ケモノ系女子高生の日常 『セントールの悩み』1巻:感想

2012年6月4日
村山慶『セントールの悩み』1巻を読んだ。
セントールの悩み 1(リュウコミックス)セントールの悩み 1(リュウコミックス)
(2011/11/30)
村山 慶

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■あらすじ
ケンタウロスのヒロインとその友達を中心にした極普通の亜人の女子高生の日常を描いたマンガ。登場人物全部亜人なのが最大の特徴。
タイトルにもなってるヒロインの人馬(ケンタウロス)を始め、竜人、角人、翼人、長耳人。それに蛇人。1巻では登場してないけど両生類もいるらしい。
Centaur (2)Centaur (3)
左から主役の角、人馬、竜。クラスメイトの翼、角、角。

こういうと絵柄重視のように思えるけど、作者が描きたいのは世界観。それとと女子高生のほう。単行本では1話ごとの間の空きページでは翼人の着替え方やケンタウロスの靴(スリッパみたいなゴムの蹄鉄!)などなど生活に根ざした設定が紹介されている。ケンタウロスが日本では流鏑馬やってる武士階級なのに対し、西洋では馬替わりの奴隷にされてたり歴史背景まで考えられている。学校の椅子やトイレもユニバーサル仕様で作られてたり、設定をちゃんと物語に落とし込めてて、設定のための設定や物語のための唐突な設定にはしてない。やりたいことをきちんとやりながらも、きちんとまとめてある。作者さんのこういう姿勢が好きだなぁ。

もう一つのやりたいこと、女子高生のほうもなかなか。
1話(読み切り用だけど)からしてもう女子高生パワー全開。ヒロインが男子生徒に告白されて何か不安がってると思ったらその理由が「自分のアソコがグロかったらどうしよう?」だもの。姫という呼び名がよく似合う清楚なヒロインの乙女チックな不意討ちにケモノマンガ→女子高生の日常へと意識がシフトさせられた。その中にも翼人と人馬のハーフだと奇形が多いとか関連設定も盛り込んであって、1話だけでこのマンガの楽しみ方が伝わった。
わりと卑怯なやり方ではあるけど、この1話がなかったらしばらくどこがメインなのか掴めなかったと思う。
買い食いしたり、ヒロインとは別個に友達がちょこちょこクラスメイトと絡んでたり、高校生らしい雰囲気が出てる。脇役キャラでも女子らしく自分の外形にあった髪型やアクセサリーをつけてるのも一役買ってると思う。

■ケモノについ
100%ケモノ!なわけではないけれどメイン要素なのは間違いない。ケモノらしいケモノはわりと少なく画面上の2割ほど。明らかにケモノなケンタウロスはヒロインとその家族くらいしか出ない少数派扱いで、他の種族は角人を除くと意外と薄め。竜人はしっぽが矢印型で羽が黒塗りだから竜というより小悪魔に見える。

でも多数派の角人は良い趣味してる。山羊の角みたく螺旋状なんだけど生え方がいろいろある。闘牛のようなつき出すタイプに、山羊のような後頭部から巻き付くタイプ、真横に伸びたタイプと千差万別。山羊系ケモナーには垂涎の光景が広がっています。ユニコーンのような一角タイプまで含めて”角人”と分類したのは上手だと思う。
ケモノの必須要素”耳毛”ももちろん完備!それも猫っぽい艶やかなのではなく、収穫期の羊みたいなちょっとゴワゴワした感じ。すごく生活感があって良い。耳掃除のシーンがどうなるのか今から期待してる。
馬の四肢の躍動感もしっかり描き込んであって、作者さんは本当にケモノが好きなんだなぁ~と読んでてほっこりしてしまう。
Centaur (4)
個人的には子供のほうが可愛く見える。たとえばケンタウロスだと大人サイズで描くとどうしても横幅が大きくなってしまう。全身を入れるには単独カットか、引き絵でないと出せない。それだと友達との距離感が出せなくなってしまう。その点、子供だと無理なく全身を入れつつ他のキャラと共演できる。それに子供のほわほわ感がすごく良い。2巻以降は姪っ子とかおチビも出てくるみたいだから楽しみでしょうがない。

■ケンタウロス
Centaur (5)
メインのケンタウロスはこれまで良いなとけど考えが変わった。
人形の上半身と馬の下半身という単純な置き換えだけじゃなく、前脚と後ろ脚の異なる動きを見せられる。
お淑やかに前に揃えた前脚と正反対に躍動感のある後ろ脚があんなに魅力的だったとは知らなかった。脚を横たえるとまた良いんだ。前脚は身体と同じラインで普通の人間と同じようなんだけど、そこに横たえた胴体?と後ろ脚がついてくる。清楚な感じと崩した姿勢が同居していて、アンバランスな感じなのに整った印象を受ける。

他の亜人と違って全体像が大きく異なるから絵柄に異質感を与えてくれる。主人公の存在を際立たせると同時にアクセントとして全体を引き締めているから作品としても重要な存在だね。
マンガとしては新人らしさとチャレンジ精神が良い感じ。画力はまだ足らないけど、それでも枠線またいだ躍動感溢れるジャンプとか構図はがんばってると思うな。実力がついたときが楽しみだ。変に無難に行くより将来性を感じさせてくれる。
ケモノに興味がある人だけじゃなく、そういう初々しさが好きな人にもオススメしたい。


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