『宇宙戦隊キュウレンジャー』 第12話 「11人の究極のオールスター」:感想

2017年4月30日

【ストーリー】

■ラッキー
・ラッキーに関する認識の溝が埋まらず、話の流れについていけませんでした。
自分は本当は不幸だけど幸運だと思い込もうとしている人間が、ガルにあんな無責任な言葉をかけられるのでしょうか? ラッキーという人物がわかりません。

・思っていたより過去が軽かったことが意外でした。
あれなら目の前で一族を皆殺しにされたガルのほうが不幸だと思います。小太郎も子供の頃に焼きだされたという点では似たようなものですし、あの世界では戦いで家族や住むところを失った子供なんて珍しくないように思えます。釣り合いが取れていない感じがしました。

・そもそも「実は幸運じゃなかった」という展開自体が、ラッキーは最初から幸運に見えなかったので今回の種明かしに意外性を感じませんでした。
ガルと司令が出張ってきたときにはてっきり「ガルが信じたのは君のラッキー(幸運)じゃない、逆境にも恐れず立ち向かう君自身なんだよ、ラッキー」なんてラッキーの意味が逆転する展開でも来るのかと思いましたがそんなことはありませんでした。こういう展開をやろうにも、ラッキーにはその裏付けになる成果や行動力がないので厳しいですね。

・勝手に落ち込んで特に根拠もなく勝手に立ち直った印象で、個人的にはますますラッキーのことが信用できなくなりました。
ラッキー自身の実力とただの幸運、どちらにも寄せずどちらも切り離さない姿勢はまだまだ好きになれそうもありません。論理面でも感情面でも展開がぶつ切れになって、ラッキーのキャラよりもご都合主義感のほうが強く出てしまうように感じます。

■イカーゲン
・「骸骨の目で見ていると思ったら吸盤状の飾りが全て目だった」という展開は意外性と納得感が両方あって良かったです。骸骨の目だけだと死角があるような?と不思議に思っていたのであの種明かしはしっくり来ました。

・倒し方は残念極まりなかったです。
「目が10個だから11人で攻撃すればきっと倒せる」と11人に理由をつけてきたかと思っていたら、ラッキーの唐突な双子キュータマのゴリ押しで倒してしまいました。あんなことができるなら「最初からやれよ!」と思いますし、11人の意義が否定されたことで「9人の救世主」、「9人集めれば宇宙を救える」と根拠なく言っていることが余計にうさんくさく感じてしまいました。

・お話としてもどうしてラッキーが立ち直ったら双子キュータマでゴリ押しすることになるのかがわかりませんでした。
今までワンマンなペースだったラッキーが「みんな、俺といっしょに世界を救ってくれ!」と言って、11人で団結して倒すほうが収まりが良かったと思います。目の種明かしがあるので「11人なら倒せる→間違った考えだから無理→無理だけどこの11人なら無理じゃない!」という流れなら「キュウレンジャーが集まれば宇宙を救える」という話に説得力を持たせられたと思います。
全体的にバトルとしてもストーリーとしてもダメな展開だったと思います。


【アクション】

■リュウテイキュウレンオー
・背中はどうなってるんだろうと疑問に思っていたら予想以上にくっつけただけでした。十字やX字に開くとか何もないんですね。

・重そうだから動きには期待していなかったのですが、演出も特になかったのは残念でした。いつもの戦闘と大差なくて1クールのクライマックスとしては物足りなかったです。リュウテイキュウレンオーよりも余った3機の活かし方のほうが印象に残りました。


次回は早速スティンガーの兄と絡みだしそうな雰囲気でした。
1クール終わったところで例年なら本筋と関わりの薄い個人回やギャグ回が入るところですが、キュウレンジャーは相変わらずのハイペースで進むようです。
それ自体は捨て回を作るより良いと思います。ただ、脚本の練り込みが足らないように感じるところがいくつもあるので、他の脚本家を挟んで考える時間を確保したほうが良いのではないかと思うところもあります。次回も毛利さんの連続登板は続くようですが、少し休んだほうが良いと思います。


コメント

8 件のコメント :

  1. 名無しの星2017年4月30日 11:59

    お久しぶりです。ここのところ特撮へのモチベーションが上がらなくてコメントを書けなかったですが、そちらの感想は毎回拝見はしてます。
    今回はラッキーについて私も思うところがあったので書かせてもらいます。
    私自身もそちらの仰るとおりラッキーが幸運持ちな男と思いづらかったです。
    過去に私がやってたギャルゲーのヒロインに強運持ちがいてくじ引きで1等賞を当たり前にしかも何度も引いたり、投げたコインが全部表か裏になったりとあり得ない確率を引くという娘でした。ただそれと同時に凶運持ちでもあったため火事がないのにスプリンクラーに何度もみまわれたりと極端に悪いことも起こる娘でもありました。作中でついてる時はとことんついてるけど、ついてない時はとことんついてないと言われてました。
    ラッキーの場合だとそのあり得ない確率を引いたりと幸運持ちだと思わせる場面が極端に少ないのでラッキーなのかアンラッキーなのかと言われると何も返しづらいんですよね。
    上記で言ったヒロインやラッキーマンを見たからこそラッキーは幸運持ちというには描写が足りなかったかなと。

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    1. 名無しの星さん、お久しぶりです。

      >ラッキーの場合だとそのあり得ない確率を引いたりと幸運持ちだと思わせる場面が極端に少ないのでラッキーなのかアンラッキーなのかと言われると何も返しづらいんですよね。

      幸運な描写が少ないことが厳しいですよね。
      司令や仲間はやけにラッキーの幸運を評価しているので視聴者との気持ちにギャップが生じていると思います。もっと運の良い描写を増やしつつ、ところどころに「今のは幸運じゃなくて実力のおかげじゃない?」と引っかかる描写があれば流れがスムーズになっただろうにと思いました。

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  2. キュウレンジャーのガバガバなところと、盛り上がればいいんだよ!みたいないい意味での単純さの両方が見られた回でした。
    ただ、11人もいるメインキャラを丁寧に扱うのは大変ですし、短所を改善するのではなく逆に開き直って勢いを強化する方向で突き進んだほうがいいんじゃないかと思います。

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    1. >ただ、11人もいるメインキャラを丁寧に扱うのは大変ですし、短所を改善するのではなく逆に開き直って勢いを強化する方向で突き進んだほうがいいんじゃないかと思います。

      はい、私もそのほうが無難だと思います。
      11人というのはあまりにも多いです。ここ数年の戦隊では追加込みで6人制でも脇役の個人回は一人あたり4回程度しかありません。それどころか抱き合わせにされたり、メインストーリーのおまけだったり、脇役の出番は減少傾向にあると言えるでしょう。これを11人でやるのは常識的に考えて無理です。そして今のところ不可能を可能にするほどの実力をキュウレンジャーからは感じていません。

      最初からグループに分けてセットで扱うとか、個人は捨ててキュウレンジャー全体を追求したり、あるいは1話ごとの盛り上がりをひたすら追求するなど個人に焦点をあてない構成のほうが実効性がまだ有ると思います。

      しかしこれがシリーズ構成の毛利さんに合うかというとそれも疑問です。
      一つ一つ積み重ねていくような地道なお話を作る人というイメージなのでこれはこれで毛利さんにできるのか疑問があります。個人的な印象としては、これまでのキュウレンジャーはどうにか個人を立てようと話の隙間に無理に突っ込んでは失敗している印象です。

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  3. >自分は本当は不幸だけど幸運だと思い込もうとしている人間が、ガルにあんな無責任な言葉をかけられるのでしょうか?

    仰る通り、ラッキーがまだ自分で自分の幸運を試す段階だったと言われると序盤で自信たっぷりに他人を振り回していたことと、その流れのまま周りから信頼を置かれていたことがやや納得し難いです。
    あと、当のガルなんですが…ラッキーの説得役としては最も適任だと思うのですが、「ラッキーに絶大な信頼を置いている」という面だけひたすら推されてどういう心の過程でそうなったのか未だに分からないせいで言動が全然心に響いてこないんですよね。口調の不安定さはもう諦めましたが、ラッキー信者だという印象しかないのでメンバー内で一番見ていて面白くないです。もっとラッキーと二人で絡む場面があればマシだったと思います。
    ところでラッキーとの特別な関係といえばペガさんはどうしたんでしょうか…?

    >あんなことができるなら「最初からやれよ!」と思いますし

    前回のエグゼイドのリプログラミングでも同じことを感じたのですが、ひょっとして「視聴者からの〝なんでそれ使わないの?〟というツッコミ」を避けるためなんじゃないかと思いました。ただ今回の場合は使ったら「野暮」な展開だったのではと思います。水戸黄門が最初から印籠を出さない、変身中に攻撃しないというような、実行したら展開として面白くないだろうという部類です。そこを外すことがキュウレンジャーの個性というべきなのでしょうか…?

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    1. >あと、当のガルなんですが…ラッキーの説得役としては最も適任だと思うのですが、「ラッキーに絶大な信頼を置いている」という面だけひたすら推されてどういう心の過程でそうなったのか未だに分からないせいで言動が全然心に響いてこないんですよね。

      同感です。
      「お前を信じたから俺はここまで来れたんだろうが!」とか、「俺より先に死なないって言ってたのは嘘だったのか?!」とか、もっと感情をぶつけてほしかったです。ついでに今のガルの心境と変化を描いてくれればなお良かったです。

      >ところでラッキーとの特別な関係といえばペガさんはどうしたんでしょうか…?

      腰を痛めたので休養中です(嘘)。ペガさんもビッグベア総司令もどこにお出かけしてるんでしょうね…

      >実行したら展開として面白くないだろうという部類です。

      ここが問題ですよね。
      流れにそぐわなくて単純に面白くなかったです。せめて事前に「多重分身は危険で失敗する可能性が高い」という前提を作っておけば、「ラッキーが自分の運を信じる」という直前の流れにつながったのにと思いました。

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  4. ラッキーが本当に幸運の持ち主なのかそうじゃないのか、なんだかよく分からなかったです。
    「よっしゃラッキー!って叫び続ける!」みたいな気の持ちよう話に落ち着けましたけど、キューレットで今まで毎回赤が出ていたのは気の持ちようと関係ない偶然のはずなので、それってつまり強運ってことになりますよね・・・?
    じゃあ前回今回とラッキーがアンラッキーだったのも全部偶然? イカーゲンにボコボコにされて落ち込んで消極的になっていたから? ラッキーの幸運をどう解釈すればいいのか、さっぱり分かりませんでした。
    気の持ちようで済ませるなら済ませるで、「そうか、イカーゲンにボコボコにされたのも、キューレットが外れたのも、結果的にはラッキーだったんだ!」とアンラッキー展開をひっくり返して解釈して呆れられる、くらいのオチはつけて欲しかったです。

    本作って作品のテーマに幸運が絡んでないのに、戦闘の決め台詞に「お前の運、試してやるぜ!」「グッドラック!」をもってきてるのも、変な感じがします。
    ジュウオウジャーの「この星を舐めるなよ!」は物語として筋が通ってる使い方だったり、「俺たちを」みたいなバリエーションもその回限りの燃える使い方だったりと楽しかったのですが、本作はただ言っているだけ感が半端ないです。

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    1. >「よっしゃラッキー!って叫び続ける!」みたいな気の持ちよう話に落ち着けましたけど、キューレットで今まで毎回赤が出ていたのは気の持ちようと関係ない偶然のはずなので、それってつまり強運ってことになりますよね・・・?

      「自分はツイていると信じることで運を呼び込む」というやつなのだろうかと思いました。
      しかしこの考え方も難点があります。話のきっかけになったラッキーが占いを外したりし始めたことと関連性がないことです。「ラッキーが自分の幸運に疑問を持った/自信をなくした途端に占いやキューレットが外れるようになった」という流れなら一貫性があるのですが、逆なんですよね。「不運に襲われても自分の幸運を信じ続ける」なんて話でもありませんし、私も全体の流れがよくわかりませんでした。

      >本作はただ言っているだけ感が半端ないです。

      そうですね。全然板についていないと思います。
      むしろ言葉が浮いていて、どういう価値観から発せられたものなのかと首を傾げることのほうが多いです。フレーズに深みも与えられず、キャラをコンパクトにわかりやすく表現することにもつながっておらず、口癖関連は今のところは失敗していると思います。

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