『仮面ライダーエグゼイド』 第28話「Identityを超えて」:感想

2017年4月23日

■ドラマのないドラマ
・今回はびっくりするほど葛藤も何もありませんでした。
ポッピーは状況に流されるだけで心の弱さに驚かされました。CRにいた頃は自分の考えを押し付けるタイプでしたが、本当のポッピーは人に言われたらそうだと思い込んじゃうタイプだったんですね。
永夢は「ポッピーはこういうキャラだから。俺が知っているポッピー(しかもそれはプログラムされた行動)はこうだから」と自分の考えを押し付けるだけで何も進歩なし。飛彩たちもバガモンや前回戦ったばかりのラブリカの例もあるのに「倒すしかゲームクリアーの方法はない」と思考停止。挙句に解決策はずっと抜かずにいた天下御免のリプログラミング様。
どこを切り取っても酷い展開でした。こんなゴリ押しであっさり終わらせるならポッピーが敵として現れた時点でやれば済んだ話だと思いました。

・提示された要素だけでも、
飛彩はポッピーを救えるかもしれないという可能性を喜ぶ。しかし既にゲーム病の患者が発生している以上、曖昧な可能性に患者の命をかけるわけにはいかないと医者としてポッピーを倒す決断をする。
永夢は患者の命もバグスターの命もどちらも救う医者でありたいと考え、ポッピーも患者も救える道を模索する。
二人は対立し戦うことになり、正気に戻ったポッピーはその様子を見て嬉しいと思いつつも自分が誕生するために奪った命について悩みを深める。
なんてドラマが容易に作れたと思います。
更に大我も絡めるなら「患者を死なせた医者」であることを活かして、「死なせたことを後悔するよりこれから救える命のことを考えろ」と諭すこともできるでしょう。
ドラマもなく、バトルや販促に力を入れるわけでもなく、まるで納得のいかないお話でした。

・次回への前フリも酷かったです。飛彩が話の流れに沿うことに急に興味を持ち始めることには慣れましたが、飛彩の背後にある操り糸がいつも以上に一段と丸見えでげんなりしました。
「なぜかパラドは永夢との勝負にこだわっている…」ってそんなこと1クール目の時点から見え見えだったでしょうに。パラドが何回「俺と勝負しようぜ、永夢」と言ってきたと思っているのでしょう。こんな疑問点の入口からスタートしたのに、今回のラストでは「パラドは永夢に何かしようとしていて危険だ」と展開を予期できるまでになったことが不思議でしょうがありませんでした。

■諸悪の根源
・個人的には永夢が何も変わらなかったことが辛かったです。
前回の次回予告の時点では、ポッピーは一応ヒロインだから永夢が自分の考えを相手に押し付ける悪癖が改善されるきっかけになるかと期待していました。しかしそうはなりませんでした。
「ポッピーはそういうキャラじゃない」とパラドに対して言ったときには、ポッピーから「キャラって何?! 私は私だよ、ゲームの登場人物なんかじゃない!!」と反発が来て永夢が考え始めるきっかけになるかと期待したのですが、ポッピーは納得してしまいました。「Identityを超えて」というより、アイデンティティを無視する話に見えました。

・相変わらず永夢の考え方がわかりませんでした。
対話を試みたこともないのに一方的に敵味方を切り分ける根拠はどこにあるのでしょう?  自分の考えを押し付けるにしてもリプログラミングがあるのですからバグスターから人間への敵対心を無くせば穏便に済ませられると思います。

・私の印象では無茶苦茶やってるパラド側にいくらかの正当性を感じてしまうのは永夢が主な原因だと思います。
恣意的に殺していい相手と殺しちゃいけない相手を選り分ける敵対者がいるなら、殺される側のバグスターが「じゃあ俺たちも好き勝手に人間を殺してもいいよね」と言っていても反論できません。
次回予告の感じだとパラドは永夢から生まれた存在のようでしたが、元々予想がつく内容だったという点を除いても意外性はありませんでした。大元が永夢ならパラドの言動がおかしかろうが納得がいってしまいます。


次回はパラドの強化フォームが登場するようです。
今回マキシマムでパラドを圧倒していたことはどう落とし前をつけるのでしょう? このままだと次回以降「あのときマキシマムでパラドを倒しておけばこんなことにはならなかったのに」と言われてしまいます。

コメント

12 件のコメント :

  1. 基本的にこの作品のキャラクターたちは、目の前で何か問題が起きると、それにばっかり意識が向いて、いままでの経験や知識と結びつけて解決策を探ろうっていう風に考えられないのでしょうね。観てるこっちが「こうすればいいのでは?」思うことをやらなかったり、やったとしても妙に間が空いたり。しょっちゅう違う脚本家さんが参加して、かつ意思疎通が上手く図れていない作品だとこういう事態はよく見られますが、これ一話からずっと同じ人が書いてるんですよね…

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    1. >しょっちゅう違う脚本家さんが参加して、かつ意思疎通が上手く図れていない作品だとこういう事態はよく見られますが、これ一話からずっと同じ人が書いてるんですよね…

      そこが信じがたいところですよね。
      間に別の脚本家の回が挟まるなら、「急に前にやった話の続きをやったと思ったら前の回の脚本家さんが再登板していた」とか、「メインストーリーがようやく進んだと思ったらシリーズ構成の回だった」なんて事態はよくありますし、理解もできます。どうして同じ人がずっと書いているはずなのに、こんなに前フリがない唐突な展開が続くのでしょう。

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  2. 医者=命を救う、尊ぶ職業がテーマである作品において、人の命を奪って誕生しておきながらろくすっぽドラマのないヒロインてなんなんでしょうね
    そろそろ登場人物の考えに変化が生じるのかと思っていましたがそんなことはありませんでした。
    むしろ、まだまだ伸びしろを期待する余裕のあった最序盤の方がマシなくらいですね

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    1. >医者=命を救う、尊ぶ職業がテーマである作品において

      どうもエグゼイドって命については関心が薄いみたいなんですよね。既に亡くなった人やリスク、予防措置などについては一向に触れる気配がありません。
      「異常な状態(バグ)を正常に戻すのが医者」という定義なのではないかと思うことがあります。

      >むしろ、まだまだ伸びしろを期待する余裕のあった最序盤の方がマシなくらいですね

      もう28話が終わりましたからね…
      九条が殺されたり、自分のゲーム病のことを知ったり、ポッピーが敵になったり、イベントはあったはずなのですが特に永夢の人格は変わっていません。スタッフに変える気はないのでしょうね。

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  3. 飯島さんの永夢とMの演じ分け、いまだに馴染んだように感じられず見ていて恥ずかしくなることがあるのですが、今回の素面でMの演技(振り?)をするところと、パラドと融合したところ、正直辛かったです。特にパラド人格の部分は全然パラドっぽくなくて、申し訳ないと思いつつ笑ってしまいました。
    平成ライダーだけでも人格変化演技はたくさんあるのに、もうすぐ30話という段階まできて主人公の演技が辛いのは初めてです。

    そういえば、グラファイトが黒鉛、パラドが水銀と銀の合金という幹部に対して、永夢の水晶(石英)という対比が序盤にはありましたが、永夢とパラドが同じ存在のような展開になると、その配置が完全に無意味になりますね。

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    1. >飯島さんの永夢とMの演じ分け、いまだに馴染んだように感じられず見ていて恥ずかしくなることがあるのですが

      私は未だに今しゃべってるのが永夢なのかMなのか、演技だけでは見分けられません。今回のあれも永夢がMのふりをしているのか、しゃべってるうちにMの人格が出てきたのか、永夢が悪ぶるとMっぽく見えるのか、どういう意味だったのか判断がつきません。

      演技自体は下のほうだと思います。基本的にSHTの役者さんは演技がいまいちで当たり前だと思っているので言及しませんが。
      エグゼイドに関しては永夢という役柄自体が難しいせいもあると思っています。アニメや漫画なら有りですが、実写に落とし込むのは相当大変だと思います。

      >グラファイトが黒鉛、パラドが水銀と銀の合金という幹部に対して、永夢の水晶(石英)という対比が序盤にはありましたが、永夢とパラドが同じ存在のような展開になると、その配置が完全に無意味になりますね。

      パラドも合金だったんですか。知りませんでした。
      私も今のところ、ネーミングの物語上の意味を感じたことはありません。ゲームと医療といった基本的モチーフすら怪しいので無理じゃないかと思っています。

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  4. 相変わらずドラマのために主人公以外がおかしくなる流れですね……。バガモンのことを忘れて「倒すしかない」と言う飛彩、明らかに戦意を喪失しているのに躊躇うなどの反応一つ見せない大我&ニコ、音ゲーしてないのにクリアできる音ゲーなど……。主人公の言うことを持ち上げるために他キャラに極論を言わせるのは何回めでしょう。今回だって「ベルトを奪って無力化してからCRで保護する」という折衷案くらい誰も思いつかないのでしょうか。
    来週は永夢とパラドが同一の存在という事実が明かされるのでしょうが、人格変化やらマイティブラザーズやら、ポッピーがバグスターであるという告白もそうですが、諸々の問題を終わらせずに放置してきたことを今さら持ち出されても困ります。

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    1. >音ゲーしてないのにクリアできる音ゲーなど……

      クリア条件は謎だらけですよね。
      バガモンのときはまだ「ハンバーガーを食べて満足させる」というゲームのプロセスを踏んでいましたが、今回はただの説得で満足させたらOKでした。ポッピーはいつの間にかときめきクライシスのバグスターに変わっていたのでしょうか? そこはせめて「ドレミファビートを使って音に気持ちを乗せて説得する」とかやればいいのにと思いました。

      条件付きでもラブリカやニコから生まれたリボルのように条件を満たさない通常攻撃を無効化するバグスターもいれば、バガモンやポッピーのように通常攻撃で殺すこともできるらしいバグスターもいます。終わってみないとクリア条件がわからないのはバトルものとして問題だと思います。

      >今回だって「ベルトを奪って無力化してからCRで保護する」という折衷案くらい誰も思いつかないのでしょうか。

      リプログラミングだってあるのに不思議ですよね。
      「生きてるだけでウイルスをばらまく危険な存在である」とでも言うなら積極的に殺そうとするのもわかりますが、今までポッピーは無害という扱いで放置してましたし…

      >諸々の問題を終わらせずに放置してきたことを今さら持ち出されても困ります。

      私もここが良くないと思います。
      後に引っ張るなら合間合間にもう一度前フリしなおしたり、ミスリーディングで解決したように見せかけたり、やるべきことがあると思います。「登場人物がそれまで考えたことがなかったから」という理由はダメだと思います。

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  5. 今回で一番困ったのは、「なんでポッピーが敵方にいるのか?」が分からなくなったまんま元通りになっちゃった所ですね。
    最初は当然、社長に洗脳されたからだと思っていたのですが、前回ラストあたりから、割りとはっきりポッピーの意思がある?という描写が見られ、見てる方も混乱してしまいました。
    ちょっとありきたりですが、社長による洗脳で押し通していれば、「音ゲーなしでクリア扱いになったのは、意識が「ときめきクライシス」の能力で支配されていたので、説得でクリアできた」という感じで、特に違和感がなかったのですが。(直前にドレミファビートでクリアを試みるも、洗脳のため通じなかった!的な描写があればなおよかったですね)

    今作で一番びっくりなのは、大量に美味しい話が作れそうな素材が転がっているのに、出来上がった料理はこれかい!?という点ですね。毎回毎回、悪い意味で驚かされます。ゲーム、医者、命。組み合わせ方は多数あるはずなのに特に組み合わせてる工夫もないし、組み合わせもメチャメチャ。ホントにプロの脚本家?と疑います・・・

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    1. >最初は当然、社長に洗脳されたからだと思っていたのですが、前回ラストあたりから、割りとはっきりポッピーの意思がある?という描写が見られ、見てる方も混乱してしまいました。

      私はバグスター側にいたのは洗脳されたからだと思っています。
      人間に対する意識が生まれた理由は謎です。作中で提示された要素からすると、考えられる可能性は2つだと思います。
      1)消したはずのCRにいた頃の記憶が次第に戻っていった。
      2)ポッピーは元々人間に好意的なゲームキャラクターとして設計されているから。

      ですが断定するほどの物証は特にありません。「バグスターとはどんな存在なのか」が何もわかっていないからです。
      まずパラドの言っていた「セーブデータを消した」というのがどれほどの効果があるのか謎です。
      パソコンなら消しても残滓からデータをサルベージできることもあります。バグスターの記憶とラブリカの初期化がどの程度の効力を持つのかわからないので、ポッピーが元の人格に戻ったのが当然の結末なのか奇跡なのか判断できません。

      「バグスターのゲームキャラに由来する部分」も謎です。
      行動理念を「そういうキャラだから」と説明されたバグスターもいますが言動の全てがキャラ設定に依存しているのかは疑問です。人間に対する敵意や完全体になりたがる生存本能のように見える行動からは人格を感じます。
      しかしそれすらも不可解な点があります。パラドに従う理由が見当たらないことです。恩義があるわけでもなさそうですし、パラドの掲げる現状の人間狩りに共感しているようにも見えません。
      もはやいっそ「バグスターの悪意も全てパラド(黒幕?)が後からインストールしたもの」と投げやりにまとめたほうがすっきりしそうなくらいです。

      この上更にポッピーに関しては「リプログラミング」があります。
      「正常化したように見えるのは永夢がリプログラミングで自分のイメージするポッピーをポッピーピポパポに植え付けたから」という可能性すらありえます。
      バグスターもリプログラミングもラブリカの記憶操作も何ができて何ができないのかわからず、説明済みの確かな設定が見当たらないので特定しようがありません。

      >社長による洗脳で押し通していれば、「音ゲーなしでクリア扱いになったのは、意識が「ときめきクライシス」の能力で支配されていたので、説得でクリアできた」という感じで、特に違和感がなかったのですが。

      今回の流れなら、ときめきクライシスのゲームクリアー扱いのほうがまだ納得がいったと思います。

      >今作で一番びっくりなのは、大量に美味しい話が作れそうな素材が転がっているのに、出来上がった料理はこれかい!?という点ですね。

      組み合わせ方は本当に謎ですよね。
      他の脚本家も交えた共作なら噛み合わせの悪さや回収されない要素もわかります。しかし今のところ一人で書いているのに物語の中枢たる全体の流れや見せ場すらもしっくりきません。普通に考えたら、ポッピーがバグスターであることを1クールで適当に処理した時点で今回の話はもうやれないしやらないと思います。

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    2. >考えられる可能性は2つだと思います。
      1)消したはずのCRにいた頃の記憶が次第に戻っていった。
      2)ポッピーは元々人間に好意的なゲームキャラクターとして設計されているから。

      確かにどちらも考えられますね。問題なのは、それを示唆するシーンが何もなく、いきなりポッピーが苦悩しだした事です。
      本編では結局「リプログラミング」であっさり解決してしまいましたが、リプログラミングは「解決の手段」でなく「解決のきっかけ」にとどめておけばよかったのではないでしょうか。例えば以下のように。

      ①リプログラミングを行ったが、洗脳は解けずポッピーはその場を去る
      ②しかしリプログラミングのため洗脳に影響が出て、ポッピーの自我が少しずつ蘇りはじめ て苦悩しだす
      ③その次の戦闘で、「説得」によって完全に洗脳が解ける

      こんな流れですと、「最初からリプログラミングやればいいじゃん!」という突っ込みも回避できるし、社長の恐ろしさも垣間見えますし、ストーリーも盛り上がったのでは?

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    3. >本編では結局「リプログラミング」であっさり解決してしまいましたが、リプログラミングは「解決の手段」でなく「解決のきっかけ」にとどめておけばよかったのではないでしょうか。

      そういう流れのほうが適切だったと思います。
      個人的には焦点がブレている感じがしました。ポッピーの苦悩を描きたいなら永夢のリプログラミングなんてせずに、CRで人を救った経験とバグスターのバックグラウンドで悩むほうが良かったと思います。そのほうが永夢の説得も有効に働いたと思います。

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