【序文】

・まず始めに言わなければならないことは、私はハチャプリが何を伝えたいのかさっぱり理解できなかったということです。
特に終盤は作品内で語られていることが、全て正気を疑うような内容に聞こえてしまいました。というわけで、以下の内容は私の完全な私見であり、客観性や公平性はありません。基本的に作品の方向性と合わず、ついていけなかった哀れな視聴者の戯言です。作品をもっと理解したいとか、楽しかった思い出を共有したいという方は見ないほうが良いでしょう。


【合わなかった点】

■愛に優劣などない
・私がハチャプリと最もそりが合わなかった点がここです。
ハチャプリでは「めぐみの愛が唯一正しく、それ以外は間違いである」という一神教体制が敷かれています。しかし私は全くそうは思いません。

・愛の定義は1つじゃないし、2人の相手を平等に愛することはできないように共存できない愛もあると思います。そしてどんな愛にも優劣はないと思っています。
手本として示されるべき愛の形、誰もが幸せになれる愛の形、そういった基準で測ることはできても、それで誰かの愛を否定することは誰にも許されないと私は考えます。

・私はレッドの狂気である「どんなものもどうせいつか滅ぶなら、誰かが自分が味わったものと同じ悲しい思いをする前に先に滅ぼしてやる」という考えも他人を思いやる愛と言えると思います。どう見ても理不尽だし迷惑ですが、これも愛には違いないと思います。
クイーンミラージュの憎しみも愛の裏返しだと思います。ミラージュの憎しみは常に人々ではなくブルーに向けられてきました。相手を一心に思うこと、それが愛でなければ愛とはなんでしょうか?

・「めぐみの愛が正しくて、レッドやミラージュの愛は否定されるべき存在である」
ハチャプリのこの主張を私は受け入れることができません。
レッドやミラージュの行為は「愛ではない」という主張をする場ではなく、「それはわかるけど、多くの人にとって迷惑だから止めさせる」という場であって、愛の優劣を決める場ではないと思います。

・めぐみがやったことは力づくで相手を屈服させることで、褒められたものではありません。
子供向けヒーローであるプリキュアの主人公は、子供に見せたい見本として作られていると思います。しかし私には、むしろめぐみのほうが否定されるべき存在に思えました。なぜめぐみが正しいものとして描かれるのか、そこにスタッフがどういう思いを込めているのか未だに想像もつきません。



■愛乃めぐみ

・ハチャプリの登場人物の中でネックだった人物、それは主人公のキュアラブリーこと、愛乃めぐみだったと思います。
ブルーでないのは意外に思われるかもしれませんが、私はブルーはそれほど問題だと思っていません。なぜなら彼は徹頭徹尾クズだったからです。普通の女の子がプリキュアになって戦わないといけないのも、問題がややこしくなるのも、敵がやってくるのも全てブルーがクズだったせいです。ろくでもない人物ですが、筋は通っています。良いところが1つもない清々しいほどの外道なので、どんな事態に陥ろうと当然に思えました。

・私がめぐみに対して一番問題に感じたのは、めぐみが何事にも不誠実だった点です。
めぐみはダメな子です。それも自分がダメだと自覚できていないとてもダメな子です。ダメ人間といえば、めぐみの相棒であるヒメもダメな子でした。しかしめぐみのダメさはヒメとは比べものになりません。
ヒメは自分の弱さを自覚し、努力していました。ヒメは逃げないことに全力を尽くすので精一杯で、前に進む力が残っていないことが問題だっただけです。だからめぐみや誠司のおかげで自信がついて逃げる必要がなくなり、前に進むことに全力を注いだとき、ヒメは自分を変えることができました。
この点がめぐみと大きく違う点です。めぐみは自分の弱さと向き合っていません。
ロケットの回のように自分の実力の無さを痛感しても、自分を変えようとは思いません。前と変わらず、ただ「私は誰かを助けたい」と言うだけです。それはただの欲求で、最低の自己満足です。助けを求める人がいても、届かない手を伸ばして何に助けになると言うのでしょうか。
ヒメは無駄とはいえ必死に努力しました。誠司はめぐみを守れるようになるために空手を習いました。それに比べて、何もしないめぐみはとても不真面目だと思います。
私はめぐみがプリキュアになったことは、作中で最も不幸な出来事だったと思います。借り物の力で強くなっても本当に強くはなれません。むしろ逃げ場になるだけです。他の3人はいずれプリキュアの力を必要としなくなるでしょうが、めぐみがプリキュアの力を手放せる日は想像できません。

・私がめぐみを”不誠実”と呼ぶ理由はもう一つあります。
それはめぐみが人の話を聞こうとしなかったからです。めぐみはミラージュのときも、誠司のときも、レッドのときも、何を言われても自分の主張を繰り返すだけでした。相手の言葉を真摯に受け止めていません。相手の剥き出しの感情には向き合おうとしたことすらありません。いつもいつも自分の望むことを言うばかりです。人と話すときでさえ自己満足の人助けの考え方と同じです。当然相手とはわかり合えません。そして最後は力づくです。これでめぐみ自身は相手のことをわかった気でいるのだから堪りません。自分のみならず相手までも自己満足に使うのは。相手に対してもとても失礼な行為だと思います。

・めぐみの人格描写以外にダメだった点もあります。話の展開に説得力がなかったことです。
ミラージュやレッドを説得する際に「愛があれば困難にも挫けない」という内容を掲げていました。しかし、そもそもめぐみが困難に直面したことが数えるほどしかありません。アンラブリーに指摘を受けたときには、仲間が擁護しただけでめぐみは何も言い返せていません。ロケットのときには、自分の弱さに気づいただけで終わってしまい、その後何もしませんでした。ただ、いつも開き直っていただけです。これでは全く説得力がありません。「自分に都合よく考えれば、挫けずにポジティブに生きられる」という趣旨ならば納得しますが。
そういう話をするにはあまりに世界がめぐみに優しすぎたと思います。めぐみを中心に話を進めるのは問題ありませんが、世界までめぐみを中心に回っては都合が良すぎます。めぐみの人格だけでなく、話の構成にも問題があったと思います。

■様々な設定の形骸化、及び無駄に世界を広げすぎたこと
・ハチャプリにはその場で終わってしまった話がたくさんありました。
ロケットもそうですし、プリカードの願いを叶える設定もそうです。それ以外にもヒメの進歩やゆうゆうのご飯信仰、いおなの復讐などメインキャラのことでさえも一旦節目を迎えたら、その後はまるで何もなかったかのように話が進んできました。

・形骸化された設定の筆頭は”世界中のプリキュア”だと思います。
面白そうな素材なのにまるで存在感がありませんでした。他のプリキュアとの関わりも知らない間にキュアハニーが1人で片付けてしまいました。それなのに最終回ではラブリーに力を貸したような扱いになっていて首をかしげました。世界中のプリキュアでラブリーのことを知っていて応援した人はテンダーとハワイの2人以外にいたのでしょうか? キュアハニーがやったことにラブリーも関わっていればそれだけで展開が自然になったのに、設定を雑に扱いフォローもせずに放置して最後だけ使った結果が意味不明なパワーアップでした。基本的なストーリー展開が元々めぐみの内輪だけで終わっているのに、世界中のプリキュアという設定の持つスケール感の大きさと対比されて、話が更にうそ臭くなってしまいました。

・たぶん世界中のプリキュアは上からの命令で嫌々入れた設定なんでしょうね。でも嫌でも何でもやると決まったことなら、ちゃんと話に落としこんでほしいです。

■めぐみ以外が空気。
・追加戦士が空気になるのはプリキュアでよくあることなのですが、序盤からいるヒメやゆうゆうまで空気にされてしまいました。終盤にメインキャラと呼べるのは、めぐみとブルーと誠司だけだったと思います。

・空気になるのはともかく、蔑ろにされるのは止めてほしかったです。
ヒメはちゃんと進歩したはずなのにときどき思い出したようにわがままを言い出すし、いおなに至っては特徴がないせいでクリスマス回では一回だけやった倹約家設定を持ちだしていました。こういうのは止めてほしいです。もっとちゃんとキャラのことを考えて作ってほしいです。




【良かった点】

■ED
・EDはとても素晴らしかったです。
肉感のあるモデリング。滑らかな動き。本編と違和感のない塗り。どれをとっても感動的なクオリティでした。これまでは「スマプリ>フレプリ>その他」という印象でしたが一瞬で塗り替えてくれました。願わくば、今後「プリキュアはEDさえ見ればいい」なんて言われないでほしいです。

■序盤のヒメ
・私は序盤のヒメが好きでした。がんばらないダメな子はたくさんいますが、がんばるダメな子は珍しいと思いました。

・物語開始時のヒメは偉いと思うんです。
ヒメはがんばってるんですよ。がんばってもどうにもならないことってすごく辛いことです。これ以上がんばりようがないと思うくらいがんばったら、もう先がなくなってしまうんですから。
自分は弱いと自覚していて敵にも舐められ、更には自分よりもずっと強いフォーチュンまでいました。でもヒメはフォーチュンに任せて、自分は戦うことを止めようとは全く考えていませんでした。家族もなく、辛さをわかってくれる味方もなく、たった1人なのに戦いを続けていました。なかなかできることではないと思います。
ヒメは戦いも対人関係も苦手だとわかっているのに、逃げ腰になりながらも逃げようとはしませんでした。ヒメって「恐い」とは思っても「嫌だ」とは思わないんですよね。本当に勇気のある良い子だなと好きになりました。

・その分、2クール目以降の空気っぷりは悲しかったです。
空気だけならともかく退化したような描写までありました。出番が少ないのは仕方ないにしても、それならそれで「いつの間にかめぐみも知らない子と友達になっていた」とかそういうのをもっと見たかったです。

■誠司
・誠司は自分でも予想外でした。
始めは「いつものイケメンか」と冷めた印象だったのですが、本当に心の底からイケメンで見ているうちにいつの間にか好感度が上がっていました。途中からは「もう誠司がプリキュアになってくれたらいいのに」と思っていました。
強いし頭もいいけど完全無敵な王子様タイプではなく、妥協もするし、自分の身の程もわかってるリアルな感じが良かったです。

・その分、終盤の扱いはショックでした。
巷では「悪堕ち」なんて言われていますが、あれは悪堕ちではありません。ただの洗脳です。誠司から生まれたサイアークと違いはありません。めぐみと対峙する絶好の機会があんな形で台無しにされてがっかりしました。言葉一つもぶつけないまま、めぐみだけ自己完結して終わりだなんて酷すぎます。

・私がめぐみを嫌いな理由の半分はたぶん誠司が好きだからだと思います。
めぐみはいつも甘えてばかりで、いつまで誠司の人生を台無しにすれば気が済むのかと憤りを感じてしまいました。でも客観的に考えれば、めぐみが今の今までダメな子なのは誠司のせいでもあるんですよね。めぐみ1人だったらもっと早くロケット回のような困難に直面して、挫折するなり真剣に向き合って変わるなりしていたはずです。そうならなかったのは恐らく誠司が助けていたからでしょう。めぐみの側に誠司がいなかったら、誠司がもっと実力のない人間だったら、めぐみはもっとマシな人格になっていたと思います。誠司に関しては自業自得と言われてしまえばそれまでだと思います。

・それでも私は誠司は救われるべきだと思っています。
誠司ほど真っ当な人間が救われない世界なんて間違っています。他の何が犠牲になろうと誠司には幸せになる権利がある。私はそう思っています。

■敵の人物描写
・三幹部とミラージュ様の造形は素晴らしかったと思います。
プリキュアたちよりも遥かに魅力的で困ってしまうほどでした。根拠のない思想を掲げるプリキュアに対して、彼らの考え方にはリアリティがありました。ただの自分勝手ではなく、以前はむしろ情熱的で真っ当な人間だったのに絶望した結果ああなったのだと納得させるものが言葉の節々にありました。ナマケルダやオレスキーの言葉には思わず共感してしまうところが少なくありませんでした。おかげでバトルの間はずっと幹部のほうにばかり気が行っていました。

・ミラージュ様は正義の味方にしか見えませんでした。
言っていることも理にかなっているし、ブルーに復讐する資格も充分あります。彼女がダメだったら、およそ全ての復讐譚は成り立たないでしょう。回を重ねるごとにブルーの悪行がどんどん増えていくのでますます応援するようになっていきました。「ブルーを倒すには、人々を一旦不幸に落として力の源を断つ必要がある」と言われたら、それなら仕方がないと納得できたと思います。死力を尽くして戦ったのにラブリーなんかに負けてしまったのは残念でなりませんでした。

・レッドも出番は短いながらなかなか面白い人物でした。
発想がちゃんと神らしいんですよね。星が一つ滅ぶまでの数千年でさえ「一瞬」と言ってのけるのは神らしいスケールの大きさに思えました。それでいて人間味もあるところが共感できました。自分のやっていることが理不尽だとわかっていながら、それでも妙な義務感に燃えて実行しようとしていたことにとても人間らしさを感じました。そういうことってありますよね。幹部たちはデフォルメされて一面的にされていましたが、レッドは台詞の節々に様々な表情が伺えて面白いキャラだったと思います。

■アクション
・アクションの見栄えはとても良かったです。
毎回異なるいろいろな技が出てきて目にも鮮やかですし、技以外のシンプルな動きも一つ一つ丁寧に作られていました。

・ただし、ある意味逆効果だったかなと思うところもあります。
ハチャプリも結局いつものプリキュア方式だったからです。「プリキュアの劣勢→幹部が『xxxなんてくだらない』と馬鹿にする→『くだらなくない!』とプリキュアがキレる→必殺技ぶっぱで浄化」 いい加減このパターンには飽き飽きです。ハチャプリもアクションは良いものの、この流れの前座でしかなく、アクションで盛り上がれば盛り上がるほどいつものパターンにうんざりさせられました。フレプリみたいに格闘戦でダウンさせて隙を作ってから必殺技じゃダメなんですかねぇ…

・フォームチェンジの必殺技をCGにしたのは何とも言えない感じでした。
クオリティ自体は悪くないのですが、質感が違って本編から浮いていて全体としてはいまいちになっていました。完全なバンクなところも、アドリブが多い手描きアクションとつなげるには相性が悪かったと思います。使い方次第では面白くなりそうですけど、今回は入れてみただけで全然使いこなせていませんでした。次回以降に期待します。

■カワルンルン
・衣装交換も毎回の楽しみとして機能していて良かったと思います。
完全な販促要素で脚本に嫌われていたのは残念でした。「変身」という要素を戦闘以外でも身近に取り入れられるので面白いと思うんですけどね。

■大胆な切り方
・めぐみのお母さんの問題が「お母さんは大丈夫だから」で完全に終わったことは衝撃的でした。
めぐみのお母さんの病気といえば、めぐみの人格形成に大きく影響を及ぼした重要な要素で、当初めぐみがプリカードで叶えようとしていたことも病気の治療でした。そんな重要な要素があっさりと片付けられ、その後は何もなかったように話が進んでいきました。いつまでも引っ張るネタではないからそれはそれでいいかと思った時期もあったのですが、お母さんがサイアークに変えられてもめぐみが無反応だったり、お母さんが最終回に顔も見せなかったりしたことには愕然としました。まさかそこまで完全に切り捨てられるとは予想を遥かに超えていました。

・この大胆な切り方はすごいなと怒るどころか感心しました。
私が脚本家だったらどこかで妥協していたと思います。「最終回くらいは出して元気な顔を見せたほうが良いよな」とか考えてしまいます。1ミリのぶれもなくやりきったことはブルーのクズさとも共通しています。内容の良し悪しはともかく、この豪腕さはそうそう見られるものではないと思います。


【総合感想】

・アクションや敵陣営に清々しいまでにクズな神様など面白い要素もあったのですが、肝心なところで合わない作品でした。面白い部分がかえって「なんでそうなる!?」と落差として悪く働いていた印象です。もっと淡々としていたほうが全体の印象は良かったかもしれません。

・正直言って見ていてかなり辛かったです。
プリキュアのしていることが理不尽に見えると、ただの暴力でしかないのだなぁとしみじみ感じました。「幻影帝国がんばれ!プリキュア負けろ!」と何度思ったことか。敵を魅力的に描くのも考えものなんですね。以前はなぜこんなにおもしろいのに、みんな悪役を描かないのだろうと不思議に思うこともありましたが、理由がわかりました。悪の魅力は劇薬であり、使いこなせないと逆効果になるから使われないのですね。それがわかったのは一つの収穫でした。

・しかし受けた精神的ダメージは甚大です。
プリキュアを見続けるべきなのかと迷いが生じています。本当に面白いのか、プリキュアというだけで一年も使う価値があるのか、それらに対する答えを失ってしまいました。
次のプリキュアが新たな光明をもたらしてくれることを祈ります。