『ひろがるスカイ!プリキュア』:第一印象

2023年3月7日
『ひろがるスカイ!プリキュア』を5話まで見た時点での感想です。


■ひーろーがーるプリキュア
・タイトルを最初見たときには「ひろがる」とは何のことだろうかと思いましたが「ヒーローガール」をもじったものでした。実態を知った後だとどちらかというと「スカイ」のほうが意味の薄い形容詞のように感じます。
ヒーローガールのタイトルどおりにヒーローものを第一義にした作風だと感じています。誰かを守る、悪と戦う。そんなヒーローの活躍と心境に寄り添う展開が続いています。コンセプトがはっきりしているので現状はかなり見やすいです。
シリーズ構成は金月龍之介さん。ヒープリでまともな脚本を書いていた人、あとは昔のUFOテーブル作品で見かけた人という印象です。プリキュア以外で経験のある人だけあってエンタメとストーリーとバランスが取れていて危なげなく進んでいる印象です。
プリキュアとしては珍しくシリーズ構成回が多いです。5話中4話を登板しています。今後も登板が多いのか、非シリーズ構成回がどの程度のクオリティになるのかが未知数です。

・1~3話はわかりやすくまとまっている一方、少し物足りなさを感じるところもありました。
わかりやすさとトレードオフになるので理解はできますが、個人的にはもう少し話を詰め込んであるほうが好みです。
3話冒頭で出てきた初登場のマシロの両親の話が、3話最後でエルちゃんと両親のやり取りを見たマシロの両親への思いにつなげられて「え、そこつなげるの?」と理解はできるけど個人的には想定外の繋がり方をして困惑したこともありました。思わぬところでハイスピードな展開が来るとスタッフとのズレにぎょっとします。

・4話までは個人的にはしっくり来ない流れがいくつかありましたが、5話はとても良かったです。
4話で初変身した二人目のプリズムと正式にペアを組む話でここまでの4話の内容に絡んだ総決算のような内容でした。
真っ直ぐだけど少し影があるように感じた主人公の「初めてできた友達が戦って傷つくのが怖いからこれからも一人で戦いたい」という不器用な思いやりと不安。
それに対するマシロの「じゃあ友達止める! これからはパートナーってことにしよう!」という理詰めな見当違いな発想から「私だってあなたに傷ついてほしくない。だから一緒に戦いたい」という率直な気持ちの発露。
ここまでの4話でやってきたことが裏打ちになっていて説得力がありました。特にマシロの優しさは4話で初変身する流れで長所として持ち出されたときにそんなに格別優しい印象はないんだけどなぁと個人的にはピンと来ていなかったので、なるほどマシロの良さとはこういうところなのかと後から理解が追いつきました。
主人公のほうも3話で披露した大岩を砕くスカイランド神拳がそれを習得するための孤独な修行の日々につながっていたり、2話で地球で目立たないように服を買いに行ったり試着でファッションショーをしたことが主人公にとっては私が思っていた以上に掛け替えのない出来事だったのだなと思い至りました。前フリとカタルシスを兼ねていてとてもスマートな構成だとわかり、感心しました。

・まだ初期メンバー4人が揃っていませんので今後もこういう話が続くのかは未知数ですが、5話で一段落させてくれたおかげで今後も大丈夫だろうと思える根拠ができました。
一段落という実績は重要です。一向にまとめようとせず、最後までまとまらない作品も珍しくありませんからね。今後のクオリティを保証してくれるわけではありませんが、それでも雲泥の差があります。

■ソラ/キュアスカイ
・初の青プリキュアの主人公です。
ソラはまず変身バンクが鮮烈でした! 圧倒される躍動感と蠱惑的で多彩な表情。そして何より片側だけのマントをバサッと翻すかっこよさ!! 思わず前のめりで注視してしまう迫力を感じたのは久しぶりでした。
作画担当はキュアジェラートやキュアミルキーのすごい変身でお馴染みの板岡錦さんでした。直近のデパプリとトロプリのバンクはおとなしかったんですけど、またはっちゃけたようです。個人的にはこういう方が合ってると思います。
個人的には背景も結構効いていると思いました。背景自体は動くわけでもなくそれ自体はすごく感じませんが、よく動くキャラクターと合わせることでキャラの立体感が出て躍動感が倍増していました。

・性格はヒーローを目指している少女で礼儀正しく爽やかです。それでいて可愛いものなど女の子らしさも否定せず強調もせず普通な点はバランスが良いと思います。
プリキュアでは内向的と否定されがちな敬語キャラの組み合わせが良いと思います。仲が良くなった後でも”さん付け”で呼ぶことも自由なので無理に変えないでほしいです。
ヒーローを目指す理由は憧れ半分、コンプレックス半分みたいな印象です。今後もそういう話もやっていけそうです。敵の上級幹部?と昔助けてくれた憧れの騎士様が関係していそうな雰囲気だったので上級幹部との対決が中盤の節目になるんでしょうかね。

・変身後のキュアスカイはマントがかっこいいです。基本可愛い系のデザインなのでかっこよさを両立させる上でも重要なワンポイントになっていますね。
作画リソースの都合かアクションで活かされる機会が少ないのは残念ですが仕方ないですね。最近の傾向だとアクションが安定してあるだけマシです。
個人的には変身後よりも変身前のほうが可愛いように見えてしまいます。私はスイプリ現象と呼んでいますが、変身前のほうが可愛いと「変身しちゃった…」とがっかりした気持ちになりかねないので作品としてはよろしくありません。よく変身前が芋過ぎると言われますけど可愛いのも問題になるんですよねぇ…

・必殺技のパンチはバトルの流れがスムーズなところが良いと思いました。
攻撃からでも駆け寄るモーションからでも自然につなげられて演出の幅が広いです。初期必殺技だから出番は減っていくのでしょうけどそれまでにいろいろ見られると良いなぁと思っています。

■マシロ/キュアプリズム
・第一印象は優しいというより「気弱」や「常識人」という印象でした。
優しさの印象が弱かったので4話の初変身の流れはしっくり来ませんでした。プリキュアは基本的に良い子が当たり前なので優しさを特徴とするには特徴付けが足りていないように感じました。
5話はマシロの思いやりが描けていて良かったのでこの調子で後付けで印象を上書きしていってほしいです。長期作品なら最初にお題目を掲げて後から肉付けしていく手法も全然有りです。
一人でパニック起こしたりテンション上がったりして挙動不審になる姿もこれまでは引き気味でしたがこの先には愛嬌として映るようになるかもしれません。

・キュアプリズムは正統派ピンクって感じですね。分類としては白ですけど。
主人公を青キュアにしたのでピンクを2号にしたようです。最初は青キュアが主人公とは名ばかりで、ピンクが実質主役なのでは?と疑念を持っていましたがそんなことはなさそうです。
変身バンクはキュアスカイよりも動きが控えめですが、静と動の対比のようで良いと思います。

・アクションはOPの印象からスプラッシュスターのような遠距離専門かと思っていましたが普通に肉弾戦もやっていました。
遠近両用のほうがアクションの幅が出て良いですね。至近距離で射撃攻撃などバリエーションを出しやすいのでいろいろ期待したいです。プリズムの名前のとおりビームを目くらましなどにも使えるようなので楽しみです。

■アイドル要素は全然わからない
・変身バンクはかっこ可愛くて素晴らしいと思うんですが、唯一アイドルがモチーフらしい点だけは全く理解できていません。
変身アイテムはペンからマイクみたいな形に切り替わり、変身中の背景はライブステージっぽい感じでプリキュアもカメラ目線っぽい視線を向けてちょくちょくポーズも決めています。間に挟まるジャンプやステップもコール&レスポンスみたいでした。
町の名前も「そらしど市」ですし、明らかにアイドルや音楽要素が含まれているように見えるんですが、今のところ本編のストーリー内では欠片も見当たりません。主人公は武人でアイドルやる素振りすらないのでてっきり地球に行ってからやることになるのかなと思っていましたが、一番芸能関係者っぽいアゲハすら保育士志望で今の今まで何の接点も見当たりません。
文房具を中心に販促はやっているほうだと思うのですが、アイドル要素だけは意図的に無視しているのかなと思うくらいに浮いています。今後4人揃ってからやるのか、全くやらないのかどっちなんでしょうね。

■エル
・とても手のかからない子だと思いました。
ホームシックになってグズる回ですら「すごく聞き分けが良い子だな」と思うほどでした。言われた言葉もほぼ理解しているようですし、「える」しかしゃべれないのに自発的なコミュケーションにも困りません。
ノーストレスで可愛らしいのは良いことですが都合が良すぎて全肯定するのは気が引けます。

・演出面では細かい特に意味のない動作が多いところが効いていると思います。
ソラたちが話してる間にその場でぐるぐる回ったりニコニコしてたり「よくわからん」って顔をしてたり、場面的には特にやらなくてもいい仕草のおかげで映像面で場が持っているシーンが少なくないと思います。
子供らしい行動でエルちゃんにも愛着が湧きますし、とても良い演出だと思います。作画の負担はあると思いますが今後も続けていってほしいです。

■カバトン
・最初は馬鹿で乱暴ないかにもな初期幹部という印象で、悪役がこんな三下一人だけで間が持つのかなと不安を感じました。
ですが話が進むにつれて印象が変わっていきました。しょうもない作戦から狡猾な悪巧みに精神攻撃など意外と手広くやっていました。
ポジション的には小悪党は小悪党のままでも上司に圧力をかけられたり、小悪党なりの悲哀と必死さが見受けられるようになってキャラとしても魅力が出てきた気がします。

■アクション
・結構しっかり格闘戦をやる気みたいで嬉しいです。
最近は作画リソースが右肩下がりで演出も一部の演出家を除いていまいちなことが多かったですが、今のところ積極的に力を入れてるように見えます。
やる気と予算は正比例しないのでこの先息切れするかはわかりませんが動かせないなら動かせないなりに工夫していってほしいです。



コメント

4 件のコメント :

  1. こんばんは。今作のプリキュアは「ヒーロー」を軸にして、ソラの成長を描いていくというスタンスなのかなと感じました。
    いろんなことに手を伸ばして、その結果滅茶苦茶な展開になった前作の二の舞にならないことを期待したいです。

    個人的には変身バンクやEDで使われているCGが
    シリーズを通しても特に美しいと思いました。
    これから一年間宜しくお願いします。

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    1. 匿名さん、こんにちは。

      この先どうなるのかはまだわからないと思っています。
      残り2人もヒーロー的なのか未知数ですから。「ヒーローになったことで得られたもの(友達のマシロなど)」みたいな話に発展していくかもしれませんし、あまり身構えずに見ようと私は思っています。

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  2. 初めまして、こんにちは。2017年から拝読させていただいている者です。まずはお礼からさせて下さい。主さんのブログは自分が漠然とつまらないと感じた作品のつまらない理由を分析してくださっていて、毎年このブログを読んで溜飲を下げてました。また、自分が主さんに近い感性を持っていると思ったので、この記事を読んでこの作品の視聴に踏み出すことができました。プリキュアは見たことが無かったのですが現状面白くて、毎週びっくりしています。ニチアサのクオリティは全く信用できないので不安8割で見ていますが、それでもこの作品に出会えて良かったと思っています。ありがとうございます。
    さて、全然関係ない話で恐縮ですが、主さんは最近Twitterでポケモンや遊戯王について呟かれていますが、例えばポケモンのサトシのシリーズや遊戯王のそれまでのシリーズはご覧になったことがありますでしょうか?もしよろしければ覚えている範囲で構わないのでそれぞれ1番面白かったものとつまらなかったものの感想を教えていただければと思います。最後に重ねてになりますが毎回ブログを更新してくださりありがとうございます。今後も楽しみにさせていただきます。

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    1. 匿名さん、はじめまして。参考になれば幸いです。

      >例えばポケモンのサトシのシリーズや遊戯王のそれまでのシリーズはご覧になったことがありますでしょうか?もしよろしければ覚えている範囲で構わないのでそれぞれ1番面白かったものとつまらなかったものの感想を教えていただければと思います。

      先に結論から書くとどちらもシリーズとしてはほとんど見ていません。
      ポケモンは初代の最初の1,2年目くらいポリゴン事件の後のどこかくらいまでしか見ていません。どこかすらわかりません。少なくとも金銀が出るより前です。その辺で飽きてそれ以降はCMとかで見かけて「今こんなことやってるんだ~」と思った程度です。ゲームもやったことがあるのは初代とXYだけであとは話に聞いた程度の素人です。

      遊戯王のアニメはまともに見たことがあるのはセブンスと現行のゴーラッシュだけです。あとは漫画の遊戯王(初代、って言うのかな?)だけです。
      アークVとヴレインズは最初のほうの何話かだけ見て見るのを止めました。それ以前のは全然見たことがありません。

      というわけでご期待に沿えず残念ですが、シリーズを全然見たことがないのでシリーズでどれが面白かったとかは語れることがありません。

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