『蒼穹のファフナーEXODUS』 第26話(最終回)「竜宮島」:感想

2015年12月26日

■消化不良
・蒼穹のファフナーEXODUSが最終回を迎えました。残念ながらすっきりしない終わり方でした…
脇役はおろか一騎や真矢の描写まで削ってまでストーリー展開を優先してきたのに、これまでの成果もこの先の未来も大半が「竜宮島に帰ったら」で結論付けられてしまい、物語の終わり方としては不明瞭な状態で終わってしまいました。犠牲にしたものに見合っていないように感じます。EXODUSの方向性が私の好みでないことを除いても、この終わり方はどうかと思います。

・全体的に展開がスムーズ過ぎたのも物足りなさの一因だと思います。
人類軍艦隊との戦いやアルタイルとの接触があんなにスムーズに行くとは思いませんでした。特にアルタイルが非常に竜宮島に好意的で驚きました。第三アルヴィスのコアが先に話しかけたり、芹が斬りかかったときにはアルタイルが感化されるのではないかと不安になりましたが、アルタイルは全く気に留めていませんでした。良い人ですね~ 善悪の区別があるのかないのかよくわかりませんでした。

■逝く人と残る思い
・今回も大半の描写が省略されていましたが、一部の登場人物の描写は充分時間がとられていました。織姫、芹、美羽ちゃん、そして澄美さんの3人です。これは嬉しかったですね。

・織姫は全然人との関わりがないまま寿命を迎えてしまうのかと不安でしたが、最後に少し救われました。最後まで関わったのは芹と真壁司令くらいだったのは残念でしたが、芹が損得度外視で付き合ってくれたことは織姫にとってこの上ない救いになったことでしょう。最後に織姫の気を張っていない姿が見られて良かったです。

・芹は織姫関連が完結して良かったです。
個人的には人物描写では最終回で一番良かったかもしれないと思いました。理由は最も能動的だったからです。一騎たち含めて登場人物の大半が必要性と抗えない流れに沿って動いていた中、芹は自分の思いを貫いていました。状況がそうなるように仕向け、織姫も脱出するよう望んだのに芹は”ここにいる”ことを選びました。過酷な状況下での意思の表れは、まさに私がファフナーに求めるものです。

とはいえ第一印象としては「あれ、広登のことはもういいの? いいんですか。そうですか」という感じはしました。広登が生きていたら芹の心中は絶対止めたと思います。きっと前回でその話は終わったのでしょうね。最近の展開にだいぶ慣れてきたのでこの辺りはすぱっと諦めました。

・美羽ちゃんも最後の最後で描写がありました。
途中は完全放置だったので、もう舞台装置扱いでお終いかと思っていました。美羽ちゃんは偉いですね。大切な人が2人も死んで重荷ばかりが残されたのにちっとも腐らずに、「守ってくれてありがとう」と真矢に感謝の言葉を伝えていました。あの言葉で真矢が救われました。この台詞、9話で一騎と総士にかけた言葉と同じなんですよね。一騎に救われただけで真矢自身は何も守れなかった状況だったときに聞いた言葉とはナイスな言葉選びです。
状況としては「ママもエメリーも、どうして守ってくれなかったの?!」と真矢に当たり散らしていてもおかしくなかったと思います。2人の最後の思いをきちんと汲みとって正しいことができる美羽なら、いつか来るアルタイルとの対話も心配要らないと思いました。

・澄美さんは完全に予想外でした。
メインも切られる中で脇役中の脇役に焦点があてられるとは思ってもいませんでした。脇役が描かれることは喜ばしいことなのですが、「あれはどうなったの?」という疑問が尽きない状況だと違和感が拭えません。ここをカットしないで他を切ったことは非常に不思議です。旦那さんが亡くなったのが初代の1話だったので、EXODUSの最終話は澄美さんで締めたかったんでしょうかね。

■一騎
・一騎関連は描写がなくてわからないことだらけなのですが、1つ大きな疑問が私の中に残りました。一騎の祝福とは何だったのでしょう? 内容以前に果たしたのかどうかさえ実感がありません。
流れからすると「生きる」こと自体が祝福になるように思えましたがそうなのでしょうか? 仮説は考えたものの、周りの受けた影響が描かれていないので祝福になってるのかまるでわかりません。今回救われたであろうジョナサンの描写があればヒントになったのですが丸ごと省略されました。
一騎は生きれて良かったとは思うものの、正しい”命の使いみち”ができたのか気になるまま終わってしまいました。

■総士
・子供に生まれ変わりました。
一騎に育てられたらコミュニケーション上での不器用さが更に増しそうで心配です。

・生まれ変わるってまるでコアみたいですよね。しかし記憶は保っていないので、コアとは異なるようにも見えます。生まれ変わりは生と死の境界線を越えたものに共通して起こることであって記憶とは関係なく、コアはそれに加えて記憶も引き継ぐ(ミールの作用?)ようになっているということなのでしょうか?

■ビリー
・最後まで何だかなー、という印象でした。
あれだけ時間を割いたわりに大した役割が見いだせませんでした。アイもそうなのですが、これくらいならモブ人類軍兵士でも良かったような気がします。ペルセウス中隊とアルゴス小隊はどちらもモブでよかったんじゃないかなぁ、という思いが頭に張り付いて離れません。

・状況に流されるばかりで、生きてるのに”いなくなった者”を意味していたのでしょうかね。
確固たる自我がないのならば何も残せないのも当然です。

■エメリー
・弓子と同じく死人だったようです。
当初から「なぜ1人だけ生き残ったのか?」「なぜミールの欠片を使えた弟ではなくエメリーが助かったのか?」という疑問があったのですがこれで解消されました。年齢に似つかわしくない病的なまでの献身性も頷けます。

・ただ、ナレイン将軍などエスペラントと呼ばれた人たちが全員ソンビだとしたらちょっと怖いですね。自分を守るために死者を庇護者とすると表現すると、アショーカが邪悪な存在みたいです。勘違いで受胎能力を奪った瀬戸内ミールみたいに無邪気なだけだと信じたいです。


終わってしまいました…
しかしまだまだ考えがまとまらないところがたくさんあります。無料配信中の初代も見つつ、総合感想をまとめていきたいと思います。

コメント

4 件のコメント :

  1. EDで「暗夜航路」が流れて、なんとなく『ああ、そういうことか』と納得しました。

    もちろんアニメに「娯楽」という要素は付きまといますし、ハッキリ言って褒められた終わり方じゃありません。これじゃ商業的にも、全く盛り上がらないでしょう。まあ冲方さん始めスタッフは、あまりその辺り気にしていないんでしょうが、それでも幸福な結末を少し描くだけで、妄想も膨らみますし、
    ファンへの最大のリスペクトにもなるはずです。私としては、その点はかなり不満です。

    しかし何事にも限界があり、また大いなる力にも犠性が伴うという、二次元にしてはかなりハードな世界観を貫いてきたファフナーです。ハッキリ言って、この無常な結末が最もファフナーらしいのでしょう。どこまでも残酷で厳しく、だからこそ少しでもキャラクターたちが生きられたことに喜びを感じ、生きていることを尊く思わせてくれる。そんな生命の素晴らしさを書いた作品だからこそ、最後は「別れ」がふさわしかったんじゃないかなと思います。また彼らの旅は続くのだと。

    それに私は個人的にEXODUSは、怒りや憎しみ、そして大事なものとの別れを乗り越えて、未来に進む物語だったんじゃないかなと思ってますので、島から脱出するというラストは結構納得してます。

    でも私より管理人さんの方がおそらくファフナーを見てきた時間は、ずっと長いでしょう。気づかされることも多いはず。だから、総評楽しみにしてます。

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    1. t/bさん、はじめまして。

      コメントを拝見する限りでは、t/bさんはEXODUSの終わり方がビターエンドだと感じていらっしゃるように思えました。私は物語としては比較的ハッピーエンドだったと思っています。犠牲は少なく、確かな未来があり、島もいつか帰れる日が来る確信があります。私はこの結末に寂しさは感じていません。

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  2. 続きは気になる終わり方でもありますが、絶望を乗り越えて前へ向いて生きていこうとするという意味では良い終わり方でした。

    戦士達に訪れるのが祝福であることを切に願っています。

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    1. 明るい結末でしたね。
      アルタイルとの対話は美羽ちゃんがいるので大丈夫でしょうし、戦力面では一騎を上回れる存在はそうそういないでしょう。既出の範囲で問題があるとしたら竜宮島の三代目のコアかアルタイルくらいかと思います。

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