『爆上戦隊ブンブンジャー』 第1話「届け屋のハンドル」:感想
■びっくりするほどまともなキャスティング
・ブンブンジャーのシリーズ構成は冨岡淳広さんです!
起用を聞いたときにはあまりにもまとも過ぎる人材選びに逆に驚きました。冨岡さんと言えば『イナズマイレブン』『ダンボール戦機』などレベルファイブ作品のアニメから『バトルスピリッツブレイヴ』や『ヘボット』など今でもアニメ自体に根強い人気を誇る作品を手掛けたホビー界のヒットメーカーです。
特撮では『ケータイ捜査官7』のシリーズ構成を担当されたことがあるそうですが、私は見たことないので出来栄えは知りません。
・SHT未経験でホビーものや通年のキッズ向け作品の経験者を起用しようと考えたら冨岡さんは筆頭に来る超ベテランです。誰だってそうする選択肢を普通に選んでいてびっくりしました。東映の上層部が一掃されでもしたんでしょうか?
普段は新規起用だろうがベテラン起用だろうが物を見るまでは信用する気がない私ですが、冨岡さんにはさすがに期待感を感じずにはいられませんでした。
■1話はオーソドックスな感じ
・1話は手堅い感じで大きなインパクトはありませんでした。全体的に戦隊らしいオーソドックスさに寄せることを意識してる感じがして、新鮮味は今のところありませんでした。
ただ、ドラマとドタバタ劇で30分も間が持つのはそれだけで充分な感じもしました。最近は従来のフォーマットを否定し過ぎて「とりあえず従来の構成要素を消してみたけど穴埋めできてない」というスカスカ感がかなり強かったのだなと実感しました。
楽しい!可愛い!かっこいい! とテンションを上げる要素だけでこれだけの構成ができてるのは「爆上げ戦隊」の名に恥じない印象でこれでこそホビーものという感じで清々しく感じました。
最近よくある人物が単純だの暗い要素がないとドラマの深みがないだの言うのもそれはそれで逃げだよなぁと実感しました。大事なのは”面白いかどうか”それだけですよね。
・最初の荷物になる花嫁と「ブンブンジャーって何?!」とツッコむ役を後でピンクになるキャラにまとめてあったり、
なぜかドレスにこだわるピンク→「お婆ちゃんの形見だから」と理由を明かして視聴者を納得させる→そこでレッドも納得してピンクの応援に乗り気になる。
と、話がまとまって無駄のない展開になっている辺りはさすが冨岡さんです。
■ちょっと合ってない気がする
・レッドの役者さんはあまり役柄に合ってない感じがしました。
脚本上では低音ボイスとかもっと見るからにハードボイルドな感じの演技が想定されている感じがしました。既存の戦隊で言うとゴーカイレッドの人みたいな。
カーチェイスもスピード感がなさ過ぎて迫力が無かったです。日常の普通の運転より遅いくらいに見えてしまいました。この辺は戦隊クオリティに本を合わせられていない感じです。
■悪役はちょうど良さそう
・悪役のほうは想定通りの仕様を発揮できてる感じがしました。
「なんかよくわかんないけどやっちまえ!」と呑気に応援するコミカルさとエネルギーを得るために人々を苦しめる悪辣さのバランスがしっかりしてると思いました。悪役らしさを出しつつもキャラとしての人気も得たいという欲張り意識をしっかり実現できていそうでした。
・ヤルカーが暴走扱いな辺りも「ヤルカーは悪くない」という扱いで許したいか、あるいは後で味方側の車になるんでしょうかね?
わざわざヤルカーを経由する怪人の巨大化設定といい、まだピンと来てない部分です。
・お婆さんのところで敵が止まるのは不思議でした。その前にボンボンたちを気にせず跳ね飛ばしてるから通行人なんて気にしそうもないキャラに見えたのですが。
レッドの車に気を取られていたから「車が急に止まった?! 何かあるのか?」と様子見で合わせてしまっただけですかね?
■スーツは思ってたよりずっと良い
・生身スーツはキービジュアルの時点ではわりと不安がありました。
飾り気の少ないシンプルなタイツに顔にデカいタイヤで大丈夫なのかなと思っていましたが、実際に動いているところを見たら結構良かったです。
・特に車に乗り込んでシートベルトが出てくる辺りはロボ操縦前提のスーツって感じがしてそこでかなりしっくり来ました。
車に乗るところでドライバースーツというモチーフが際立つのは悪くないアイディアだと思います。生身とロボ戦、どちらを引き立てるべきかと言えばロボのほうですからね。
・個人的には口元が結構仕事してると思いました。
レッドは戦闘中でも「ニヤっ」とした余裕のある感じに見えるし、ピンクは笑顔に見えたりと、動かない造形でも表情が感じられるところがシンプルなスーツ全体に足りてない深みを出せていて思いの外バランスが良いと感じました。
その路線で考えると、大きめの武器もシンプルなシルエットとの対比で武器の存在感が際立っているようにも感じます。
最初見たときはどうなることかと思いましたが、実際に見てみるとデザインの練り込みを感じてイケるんじゃないかと思えてきました。
・背中のタイヤも面白かったです。
背中にそんなデザインあったんだと思っていたら実体化してシールドになったり、そのまま敵を挟んで拘束したりといろいろ便利でアクション面で面白そうでした。
そんな機能があるかは不明ですが拡大解釈すれば「地面に倒されてピンチ!→背中のタイヤを走らせて倒れた体制のまま敵の攻撃を回避しつつ反撃!」みたいなシーンも作れそうです。
変形で用途を変える武器も好きですし、いろいろ楽しいアクションが見られると嬉しいです。
・一方、車に乗り込んだときのタイヤの扱いは困惑しました。「背中と足にタイヤが合計4つ有るなら背中を地面につければ車みたいに走れるのかな?」と思っていたら車に乗ったときに背中のタイヤが降りてきました。なんで座席に座るのにタイヤが必要なのでしょう? あそこはイメージがよくわかりませんでした。
■ブンブンジャーロボ
・操縦や合体形態はわりとイメージと違うものでした。
ロボ自体が意思を持ってて合体前からほぼそのままの形態なら、特に変形とかは無しでブンブンに武装として手足パーツを合体させて戦うのかなと思っていました。
その場合はレッドはどこに乗っているんだろうかと不思議に思っていましたが、普通にブンブン本体がトレーラーとして登場したりレッドが乗り込んだりしていました。
合体プロセスといい、この辺は私の頭の中でまだ整理しきれていません。トレーラーを開いて最後に空洞になってる中央に上から頭を刺しているようでしたがブンブンはどうなっているんでしょう?
・巨大戦は定番どころを意識しつつブラッシュアップされていて普通に良かったです。
信号や手を上げるなど戦闘中でも交通ルールを守ったり、巨大戦にまでちゃんとブンブンジャーらしさを徹底させようという心配りを感じられて安心しました。
・ジオラマとかは見慣れた光景なんですが、前2作が背景はCG多用であまりジオラマを使わなかったので個人的には新鮮味が感じられました。
1話だけあって小物や壊れ物も凝っていてクオリティも良かったです。倒れた拍子に振動で地面にあった車が飛び跳ねる演出は「ウルトラマンでよく見るやつだ…」とか思ってしまいました。
・作る要素はやや不自然に感じました。特に流れが感じられなくて「こんな遊んでる場合か?」と怪訝に感じてしまいました。
たとえば、ミサイルで街の被害が出ていて、
ブルー「先にあのミサイルから止めるぞ!」(ミサイルを分解する)
ピンク「止めればいいの?! じゃあ次はあたしがやる!(ケーキ型牢獄で動きを封じる)」
みたいな流れだったら違和感は少なかった気がします。
■残りの車はどこ行った?
・基地から「全員出動だ!」ってやったかと思ったら、3台以外は消えていて戸惑いました。
残りの車たちはどこで何してたんでしょう? 「出撃バンクを一つにしたかったから」って制作都合だと受け入れづらいです。
・ブンブン自体もキャラとしてはよくわかんないところがありました。
なんでカレーみたいなものを作ってたんでしょう? 依頼が終わった後に2人をねぎらうためかそれとも自分で食べるためか。
「来たるべき脅威のために地球に来たけど、いざ怪人が来るまではやることない居候だったからせめて家事を担当してる」みたいな真面目を物語る設定でもあるんですかね?
■敵デザイン
・敵デザインは漫画家の島本和彦さんだそうです。
ケーキ入刀ブレードにロウソクミサイル。恐ろしい形相で「結婚しろ!」と見境なく人々に襲いかかるウェディングドレスがモチーフの怪人はモチーフとの関連性がわかりやすく、アクションしやすい機能性もあって順当に良かったです。
最近は怪人も省エネ化ばかりが目立って、もう存在感すら無くなっていたのでそっちのほうも定番もしっかりやってくれることを期待したいです。
次回は今度は重要書類を運ぶ依頼のようです。
当分は依頼形式で仕事をしていたら敵幹部が乱入してくるフォーマットで進むんですかね。
初期5人のようですが2人がどう加入するのかが焦点でしょうか。オレンジは飴を食べてた人っぽいですが、ブラックは誰なんでしょう?
消去法で考えるとあの妙に目立っていた警察官さんですかね。モブもそれなりに目立ってくれるほうがブンブンジャーのノリには合いそうな気がするので個人的にはあの警察官もただのモブであってほしいです。
→2話感想
こんにちは。こんなに生き生きとした感想を残すowl さん、なんか久しぶりに見ました(笑)
返信削除やっとスーパー戦隊が、元の道に戻ってくれたという感覚です。
「声優だらけの毎回カオス!」「バトルシーン≪濃密人間ドラマ!」「大河級のファンタジー!」
とにかく、上記に述べたような史上初(ちっとも面白くない)要素のないようにブンブンを製作して欲しいです。
匿名さん、こんにちは。
削除そうですね。私もそう思います。
最近、事実以外は書くことがあまり無かったからですからね。久しぶりに個人的な思い入れを書くことができました。
ライダー戦隊って実写だけど文法や制約はホビーアニメに近いはずなのに、実写畑から子供向け作品の経験に乏しい人を連れてきてばかりだったのでようやく来たかという感じです。
返信削除ホビーアニメから連れてくるなら富岡さんは筆頭候補だとかねがね思っていたので久しぶりに素直に楽しみです。
普通に考えれば”即戦力”ならホビー畑から連れてくるのが順当ですよね。
削除冨岡さんなら戦隊もどうにかしてくれるんじゃないかと私も期待しています。
こんにちは。今回も楽しい記事をありがとうございます。近年の主さんのブログは「存在しないもの」の沿革を説明している、どちらかと言えば取り扱い説明書に近い記事が多かったので、文章を読んでいてこっちまでワクワクしてきました。
返信削除マイナスな質問になってしまい申し訳ありませんが、主さんが冨岡さんの作品で一番つまらないと思ったもの、或いは一番期待ハズレだったものがあったら教えてください。自分もこの作品には期待していますが正直SHTを信頼する恐怖がまだ拭えません。冨岡さんなら少なくとも昨今の著しく倫理観を無視した展開などは起こりませんかね?
匿名さん、こんにちは。
削除>近年の主さんのブログは「存在しないもの」の沿革を説明している、どちらかと言えば取り扱い説明書に近い記事が多かったので
そういう理解で合ってると思います。
見て感情が湧き立つものなら素直にそれを書けばいいんですけど、無い場合には書きようがないので「俺にはよくわからなかったけどわからないなりに何がわからないか書いていこう」という方針でやってきましたから。素直に書けるだけの内容があるなら私にとってもそれに越したことはありません。
>冨岡さんの作品で一番つまらないと思ったもの、或いは一番期待ハズレだったものがあったら教えてください。
最近だと『デジモンアドベンチャー:』ですね。昔のじゃなくてリメイクのほうです。
リメイクだし私はオリジナルのほうを見たことがないので元ネタがわかってない部分もあって冨岡さんの責任どうかわからない部分もありますが、全体はグダグダでしたし1話単位で考えても全然良くなかったのは冨岡さんのせいだろうと思います。最初からどうなるか見届けようと覚悟してなければ私も途中で見るの止めてました。
あとはバトスピシリーズの『サーガブレイヴ』や『赫盟のガレット』もWEB配信用で話数も少ないとはいえいまいちでした。露悪趣味に走りすぎた感じがしました。
私が記事にした中だと『究極銀河ゼロ』が悪いほうですね。個人的には好きなところもあるんですが悪いところも多いのでオススメはしません。https://owl0079.blogspot.com/2014/09/blog-post_24.html
>冨岡さんなら少なくとも昨今の著しく倫理観を無視した展開などは起こりませんかね?
「倫理観」の意味するところが不明瞭ですが、少なくとも悪事を肯定したりするような倫理観の無さは可能性は低いと思います。
主人公たちが報われないようなバッドエンドやビターエンドはありますが、「悪は悪。正義は正義」ときっちり分けるか、「どちらにも一理あるがどちらが正しいかは誰にもわからない」みたいに正しさそのものを不明にするかで憤りを感じるようなモラルの無さは考えにくいと思います。
ブンブンジャーはギャグ調っぽいので、たとえば悪の幹部たちが最終的に許されて「1話でボンボンたちを車で跳ねたのに無罪放免でいいのか?」みたいレベルの問題なら起こらないとも限らないと思います。
こんにちは。アルティメットゼロはブログ主さん的にはあまり合わなかったんですね。僕は割と好きだった作品なので驚きです。
削除匿名さん、こんにちは。
削除記事を読んだ上でそう定義されるなら私から言うことは特にありません。
あなたからすればそう見えるのでしょう。