『動物戦隊ジュウオウジャー』第35話「ジュウオウジャー最後の日」:感想

2016年10月23日

【ストーリー】

■前回からの”つながり”
・前回の大和の保護思想を受けての展開が熱かったです。
5人がバングレイの策略に対処できたのも前回騙されて警戒していたからで、つながりを強調した回でストーリー展開も前回との関連性を強めてある点が上手いと思いました。

・戦隊側だけで終わらせず、バングレイとクバルにつなげたのも上手いです。
あれもつながりには違いありませんよね。どんな苦境でも切れない6人のつながりに対し、状況に応じて相手が求めていようがつながりを断ち切る悪党側。文字通り「手を切る」のもインパクトがありました。小悪党感の漂っていたクバルの悪役度を大幅に上げたのも一石二鳥で見事でした。

・全部合体ロボの登場とつながりを組み合わせるのも良かったです。
戦隊に不可欠な多人数要素をちゃんと話に組み込んでありました。「一人の強さでは今の自分の強さ以上は引き出せない。協力すればもっと先がある。(だから俺たちは勝つ!)」という展開自体は戦隊ではベタですが、話全体で一貫して進行させたことで説得力が感じられました。よく「戦隊は話のフォーマットが決まっていてやれることが少ないから…」なんてことを盛り上がらないときの言い訳に聞きますが、私はフォーマットに則ってもまだまだ全然やれると思います。

■弱気の描き方
・弱気になった大和の描き方も良かったです。
いつも活躍している主役の弱い面を描くのはなかなか難しいです。単純に弱そうにするとかっこ悪く見えてしまいますし、唐突にやりだすとただの例外に見えてしまい見ている側の気持ちがシチュエーションについていきません。

・その点、今回のジュウオウジャーは上手くやっていました。
いつもどおりでいるほうがむしろおかしいシチュエーションを作って自然な流れにしてありました。今回の話全体のテーマともつながっていて最後まで綺麗に落としてありました。さすが香村さんですね。

■信頼感
・個人的にはゴリラの相手を5人に任せたところが気に入りました。
前回負けた相手だから大和に雪辱戦をやらせたいところですが、あえてそれを仲間に任せることで信頼が感じられました。その後のバトルもコンビネーションが炸裂していて、前回の作戦が上手く行っていたらこんな感じにバングレイを倒したのだろうなと情景が浮かんできました。


【アクション】

■ワイルドトウサイドデカキング
・予告編でも思いましたがデザインが良いですね。
スリムだけど巨大感もあるアンビバレンツなところが好きです。

・個人的には合体シークエンスがとても良かったです
「枠が大きいからみんな入れると言うけどホエールだけ大きすぎない?」と思っていたら実際いっぱいいっぱいで枠に引っかかっていました。頭の角を外してようやく通ったかと思ったらそのまま合体シークエンスに移行して最後に外した角がくっつくところがとても自然でした。
コミカルで楽しくてそれでいてスマートで自然な合体方式で、一石三鳥という感じでした。これまで見た全部合体の中では一番好きかもしれません。


次回はハロウィン回で一休みです。
現状は特に進展していることのないフラットな状況なので、全体の状況がどう動いていくのか楽しみです。

コメント

12 件のコメント :

  1. 今回はとても熱い回でしたね
    これまで一貫して大和が掲げてきた"つながり"の価値が十二分に表現されたお話で
    その中で大和の"つながり"に対する絶望からの安堵そして怒りの展開も見事でした
    大和役中尾さんの絶望の叫びもすごく響きました
    また、5人がホエールと共に救出に向かうことを決めるシーンもすごく丁寧に書かれていて
    ドラマの見ごたえが素晴らしかったです、
    特撮って熱いなと久々に再確認させられた話でした
    仰る通り香村さんにはロジカルにかつ盛り上げるというかなりバランスの難しいドラマへの安心感が非常にありますね。

    失礼いたしました

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    1. 流れを作ってドラマを生み出しているところは香村さんらしいと思います。
      シリーズ構成としては重要な適性だと思います。

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  2. バングレイが手を切り落とされたシーンで思い出したのですが、彼の左手と右脚も義肢っぽいんですよね。もしかしてクバルの前にも、「記憶を読んで弱みを握り従わせるも、土壇場で寝首を掻かれる」という経験が何度かあったのかもしれませんね。これまで大和のつながりを破壊することに執着していたのも、自身がこれまで他者とまともにつながりを構築出来なかったことへの苛立ちや不甲斐なさが根底にあると考えると、極悪人ながらも若干同情してしまう部分もあります。あくまで私の勝手な憶測ですが。

    いずれにしても、バングレイは単なる怪人節約係に留まらない活躍をしてくれましたね。特に敵組織とのドラマが希薄な今作では、話を盛り上げるために欠かせない存在だったと思います。

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    1. >もしかしてクバルの前にも、「記憶を読んで弱みを握り従わせるも、土壇場で寝首を掻かれる」という経験が何度かあったのかもしれませんね。

      そういう可能性も考えられると思います。
      無難に行くならデザイン元のエイハブ船長とフック船長に由来するものでしょうが。絆などを積極的に否定する心情は推測するしかありませんね。負傷を心情関連につなげることも考えられますし、「巨獣ハンター稼業で腕や足を失うほどの怪我を負ってもバングレイはハンターを続け、その生き方についていけなくなり仲間は去っていった。だからバングレイは絆などを信じない」といった線も考えられるでしょう。

      >特に敵組織とのドラマが希薄な今作では、話を盛り上げるために欠かせない存在だったと思います。

      そうですね。魅力的な悪役だったことは確かです。
      それが良いことかどうかというと少し難しい問題です。本来的にはそれをデスガリアンでやるべきだったのではないかと思うところもあります。長期作品では失敗からのリカバーや思いつきの盛り込みも常なので、評価する面次第で良くも悪くも捉えられます。

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  3. とても熱い回でした。
    絶望感あふれる展開からの一発逆転、そして大勝利という展開はベタですが、
    そこに強いメッセージ性を込めるだけでここまで面白く出来るんですね。
    香村さんの実力に感服してしまいました。

    やはり主役の演技力って物語に深く関わってくるんですね。
    中尾さんの演技力もあって、
    大和が絶望するシーンがより心にくるものになっていたように思います。
    その後に仲間が死んでいないと分かっても、少しの間放心状態になっていたのがとてもリアルで怖かったです。

    さて今回でおそらく完全にバングレイは消滅したわけですが、個人的にバングレイのキャラが濃すぎて鳥男(+ラリーさん)の存在を忘れかけていました。
    今からあと1クールほどしか残っていませんが鳥男の物語を書くことができるのでしょうか。
    おそらく香村さんのことでしょうからコンパクトかつ丁寧にまとめてくれるような気がするのですが、
    正直な話、ここ最近の話のどこかで少しでも鳥男をだしてもらえれば良かったような気がします。

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    1. >絶望感あふれる展開からの一発逆転、そして大勝利という展開はベタですが、
      そこに強いメッセージ性を込めるだけでここまで面白く出来るんですね。

      こういうのを見るとストーリー構成の妙というのも実感しますね。
      その場しのぎと思いつきの一朝一夕のストーリー展開では不可能な味わいです。

      >中尾さんの演技力もあって、
      大和が絶望するシーンがより心にくるものになっていたように思います。

      大和役の方の演技力にはだいぶ底上げされていますね。
      役者に関しては運不運で言っても詮無きですが、それでもまともな演技だとホッとします。

      >今からあと1クールほどしか残っていませんが鳥男の物語を書くことができるのでしょうか。

      鳥男はどうするんでしょうね?
      こんなに放置するなら2クール終了前に一段落させておくほうが良いと思うのですが…
      長く不在でおかしくない状況というと、
      1)ジニスに捕まってた
      2)秘密裏に何か計画や調査を進めていた
      といった展開くらいしか思いつきません。どちらもあまり面白くないので避けてほしいところです。香村さんには何か秘策があるんでしょうかね。

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  4. 今回素晴らしかったですね。香村さんらしいカタルシスのある頭脳戦後半の逆転劇でした。なぜ逆転できたかも、過去の回をちゃんと押さえての警戒等、説得力がありましたね。

    >前回の大和の保護思想を受けての展開が熱かったです。

    前回の展開をこう使ってきたか、とぐっときましたね。そして個人的にはセラが珍しく多数派側でなく、操を後押しして皆を説得できたのも高ポイントです。

    >・全部合体ロボの登場とつながりを組み合わせるのも良かったです。

    前回の合体の流れを遊びっぽい、軽い感じにしたのはこのためだったのかとも思いました。
    あのときは遊んでいるみたいで、ユニークで楽しかったのですが、決して燃えるシチュエーションではなかった。操との絆もあの時は仲間としてなんとか受け入れたばかり、扱い方を覚えたばかりでした。
    今回は同じメンバーながら、操も本当の仲間として自分の意見で皆にも影響を与え、力を会わせていて、絆の強まりという点でもあの時とは段違いで劇熱な展開と上手く差別化していたのではと思います。
    また長きにわたる操更生プロジェクトのゴールでもあるかもしれないと思いました。

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    1. >そして個人的にはセラが珍しく多数派側でなく、操を後押しして皆を説得できたのも高ポイントです。

      そうですね。セラの自己主張は珍しかったです。
      セラに与えられた中では今まで一番良い出番だったと思います。

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  5. 今回すごく感心したのは、ジュウオウファイナルが戦隊の定番である合体巨大武器と同じフォームで演出されたことです
    初登場時その破壊力と反動による扱いにくさを印象づけ、今回でその反動をみんなで文字通り支えるというのは、ストーリーとも自然に繋がっている上に定番の合体巨大武器のフォームとも繋げるのは本当にすごいと思いました
    定番ネタを定番だからとそのまま持ってこず、ストーリーと演出両方からしっかりと説得力を持たせる、こういう姿勢は素晴らしいです。

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    1. あれ、良かったですよね。
      威力と反動の強さはこれまでに何度も描かれていましたし、バングレイ相手ならなおさら全力でいかないといけませんし、みんなで支える構図を始めてやるのにも今回がぴったりでした。
      合体バズーカをするときの他のメンバーは大きなツッコミどころでしたがシンプルで力強い良い答えだったと思います。シンプルな分、他の人が真似るのはかえって難しいでしょうね。描き方が丁寧な香村さんならではのやり方だったと思います。

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  6. 今回は全体の流れや五人が助かった方法などには特筆すべきものはありませんが、細部を徹底的に詰めることでここまで盛り上がる展開になるのですね。絶望に突き落とされる大和、バングレイの所業から罠に気づく展開、巨大戦まで配慮が行き届いていました。初シリーズ構成とは思えない完成度です。
    また、「一人ではできないことが、みんなとならできる」という定番でベタな台詞を、操に言わせることでこれ以上ない説得力に押し上げていたのが見事でした。

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    1. こういうのを見ると心が洗われますね。
      奇をてらわない王道でもまだまだ面白くできると実感します。

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