『デリシャスパーティ♡プリキュア』最終回まで見終わって:総合感想

2023年2月18日

デリシャスパーティ♡プリキュア』を最終回まで見終わったので感想を書きたいと思います。

*必要に応じて随時ネタバレがあります。


一言まとめ

・話の方向性は問題はないが内容が薄い。
・構成要素にまとまりがないので終わり方もピンと来ない。最後まで「何の話だったんだ、これ?」という印象がつきまとう。
・かなり無味無臭。加点要素があまりないが、マイナス要素も大してないので面白くはないが怒りやストレスを感じることもあまりない。

■味が薄い
・キャラもストーリーもテーマ性も販促も何もかも薄いので語ることがあまり有りません。
キャラクターは基本的に変化がなく、第一印象や初期設定の延長線上でしかないお話がひたすら続きます。終盤には取ってつけたような”成長”描写も完備していますが、元から夢や目標がなく変化も僅かなため満足感は感じられません。加入する過程での変化が一番大きいくらいです。

・ストーリーは基本的にありません。「秘宝を奪った敵が世界征服のために計画を着々と進め、プリキュアは怪人を倒したり幹部を浄化したりするが計画自体の邪魔は特にせず、終盤に計画が完成して世界が窮地に追い込まれる」というテンプレ展開が全てです。最初から最後まで何の捻りもなく粛々と進み、最後は最初から提示されていた敵の首領を倒して終わりです。

・テーマ性は…終わった後ですら何だったのかピンと来ないくらいに薄いです。主要モチーフである料理は存在感がありませんし、料理の妖精「レシピッピ」も話にもキャラにも特に絡みません。料理や妖精を取っ払ったり他のものに置き換えてもストーリーには大した影響は無いんじゃないかと思うくらいに存在感がありません。デパプリの独自性は薄いです。

・ヒーロー性も薄いので「プリキュアやってる」って感じも特にありません。キャラの主体性や夢も楽しい日常も敵への説教も少ないです。作画水準は例年以下に右肩下がりでおまけにバンク通常必殺技が多いのでアクションも語れることがありません。

・ひたすら薄いだけで破綻しているわけでも思想性が強いわけでもないので語ることがこれといってありません。
形にはなっているんですが外側を取り繕う程度で中身がほとんど入ってないんです。中身を入れ忘れたというほど空っぽでもないので強く非難するほどでもありません。ただこんな程度かと満足感には程遠い内容なので言うことがありません。
作品について語れることがないので今回は個人的な感想が中心になりました。また簡潔にまとめられる軸が見当たらず総ざらいすることになったので分量も増えました。

構成要素

■料理
・料理は間違いなく主要モチーフのはずなのに存在感がありませんでした。
出てくることは出てくるのですが扱いが普通で掘り下げもないので他のプリキュアシリーズの食事にまつわるエピソードと大差なかったです。
食事シーンが多いだけではモチーフを活かせていないと思います。食事を手段ではなくモチーフとして捉えているせいで、ただ食べるだけのシーンが多く、会話や食事シーンからつながる展開などは重視されていないためよくある食事シーンよりも退屈でした。
OPみたいな食べ歩きもなく、自分で作るわけでもなく、料理紹介や料理人、農家に関するエピソードなどもありませんでした。料理がモチーフと聞いて連想する内容がほとんどありません。それでいてオリジナリティのあるアプローチも見当たらないためとても主要モチーフに見える内容ではありませんでした。

・お話の方向性まで最初から固まっている点が単調に感じる原因だと思います。
「ご飯は笑顔」などシチュエーションを固定してしまったため、美味しくない料理は出せず、まずい料理を改善したり口に合わない異文化料理なども出せません。
「分け合う美味しさ」とも看板に掲げてしまったために一人で外食する、自分のために作る料理なども禁止です。
登場する料理自体も玩具の関係で玩具化されたものに限られがちで変わった料理や流行りの食べ物も出せず、それでいて玩具化されたからと「ボールドーナッツ」のようななぜそのチョイス?と首を傾げるようなものも出てきて窮屈でした。

■レシピッピ
・レシピッピは食べ物の妖精です。オニギリのレシピッピ、パンのレシピッピ、うどんのレシピッピ、パスタのレシピッピなど料理やジャンルごとに分かれています。メタ的に言うとパクトに対応する小物として販売されています。
レシピッピには以下のような特性があります;
1)料理を食べて喜ぶ人から目に見えない”ほかほかハート”が発生し、レシピッピはほかほかハートのあるところに集まる習性がある。
2)レシピッピが捕縛されると料理がまずくなったり、料理にまつわる思い出が消えたり、料理そのものが消えたりする。
3)秘宝レシピボンにレシピッピを大量に捕縛すると世界中から料理や食材と作り方などの概念が消える。
4)悪役が何もしなくてもレシピッピのメンタルが悪化すると料理がまずくなる(例:知り合いのうどんのレシピッピが最近行方不明だと麺類のレシピッピが心配してメンタルを崩した結果いろんな麺料理がまずくなった。なお、うどんのレシピッピは居心地のいい場所を見つけて昼寝していただけ)

・だいぶ意味不明で理不尽な存在だから私は大嫌いです。料理関係者を愚弄する存在だと思います。
どうも作中世界だと「レシピッピがあるから料理が存在する」ものであって人がゼロから創作した料理は存在しないっぽいんですよね。文化レベルで否定していておぞましいです。苦労して考え出したものが自分の発想じゃなかったなんて創作者なら発狂ものでしょう。
悪者が何も悪巧みしなくてもレシピッピの機嫌次第で料理がまずくなるのは最悪だと思います。私だったら「料理はお前の玩具じゃない!」とレシピッピこそ倒すべき悪魔として据えたいくらいです。キラプリのキラキラル至上主義も受け付けない内容でしたがレシピッピはそれ自体が生きてて自我がある分だけ更に腹が立ちます。

■パーティ要素
・「パーティってどういうプリキュアになるんだろう? 毎日パーティするの? それじゃパーティとか以前に『セレブプリキュア』にならない?」などと始まる前から首を傾げていましたが、普通に何もありませんでした!
数少ないパーティ要素としてシャンパングラスのようなアイテムがありましたが、やぼったい私服の中学生たちが事あるごとに居間のテーブルでグラスを持って乾杯している姿は冗談みたいな光景でした。

・唯一マシだったのはスーパー化した姿がパーティドレス風だったことです。
ピンクはオニギリモチーフだから着物風のドレス、青はパンがモチーフでお嬢様だから洋風、黄色はラーメンモチーフで元々チャイナドレス風だったから中華風、追加戦士のフィナーレはセレブでゴージャスな感じとそれぞれデザインに特色があって差別化されていつつもドレスという統一感があって良かったです。
なんでドレスがパーティ風になるの?という根本的な疑問は解消できませんでしたが、デザインに落とし込めただけマシでした。

・スーパー化のアイテムが「キャンドル」がモチーフだったことは普通に理解できませんでした。
パーティにキャンドルは付き物なんですか? パーティなんて行ったことないのでわかりません。
個人的には、パーティ→子供のパーティと言えば誕生日パーティ→誕生日ケーキ→誕生日ケーキと言えばケーキのロウソクを消す→今度の玩具はキャンドルだ!
という玩具化するための強引な論理の飛躍があったのかなと思いました。

■アクション
・ここ数年は作画水準が右肩下がりですが例年よりも更に微妙でした。
よく動くのは序盤の数話と最終回までの数話だけで、あとは幹部戦などクールごとの節目でいくらかマシという程度でした。デジモンとか他の東映作品はここまで酷くないのにどうしてプリキュアはこんなに低予算なのか不思議です。

・普段の戦闘は通常必殺技を多用して画的にワンパターンなことも退屈する一因でした。
敵の遠距離攻撃を青がバリアで防ぐが破られそう/破られてダウン→黄色が飛び道具で反撃orピンクが接近してパンチするも効かない→苦戦するがピンチを逆転できるアイディアを思いついて逆転or気合のゴリ押しでダウンさせる→浄化必殺技で終わり
というパターンが定番でプリキュア側のアクションはほとんどバンク映像になりがちでした。デパプリにはロッドにはめるアイテムもフォームチェンジもないのでバンク必殺技自体にも種類や効果の違いが出せません。
一方、敵の怪人は調理器具モチーフで毎回姿が違うためプリキュアよりは差異が多く、純粋に映像作品として見ると怪人側のほうがプリキュアよりも目立っていました。理屈はわかりますけど納得はし難かったです。敵のバリエーションはヒーローのアクションを引き出すためにあるものだと思います。

・唯一良かったのは”横内一樹”さんとお馴染みの土田豊さんが演出した回でした。
横内さんは私は初めて見かける名前だったのですが、どうやら東映の人ではなくフリーの演出家さんらしいです。今後もプリキュアに関わってくれるのかはわかりませんがそうなったら嬉しいです。

キャラクター

■ユイ/キュアプレシャス
・主人公なんですけどびっくりするほどキャラが薄かったです。
実質主人公が別にいるわけでもないのにキャラが薄いので戸惑うばかりでした。食べることが好きな腹ペコキャラでここまで我欲や執着の感じられない人物が出てくることは予想外でした。
「デリシャスマイル」「はらぺこった~」「ご飯は笑顔!」と口癖が多かったです。その上に「お婆ちゃんが言ってた」と名言を引用するお婆ちゃん名言Botでもありました。
定型文が多い上にその場の状況に応じた発言は「お婆ちゃんが言ってた」と名言の引用で終わるせいでユイ自身の考えや心情が伝わってきませんでした。定型文の文面を見てもわかるとおり、笑顔やお腹が減った顔など表情すらも指定されているため表情や仕草で語ることすら許されません。キャラクター設定がぎちぎちです。感情すら描く余地が最初からないキャラだったから自我が薄く感じるのも当然なのかもしれません。

・何がしたいのか何が好きなのかすら伝わってこなかったので主人公なのに書くことが見つかりません。
独善的な主張などマイナス面すらあまり無いので好きになれない部分ですら語れません。
あまりにもキャラが薄いせいで終盤の説教やラスボスの説得に説得力がまるで感じられませんでした。裏付けになるこれまでの経験や行いが思い浮かばないので、最後の見せ場なのに「突然何を言い出すんだ?」と思い困惑しました。

・個人的にはお婆ちゃんから離れてほしかったです。
ラスト6話前になってようやく「お婆ちゃんの名言が通用しないなんて…」と挫折感を味わい自分なりに考えて行動したときには遅まきながらもようやくかと期待したのですが結局その数話後には「お婆ちゃんが~」と言い出してあんまり変わりませんでした。
最終決戦の発言からすると名言Botではなくなったらしいんですが実感がないので説得力は感じませんでした。元になる自我が感じられないのでお婆ちゃんBotでなくなったと言われても、じゃあ何になったのかが思い浮かびません。
モチーフが料理ですし「同じ伝統的な料理でも昔とは変わってる。お婆ちゃんの言ってたことをそのまま受け止めるだけじゃなく、自分なりに変えていかないとダメなんだ!」と思い至るとかいろいろできたと思います。

■クッキングダム組
・中盤まではローズマリーだけでよくある大人キャラ兼妖精ポジションという認識でしたが、終盤はずっと「ジンジャーとその弟子たち」が中心になっていき話についていけませんでした。
弟子として一緒に育った仲間が裏切ったとか、「どうしてあいつはそんなことを…」みたいな話が続くのですが肝心の過去が具体的に描かれないため「なんかあったらしいよ」と最後まで他人事で事情すらはっきりしませんでした。
それでいてラスボスは主人公の雑な説得に「知ったような口を聞くな!」とキレてくるので困ります。そう言われても主人公たちどころか視聴者すら事情を知らないし、兄弟弟子ですらラスボスの心境を全然理解できてないのでラスボスのことを理解しようがないんですよ。

・全力を出せるようになった大人組の戦闘力にも戸惑いました。普通にプリキュアと同等以上に強かったです。
作中でも最強扱いのシナモンに至ってはプリキュアが4人がかりで苦戦していたラスボスを一人で圧倒しかけていました。
師匠が残した最終兵器も最初は非常食を出せるだけなんて微妙だなと思いましたがそんなものは実力の一端に過ぎませんでした。招き猫ロボも強いし数が多くてヤバかったです。もうちょっと「もうプリキュア要らないんじゃないかな?」と思うところでした。
序盤に「プリキュアが出ました!」と本国に報告したときに「え、そうなの。じゃあせっかくだから協力してもらおうか」みたいなあっさりした反応に戸惑いましたがこれだけ戦力が充実していたならプリキュアに頼ろうとしなかったことも納得がいきました。そりゃ訓練された大人の軍人がたくさんいるなら謎パワーで戦う子供で、しかも異世界人なんかに頼ろうとは思いませんよねぇ。そりゃそうだなぁと納得させられました。

・でもそれを子供向けのヒーローものでやるのは間違っていると思います。大人のほうが強いほうがリアルかもしれませんが、プリキュアは子供がヒーローとして活躍するお話なのでそんなリアリティは邪魔です。
そして何より変身ヒーローの力を見くびっています。普通に考えたら子供は大人に勝てないからこそ変身すれば超越できるようになる開放感や全能感が変身ヒーローやロボットものの根源的魅力の一つでしょう。「子供は大人に及ばないんだからおとなしくしてろ」なんて言うのはヒーロー番組として不適切だと思います。

■タクミ/ブラックペッパー
・自分なりに一生懸命がんばる人物は好きなので好感度は一番高いキャラでした。
特に変身した姿のブラックペッパーは「みんなを守る主人公は誰が守るんだ? だったら俺が主人公を守る!」と明確な意思と目的があって清々しいところが好きでした。

・しかし残念ながらストーリー上の必要性はあまり感じられませんでした。
「プリキュアが主役なのに男の子が変身するヒーローを出していいの?」という当たり前の疑問をろくに克服できず持て余し気味でした。出番はバトルくらいしかなく、バトルの展開自体も工夫がなかったため、特に戦力追加の必要性もないのに現れては助っ人したり噛ませ犬したりするやつになってしまいました。
初登場の5話後には追加戦士が登場したことも逆風でした。活躍も少ないうちに強さまで奪われてしまって扱いが悪かったです。戦隊やライダーほど追加戦士最強の風潮がないため噛ませ犬一直線とはなりませんでしたが、小競り合い専門になってしまうと主人公は俺が守るという目的が大言壮語に見えてしまってキャラクターとしても立場が弱まりました。

・プリキュアとの目的の違いや裏切り者として追放された父親を持つ出自、一方的に異性として意識している主人公との関係性などいろいろ扱える要素はあったと思うのですがどれもパッとしないまま最終回を迎えてしまいました。
変身する前から鈍感主人公相手に空回りするポジションだったので全体の変化に乏しい作風と相まって空回り感が強まってしまいました。「いてもいいけど、いる必要性は無い」そんなキャラで終わってしまったことが残念でした。

■ココネ/キュアスパイシー
・コミュ障お嬢様で一番シンパシーを感じるキャラであり、人物描写が比較的マシなキャラでした。
リアリティを感じさせるコミュ障描写は良かったのですが作品全体の雰囲気と合っていませんでした。ココネがテンパって奇行に走っても周りは引くわけでも馬鹿にするわけでもなく「さすがお嬢様は違うな!」みたいな明後日の方向に温かい反応が返ってくるためコミュ障にまつわるドラマが成立しませんでした。こんな思考の生徒ばかりならそもそもココネはコミュ障とぼっちに悩まないと思います。
もう一つの問題の両親との不和も同じく雰囲気とミスマッチで、話してみたらあっさり解決してしまい、どうして家庭不和が起きていたのかわからないほどでした。作中でも「どうしてこんなつまらないことで仲違いをしてたのだろうね」みたいな扱いをされるわけもないので違和感が強かったです。普通に優しい両親がココネを放置してきた理由が全く伝わってきませんでした。
キャラクターは現実的な重みを抱えているのに世界観が優しすぎて吊り合っていなかったと思います。ココネがコミュ障として奮闘すればするほど、好意的な反応を返してくる相手に空回りすることになって暖簾に腕押し状態でした。これではココネが悩む必要がありません。ココネが勝手に劣等感を感じてこじらせていただけになってしまいます。
プリキュアのメンバーと一緒にいるときはもう打ち解けているのでコミュ障キャラが発揮できず特に個性のない相槌要員になってしまうこともマイナスでした。個人回になるとまたコミュ障がぶり返すので前向きに成長していくキャラと受け止めることもできず中途半端でした。
最初はスタッフが力を入れてるからキャラ造形が凝っているのかと思っていましたが、終わってみればどうでもいいキャラだから手癖で済ませたのではないかと思えてきました。

■ランラン/キュアヤムヤム
・賑やかし専門の黄色でした。
「はにゃ~」などと萌え声を上げるあざとい系のキャラですがそれ以上の個性と出番は与えられませんでした。出番はあるけどお決まりのリアクションだけで実のある人物描写は少ない不遇キャラでした。
結局、料理レビュワーとしての活動を続けるのかどうか、家業の店は継ぐのかどうかなど結論が棚上げにされたまま終わってしまったので不完全燃焼感が強いです。

・自分から積極的に動くバイタリティと明るさはあるが社交性や協調性が低く、周りからは変なやつだと引かれて友達はいない。そんなコミュ障のココネとは異なるタイプの陰キャ属性をもっと活かしてほしかったです。
序盤の赤ちゃんのお世話についてココネと意見が対立する場面はそれぞれの個性や考え方の違いがはっきりしていました。本音が言い合える友達ができたという感じもあって良かったので、ああいう感じの展開がもっとあったら良かったのになぁと思いました。

■アマネ/キュアフィナーレ
・良く言えばいろんな顔をして面白い、悪く言えば人物像が不安定なキャラという印象です。
悪の幹部からスタートし、浄化されて追加戦士として加入してからは生徒会長という常識人ポジションからのツッコミやまともな対応など奇人揃いでツッコミ不在だったお話をきれいにまとめてくれるようになりました。
タクミに対してはわりと辛辣で主人公の前でドギマギして奇行に走る度に「何をやってるんだお前は?」みたいに冷ややかな顔をして他のメンバーにはない視点も持っていました。
その一方、自分のことになると途端に「私の罪は許されない!」とうじうじ悩み続けて切り替わりが激しいキャラでした。
回によって温度差が激しいせいでアマネがどういう人物でどれが基本的な性格でどれが崩しなのか掴みきれないまま終わりました。

・序盤からマズイのではと思ったことですが、悪の幹部時代を「洗脳されて操られていただけで本来の人格とは関係ありません」で終わらせたのがかなりマズかったと思います。最初に倒される敵幹部ジェントルーとして登場し後から生徒会長が正体だと判明しましたが、敵幹部時代は洗脳されて利用されていただけという設定で片付けられてしまいました。
普通なら心の弱みに付け込まれたとか小さな悩みや欲求を増幅されたなどと悪役時代にやってたことと本来の人格に関連性を設けるものですが完全に断ち切ってしまいました。そのせいで浄化された後のアマネというキャラクターがポッと出の新キャラと変わらなくなってしまいました。1クール分も人物描写をロスするのは痛すぎました。
それでいて洗脳の面倒なマイナス要素だけはしっかりと継いでいました。事あるごとに「洗脳されていたとはいえ私の罪は変わらない!」と責任者ヅラし出すので鬱陶しかったです。完全に洗脳されていたなら洗脳状態でやったことに責任はないと思うのでアマネの思考に共感できません。そもそも責任を果たすと言ってもやることはプリキュアになって戦うことなので余計にグダグダ言ってる感じが強かったです。
洗脳が解けてから追加戦士になるまでの1ヶ月分の猶予をなぜか「体調不良」と言って面会謝絶で独白すら見せなかったこともまた理解に苦しむ展開でした。実質新キャラなら新キャラで人物描写を小出しにするなり一人で罪悪感に苦しんでいる様子を見せるなりやるべきことはあったと思います。
加入した後は数少ない個人回を罪の意識の描写と因縁のある敵幹部ナルシストルーに持っていかれたこともキャラの薄さに響いていると思います。もっとアマネを描くことに個人回を費やしていればもう少し魅力を引き出せたと思います。
追加戦士という比較的独自の立ち位置を持ってるはずのキャラなのに人物描写の機会を1つずつ潰されている非常に理解に苦しむキャラでした。

■コメコメ
・赤ちゃんポジションの妖精で赤ちゃんから中学生相当までなんと4段階の育成段階がありました。
実際には恒例のお世話人形の玩具があるにもかかわらず作中屈指の空気キャラでした… 最序盤からびっくりするほど空気で主人公たちがお世話すること機会すら少ないうちにすくすくと育ってしまいました。スタッフの販促に対する尋常でないやる気の無さが顕著に表れているキャラです。
主人公たちは何もしてないしコメコメ自体にも特にエピソードもないうちに育った上に、育ちきった後の姿が赤ちゃんだったときよりも没個性化してまた唖然としました。外見は主人公たちと大差なく、精神年齢は幼いままだったためストーリーにも絡めず特に存在意義がありませんでした。中学生4人が5人になっても影響ありません。実際、作中でも立つ瀬がなさすぎて精神年齢が近いランランの妹弟と仲良くなっていました。
最後までキャラクターとしては存在する意義がほとんど感じられませんでした。ここまで空気な赤ちゃんキャラはシリーズ初です。

・他のパートナー妖精はもっと空気でした。マスコットや賑やかし役としてすら出番が少なかったです。
序盤はまだコメコメのお世話という肯定し難い役割がまだあったのですが1クール終わる頃には成長してお世話が不要になったため出番がなくなりました。
それぞれに固有の能力があるはずなのにパムパムに至っては最終回でようやく能力が披露される扱いには哀愁を感じました。スタッフに愛されないマスコットはお飾りにすらなれません。

■敵幹部たち
・プリキュアよりも敵幹部のほうが人物描写が充実していました。
充実しているのがプリキュアが説得するための材料になるわけでもないただの人物描写なので困ります。プリキュアのほうを充実させるべきでしょう。
ラスボス同様に幹部たちも「昔何かあったんだよ…(視聴者には見せないけど)」というパターンしかなかったためこちらも反応に困りました。
推測はできるんですけど推測でしかないのでプリキュアの説得にキレたり改心したりしても本人にとって何がどう重要だったのか、この先どうなりたいのかがピンと来ないんですよね。そのせいで時間をかけた割には満足感が薄かったです。もうちょっと充実していれば敵幹部のドラマを楽しむお話と呼べたかもしれないんですが。

・ナルシストルーは結局ただの食わず嫌いだったのか何なのかわからないまま終わってしまいました。
当初はアレルギーやスラム育ちがゆえなのかと思ったのですがそうでもないらしく、それでいてお菓子は食べてるっぽいのに生のイチゴを食べたことがなかったなど理解し難い食生活で余計に謎が深まりました。最終回に置いても謎を残す必要があったのか疑問です。

・個人的にはアレルギーや「これ美味しいから」と嫌がってるのに食べさせられた経験やお腹いっぱいなのに「残すな!」と無理に食べさせられて嫌だったとか、そういう食事に関するネガティブな経験を描写する器であってほしかったです。
食事は生存に不可欠なものであり楽しみになるものでもありますが嫌なこともあると思います。マイナス要素も扱っておいたほうがお話のバランスが良く、教育的でもあると思います。デパプリの場合は「シェアする」と他人を食べさせることを強調しているので無理に押し付けるのは良くないと念を押しておく必要性は充分あったと思います。

・セクレトルーはいろいろ意味不明でした。
「完璧主義だが料理だけは下手な自分が許せず、料理の存在そのものを消すことにした」という事情がまず飲み込みづらかったです。料理が苦手でも外食するとかコックさんを雇うとか選択肢はあると思うんですけどねぇ。
それ以前に存在意義が不可解でした。これってただの完璧主義をこじらせたコンプレックスが主題になってませんか? 別に料理が題材じゃなくても問題ないように見えます。デパプリ世界が「誰でも料理できるのが当たり前でその上で得意料理や創作料理など個性が求められるのが普通」なんて世界なら料理ができないことは大問題でしょうし特別なプレッシャーにもなるでしょうけど実際には全然そんなことないんですよね。
説得の手段がまた謎でした。「セクレトルーも尊敬している高名な料理評論家のココネ母と話してココネ母も料理を作るのは下手だったと知ったから」って何ですか? 途中までは主人公のユイが説得してたのに実を結ばないうちに大人パワーで説得が終わってしまって唖然としました。いや、そりゃ尊敬する人が自分と同じ欠点を持っていたと知ったら中学生に説得されるよりもずっと心は動くでしょうが、それは無しでしょう…
ラスボスもそうなんですけど、突然料理などテーマ性が吹き飛んで個人的な事情が主軸になったように感じて戸惑いました。よく知らない個人的事情なんて持ち込まれても対応しようがありません。方向性自体に根本的に無理があるように見えて今でも作品に馴染ませる方法が思いつきません。

・彼氏が原因ならタクミを使う手もあったと思います。
タクミが「好きな人に料理を作って食べさせてあげたいって気持ちもあるんだよ!」と訴えれば、セクレトルーに必要だったのは料理の腕ではなく男が作って自分は食べさせてもらう関係でもお互いが望むなら良かったんじゃないかと受け入れる心だったのだ(カップルなら一人で完璧である必要はない)とまとめられる気がします。実際、ブンドル団に入った後ですら美食自体は好きなままみたいでしたし、そういう素養はあると思います。

・スピリットルーはまさにデウスエクスマキナって感じの都合のいいロボットでしかなかった印象です。
初登場した頃にはコメディリリーフとして2,3クール目らしい緩さを出しつつ開発者であるナルシストルーの素性語りにも使われ、その後は主に最終決戦に向けての地道な海外でのレシピッピ集め、最後には裏切り続けて味方がいなくなったラスボスのお供を務めていました。お話の都合上必要なことを全部やらせられるスタッフにとって便利な存在のように見えました。

・キャラクターとしてはほとんど人格を感じませんでした。実際作中でも出て数話以降は人格を消されて完全なロボットとして扱われていましたしね。
使いようはもっとあったと思います。まず料理が題材なのですから料理関連の掘り下げに活かせます。
「ロボットは料理を食べれない」「ロボットは味や食事の喜びがわからない」のは当然です。だから質問や疑問を抱いても何もおかしくなく、プリキュアとの問答で料理とは何か、どこが良いのかといった定義を示すことにも活用できたはずです。
また敵幹部なので他の幹部から話を聞き出し、ナルシストルーのようになぜ敵幹部が料理を排除しようとするのか視聴者向けに動機を解き明かすことにも使えたはずです。

・スピリットルーは最終決戦でも扱いが中途半端だったと思います。
他人を利用し裏切り続けてきたラスボスに残ったのは世界征服のための秘宝と物言わぬロボットのみ。ロボットはロボットでであるがゆえにハッキングされ返せば容易く裏切り、秘宝もまたレシピッピの抵抗で破られる。全てを独り占めしようとしたラスボスには自我すら残らない…
そういう悲哀や末路を描くこともできたはずなんですが実際にはナルシストルーやレシピッピに活躍させるために消化されてしまいました。ロボットをどうゆう存在として描きたいのかわからなかったので最終回で給仕ロボットとして他人に奉仕することに喜びを感じている姿を喜んでいいのかグロテスクに感じるべきなのか判断がつきませんでした。

■ラスボス
・今は亡き師匠と兄弟弟子に対して感情をこじらせ続けてきたオジサンでした。
実際に起きた過去の出来事も凶行に至った思考回路もわからないため、こじらせたオジサンとしか言いようがありません。
描写された出来事は
1)子供の頃から師匠に育てられて慕っていた。
2)途中から兄弟弟子が増えて愛情を独占できなくなったことに不満を感じていた。
3)後から入った兄弟弟子が天才で師匠の後継者に選ばれた。自分が選ばれなかったことに憤慨し継承前に天才に濡れ衣を着せて国から追放した。
4)これで自分が後継者になれると思ったら師匠のパワーストーンをもうひとりの兄弟弟子と分割して継承することになってまた憤りを感じた。
5)世界征服のための悪の組織を作り、秘宝を盗み、計画を進めていった。
以上です。台詞がない断片的な回想ばかりなのでこの解釈ですら合っているかわかりません。

・特にわからない点は
「師匠は元々博愛主義的に誰にでも優しい人だったのになぜ愛情は自分にだけ向けられるべきもだと思ったのか」
「師匠のパワーストーンにこだわったのはなぜか」
「亡き師匠へのこじらせと世界征服に何の関係があるのか」
この3点が特にピンと来ませんでした。

・1つ目の独占主義はここまでこじらせるような人物ならば異常に嫉妬深いのだろうとまだ理解できなくもありません。
2つ目のパワーストーンは全然わかりません。力が欲しいのか師匠の持ち物が欲しいのか区別がつきません。自分で似たようなパワーストーンを独自に作っているので力としてはそんなに必要なさそうなのですがそれでもこだわっていました。個人的には感情的問題なら石がどうこう以前に後継者に選ばれなかったことのほうを問題視するほうが自然だと思います。
3つ目の世界征服はまるでわかりませんでした。ラスボスとして正体を表した直後に「自分の力を自分のために使って何が悪い? 力を持つものが全てを手に入れるのは当然だ」みたいなことを言っていたのですが、あれが本当に本心だったということなのでしょうか? それなら世界征服については筋は通るのですが今度は感情をこじらせまくっていることと整合性が取れない気がするので懐疑的です。世界征服のほうが優先なら師匠のパワーストーンにこだわる必要性が見当たりません。個人的にはあれは自分を正当化するための方便で本心はこじらせた感情のほうだと思います。

・こんな視聴者目線ですら理解し難い人物なので事情をほとんど知らない主人公に説得することは不可能でした。
そりゃ20年以上はこじらせてきたオジサンを事情も知らない中学生が納得させるなんて無理ですよね。主人公の人生よりも長くこじらせてるんですもの。それは納得しますけどなんでスタッフがわざわざこんな話にしたのかは納得がいきません。

■最終決戦
・そんなラスボスとの最終決戦はいろんなことがぐちゃぐちゃになっていました。
見る前はここまでの内容がどういう話だったのかピンと来ていないけれども最終回まで来ればそういう話だったのかと逆算して理解できるかなと期待していたのですが余計に混乱が深まりました。

・プリキュア以外の大人組が活躍しすぎででしゃばり過ぎなことも戸惑いましたが、それ以上にラスボスと主人公の話が全然噛み合わないまま終わったことに戸惑いました。
一度ラスボスに負けたときに「師匠さんはそんなこと望んでない!」→「お前に師匠の何がわかる?! 知ったような口を聞くな!」とキレられて正論に落ち込んだのですが復帰した後も特に説得できないまま倒してしまいました。持論を説くも相変わらず話が噛み合わないまま突然化け物になったラスボスを浄化して終わりました。
主人公側に説得力が全然なかったせいで唐突に物言わぬ化け物になったことがご都合主義的展開に見えて萎えました。邪悪な秘宝とかならともかく自作のパワーストーンを使ってただけですからね… やるんだったらこれまでの敵幹部を化け物化させたり、ブラペが暴走したときに「デリシャスストーンは感情を増幅させて力に変えるものだ。悪い心をもって戦えば憎悪まで増幅されてしまう」とか前フリをやっておくべきだったと思います。

・説得自体も主人公は無理でも兄弟弟子であるローズマリーやシナモンなら道はあったと思います。
そういうためにクッキングダム組に時間を割いてきたのかなと思ったら一番要らない戦闘要員で呆れました。戦うのはプリキュアとブラペで間に合ってます。

・個人的にはあれだけこじらせてるなら歪みを自覚するのが説得力があるんじゃないかと思いました。
たとえば、シナモンはずっと追放したやつのことを恨んでいたことにして、いざラスボスの正体を知り対面したときに
シナモン「お前のせいでジンジャーは死んだ! 絶対に許さん!」(来たるべき危機のために用意した対抗策に命を注いだ結果寿命が大幅に減った。あの対抗策をやってなかったらまだ生きていたはず)
ラスボス「ジンジャーが死んだのは私のせい…?」(師匠の愛を独占するためにやったことが師匠を死に追いやり、自分から師匠を奪ったと思って追放されるよう仕向けた兄弟弟子に師匠を殺した仇と糾弾され、望んでいたことと実際に起きたことの矛盾に心が耐えられなくなる)
なんて展開ならラスボスが改心することも化け物になることも説明がつくと思います。
持って行き方次第では「大好きな祖母の意思を自分なりに受け継いで他人を助けようとあがいている主人公と師匠を思いながらも師匠の意に反して他人を苦しめ続けてきたラスボス」という対比関係も出せて蚊帳の外になってる主人公の落とし込みも楽になったと思います。


答え合わせ?

・どういう話だったのか全然わからない… そんなときはインタビューです!
ありがたいことにネット公開の監督インタビューがあったので発言を手がかりに答え合わせを試みます。この記事の草案を書いた後に読みましたがわりと引っかかった部分に関連してそうな記述が多かったです。
ここからはインタビューの内容を抜粋しつつ私が思ったことを書いていきます。

■「食」というモチーフはプロデューサーからの提案で、それも「料理ではなくて食べるほうをメインに持ってきたい」と言われたんです。
・早速一つ謎が解けました。私自身、1クール目の感想で食べるほうがメインなように感じると書きましたがそれは正しい解釈だったようです。
途中から食事が空気になっていったことにも納得がいきました。プロデューサーが言ってきたことをノルマ的にこなして形式上こなし終わったら無視し始める監督っていますよね… 
有限の食べ物を分け合うプリキュアと奪って独り占めするゴーダッツというわかりやすい対比関係のはずなのにここまでピンと来ないのはなぜなのかと不思議に感じていましたが、料理というモチーフを扱うことに手を抜いていたせいで成立しなくなったのなら納得です。形骸化してるのに最後まで残るのも然りです。完全に無くしたら怒られますからね。
監督自身も「みんなでにぎやかに食べるシーンが好きなんです」と言っているので内容を感じない食事シーンだけを繰り返してきたことにも裏付けが取れました。
プロデューサーがやりたかったことはそういうことじゃないと思います。「料理ではなくて食べるほう」と言ったのは食事シーンとかそういう話ではないでしょう。作る側の気持ちが描かれがちだけど食べる側の気持ちを描いてほしいって意味だと思います。

■感謝の気持ちを口に出して伝えることってすごく大事だと思っていて。
・最終決戦で突然主人公が「ありがとう論」を語り出して何の電波を受信したのかと心の底から戸惑いましたが、インタビューを見て初めて理解できました。
作中で全然描いてないスタッフの頭の中の思想を大前提にしてたから電波っぽく見えたんですね。電波なのは主人公じゃなくて監督のほうでした!
前提になる価値観がわからないし、知った上でも共感できないなら戸惑ったのも納得です。

・個人的にはこの思想に対しての疑問点が複数あります。
1)「感謝の気持ち」なんてキッズ向けでは有るのが当たり前でテーマとしては格がない。
2)当たり前のことをテーマにできるほど深く掘り下げてもいないし、わかりやすく具体的に描くこともできていない。
3)主人公たちの普段の能動的な行動が足りていないから「ありがとう」に説得力を感じない。お礼を言ったり言われたりするほどのことを普段していない。
4)視点が大人に寄り過ぎてると思う。「ありがとう」なんて子供時代は珍しくなく、大人になるほど言わなくなる言葉だと思う。子供向けの作品で子供にとって当たり前のことを説教してどうするのか。

・大枠でまとめるとこんなところです。
上の本編内容で書いたことですが、話の薄さが説得力の無さや唐突さに直結しています。大上段に構えた思想を作品に落とし込めていないところがデパプリ最大の問題だと思います。これだとテーマ自体の良し悪しを語る段階にたどり着けません。
調べてみて初めて知ったのですが、「ありがとうの気持ち」「シェアする喜び」は放送前から作品のテーマとして掲げられていたことのようです。どちらも全然描けているように感じられなかった身としては余計に首を傾げました。最初から考えててこれなんですか?

・改めて構成が不思議だと思いました。
「ありがとう」をメインにするなら主人公たちは自分で料理を作るか、作った人を尊敬するほうが自然だと思います。
作るのは「食べるほうをメインにしたい」という意向に反するからやらなかったんでしょうけど料理人に対する感謝は全く問題ないと思います。
個人的にはお婆ちゃん名言Botも相性が悪いと思います。事あるごとに「お婆ちゃんが言ってた」とお婆ちゃんに話がシフトするので今食べている料理や食べた感想がどこかに吹き飛ばされてしまっていました。
お婆ちゃんの名言が抽象的な文面で、視聴者どころか聞いた側からもいちいち「どういう意味?とか「それってこういうこと?」と確認が入ることも悪かったと思います。お婆ちゃんは料理で名を馳せた人だったのですから料理人目線で主人公たちにはわからない見地をわかりやすく言葉にしていたならテーマ性なども全体的にわかりやすくできたかもしれません。

・意識的に料理人に触れることを避けてるように見えるんですけど、ラスボスを料理人に見立てるとだいぶまとまる気がします。
食べる側:食べる幸せは感じても料理人への感謝はない。レシピッピもほかほかハート=料理への感謝なので料理人はここでも関係ない。
ラスボス:作る側であって食べる側ではないので食べる幸せは感じられない。一方的に搾取される側で報われないため不満を抱え込んで爆発させた。
最終決戦:プリキュアが「ありがとう」と言葉に出すことでラスボスが少し報われる→その後にプリキュアからオニギリをもらって食べることでラスボスが食べる幸せを感じ、昔の思い出(自分が料理人になろうと思ったのは料理を食べる幸せを味わったからだった)と初心を思い出して改心する。
なんて流れなら突然のありがとう論も序盤からずっと続いてきた料理人軽視もまとまる気がしました。
実際にはゲストには料理人もいましたが客への不満を述べた人は一人もいませんでしたし、主人公たちも出店を出して他人に食べさせたりしているのでこれは成立しませんけどね…
この辺りも途設定の折り合いを考えることを途中でぶん投げた感じがします。

・「シェアする喜び」のほうはもっと描けていないんですが、まぁやる気がなかったのでしょうから言っても仕方ないと思います。
監督が発案したというローズマリーが終盤と最終回で異様に厚遇されていたり、妙な招き猫押しから考えても監督のやる気の有無で内容が大きく左右されるのは明らかでしょう。
私が遅いと感じた主人公の変化は当初はもっと早くやる構想もあったと述べられているので実際はこうなる以外に道はなかったのでしょう。
可能性が無いものは無いのでどうしようもありません。始まる前から終わってた事は企画段階や人選からやり直さないと無理だと思います。

■(アマネ初変身に関して)結局、向き合って気持ちを吐き出させることにしました。そういう意味では、描写に気をつけつつ、キャラクターの心情をリアルに描いているシリーズになっていますね。
・個人的にはこの発言が一番腑に落ちる気がしました。内容を薄くしたがる人は「リアル」って言葉を好みますよね…
変身も世界征服も子供が怪我も恐れず戦うこともリアルからは遠いことだと思います。迂闊にやると話が薄くなってかえって作品からリアリティが無くなると思います。

■シリーズ構成:平林佐和子さん
・最後に平林さんについても触れておきます。
今回は成果としては良くなかったと思います。4クールに見合った内容を盛り込めていませんでした。長くて薄いのは組み合わせが最悪です。
元々真面目でツッコミどころが少ない内容を書くけれどもその反面見せ場や盛り上がりに欠ける印象でした。香村純子さんから人物描写の上手さを引いたような印象でした。
デパプリも内容の薄さが問題になり、挑戦して失敗した感じもなく普通にいまいちな結果でした。

・ただ、監督のインタビューを読んだ後だと平林さんの責任を問うほどではないと思いました。監督は人の話を聞きそうもありません。
監督がやりたがった内容が根本的にプリキュアシリーズと相性が悪く、それでいて単体でもまとまっていない内容だったのでこれをお話にまとめろと言われればこうもなるでしょう。これで綺麗なお話にまとめられたら天才です。

■やっぱりまとめるには無理があると思う
・監督の意向を理解した上で構成要素を切り分けて考えた結果、一つの話にまとめるのは無理だろうとより強く思いました。
料理(食べる側)と「シェアする喜び」までなら何の問題もなくまとめられそうです。料理を独占しようとする敵たちとも対立軸が明確です。
『「ありがとう』の気持ち」の時点でやや苦しく感じます。ありがとうは食べた後の話なので食べることそのものと料理を分け合うこととはタイミングがズレています。でもまだテーマとして抽象化すればどうにかまとまりそうです。
大人と思いを受け継ぐの時点でもう無理な気がします。料理との関係性がパッと見で伝わってきません。
そこに更に赤ちゃんと男の子ヒーロー、そしてなぜか招き猫まで加えてあるのでどうにもならないのも当然だと思います。
赤ちゃんと男の子ヒーローはたぶん企画時点からの決定事項なので真っ先に取り入れないことがおかしいです。ローズマリーとか足してる場合じゃありません。

■記事を書き終わって
・「これがデパプリだ!」と言えるほどの核が見当たらなかったので無駄に文量が増えました。無いことを証明するのは手間がかかります。もっとコンパクトにしたのかったのですが無理でした。
良いところも悪いところも薄くてふわふわしているので自分の印象すら文章に起こすのが難しかったです。怒りを感じるほどでもなく、面白いと思ったかは別にしてもこれをやりたかったんだろうなと思えるほどの内容もない無味乾燥さは見た後に疲れが残ります。
そういう点ではインタビューがあったことが一番の救いでした。独力では理解し難い内容ほど答え合わせは学びがあります。インタビューのおかげで全体的に納得がいったので結果としてはそれなりの満足感を得られました。個人的にはインタビューが本番と思って見る方が楽しめるんじゃないかなと思います。



コメント

6 件のコメント :

  1. マルゲリータ2023年2月18日 22:51

    総評お疲れ様です。今回も物凄い量ですね。笑いながら読ませていただきました。

    初っ端から敵のせいで、料理の味が悪くなるはダメだと思いました。料理の記憶を忘れる、形が変わる、消えてなくなるは店の責任にはならないと思いますが、急に不味くなるは大問題だと思います。序盤、閉店した店も出て来てすごく深刻な話にするのかなと期待しましたが、案の定そんなことありませんでしたね。

    >■アクション

    デリシャスフィールドは、「ウルトラマンネクサス」のメタフィールド同様に、予算や手間の削減の為に導入されたものかなと思いましたが、別に関係なかったようですね。

    >・主人公なんですけどびっくりするほどキャラが薄かったです。

    ゴールが、自分の言葉で気持ちを伝えるは薄いと思います。これは、途中で自覚して次の課題に持っていくものでゴールではないと思います。

    >■タクミ/ブラックペッパー

    面白い要素になるかなと思いましたが、残念でした。序盤の面白さが全てでしたね。プリキュアは恋愛物語ではないので、味方サイドの誰かに正体や主人公への思いがバレて、それをネタに振り回されたり、フォローしようとデートプランを立てたり色々するけど、ブチ壊されたりとかそんなのもありませんでした。

    ラスボス
    「まさか、フェンネルさんが裏切るなんて」と言われも、誰だよコイツとなってしまったのは、私だけだと思います。まぁ、キラメイジャーみたいに真の黒幕にそそのかされたり、洗脳されて暗躍していたじゃなかっただけマシなのかもしれません。

    ラスボスだけでなく、終盤の急展開には頭が痛くなりました。急に海外に魔の手を伸ばしたり、あっさりレシピっピを捕獲して目的を果たしたり、驚きの連続でした。

    敵サイドは、軽い回想だけなので、疑問が沸きますよね。
    もっと料理の負のイメージを加えられた話になるかなと、思ったので残念でした。
    しかし、こうみると嫌いなものが好きにもなるし、そのまた逆にもあっさりなってしまうスピリットルーが一番可哀想に思えますね。

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    1. マルゲリータさん、こんにちは。

      >料理の記憶を忘れる、形が変わる、消えてなくなるは店の責任にはならないと思いますが、急に不味くなるは大問題だと思います。

      敵側の悪行としてなら有りだと思います。ジェントルーの罪が重くなりますが。
      私はそれよりもレシピッピのメンタルに左右されるほうがヤバいと思いました。麺類のレシピッピの話なんて、あれが麺料理店の開店日にぶち当たったら取り返しがつかないでしょう。本人に落ち度が無いのにマズい店とレッテルを貼られるのはあんまりです。

      >デリシャスフィールドは、「ウルトラマンネクサス」のメタフィールド同様に、予算や手間の削減の為に導入されたものかなと思いましたが、別に関係なかったようですね。

      特に無かったですね。プリキュアの場合、背景は「周りが森だけどなぜか真ん中は平原」みたいなお手軽謎空間が生えることが多いので手間は大して変わらないように見えました。
      デパプリは基本的にオイシーナタウンから動かないので、街中で戦うと背景がそのままで面倒だから変えたかったんでしょうかね。
      個人的には「壊れた建物が敵を倒したら直るのは変」「プリキュアがこれだけ戦ってるのに無名なのは変」みたいなリアル病か、「ローズマリーに毎回やることを持たせたかったから」じゃないかと疑っています。

      >ゴールが、自分の言葉で気持ちを伝えるは薄いと思います。これは、途中で自覚して次の課題に持っていくものでゴールではないと思います。

      それ自体はお話としては有りだと私は思います。
      他人に伝えることを諦めてる内向的な子やトラウマ持ちが自分なりに伝えようと発奮することは物語になり得ると思います。
      4クールに足りる内容か、ユイはそういう性格じゃないなどデパプリ固有の問題はありますが。

      個人的にはユイ関連の問題は途中経過をすっ飛ばしたことだと思っています。
      「お婆ちゃんBotじゃダメなんじゃないかと疑問を持つ」の次が
      「ラスボスを説得する」に飛んでいるからめちゃくちゃに感じるのであって、間に試行錯誤や成功体験を重ねてあればそれほどおかしな話には見えなかったと思います。

      >プリキュアは恋愛物語ではないので、味方サイドの誰かに正体や主人公への思いがバレて、それをネタに振り回されたり、フォローしようとデートプランを立てたり色々するけど、ブチ壊されたりとかそんなのもありませんでした。

      そういう話でもないとタクミの存在は生きないと思います。プリキュア5は実際主人公側を中心にそういう方向性に振っていましたよね。
      デパプリの場合は料理など他の主要要素と噛み合わせが悪いので恋愛中心は最初から無理があると思います。

      >ラスボスだけでなく、終盤の急展開には頭が痛くなりました。急に海外に魔の手を伸ばしたり、あっさりレシピっピを捕獲して目的を果たしたり、驚きの連続でした。

      ジンジャーとか過去の経緯とか知らないところで話が動きすぎでしたよね。

      >しかし、こうみると嫌いなものが好きにもなるし、そのまた逆にもあっさりなってしまうスピリットルーが一番可哀想に思えますね。

      結構可哀想な存在なんですけどロボットだから微妙なんですよね…
      元々存在しない物なので作られただけラッキーとも言えてしまいます。思考をいじくられるのもロボットだから当然と言えば当然ですし。何をもってしてスピリットルー足り得るかという核の定義が難しいです。
      元々難しい存在なのに扱いが適当なので最後の有り様も肯定すべきか否定すべきか判断がつきませんでした。流れ次第では次のラスボスになってもおかしくない存在だと思います。

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  2. こんばんは、3話くらいまで見た者です。
    他サイトでもあまり評判が良くない感じだったのですが、あまり見ない方がよろしいんでしょうか。。キャラデザは好みです。

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    1. 匿名さん、こんにちは。

      見るべきかどうかは匿名さんのモチベーション次第だと思います。
      記事に書いたように内容は薄いのでストーリーやバトル、キャラクター描写には期待しないほうが良いと思います。
      キャラクターの見た目だけで50話近く見る気になるなら問題ないと思います。内容が薄いのでストレスフルな展開など邪魔になる要素も大してありませんから。

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  3. 終盤までゆいの個人回が全然無かったことに驚きました。
    その結果ゆいのキャラや他の登場人物との関係性も薄くなるという。
    ここねとらんの関係がぎこちない時にアホ面でたこ焼き食べてる姿を見て、ほんとこの子は飯の事しか興味無いんだなと思いました。
    コメコメとパムパムが喧嘩した時はゆいとここねの出番と思いきや何故かあまねが来る展開に。
    ゆいとコメコメの絆がろくに描けてないのでコメコメ覚醒回の説得力が無いです。
    コメコメと他のメンバーとのエピソードもここ最近の話ばかりなので取って付けたような感じがします。
    映画でコメコメがゆいに憧れていてゆいみたいなヒーローになりたいと言ってましたが本編ではそういうの全然描いてないので首を傾げました。
    変身してない時の人助けをするシーンも本編では初回だけでしたし。
    部活の助っ人は運動が好きだからとか人助けのためではなくおにぎりが目的というのはね。
    個人的に映画は良かったと思うので本編の問題なのですけども。
    ゆいコメコメだけに限りませんがプリキュアと妖精の絆はヒープリの方が描けていましたね。
    ゆいはおばあちゃんbotなのでいざという時に仲間のために何も言えないことがありましたね。
    肉じゃが回、ハロウィン回では結局マリちゃんが解決してしまいました。
    基本大人や大人の言葉が解決するのでプリキュアが解決したり自分で考えて成長することが少なかったような気がします。

    ジェントルー編であまねと大して交流もしてないのに、あのイラストだけであまねは本当は良い人と言われても説得力に欠けます。
    ナルシストルーは偏食問題を取り扱うと思いきや、りんご飴食って解決。
    ご飯は笑顔じゃないナルシストルーは、あまねよりもゆいと絡ませるべきなのでは?
    セクレトルーも優等生であるここねやあまねと絡ませた方が完璧主義の話に合うのでは?

    作るよりも食べる方がテーマとはいえ素人がクレープの味を完全再現したり実力者相手にグランプリで優勝したり池からおかずが出るのはどうなのかと。
    挙句の果てに妖精の機嫌次第で料理の味や調理前の食材すらダメになるのは論外。

    不正アクセスで5話分削れてしまったけど、この内容じゃ不正アクセスがなかったとしても大して変わらなかったでしょうね。
    少なくとも和菓子屋回までは話は削られてない(5週前が丁度6月末なので水無月の話が時期的に合う)のでジェントルーあまね関連は擁護の仕様が無いです。

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    1. >終盤までゆいの個人回が全然無かったことに驚きました。

      お姫様の回など個人回自体はあったと思います。無かったのは内容や掘り下げだと思います。ユイに関してはそこが最大の問題だと思っています。時間が無かったわけでもないのにできてないのでどうしようもありません。
      コメコメも同様に序盤から出番はあったのに時間を無駄にし続けた印象です。

      >基本大人や大人の言葉が解決するのでプリキュアが解決したり自分で考えて成長することが少なかったような気がします。

      終盤がそんな展開ばかりでしたね。
      ラスボスも経緯も基本的に大人側の話で完結しているのでユイたちはほぼ面倒に巻き込まれただけで関わりようがありませんでした。大人を説得できるほど説得力のあることは言えるわけありませんし。

      >ご飯は笑顔じゃないナルシストルーは、あまねよりもゆいと絡ませるべきなのでは?

      ユイの掘り下げとしてはそのほうが良かったでしょうね。「お婆ちゃんが言ってた」しか言えないユイには説得できないでしょうが、ナルシストルーの出番の長さなら一度失敗して挫折から成長して後でまた自分の言葉で再挑戦する相手としてはちょうど良かったと思います。

      >セクレトルーも優等生であるここねやあまねと絡ませた方が完璧主義の話に合うのでは?

      ココネやアマネではセクレトルーには合わないと思います。
      ココネは自分に自信がなく実力もあるわけでもないので完璧には程遠い存在だと思います。
      アマネは実力はありますが罪悪感に駆られているのでこちらも完璧を名乗ることはないでしょう。
      セクレトルーから見ればどちらも完璧には程遠いお子様であり、自分と似た経験をした相手ともみなせないので会話は成立しないと思います。

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