『蒼穹のファフナーEXODUS』 第24話「第三アルヴィス」:感想

2015年12月12日

■取るに足らないものなのか
・今回も詰め込み過ぎでした。
各シーンで5分足らないものから1話足らないように感じるものまで大小様々ありました。
もう物語上の扱いでは「メインキャラ:一騎・総士・真矢・ミールとコアたち、サブキャラ:各パイロット」という感じなのではないかと思えてきました。パイロットまでサブキャラ扱いで、非パイロット勢はただのモブというのは受け入れがたいことです。エインヘリアルモデルになったのにディアブロ型に押されっぱなしだったり納得しがたい戦況も多めでした。

・初代ファフナーは一人ひとりの人間の物語だったと思っています。
今のEXODUSは人間とフェストゥム、ミールなど種族と種族を超えたその先の次元での存在の在り方の話になっていて、一人ひとりの生き様や島がどうとかいうスケールでは無くなってしまったように思えます。同じ冲方さんの作品の『ヒロイック・エイジ』はそんなスケールの大きなお話でした。今のEXODUSの方向性とヒロイックエイジがどう違うかと問われたら答えられません。壮大な設定はあれども一人ひとりのキャラクターの生きる姿に密着した点がファフナーの魅力であり最大のオリジナリティだったと私は思うので現状の流れは残念です。

■一騎
・最後は結局、一騎頼みで解決だったことは興冷めでした。あれは多用してはいけないものだと思います。
シュリーナガル戦では一騎の命という重い代償がありました。しかし永遠の戦士となった今ではリスクが見当たりません。本当に「もう一騎1人でいいんじゃないかな」という状況になってしまいました。今後の緊張感はどこで醸し出すのでしょうか。

・状況から考えると「生きたがっていた一騎が生を捨てて永遠の戦士となる」というのが今回の代償だと思うのですが、気持ちがついていきませんでした。
内容としては17話のカノンの選択と同じだと思います。しかしカノンと違ってここまでに一騎の心境があまり描かれていないため感情移入ができませんでした。北への移動中に生きたいと思うようになった経緯自体が省略されたのはやっぱりマズかったみたいです。島のみんなの窮地や一騎の寿命の問題など天秤の反対側に乗せられている物はたくさんあるのに、永遠の戦士になることで失われるものの重要性がいまいち感じ取れませんでした。そこに乗せられていたであろう一騎のエゴを見てみたかったです。

・一騎が島のミールと対話したときに「母さんみたいにするのか?」と言ったことが気になりました。一騎の理解が正しいとすると、ミョルニアのように意思の方向性はあっても自我が希薄になるということなのでしょうかね?
これが作中において正しい意味なのか定かではない点がややこしいです。一騎は総士と違って永遠の戦士やフェストゥムの世界における存在の意義などはよくわかっていません。本当はミョルニアとは異なる存在なのに誤解している可能性もあります。
その後の状況から考えると、一騎の言ったとおりミョルニアのように自我が薄くなったようです。
ザインの再生やミールの塔に攻撃するときなど普段の一騎なら顔を歪めて叫んでいそうな場面でも終始安定した表情でした。仲間を守ったり、戦いが終わった後にゼロファフナーのほうを向いたりしているので感情はあるのだと思います。

■暉
・暉が逝ってしまいました。
劇場版の広登のように柱を受け止めて姿からは、広登の意思を継ぐという思いが伝わってきました。広登の分に里奈の分まで1人でやって頑張りすぎたのでしょうね。

・暉の死は、一面としては擬似的な一騎の最期でもあったのかもしれないと思いました。
1人で抱え込んで強大な力を使い続けるとどうなるのか、暉の姿は一騎と重なるところがありました。出撃前に一騎に「負けませんから」と言っていたことはその暗示だったように思えます。もしも一騎が永遠の戦士にならずに戦い続けていたら…、その結末が暉の最期で表されていたのではないかと思いました。

・暉の扱いに関して最期とは別に1つ疑問に感じたことがありました。それは暉が里奈以外に考えを伝えていないことです。
世界中どころか島の人にさえ派遣中に理解した平和の価値を伝えられていません。これだと広登や暉の意思は途絶えてしまいそうに思えるのですがどうなのでしょう。これまで画面上で描かれてきた分以外にカメラに何か残してあるのでしょうか。暉の最期は、思い半ばにして散る、というシーンではなさそうだったのでそこが疑問でした。普通なら「まぁ、後で何か話があるだろう」と思うところなのですが、今のファフナーだと素直にそう思えないところが辛いです。

■アショーカ死亡
・美羽たちはエメリーが心配で、誰にも見とられないままアショーカが吸収されてしまいました。
けっこう大きな出来事だったはずなのに反応が薄くて驚きました。ウォーカーさん並に人望がありません。アルタイルに接触する道が途絶えてしまったわけですが、この先どうするのでしょうか?
織姫の見た未来に変化がないとすると、何かしらの存在が第三アルヴィスに根付くことは確実です。ベイグラントを倒して奪い返せばいいのか、ミールの因子を宿しているナレイン将軍が代わりになれるのか、それともゴルディアス結晶など何か別の代替物が用意できるのか。突拍子もない展開ではないといいのですが。個人的にはアルタイルの件まで一騎や総士頼みは止めてほしいです。


次回のタイトルは「蒼穹作戦」です。
ウォーカー戦でやったばかりなのでまたかという感じもします。何か新たな意味が含まれていることを願います。終盤の1話くらいは一段落したところで日常回が来ないかと期待していたのですがなさそうですね。あるとしたらエピローグになりそうです。


コメント

10 件のコメント :

  1. 3クールとは言いませんが2クール半つまりあと6話分ぐらいあれば
    詰め込み具合も大分改善されていたかと思います。

    私も流石に今回は初見では展開が速過ぎて驚きました。
    ディアブロ型に島のファフナーが苦戦している姿を見て総士はなぜいない?と
    冷静に見直せばアバンタイトルで前回直後から
    島の状況が始まっているのだなと気付ける程だったというのに。

    織姫がもう時間が無いと言っていましたがOwlさんが仰る
    >壮大な設定はあれども一人ひとりのキャラクターの生きる姿に密着した点
    この部分がもう少し話数があれば出撃前にもじっくり描けたかなと。
    EXDUSのストーリー構成としては1期と違って
    後半はもうこの時点では1話全てを使って日常を描ける余地はないでしょうけど。
    ストーリー全体を着地させるのが最優先な状況なのが歯痒いですよね。
    映像や描写はどの部分も面白いので一層そう感じます。

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    1. 私はEXODUSに関しては「話数があれば…」とは思いません。
      特に押し付けられたノルマがあるわけでもありませんし、ストーリー面で冲方さん以外の影響力が強いとも思えません。他作品と比べてもかなり自由にできていると考えます。派遣組と島の両方とも描こうとするなど、最初からそれで上手くやれるのかと懸念を抱く事項もありました。私の考えとしては「欲張りすぎて全体の構成にしわ寄せがいった」と思っています。始めから2クールという枠は決まっているのですから、それに合わせるのもプロの仕事のうちだと思います。

      >ストーリー全体を着地させるのが最優先な状況なのが歯痒いですよね。映像や描写はどの部分も面白いので一層そう感じます。

      前半や17話は人物描写中心のところもあり、そこは以前の作風と変わらず良かったと思います。単純に腕が落ちたというのなら諦めもつくのですが、目指す方向性の違いが理由と辛いです。

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  2. アショーカはまだ復活の可能性がありますよ。七話で死んだはずの弓子が何故今まで復活しているのか。その後のクロツシングっぽい能力の開花・美羽達の能力の急激な理解度と許容。明らかにフェストゥムよりの存在に変化していますよね。どう考えてもアショーカミールの一部と融合しているからではありませんか。となれば、いずれアショーカの復活と引き換えに弓子の不自然な生存の伏線が回収される時が来るはずです。しかし紅音・鞘に続き、ファフナーの母親はつくづくミールやフェストゥムと同化・同期する運命の人が多いですね。

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    1. アショーカの復活自体はあり得ると思います。
      ただ、整合性のとれる仮説が私には思いつきません。弓子なりナレイン将軍なりから再生することは可能かもしれませんが、これをやると別の大きな問題が生じてしまいます。「他のミールも同じことができるかもしれない」という問題です。たとえばベイグラントを倒しても保険を用意されていたらいずれまた危機を迎えるかもしれません。そして「どこにも再生するための用意がない」と証明することは悪魔の証明になります。生きてるかもしれないとなるとすっきりしませんし、倒す過程で犠牲が出た場合には犠牲者が無駄になりかねません。物語としてはあまりにも大きな問題になるので安易に復活させるわけにはいかないと私は考えます。

      弓子に関してはアショーカが全てとも言い切れないので何とも判断できません。
      フェストゥムに近い存在になったのは確かですが、”お話”は普通のフェストゥムもできることですし恐らくエスペラントもある程度はできます。
      美羽ちゃんに関しては元々成長速度が異常ですし、存在が特殊過ぎて常識が通用しません。あれが普通という可能性もあります。
      可能性はありますが、決め手としては弱いと思います。

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  3. トイボックス2015年12月13日 12:25

    「プロの仕事……」なんてまで発言するなら、わかりやすく見せるだけが「プロの仕事じゃない」ってことくらいわかるでしょう。

    言いたいことは非常にわかりますが、今回は流石に目をしかめました。人に読んでもらう文章を書いている以上、焦点を一つに絞らず、多方面からものごとを見るべきでしょう。
    それが出来ないなら、「プロの仕事……」なんて口を叩くのはやめた方がいいです。

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    1. >わかりやすく見せるだけが「プロの仕事じゃない」ってことくらいわかるでしょう。

      わかりやすさを問題視した覚えはありません。
      今の一人ひとりの登場人物よりもテーマ性を重視する姿勢も、私の望む方向とは違いますがそれ自体は有りだと思っています。

      しかしそういう方向性で行くにしても構成には問題があったと考えます。
      キャラを増やす必要はあったのか、既存のキャラを間引くべきではなかったか、使える時間を増やすために必要な工夫が充分に行われていたとは思えません。そこを問題視しています。全体の構成は手本になるような立派なものではないと思います。

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  4. トイボックス2015年12月13日 15:40

    シナリオのイロハや構成をあなたはどれだけ知ってるというのでしょうか。

    確かにEXODUSに入ってからのファフナーは、物語の変化が早めで、他者との対話によるキャラクターの感情の取得→存在の更新の合間にあるラグは、あまり丁寧に描かれていません。
    しかしそれは「いちいち反応する間もないぐらい、死が身近にある」というファフナーの世界観のアピールでしょう。そしてそのことを、わからない人もSNSを通した対話によって理解しています。

    これは初期のファフナーでも同じでした。「死への悲しみがなさすぎる」という不満が続出していましたが、議論によって回答に近づき、次第に不満は解消されていきました。

    一騎の生への執着も、暉や真矢の変化に照らし合わせれば多少は理解がつくでしょう。そういった視聴者の想像と仮設で空白を埋めていく作品も、昔は数多くありました。小説でも映像メディアも今は少なくなったそのタイプを貫いてるからこそ、私はファフナーを見ています。

    別に私も不満がないわけではないですし、あなたの言いたいこともわかります。ですが今回のは流石に一方的な私情を述べるばかりで、脚本に対する理解を含めた解釈もなかったので言わせてもらいました。




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    1. >シナリオのイロハや構成をあなたはどれだけ知ってるというのでしょうか。

      なるほど。それがわかるということは、つまりあなたは私よりもお詳しいわけですね。それでは後学のためにいくつか質問をさせてください。

      >しかしそれは「いちいち反応する間もないぐらい、死が身近にある」というファフナーの世界観のアピールでしょう。

      これはどういう意味でしょうか?
      一騎の心理描写が少なかったことと死の身近さとの関係性とは何でしょうか?
      ファフナー世界では死が溢れていて一騎たちも慣れているという点は私もそう思いますが、それと一騎の内面の描写が少なかったこととどう関係があるのでしょうか?

      >一騎の生への執着も、暉や真矢の変化に照らし合わせれば多少は理解がつくでしょう。

      重なる部分があるというのはわからなくもありませんが、具体的にはどのことを指しているのでしょうか?
      作中での具体例を挙げた上でご説明いただけないでしょうか?

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  5. ついに、島のパイロットから3人目のフェストゥムが生まれましたね。

    一騎はマスター型らしいですが、甲洋との精神面での違いが気になります。

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    1. 「母さんのように」がマスター型という意味なのかは判断しかねています。
      状態ではなくフェストゥム全体に紅音の意思(祝福)が広がったように一騎の意思を拡散することを意味しているとも捉えられます。戦闘中の一騎は感情が希薄になっているに見えたので次回の様子に注目したいと思います。

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