Gのレコンギスタ 第23話 『ニュータイプの音』:感想

2015年3月11日

【ストーリー】

■ベルリの深層心理
・今回のベルリの戦いにはあまり共感できませんでした。
理由は戦う必然性が感じられなかったからです。でもそれは製作者の想定した通りの正しい印象だったのかもしれません。なぜならばサラマンドラがコースを離脱した時点でお互いの作戦は終了していて、あの場の戦い全てに戦略上の意味が失われていたからです。
それでもお互い”なんとなく”で戦い続けた結果、ベッカーはロックパイに殺され、ロックパイもベルリに殺されることになりましたが、戦略上の価値は全くありません。ただ機体とパイロットが減っただけで戦況には何の影響もありませんでした。
そんな無価値な戦いなのだから必然性はなくて当然なのかもしれません。その中でベルリは自分の死の身近さを実感したこと、同時にマッシュナーが自分の采配の結果を思い知ったこと、それが今回一番重要なことだったのかもしれません。

・意味するところはいろいろあると思いますが、金星までの旅でのアイーダ変化から考えると「人は自分の目で見て、実際に体験しないとわからない」という内容の補強の意味合いが強いように感じました。

・今回ベルリは戦いの前に金星の人を見て「怯えていると戦いの光に引かれてしまうのか」と冷静に呟いていましたが、たぶん実際はベルリも同じだったのだと思います。
戦況を観察するだけなら巻き込まれるほど近づく必要はないはずです。光学センサーもあるのですから不自然です。恐らく、知らず知らずのうちにベルリも心の底では怯えていて戦いの光に引かれたことが今回の無駄な戦闘の一因だったのでしょう。

・今回の流れを見る限りだと、ベルリの根っこは相変わらず”飛び級生”のままみたいですね
「戦争の根っこを知りたい」なんてお上品なことを言っていましたが、実際にやったことは戦略上無意味な雑魚同士の小競り合いです。自分が本当はどう思っているのかもラライヤに指摘されるまでわかっていませんでした。どちらも根っこどころか上っ面も上っ面です。相変わらず地に足がつかないまま、恵まれた境遇と天性の実力で強引に乗り切っているだけのようです。

■ベッカーの死
・人の感想を眺めていたらロックパイの死に触れている文章は多くあるのに、ベッカー大尉の死に触れている文章はあまりありませんでした。少し不思議に感じました。

・私はロックパイの死よりも、ベッカー大尉の死のほうが大きいことのように思います。
ベッカー大尉は普通の軍人でした。Gレコ世界では戦争の観念が薄く、私情を挟んでケンカの延長線上のように繰り広げられています。その点でベッカー大尉の普通さは貴重でした。クリムのように野心を抱くわけでもなく、マスクのように私情を挟むわけでもなく、何度も負けたGセルフを執拗に追いかけるようなこともなく与えられた任務の範囲で戦っていました。そんなベッカー大尉が知識の不足からどうでもいい戦いで戦死したことにショックを受けました。
比較的自意識の強く、自分の意思で戦場にいるパイロットが多い中、そのいざこざに巻き込まれて普通の軍人が死んでしまう。そこに戦場の無情さを感じました。

■ケルベス中尉とラライヤの魅力
・毎度毎度ケルベス中尉とラライヤの常識人コンビには癒されます。
考えてみたのですが二人の良さは”誠実であること”のように思えました。ケルベス中尉もラライヤも作中屈指のリアリストで現実的な対応が多いんですよね。ねぎらったり、いたわったりはしても甘く優しい言葉はかけてくれません。相手が怯えていても「守ってあげるから大丈夫」なんて絶対言いそうもありません。自分もいつ死ぬかわからないと状況を客観的に見ているドライなところがあります。そこに説得力を感じます。
優しい言葉というのはたいてい嘘です。良い嘘であっても嘘は嘘だと思います。優しい嘘をつかずに事実を客観的に見て反応してくれて、ときにはGセルフを過信するベルリをたしなめるように怒り、ときには金星の人を止められなかったことを謝るベルリを「お前は悪くない」といたわってくれる。私はそれを二人の誠実さの表れだと思います。


【アクション】

■パーフェクトパック
・パーフェクトパックって各パックの能力も使うことができるんですね。ベルリが過信するのも納得でした。特に感心したのが登場する下地作りです。
これまでにパックによって色が変わる光装甲の設定を見せてきたので、色が変わる=機能が変わることをすんなり受け入れられました。
最初に使ったのが高トルクパックであるところがポイントなんでしょうね。インパクトの攻撃する瞬間に色を切り替えているので、常に使えるわけではなく、色はパックの機能と対応しているという基本設定が見るだけで伝わってきます。

・単純にギミックとしてとても面白かったです。
格闘戦からシームレスに射撃に移行していて、切り替えのときにワンテンポ空いて勢いが落ちがちなところを上手く乗り切っていて感心しました。

・見ていて何かに似ているような、と思ったらライダーでお馴染みの「フォームチェンジ」に似てるんですね。
メカニカルな変形ではなく、パッと瞬間的に切り替わるところが似ています。富野監督は一つの武器に複数の機能を持たせた複合武器がお好きですけど、一つの物に複数の機能を切り替え式で付けるという点ではフォームチェンジと同じ発想なんですね。

■ギミック戦
・今回はお互いに相手の知らないギミックを使った戦闘が面白かったです。
ベッカー大尉の部隊がビームキャノン付きのSFSとの連携攻撃で攻めてアメリア軍は混乱するも、逆にアーミィの知らないヘカテーの棺桶で防いで難を逃れたり、ロックパイがビームマントで一方的にベッカー大尉を殺したと思ったら、その後にパーフェクトパックの様々な機能で一方的に蹂躙されたり、その場その場での状況判断がパイロットに求められて対応を間違えると死んでいくのはリアルで緊迫感がありました。

・個人的にはベッカー大尉の時間差攻撃が一番好きでした。
宇宙の立体性を活かした上と下からの揺さぶり方と、30秒数えて攻撃するアナログさのギャップが良かったです。

・あのSFSは「ランゲバイン」というそうですね。デザインした形部さんがツイッターで言っていました。元はGセルフを乗せるバイク型SFSとしてデザインされたそうで、道理で妙にかっこいいデザインなわけですね。


コメント

2 件のコメント :

  1. Gセルフをベルリが過信していた、という解釈は方々で見るので実際主流なのだと思います。
    しかし過信していたのは戦闘が始まるまでで、ロックパイ撃墜後はそうではなく、
    過信していてそれが間違いであると身体で理解してしまい、そこで覚えた恐怖から来る寒気を打ち払うために
    虚勢や願望を込めて「Gセルフでだぞ!パーフェクトバックパックがあるんだろ!」と叫んだのだと考えています。
    何が変わるわけでもないかなり些細な問題かもしれませんが……

    また一応ガイトラッシュはトワサンガの虎の子のMSに見えるので雑魚の小競り合いには収まらず
    トワサンガの勢力を削ぐことはできたと考えています。

    ケルベスとラライヤは経歴からして当然なのですが、今回のノレドの肝の座り方は怖かったですね。
    今までも怯むことなくベルリに付いてきたのである意味平常運転なのですが。

    返信削除
    返信
    1. そういう一面もあると思います。
      ラライヤとのやり取りでのベルリのパーフェクトパックに関する発言は本質的には、デレンセン大尉を殺した後の逃避行動と同じだと思います。デレンセン大尉を殺したときにベルリは「あんな機体に乗っているから(デレンセンだとわからなかった)」とこじつけて現実逃避を行っていました。ベルリは頭でっかちなところがあるので論理武装による正当化なのでしょう。今回のパーフェクトパックも「自分も死ぬかもしれない」という脳裏をよぎった命題を否定するために「パーフェクトパックは強いのだから死ぬはずがない」という論理を持ちだしたのだと考えられます
      いずれにしても私は今回の内容でここに焦点があたっていたわけではないと考えます。デレンセン大尉と同じようにロックパイの殺害、そして自分の死から目を背けようとしたベルリをラライヤが向き直させたことに意味があるように思えます。

      ガイトラッシュの破壊は戦術上の価値はあっても戦略上の価値はないと私は考えます。
      1stでアムロとガンダムがいくら強くても大局は変えられなかったのと同じことです。ガイトラッシュを破壊しても、一時的にマッシュナー艦隊の力が落ちるだけで、時間が経てばガイトラッシュに相当する戦力の予備部隊が補充されるだけです。
      もしもあの戦いに戦略上の価値があったと言えるとしたら、マッシュナーを仕留めていた場合くらいだと思います。トワサンガは人材に乏しいので大隊クラスの指揮官を1人減らすだけで指揮系統に混乱が生じるはずです。

      ノレドは未だに何を考えいてるのかわかりませんね。
      戦場や攻撃に躊躇がないのは慣れというより、被差別階級の育ちゆえなのでしょうかね。

      削除

 コメントは承認後に表示されます。
*過度に攻撃的な言葉や表現が含まれている場合、承認されない場合がございます。節度と良識を保った発言をお願いいたします。