していたのは持ち主に使われなくなった箱のマイナス思念のせいだった」という展開になったときに「あぁ、これは使う人を見つけてあげてハッピーエンドになるパターンか」と思っていたら、おもむろに剣で叩き割ってその後もノーリアクションのまま話が進んでびっくりしました。全体的にこういう「ここでその対応?!」とドン引きするようなズレた価値観がよくありました。
・このような独特の世界観とノリを生み出すことには成功していたと思います。その点ではむしろ最近の戦隊ではだいぶ上手くいったほうだと思います。
ヒーローものでよくある「いろいろ綺麗事は言ってるけど結局力づくで解決することになるんだよね…」という問題を「リュウソウ族だから」で納得させられる点は長所でした。根本的な倫理観の問題などはありましたがストーリー展開には一貫性を感じました。良いところとして挙げられるほどではないのですが、ユニークな世界観としては成立しているので評価に困ります。
■総評
・アクションは例年どおり申し分ありません。デザインなど要素に引かれるものがあったら見て損はないでしょう。
ストーリーは基本的にはいまいちです。構成がダメというより練り込みが甘すぎます。全体としての枠組みはかろうじてわかりますが、必要なパーツは足らず、余ったパーツはその辺に転がっているような状態でした。
・ストーリー面は全体としてはかなりグダグダなのにそれほど酷評していないのは、嫌悪感を抱くところが少なかったからだと思います。
アクションを除くと「プラス点は多くないけど致命的なマイナス点もかなり少ない作品」という印象です。マイナス点が少ないので見ている間、努めて冷静さを保とうとがんばらなくていい点では見やすい作品でした。
シリーズ構成の山岡潤平さんは初登板でしたが、雰囲気が明るくシンプルでわかりやすいという点では戦隊向きの人かもしれないと思いました。世界観など作品の根っこの部分は独特ではあるけど意外としっかりしていました。磨けば光るかもしれないと思えなくはない内容でした。
・アクション以外の理由では積極的に勧められる作品ではありませんが、戦隊シリーズを見慣れていて変わった作品を見たいという人ならば私のように何と評価すべきか迷う心境を体験できるかもしれません。
【良かった点】
・毎年のことですが今回もクオリティは素晴らしかったです。
リュウソウジャーの特色としては剣戟に蹴りや肘なども織り交ぜたアクションが挙げられると思います。騎士らしい剣を使った立ち回りと臨機応変に繰り出される手技足技がミックスされていて安定感がありつつも何が起きるかわからないドキドキ感もあって見ごたえがありました。
・小道具の”リュウソウル”も場面を盛り上げるのに役立っていました。
動きが早くなるハヤソウルやよくわからないけど強くなるツヨソウルなど抽象的なものもあれば、身体が固くなるカタソウルや鉄球を振り回すオモソウルなど戦い方が大きく変わるものまでいろいろありました。敵への対策といった頭脳戦も交えて、バトルのバリエーションは豊富でした。
リュウソウルは使うときのモーションと音声が長いという難点はありましたが使ったときの効果は大きめだったので”溜め”としていくらか釣り合っていたと思います。
・個人的にはマックスレッドが良かったです。
実質的なレッドの最強フォームで、武器の爪を駆使した格闘がユニークでした。最強フォームに限らず玩具化される武器というと剣か銃ばかりですからね。最強フォームらしい強さで格闘戦が見られるのは貴重でした。
・スーツのデザインもソウル使用時は左右非対称のデザインになっていて、アクション中の体の向きがわかりやすくて見やすかったです。
上に装着する形にしたおかげか、1,2クール目に登場したけど新しいアイテムを手にいれたからレッドが使わなくなった強化フォームをブルーやブラックが使うこともありました。デザインに関してはデザイン自体も運用も上手くいっていたように見えました。
・巨大戦も良かったです。
従来の戦隊だと身軽なアクションができるのは合体前のレッド単体ロボなど一部でしたが、リュウソウジャーでは合体後もジャンプやキックなど軽快な動きがありました。やっぱりアクションができるほうが映像としては面白いですね。
ジオラマが凝っているやつもいくつかあっていろいろ見れて飽きることがありませんでした。巨大戦は商業的な意味でも映像作品としても大きな見せ場のはずです。見せ場らしい見応えが出せていたことは素晴らしいことだと思います。
・リュウソウジャーに限ったことではないのですが、フォームやロボもメインの見せ場があるのは2,3回だけなのはもったいなく感じます。次々と新しい玩具が出てくるため一つ前のものはすぐにお払い箱にされてしまいます。キシリュウオーもヨクリュウオーももっと見たかったです。
・最強アイテムの扱いは等身大戦も巨大戦も酷かったです。
終盤は6話もかけて最終回に向けた連続した話をやったせいで最強フォームや最強ロボなのに出番が少なく、出ても敵幹部に苦戦するだけで活躍がありませんでした。そのせいで最強アイテムなのに強い印象が全然ありません。ここはダメだったと思います。
・「生身のままロボ無しでも巨大敵と戦う」のはリュウソウジャーのアピールポイントでしたが、これは序盤だけで終わってしまいました。
序盤だけで終わるのはいつものことなので置いておいて、試み自体もまぁまぁ止まりでした。結局、生身の味方はソウルを使った能力で敵の動きを封じるなどロボのサポートをするだけなのでそれほど新鮮味がありませんでした。これだとロボに乗ってアイテムや特殊能力を使って戦うのと大差ありません。よほど良いアイディアがない限りはテンポが悪くなる副作用に釣り合った価値を出すのは難しそうでした。手間の面から考えても幹部を倒すときなど見せ場になるところでときどきやるくらいが限界かなと思います。
【残念だった点】
・「居候先の子供」ポジションのウイが空気でした。
リュウソウジャーのメンバーは人間ではありません。リュウソウ族という種族で見た目は人間そっくりですが、寿命は数百年以上もあり、恐竜がいた時代から文明を築いてきた異種族です。結界で閉ざされた隠れ里に住んでいて、主人公たちが人間に出会ったのも1話が初めてでした。人間のウイはそんな主人公たちにいろいろなことを教えたり、売れないyoutuberという設定を活かして人間との交流で架け橋となる存在になるのだろうかと当初は思っていました。
しかし実際にはメンバーはテレビとかを見て勝手に世間に馴染むし、一番世慣れしてご近所に挨拶するようになるのが早かったのが人型ですらない騎士竜のティラミーゴという斜め上をいく展開が繰り広げられました。挙句の果てにはウイが全くできていなかった狂言回しの役割を途中から出てきた追加戦士の妹に取られてしまいました。その展開をやるならなんでウイにやらせないのだろうと首を傾げるばかりでした。
ウイはほとんど出番がないし、リュウソウジャーともあまり絡まないので同居している意味を全く感じませんでした。住む場所さえあればウイは要らないと思います。もしも長老の店に住む形にしたとしてもストーリーはほとんど変わらなかったと思います。
・ウイにまるで存在感を感じないし出番すらないなと思っていたら終盤に本当に退場してしまいました。
何の前フリもなかったのに突然「海外に行くことになった」と言い出して不自然極まりない展開でした。退場するにしても4クールに入ってからというのはあまりにもタイミングがおかしいので、何かリアル事情が絡んだ一件だったように見えましたが真相は何だったのでしょう。最後まで存在意義が謎なまま終わってしまいました。
■追加した幹部を持て余しまくっていた
・同時に出る敵幹部の数を増やすわりに活かせないどころかむしろ邪魔になっていました。
最初の幹部が倒されて二人目の幹部が出てきてすぐまでは「幹部1人+憎めないマスコットポジションのクレオン」のペアで活動していたのですが、2クール目途中から幹部が2人になったり3人になったりと増え始めました。増えるだけなら別にいいのですが同時に存在する数を増やしておいて差別化できないことは問題でした。その回で活動する幹部が誰でもやることが大して変わらないし、戦隊でよくある幹部ごとの特定メンバーとの因縁すらもありません。幹部がどんどん倒されていくわけでもないので幹部が複数同時に存在する意味がありませんでした。あれなら無難に1人ずつ倒されたら交代で出てくるほうがマシでした。
・最初からワイズルーは生き残らせるつもりで、悪役らしい悪役を務めて死ぬための幹部としてガチレウスやプリシャスを出していたからあんなおかしなことになったのかなと思います。そこが歪みの原因だとすれば納得はいきます。ストーリー構成に欠陥があったことには変わりはありませんが。
■メインストーリーの進展が無い
・一応大目標としては、敵の種族を根絶やしにして地球の平和を守ることが使命なのですが、敵組織の幹部に序列がないし宇宙からやってきていて全部で何人いるのかも不明だから幹部を倒しても変化があまりなく、何をどうすれば事態を終息できるのかわからないままずっと話が続いていきました。
敵のほうも目的は怪人に負のエネルギーを集めてどんどん成長させて地球を壊滅させることのはずなんですが、巨大戦のノルマのためにかなり雑に巨大化を果たしてはロボに負けて倒されてしまうので敵側も話の進展がありません。
客観的に考えると最初から登場しているクレオンを倒せば怪人を量産することを止められるはずなのですがリュウソウジャーはなぜかそういう話はしません。視聴者的にはクレオンは貴重なコメディリリーフでマスコット的ポジションでもあるため積極的に倒すべきとは言いづらい面もありました。
煮え切らない展開がダラダラと続いたまま結局、最後は「私がドルイドンのマザーだ。私を倒せば全部終わるぞー」みたいなコテコテのラスボスが出てきて終わりでした。
・終盤以外もそうでしたが、ストーリーで引っ張った部分があまり機能していなかった点は壊滅的にダメでした。
謎の覆面の男(セトー)やガイソーグ(ナダ)、バンバたちの故郷と師匠など話数をかけて引っ張ってきた要素はいくつかありましたがどれも途中経過はグダグダで消化の仕方もパっとしませんでした。個人的には引っ張った分だけむしろ肩透かし感が強まってマイナスでした。ストーリーのフックやターニングポイントとして使うのならもっと魅力的な展開にしてほしかったです。
・特にガイソーグは悲惨でした。12話で初登場して全部終わったのが32話でした。
2クール近くもかけたのにガイソーグにまつわる具体的なエピソードが全然思い浮かびません。中身のナダの話をやる展開は途中から決まったのだろうかと思うほど序盤から出ていた意味を感じませんでした。3クール目から登場する新幹部ポジションを務めさせつつナダの話もやるほうがマシだったと思います。
■騎士竜の立ち位置が半端
・レッドの相棒のティラミーゴを筆頭に騎士竜全般が微妙な存在感でした。
巨大戦以外でも小型化して人間サイズになってドラマパートに出てきたり、普通に人語をしゃべったり、コミカルな性格だったりしたのでマスコット的ポジションなのだろうかと序盤に思いましたがそんなことはありませんでした。
出番があまりにも少なすぎました。まともに出番と台詞があったのは48話のうち5話程度です。他の騎士竜はもっと悲惨です。レッド以外の初期メンバーの相棒の名前をすぐには思い出せない人も少なくないと思います。
・終盤には騎士竜たちとの絆にちなんだ感動系のお話もあったのですが騎士竜の出番が少ないし、一番目立っていたティラミーゴのメイン回がギャグ回ばかりだったためシリアス展開には説得力を感じませんでした。
ここも中途半端で良くなかったです。レギュラー6人と戦隊では人数が少ないほうなので騎士竜をコンスタントに出しても充分やっていけたと思います。
【総合感想】
・独特な価値観は良いとも悪いとも言えず評価に困りました。
リュウソウジャーのメンバーは一言で言うと”蛮族”です。一番好青年のように見えるレッドですらでも昔は「とりあえず殴って言うことを聞かせようとする乱暴者」で他人の素振りを見て後天的に優しさを学んだ人物だったりするほど基本的に野蛮です。主要モチーフであり決め台詞にも含まれている「騎士道」に妙な意味で説得力を感じる内容でした。標語に掲げる言葉とは「言って聞かせなければ守らない内容だから」だというのは理にかなっているなぁと納得してしまいました。
異種族だから一般的な人間の価値観と違っていても設定上は特に問題ありません。やり方は乱暴なところがありますが、敵を放っておけばもっと被害が出るので合理的な観点では許容範囲です。
・しかしキャラに共感しづらいところはやはりマイナスだと思います。
「怪人を生み出していたのは持ち主に使われなくなった箱のマイナス思念のせいだった」という展開になったときに「あぁ、これは使う人を見つけてあげてハッピーエンドになるパターンか」と思っていたら、おもむろに剣で叩き割ってその後もノーリアクションのまま話が進んでびっくりしました。全体的にこういう「ここでその対応?!」とドン引きするようなズレた価値観がよくありました。
・このような独特の世界観とノリを生み出すことには成功していたと思います。その点ではむしろ最近の戦隊ではだいぶ上手くいったほうだと思います。
ヒーローものでよくある「いろいろ綺麗事は言ってるけど結局力づくで解決することになるんだよね…」という問題を「リュウソウ族だから」で納得させられる点は長所でした。根本的な倫理観の問題などはありましたがストーリー展開には一貫性を感じました。良いところとして挙げられるほどではないのですが、ユニークな世界観としては成立しているので評価に困ります。
■総評
・アクションは例年どおり申し分ありません。デザインなど要素に引かれるものがあったら見て損はないでしょう。
ストーリーは基本的にはいまいちです。構成がダメというより練り込みが甘すぎます。全体としての枠組みはかろうじてわかりますが、必要なパーツは足らず、余ったパーツはその辺に転がっているような状態でした。
・ストーリー面は全体としてはかなりグダグダなのにそれほど酷評していないのは、嫌悪感を抱くところが少なかったからだと思います。
アクションを除くと「プラス点は多くないけど致命的なマイナス点もかなり少ない作品」という印象です。マイナス点が少ないので見ている間、努めて冷静さを保とうとがんばらなくていい点では見やすい作品でした。
シリーズ構成の山岡潤平さんは初登板でしたが、雰囲気が明るくシンプルでわかりやすいという点では戦隊向きの人かもしれないと思いました。世界観など作品の根っこの部分は独特ではあるけど意外としっかりしていました。磨けば光るかもしれないと思えなくはない内容でした。
・アクション以外の理由では積極的に勧められる作品ではありませんが、戦隊シリーズを見慣れていて変わった作品を見たいという人ならば私のように何と評価すべきか迷う心境を体験できるかもしれません。
初めまして。管理人さんのご感想が好きで愛読させていただいています。
返信削除このリュウソウ総合感想もうなずくことしきりで…。ういは、私は追加戦士でも面白いと思っていたくらいで少なく見積もっても物語に欠かせないキャラになると信じていたし、あんな着地で残念でした。
ストーリー展開や構成は終始ぐだぐだでしたが、過去の戦隊キャラがやると引っ掛かりを感じることでも「まあリュウソウ族だしな…」である程度なんでも納得できてしまう世界をつくりあげたのはすごいですよね。私はキャラクターもけっこう好きでしたし、このユニークさに加えて騎士竜や販促アイテムの扱いやストーリーが安定していればどんな作品に仕上がっていたのかと惜しく感じるのですが、安定していないからこそのユニークさなのかと思うと複雑です。
これからもブログの更新楽しみにさせていただいています。失礼します。
匿名さん、はじめまして。ご愛顧いただきありがとうございます。
削除>ういは、私は追加戦士でも面白いと思っていたくらいで少なく見積もっても物語に欠かせないキャラになると信じていたし、あんな着地で残念でした。
最終回で半端に出てきたのがかえって虚しく感じました。
>このユニークさに加えて騎士竜や販促アイテムの扱いやストーリーが安定していればどんな作品に仕上がっていたのかと惜しく感じるのですが、安定していないからこそのユニークさなのかと思うと複雑です。
そうですね。独特の世界観の良し悪しはさておき、ストーリーの構造など基本的な面白さはブラッシュアップする余地はいくつもあったと思います。
更新お疲れ様です。はっきりした良回、悪回が無く毎回良し悪しが混ざって評価に困る。
返信削除前作で玩具売り上げを大きく落としたためか販促を頑張っていましたが、販促のために作ったルールによる負債を最後まで返しきれなかったと思います。日常、捜索、等身大戦、等身大VS巨大戦、巨大戦と一話内でやるべきことが多く掘り下げの尺が足りていませんでした。
19話進撃のティラミーゴがターニングポイントでした。あの回でこの作品の色が理解できた様に思います。
アクションは相変わらず良好。騎士の割に格闘戦が妙に印象的でした。かつては退屈なノルマでしかなかった巨大戦が今や立派な番組の武器ですね。
恐竜→乗り物と守りに入ったモチーフが続きますが、作り手に攻めた姿勢を感じるので今後もひっそり期待しています。
>日常、捜索、等身大戦、等身大VS巨大戦、巨大戦と一話内でやるべきことが多く掘り下げの尺が足りていませんでした。
削除ストーリーに関しては工夫でどうにでもなるレベルだったと私は思っています。
幹部の扱いやガイソーグ、ウイなど使える素材を転がしたまま放置していた期間がいくつも見受けられると思います。
>19話進撃のティラミーゴがターニングポイントでした。あの回でこの作品の色が理解できた様に思います。
世界観や視聴者側の心構えを作る上では重要な役割を果たしたと思います。
「この世界はこういう世界なんだよ! リアルでの常識とか倫理観なんて置いてこい!」というメッセージが伝わってきました。
>恐竜→乗り物と守りに入ったモチーフが続きますが、作り手に攻めた姿勢を感じるので今後もひっそり期待しています。
そうですね。目新しいモチーフを使って作るよりも、よくあるモチーフを使って飽きさせないものを作り続けるほうがずっと難しいと思います。アクション面だけでも優れたものを作り続けていることはすごいことです。
今更ながらちょっとだけ。
返信削除リュウソウジャーは個々のキャラが割りと良かったとキラメイジャーを見ながら思いました。
元々一緒だった3人の絆も描かれていた辺りも良かったです。
ところで、ういちゃんの女優さん、亡くなってしまいましたね。昨年から病気で休養していたということだったので、リュウソウジャー撮影時には休養を余儀なくされるような状態だったんだと思うと複雑な気持ちです。
ういちゃんの体調はもしかしたらストーリーにも大きく影響していたかもしれませんね。体調不良により休養前から出番がだいぶ減っていたのかなと思いました。
リュウソウジャーはルパパトが好きだったので、放送しているときは、好きな回もあるしキャラクターの個性もとても良いけど、あまり好きになりきれなかったのです。
でもキラメイジャーが私は面白くないし、キャラが微妙なので今はリュウソウジャー良かったなと思います。
>体調不良により休養前から出番がだいぶ減っていたのかなと思いました。
削除私もたぶんそうだろうと思います。放送当時から役者さんに何かあったパターンかなと考えていたので。
特筆するほど悪い!というほどでもない、自分も管理人様同様何とも微妙な評価です。
返信削除ここは自称・恐竜好きな自分の好みの問題なので、共感して頂けるかは定かではありませんが。
恐竜戦隊はこれで4作目なわけですが、その中で一番恐竜モチーフの扱いが雑だなと。というかエラスやマイナソー周りの設定を見るにそもそも恐竜絡める必要あったのかとすら。
まずのっけから「架空の恐竜」を当然のように出してきた時点でずっこけ、ついでに名前も英語+サウルスという絶妙なダサさ(まあニードルサウルス=トゲトカゲをそのままラテン語訳したらスピノサウルスになってしまう、というのもあるかも知れませんが…それなら無難にステゴサウルスかポラカントゥス辺りの実在の剣竜にしておけば良かったのではと思う)。
パキガルーなんてそのままパキケファロサウルスで十分だったろうと。
そしてモササウルス+ディメトロドンの合体でスピノサウルス型騎士竜って、そんな昔のレゴじゃないんだから…。
最後にうい役の方にこの場を借りてご冥福をお祈りさせて頂きます。
匿名民さん、こんにちは。
削除先に断っておくと、私は特に恐竜好きや恐竜モチーフ好きというわけではないので匿名民さんの気持ちは理解しきれないかもしれません。
恐竜である意味は特になかったと私も思います。「古代から存在する」ということくらいでしょうか。
ただ、戦隊全般が「このモチーフでなければこの作品は成り立たない!」ということは少ないと思っているのでリュウソウジャーに対して特別思うところはありません。
リュウソウジャーに関しては勝手な推測ですが、ひょっとしたら「恐竜は後付けかもしれない」とも思っています。
騎士のモチーフが先にあって、「騎士と言えばドラゴン→竜は竜でも恐竜→騎士と恐竜」といった流れでもあるのかもしれません。それくらい恐竜の存在感は薄いと思っています。
>モササウルス+ディメトロドンの合体でスピノサウルス型騎士竜って、そんな昔のレゴじゃないんだから…。
荒唐無稽さはともかく、「合体させて別のものにする」という発想は騎士竜には合っていたんじゃないかと私は思っています。
騎士竜は生身ではなくサイボーグ的な存在であることが特徴なはずです。特徴を活かすならスピノサンダーのようなメカニカルな仕組みのほうが性質に合っている気がします。おもちゃ的にも合体に意味が生じて有りじゃないかと思いました。私はむしろそういう方面に伸ばしたほうが特色が出て良かったんじゃないかと思います。