『蒼穹のファフナーEXODUS』 第12話「戦場の子供たち」:感想

2015年3月28日

■ファフナーの宿命
・芹たち5人の状態は悪化する一方のようです。同化現象で死ぬよりはずっと良いのですが、生きているとも言えない状態になりそうです。

・そんな5人を励ますだけでも命をかけないといけないことが辛いです。寿命も残り少なく、乗れば死に至る可能性が高いとわかっていても咲良たちは自ら志願していました。戦闘に参加して死のリスクを負うならともかく、戦力にはなれないとわかっていて命をかけて出撃するのは尋常なことではありません。ただ勇気づけるためにそこまでしないといけないのがファフナーの宿命なのですね。一騎たちもまた先人のたちの犠牲の上に成り立っているので、これは避けられない通過儀礼でもあります。これまでの再確認ではありますが、それでも辛いです。

・今回は一般人の被害もクローズアップされていました。
同化耐性がないから強力なフェストゥム相手だと接近されるだけでも結晶化して死んでしまうのですね。あれだけ絶望的な壁が存在していれば、新国連や人類軍が破滅的な戦いに駆り立てられるのも無理はありません。そしてあれは「もし芹たちが戦うことを恐れたらどうなるのか?」という未来の示唆でもあるのでしょう。
先に死ぬのは戦う力がない者と戦う勇気がある者から。それが竜宮島と外の世界に共通する真実のようです。

■覚悟の先にあるもの
・戦う力があるか、覚悟はあるか、という話を基調にしていますが、その一歩先に立っているのが一騎と総士です。
誰よりも強く、死を恐れない彼らは戦えないジレンマに苦しんでいました。普通のロボットアニメであれば歴戦の勇士は率先して戦場に立つべき存在ですが、ファフナーでは乗れば乗るほど寿命が削れるため最も確実な死に近い存在でもあります。戦ったら次があるかはわからない。しかし戦わなければ誰かの明日がきっと失われる。強くなれば守れる、恐れなければ戦えるという次元の話ではない分、二人の苦しみは最も深いものなのでしょう。

・ファフナーの面白い点の一つはこの重層的な関係性だと思います。
以前の一騎たちと同じように戦いを恐れる後輩たち、先に散った仲間たちからもらった意思を後輩たちに継がせるために命をかける咲良たち、そしていずれ彼らが至るであろう境地にいる一騎たち。守るために戦うパイロットという視点で切り取っても、登場人物が一つの線で結ばれていて、作中の時間経過に合わせて、それぞれのペースで進んでいます。

・広登と暉もそういう関係なように思えます。
広登は劇場版の時点で「フェストゥムは憎むべき敵→フェストゥムにも戦わないといけない事情がある」と理解を深めていました。今回の遠征に参加したのも、人類にとっての希望だけでなく、フェストゥムが人類に与えている被害など不都合な真実も知る覚悟を持って参加したのだと思います。だから今の困窮した状況にも動じずにいられるのでしょう。
その点、暉は劇場版の時点でも、エクゾダス開始時点でも特に明確な思いは持っていませんでした。それが今になってフェストゥムを憎む段階に至ったのでしょう。これから先、広登と同じようにフェストゥムへの理解を深める可能性はあります。あるいは広登とは別の道に進むのかもしれません。

■エメリー
・今回の気になる描写は、エメリーがアザゼル型の共食いを知っていたことです。
エメリーの言葉通り、共食いアザゼルの発する思念を読んだだけなのかもしれませんが、それで相手が共食いしたから強くなってることまで理解できるのは都合が良すぎるように感じます。

・ここで気になるのが織姫の能力です。
乙姫とは違うとは言っていましたが、未だにどういう能力なのか明らかになっていません。今回、織姫もウォーカーの意識を読んでいました。「笑っている」と言っていましたが、織姫の能力は遠視ではないはずですから外見からの判断ではあり得ません。エメリーと織姫に符合する行動があることが気になりました。美羽ちゃんの”お話”のような、ただのフェストゥム由来の基本能力なのか、それとも…

■ジョナサンのテレパシー
・ジョナサンもエメリーのようにアザゼル型が暴れる様子を幻視していました。あれはいったいどういうことなのでしょうか?
あのアザゼル型とつながりがあるからなのか? それともジョナサンも将軍のようにミールの因子持ちで力が強まっているということなのか?
美羽のようにミールの力で急速成長していたとすると、ミツヒロ(父)は島にいたのにいつ生まれたのかという疑問は解消されるんですよね。

■カットの弊害?
・ビリーのお兄さんが非情に徹する理由をわかりかねています。
1話のハワイ戦でカットされた部分に関連するエピソードがあったのでしょうか?
まだ描かれていないから気にしなくていい部分なのか、もう描かれているはずの部分なのか、判断が付けられないため、もやもやします。ビリーの口から語られるか、ダスティンのモノローグ付きで少し回想でも入れてもらえると助かるのですが。



コメント

2 件のコメント :

  1. ひたすらに絶望が加速していき、もはや希望が見当たりません。

    例の無人機も、指揮官機となる有人機が必要となるようですし、犠牲がゼロになるわけではないようです。

    ノートゥング狙いでやってくる人類軍も居ますし、かなりやばいです。

    ダスティンは、シュリーナガル戦での描写から察するに同化された仲間による被害を直視し、トラウマになっているように思われます。真矢のような行動をする人間が次々と同化されていくと言っていたので、情けをかけたくてもかけられないように見えます。

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    1. 無人機と言っていたので、遠隔操作かジークフリード・システムで動かすのかと思っていましたが、指揮官機として誰か乗る必要があるみたいですね。これは意外でした。
      咲良機+剣司機(無人)で戦うのでしょうかね。

      狙っているのはノートゥングではなく、ザインだと思います。
      以前に竜宮島からの情報提供と、エルフとフィアーを回収しているので、ノートゥングモデルのデータは揃っているはずです。コアの変化と能力に関しては人類軍はまだ知らないはずですし、狙う理由がないと思います。

      理由はそうだと思います。以前にも書いたのですが、どうしてそうまで思い詰めてるのかダスティンの気持ちが読めないのです。
      同化された相手を倒すのは仲間を守るためです。しかし「仲間を守るために仲間を殺す」というのは矛盾を孕んだ思想です。同化されたのかもよくわからない相手を殺そうとすれば、相当な葛藤が生じるはずですが、ダスティンは既にそれを乗り越えているようです。そこまで思いきれる背景がわからずにいます。

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