『ひろがるスカイ!プリキュア』:3クール目まで見終わった時点での感想

2023年10月14日
『ひろがるスカイ!プリキュア』を36話まで見た時点での感想です。

■夏休みです!(25~30話)
・8月終わりまでは夏休みでした。というわけでプリキュアスタッフも休暇中だったのです!
と因果関係を見出したくなるくらいに何もありませんでした。話が進まない上にキャラの掘り下げやエンタメ成分まで全然無いので本当に退屈でした。今のローテ陣に任せられるほどの腕前はありません。無理です。

・そんな夏休みの始まりから登場した新幹部のミノトンも何も存在意義がないキャラでした。
急遽作り出したキャラと言われても違和感ないくらいに退場した後でさえ「何だったんだ、あいつ…」という印象しか残りませんでした。
次回予告に映る新幹部を見て、何もないままメインが進むみたいだけどミノトンはどうするんだろう?と思っていたらシリアスな新幹部にボッシュートされて唖然としつつもある意味では納得しました。やっぱり夏休みの穴埋め以外に意味がない存在で間違いなかったようです。
33話で浄化された後も闇の魔法を使えるまま立ち去ったのにプリキュアが誰も気にしない辺り、本当に扱いが適当でした。

■エルちゃんの初変身(31話)
・初変身回は長く続いた夏休みが終わって久しぶりのシリーズ構成回なのにパッとしませんでした。変身のきっかけや経緯が弱かったです。
まず全体の流れは普通でした。強力な新幹部の登場でピンチからの逆転で特に良くも悪くもありません。
「エルちゃんが変身する」という核心部分が説得力や劇的さに欠けたのがパッとしなかった主因だと思います。意外性も納得感もどちらも感じませんでしたしドラマチックでもありませんでした。
ロジカルな面はエルちゃんの特異な素性で成立しようがありません。「なぜエルちゃんは変身できたのか?」と考えても神の使いであり生まれつき力を与えられたエルちゃんでは「できるからできる」としか言いようがありません。ピンチなら何度もあったのになぜ今までできなかったことができたのかという点は謎過ぎて考えようがありません。

・理解できる点があるとすれば心理面なのですがそれを考えようとすると「エルちゃんが赤ちゃんであること」が障害になります。
これがたとえばダイの大冒険のポップみたいな「臆病者が味方のピンチに勇気を振り絞る」とかカバトンやバッタモンダーみたいな助けられた小悪党が正義に目覚めるみたいな展開なら感情の機微の話として成立するんですが、本人の頭の中すら論理化されているか怪しい赤ちゃんで明確な因果関係や打算的発想を求めるのは困難でしょう。
単純な感情面でも差別化が厳しいです。エルちゃん本人のピンチなら何度もありましたし、戦うプリキュアを心配そうに見ている場面もありました。
勇気を振るうシーンですらキュアウイングの初変身回で一度失敗して捕まってもなおツバサだけでも逃がそうとする献身性と泣くほどの恐怖を経験しています。感情が要因なら危機意識も勇気もたくさんあってなんで今まで変身できなかったのか理解し難いほどです。
いくら考えても「今までできなかったことがなぜかできた」という以上の結論が導き出せませんでした。エルちゃんの力が超自然的な不思議パワーなので作中ではそれで済んでも構わないのですがドラマとしては面白くありませんでした。

・せめて普段のエルちゃんも成長後の肉体で固定されていたら「力を手に入れた代わりに永遠に失ったもの」が視覚化されて喪失感やこの先もっと失うことが出てくるのかなんて不安感を出せないこともなかったのですが、赤ちゃんエルちゃんは主力商品の一つだからそんなことできないんですよね…
最初から手詰まりなのは目に見えていたことだと思うので展開を物語に馴染ませる努力は不可欠だったと思います。特に何も対策してないからどうしようもないというのはいただけません。

■マジェスティクルニクルン入手回(33話)
・同じくシリーズ構成担当の33話も残念な内容でフォローにはなりませんでした。
マシロの突然のメンヘラ化についていけませんでした。本編でも触れられていたように「自分だって守りたい」という思いはマシロ自身が言っていたことです。
「客観的にはわかっているはずのことも自分のことになると見えなくなる」みたいな話ならまだわかりますがそういう話にはなっていなかったと思います。

・論理的には破綻していると思いました。
エルちゃんが部外者なら戦わなければ安全でいられるでしょうが、関係者どころか名指しで狙われている存在では成立しません。プリキュアたちが負ければ次はエルちゃんが襲われ自ら戦うことになるでしょう。それなら一緒に戦うほうが勝率も高くむしろ安全です。
エルちゃんの意思に反している上に論理もめちゃくちゃで全くマシロの意見に賛成できませんでした。マシロが殊更エルちゃんの安全に気を配っている印象もないので特に違和感が強かったです。騎士を名乗るツバサや子供第一の保育士であるアゲハが何も心配してない状況ではマシロだけがヒステリーを起こしているようにしか見えませんでした。

・マシロが一人で背負い込む展開なら「自分が強くならなければ!」と一人でどうにかしようと突っ走る展開のほうが無難だったと思います。
こっちのほうがエルちゃんが戦わないといけないこと自体は否定せず、「危ない目に会わせないためには自分が倒せばいい」という考えは合理的な結論として一理有り、クルニクルンの「みんなの心と力を合わせる」というゴールとも逆の方向性なのでちょうどいいと思います。
過去の言動と矛盾する点はどうしようもないので、ソラが指摘するなりエルちゃんの姿を見て自分から思い出して反省するなりでフォローするしかないことは変わらないでしょう。

■スキアヘッド
・追加戦士と同時期実装の新幹部だけあって強いし淡々としていて恐ろしい敵でした。
ただ、初登場回以降はもったいぶってるだけなので萎え気味です。ひたすら怪人を連れて様子見しに来ては「だが計画通り…」みたいな不敵なことをつぶやきながら帰るばかりで引き伸ばしには早くもうんざりしています。

■キュアマジェスティ
・追加戦士のキュアマジェスティはエルちゃんが変身した姿でした。やっぱり変身するんですね。
変身するとしたら赤ちゃん状態との言動のギャップはどう処理するんだろうなと疑問に思っていましたが、思っていた以上にどうにもなっていませんでした。エルちゃんとの同一性のギャップが強すぎてどう捉えればいいのかすらわかっていません。
34話でスキアヘッドが現れてもエルちゃんが呑気に捕まえたバッタを離れた場所で逃して「ばいば~い」なんてやってるシーンはエルちゃんらしいマイペースで良いと思いましたが、マジェスティの行動としては違和感ありまくりでした。マジェスティなら「そんなことしてる場合じゃない! 早く変身しないとみんなが危ない!」と焦っていたでしょう。
無垢でマイペースな赤ちゃんと高貴で責任感の強い王女様という両極端なキャラを一人で内包して続けるのはやっぱり無理があると思いました。どっちか捨てないと矛盾を解消できる気がしないのですが玩具の都合で赤ちゃんを捨てるわけにはいかないんですよね… いったいどうするのでしょう?

・デザインはいかにも紫プリキュアで追加戦士って感じのデザインですね。個人的にはわりと記号的で没個性的な無難なデザインという印象です。
ただ、イヤーカフだけは目を引きました。お姫様にイヤーカフというだけで個人的には引っかかりを感じるのに、その上棘付きでした。
私のイメージだとそういうのを着けるのはパンク系かモヒカンかという印象なんですが「お姫様と言えばイヤーカフは常識!」みたいな私の知らない文化があったのでしょうか?
それにしたって棘は謎な気がしますが。エルちゃんにそんな攻撃的なイメージもありませんし… アクセントにしたって強すぎるデザインにびっくりしました。

■マジェスティクルニクルン
・見たときには「本型の玩具って子供にとって面白いの?」と疑問に思いましたが、触ると音が鳴ったりするタイプのやつでなるほどと思いました。
ボリュームが少なくてすぐに飽きそうな感じはプンプンしますがパッと見の魅力があるのは玩具としては優れていそうです。化粧台とかよりはずっとわかりやすい気がしました。

・必殺技は定番の感じで特に面白くありませんでした。モーションが段取り臭いし長いので普通に退屈です。
もう10年どころか20年単位で間延びした演出なんですけど変えられないんですかね? 個人的にはあの横並びでポーズを決めたり、儀礼的に進行していくのを敵が眺めている演出がそんなに良いものだとは全然思えないので不思議です。

■残り1クール
・2,3クールが鳴かず飛ばずどころが最初から鳴く気すらない冬眠モードだったので実質1クールと4クールのみの内容になりそうです。
せめて「2,3クールを無かったことにすれば2クールものとしては良かった」くらいになってほしいのですが。16話から36話までシリーズ構成回が4回しかない手抜き構成だったのでここから先は全話シリーズ構成回くらいでないと帳尻が合わないと思います。





コメント

12 件のコメント :

  1. 製作陣は現行のひろプリよりも、20周年企画やNHKで放送が始まった「オトナプリキュア」に力を入れているような気がします。

    初見せで先行きが見えない作品よりも、好調なクロスオーバーや実績のあるシリーズの続編を描く方が話題性に繋がりやすいからでしょうか。

    あと、映画の興行収入がプリキュア史上最高になったそうです。オールスター映画なのでひろプリの実力とは到底言えませんね。

    今年は場外での炎上も尽きなかったプリキュア界隈。せめて本編ぐらいは手堅くまとめてほしいです。

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    1. >製作陣は現行のひろプリよりも、20周年企画やNHKで放送が始まった「オトナプリキュア」に力を入れているような気がします。

      私はそう思ったことは特にありません。作画などは最近だと良いほうだと思っていますし、ひろプリスタッフと関係が全くないのでストーリーは何の影響もないでしょう。

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  2. 最近1クール目はまあいいけどそれ以降がおざなりになるケースが多いですね
    正直この作品もそうなりそうな予感が感じられます

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    1. 2,3クールがパッとしなかったので4クール次第だと思います。ひょっとしたら4クールを見れば、2,3クールの意義がわかるかもしれませんし。

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  3. こんにちは。今回も興味深い記事を投稿していただきありがとうございます。しかし個人的には3クール目の記事が存在していることに驚きました。3クールも放送していたのですね。そのくらいこの作品は空虚だと思います。自分は他のプリキュアシリーズを見た経験はないものの、主さんの他のプリキュアの記事は全て楽しく拝読させていただきました。心なしか他の記事に比べて今作はあまり批判的では無い気がします。他の作品はこれよりさらに空虚というのですか?個人的にはこれ以上薄い作品というのは割と想定できないのですが…。

    もう一つ気になったのはスーパー化の撤廃です。他のプリキュアのスーパー化は知っていますが(ほとんどがバンク必殺でしか使われないという実態も含めて)本作では実装すらされませんでした。メインターゲットは女児の作品ですから着せ替え要素は割と重要だと思ってます。それすらカットして用意されたのがただビームを打つだけの視覚的に退屈極まりないバンクです。どうせ同じバンクなら活躍云々以前に着せ替えた方が女児うけもいいと考えてしまいます。自分は今作はスーパー化のデザインを考える手間すら惜しんだと疑っていますが過去作のスーパー化が評判悪かったってことですかね?

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    1. 匿名さん、こんにちは。

      >個人的にはこれ以上薄い作品というのは割と想定できないのですが…。

      薄いものはあると思います、それ以上にマイナス点の多いものは確実にあると思います。
      ひろプリはヒーロー要素強めなので敵を倒せばそれで話を終わらせられるので「どうやってまとめるんだ?」という疑問も湧きにくいですし、シリーズ構成のワンマン体制であることも1,2クールで明白だと思うので登板回数が少ない3クールは特に重要でないことも明らかだと思います。
      総じて内容は薄いけれどもマイナス点も特に溜めてないので捨て回だったという以上に言うことが思い当たりません。

      >自分は今作はスーパー化のデザインを考える手間すら惜しんだと疑っていますが過去作のスーパー化が評判悪かったってことですかね?

      子供の評判は知りませんが、大人層でスーパー化が好きという話もあまり聞かない気がします。
      オールスターでも「全員スーパー化して戦う!」とかやりませんでしたし、人気があるのかは不透明だと思います。

      私個人としてはむしろ嫌いなほうなので無くても気にしません。
      色は白系に統一され、髪型もショートだった子がロングにされたりして没個性化することがほとんどで、おまけにケバい化粧がつきがちなので私はデザインとしては好みじゃありません。

      とはいえ、必殺技自体に魅力があるとも思わないので子供に対する売りになりそうなものはデザインの変化が一番わかりやすい気もします。女児人気はキャラの性格や活躍よりも色やデザインに左右されやすいなんて話はよく聞きますし。
      デザインの変化が無くても子供人気に問題ないかの試金石なんでしょうかね?

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    2. 丁寧なお返事ありがとうございます
      試金石と聞いて割と腑に落ちましたが個人的には今作では参考にならない部分も多いと思います。というのもパレットとの差別化があまりにもできていないためです。どっちも「よくわからんけど強い必殺技が打てる」だけ(パレットはバフもありますが)で威力の描写も設定を組み込んだストーリーの盛り上がりもありません。ここまでの主さんとの会話を経て、ヒーローがテーマのくせに販促やアクションに対する度を超えた態度の悪さがこの作品が個人的な記録的低評価の理由だと自己分析ができました。ニチアサに求めすぎでしょうか?

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    3. >どっちも「よくわからんけど強い必殺技が打てる」だけ(パレットはバフもありますが)で威力の描写も設定を組み込んだストーリーの盛り上がりもありません。

      プリキュアの装備アイテムはだいたいそんなものだと思います。それ自体は良いことではありませんが。だからこそのスーパー化でのコスチューム変えであり、だからこその「本当に変えて意味があるのか?」という確認という線も考えられると思います。

      改善云々の話ならそもそも前より強いだけのインフレ路線ではなく、抜本的な差別化や個性を強める工夫が必要だと思いますがプリキュアスタッフに抜本的な改革を目指している印象は今のところ無いのであくまで小さいスケールに限って考えています。

      >ヒーローがテーマのくせに販促やアクションに対する度を超えた態度の悪さがこの作品が個人的な記録的低評価の理由だと自己分析ができました

      私の頭の中だと「ヒーローと販促、アクション」に強固なつながりを感じていないので回答は持ち合わせていません。
      付随する傾向はあっても必須ではないと私は考えます。たとえば販促で言えば活躍させることは販促の主な手法の一つですが、バトルで活躍させる以外にも入手までのドラマで魅せたりする方法もあると思います。
      ヒーローやアクションも然りで、派手なアクションシーンでも破滅的行為で見ていて暗い気持ちになる場面もあるし、ヒーローも「ヒーローとは何か?」と禅問答地味た瞑想や見ている側が「もうがんばらなくていい!」と思うような悲痛なシーンもあるでしょう。

      >ニチアサに求めすぎでしょうか?

      何を求めるかは個人の自由だと思います。
      「よってこの作品は間違っている」みたいに自分の基準で評価したものを一般化や正当化しようとしなければ問題ないと思います。
      一般化や正当化をしたいなら客観的に妥当な基準で測らないと理解は得られないでしょう。

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  4. 管理人さんがオトナプリキュアやオールスターズ映画の感想を書くことはありますか?

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    1. 絶対に書かない!と決めてるわけではないので可能性はありますが、予定もありませんね。

      オトナプリキュアは5好きじゃないし”オトナ”向けも放送前から胡散臭く感じてたので最初から私は向いてないだろうなと思っていましたし、実際印象も内容も予想の範疇なのでこのままならツイッターで軽く書いて終わりだと思います。

      映画は単純に見てないから書かないだけで見たら書くかもしれません。特に見る予定もモチベーションもありませんが。特にオールスターものはオールスター要素だけで上映時間の8割くらいを使いがちですからね…

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  5. あくまでも子供向けなのだなと、改めて子供と見るようになって思いました。
    興味深く記事を拝見しました。
    ストーリーの薄さや繰り返しなど、もうちょっとなんとかならなかったのか?みたいなところは大人の目線からは否めませんが、それでも繰り返し同じシーンが流れることは子供にとっては楽しく、重要なのだと感じています。
    ストーリーを大人向けにしてしまうと今度は対象の子供の理解が難しくて離れてしまいかねないという、なんとも難しい作品だなと思います。

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    1. 私は現状の課題点に関しては子供向けかどうかはあまり関係ないと思っています。
      わかりやすい内容にしようとして深みがなくなったり問題が単純化されていたり、明るく楽しい内容や1話で完結する内容ばかりやっていたりするなら子供向けに作った弊害だと言えると思いますが、ひろプリは特にそうなってはいないと私は考えます。
      テーマ性やキャラクターの掘り下げを上手く行えていなかったり、必須ノルマである販促を上手く取り込めていなかったり、そういうところに起因する問題は大人向けであろうが起きることだと思います。

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