【総評】

■良くもないけど悪くもない
・全体の結論としてはこれです。目立った悪いところもないけれども良いところもありません。一言で言えば「薄い」と思います。全話見た後でも、オススメする理由も止めたほうがいいと思う理由も具体的に思いつきません。

■最大の問題点:強みが見当たらないこと
・ドライブの最大の問題点は強みが見当たらないことだと思います。
ストーリーが王道で平凡です。これ自体は悪いことではありません。しかし先の出来事に期待できるものがあまりなく、牽引力が弱いのも確かです。この場合、キャラを中心にして物語を作るのが定石です。しかしドライブは登場人物の掘り下げが少なく、キャラが薄いです。これでは物語が成り立ちません。アクションや玩具の使い方など単独で成り立つ要素も冴えがなく、「ドライブはここが魅力的」と断言できる強みが見当たりませんでした。

・強みがあることは重要だと思います。
強みとは言い換えれば見どころです。「とりあえずこれが見れれば満足」と言える要素がないと1話ごとの進展が遅い長期作品では辛くなります。視聴者が自発的に期待できるポイントが見つけられないと満足感が得られません。ドライブを見ていて、この点がきつかったです。

■活かされない特徴
・ドライブのキャッチコピーは「この男、刑事で仮面ライダー」で、もう1つの特徴は車に乗るライダーだったことです。ストーリー面では刑事ものということで「バディ(相棒)」という点が強調されていました。玩具/アクション面ではメモリやロックシードにあたるシフトカー、及びシフトカーを使いタイヤを装備して能力が変わることが特徴でした。しかし特徴はあまり活かされませんでした。

・刑事で仮面ライダー
刑事要素はお飾りですぐに空気化しました。それどころか設定が足を引っ張っていることさえありました。後半の主人公は私情で動くことが増えていき、刑事が公共の正義のためではなく自分の思想で動いていいのだろうかと疑問に感じるところがいくつもありました。

・車に乗る仮面ライダー
あまり車に乗りませんでした。巨大戦もほとんどなく、公道を走れないため敵とのカーチェイスもなく、ただの移動手段でしかありませんでした。それどころか移動手段としてハイエースのような普通の車を使うこともありました。バイク以外の乗り物としてはWのリボルギャリーや電王のデンライナーのほうがよほど存在感があったと思います。

車というと誰かと会話をする場になったり、空間としての役割も持てるはずなのですが基本的に主人公の一人乗りでそういった面でもポテンシャルが活かされることはありませんでした。

・バディ要素
人格のある変身ベルトであるベルトさんはいつもいっしょにいるわりに序盤以外は異様に台詞が少なく、まるで倦怠期の夫婦のようでした。
警察官でヒロインである霧子は序盤は身体能力の高さを活かした相棒らしい活躍があったものの、中盤以降は主人公の心配をするだけのいつものライダーヒロインになってしまいました。

2人とも出番が少なく相棒の力が必要になるシチュエーションもほとんどなく、内容がどうこう以前にバディという要素を掘り下げる気があったように思えません。

・タイヤ交換
デバイスだけでなくタイヤをスーツに組み込む手間と費用のせいか、序盤以降は使われなくなっていきました。最強フォームの特徴であるタイヤカキマゼールですら、玩具では7種類のパターンがあるのに本編で使われたのはたったの3種類のみでした。玩具のメインギミックのはずなのに全然アピールされず、とても不可解でした。

アクションに及ぼした影響は特に酷く、能力を使えないため基本的にひたすら手持ち武器の剣とたまに銃を使うだけの地味な戦いになってしまいました。ああいう能力用デバイスは元は「戦闘中に使う能力や必殺技を小物として商品化したら売れるんじゃない?」という発想から生み出されたものだと思うのですが、面倒だから戦闘に使えないデバイスって何なのでしょう。

・魔進チェイサー
公式にアピールされた点ではありませんが、「魔進チェイサー」はドライブの大きな特徴だったと思います。魔進チェイサーは敵の幹部で1,2クールで何度も戦うことになるライバル的存在です。最大の特徴は敵幹部なのに最初から玩具化が予定されていた点です。手持ち武器やフィギュアなどいくつも作られました。これ自体は面白い試みだったと思います。

しかし問題点もありました。ライバルとして序盤から登場するため魔進チェイサーに時間が割かれ、主人公の進ノ介が販促面で主役でいられたのが1,2話だけで終わってしまったのです。その結果、最初に主人公の掘り下げを行えなかったことが後々どんどん響いていくことになってしまいました。



■ストーリー

・ストーリーはシンプルでした。主人公たちの目的は最初から最後まで「108体のロイミュードを倒し、第二のグローバルフリーズを阻止する」という目的で一貫していました。しかしストーリー展開自体は紆余曲折ありました。

主人公の進ノ介編(1,2話)
魔進チェイサー編(3~11話)
2号ライダー・マッハと強化フォームのデッドヒートの販促期間(12~20話)
魔進チェイサー編完結(21,22話)
仮面ライダーチェイサーの販促&剛とチェイス(23~28話)
進ノ介の父親と仁良編(29~36話)
最終章(37~47話)
*最終話は次回作のゴーストの橋渡し用の特別編。

・まず始まりが衝撃的でした。2話が終わった時点で主人公が物語の主役から外されてしまい、3話から22話までライバルのチェイスが話の中心に据えられていました。

・全体としては、序盤はライバルのチェイスが中心だったのに後半は出番が減っていき最終的には無難な着地に落ち着いてしまい、逆に後半は序盤で空気だった進ノ介が中心に進められていきました。進ノ介は主人公だから描写が薄くても大丈夫と考えたのかもしれませんが失敗だったと思います。全体で見ると一番安定しているのが結果的には空回りしてばかりだった剛だったのはどうかと思います。どのキャラをメインに打ち出しているのかはっきりしません。

・ストーリーの最大の問題点は前半と後半のつながりが薄いことだと思います。
進ノ介の父親の件もラスボスも前半に何の前触れもなく出てきてました。これだけなら珍しくないことなのですがキャラに関してもつながっていないことが問題でした。前半で主要キャラの掘り下げをせずにチェイスを中心に進めていき、26話でようやく一段落したと思ったらいきなり全く関係性の見えない進ノ介の父親の話が提示されました。最終章もまた唐突な展開の繰り返しで、話がぶつ切れに感じました。

・キャラのドラマでつながっていれば良かったのですが、前半で掘り下げが行われていなかったのでキャラの心情にもついていけません。
ストーリー展開は行き当たりばったりで登場人物が何を考えているのかもわからず、どこに視点を置けばいいのか途方に暮れてしまいました。ストーリーに期待するのはオススメできません。

■アクション
・アクションは劣悪でした。ワンパターンでありきたりなアクションばかりで、前作の鎧武に引き続きスタッフのやる気が感じられません。毎話工夫を凝らしている戦隊と比較すると呆れるばかりです。

・ドア銃などギミックが面白い武器もあったのに活かされることがなかったこともマイナスです。盾にできるギミックもユニークなリロードも片手で扱える利便性も、登場回以外では何一つ使われなかったことにショックを受けました。オリジナリティがどうとか言う以前にアクションのクオリティが低いことが問題だと思います。
個人的にはアクションの酷さが一番辛かったです。アクションをかっこよく見せることはヒーロー番組で最も重要であり最低限のノルマだと思います。




【個人的感想】

■ダメなものはダメだった
・シリーズ構成が三条さんと聞いた時点で「(キョウリュウジャーの)全話1人脚本やった直後にまたシリーズ構成なんて可能なのか?」と疑問に思いました。ひょっとしたら三条さんなら何とかしちゃうかもと淡い期待を抱いていましたが、当然ながら無理だったようです。
プロットに関して言えば、展開が行き当たりばったりで考えながら書いているような印象を受けました。キョウリュウジャーでは扱いが非常に上手かったノルマの落とし込みも精彩を欠いていました。それでいてストーリー展開はいつもの王道パターンでまるで良いところがありません。

・これは三条さんが悪いというより、過密スケジュールが終わったばかりの人に仕事を頼んだ側のほうがおかしいと私は思っています。
構想時間が明らかに足りない脚本、やる気のないアクション、1,2話で数個ペースの異常な量の序盤の販促。目に見えて失敗する要素がこれでもかと集まっていました。これで反省会が開かれなかったら本当にヤバいと思います。フォーゼ含めて4作品続けて低迷している状況ですが、面白い作品が出てくることよりも製作体制が改善されることのほうを期待しています。毎回のアクションに工夫が見られるとか玩具の品数が減るなど、一筋でも希望が見つけられる内容になってほしいです。

■主要キャラの印象
・進ノ介
空気でした。序盤で掘り下げが行われなかったことが致命的でした。後半に急に主役にされたときに進ノ介が何を考えているのか全然わかりませんでした。あたかも前半を飛ばして途中から見始めたように感じることが何度もありました。

主な原因としては「相棒」のせいもあると思います。相棒であるはずのベルトさんが序盤以外無口で出番も少なかったため話し相手がいませんでした。もう一人の相棒である霧子も中盤以降はチェイスにべったりになり、進ノ介との関わりが薄くなっていきました。だからといって相棒以外と関わっていると相棒要素が薄れてしまうので特状課のメンバーと親しくなることもできませんでした。

剛が登場してからはしばらく剛が話し相手になってくれたのですが、剛もチェイスと霧子の三角関係で忙しくなり、やがて蛮野関連でフェードアウトしてまた話し相手がいなくなってしまいました。

ヒーローものの場合、話し相手がいなくても戦闘中に敵と問答をする手もあります。しかし進ノ介の場合はそれも無理でした。
進ノ介の正義が警察官という要素で簡略化されてしまっているため進ノ介は「俺は警察官だ!」という以上の主張ができないからです。警察官から逸れると進ノ介のアイデンティティが崩壊してしまうけれども、警察官という枠を超えないと進ノ介の正義を示すこともできません。

考えれば考えるほど最初からわりと詰んでるキャラクターでした。いろいろ面で脚本のしわ寄せがもろにいったキャラだと思います。

・ベルトさん
まさか空気化するとは思っていませんでした。1クール目を除くと、しゃべっているシーンよりも不自然なほどにしゃべらないシーンのほうが多かった印象です。クリスペプラーさんが忙しかったのでしょうか。
極度の秘密主義など人間的に信用できないところも多く、悪い印象のほうが強いです。科学者上司キャラとしては問題ないと思いますが、相棒ではなかったですね…

・霧子
戦えるヒロインとして期待していたのですがダメでした。ある意味ではドライブで一番期待していた点なので本当に残念です。

・剛
自由奔放で型破りな性格で進ノ介とは違う立ち位置になるのかと思ったのですが、けっこう一本調子なキャラでした。素のユーモラスな性格が見えたのはほんの序盤だけで、すぐにチェイスチェイス、ロイミュードロイミュードと設定に囚われてしまい、良さが薄れてしまいました。
しかも最後の相手が小物のゴルドドライブで勝っても全然盛り上がりませんでした。蛮野博士がもっと大物で、話が進むにつれてどんどん悪行が明らかになっていくようなキャラだったら剛の苦悩にも共感できたと思います。会ったこともないのに親子というだけで悩むのは理由が弱すぎたました。

霧子が空気ヒロインだったことも剛にとって災難でした。
姉のためにがんばっているのに当の姉はロイミュードも父親も全く気にしておらず、剛が空回りしているように映ってしまいました。もっと霧子の主義主張が描かれていて存在感のあるキャラクターになっていたら剛も違って見えたと思います。

・チェイス
序盤から中盤まで一番時間をかけて描かれたキャラクターだけあって存在感がありました。
自我と命令の間で揺れ動く様子はアンドロイドらしくドラマチックでした。魔進チェイサーも仮面ライダーチェイサーもかっこよく、一番恵まれていたキャラだと思います。

それだけに後半の大人しさが残念でした。
これといったエピソードもなく、進ノ介の話の影で淡々と進み、無難な結末で終わってしまいました。前半の大半を費やしたキャラとは思えない終わり方でした。
プログラムされた正義との決別やベルトさんとの関係性、チェイスから見た人間とロイミュードの違いなど面白そうな要素はたくさんあったと思います。自爆する前にシグナルバイクと免許証が燃えたらもったいないと言っていましたが、チェイス自身のドラマのほうがよほどもったいないように感じました。

・ハート
進ノ介と並んで何を考えているのかわからないキャラでした。
初めは仲間思いの良いリーダーなのかと思っていました。しかしメディックの蛮行を見過ごしたり、自分の超進化を優先したり、エゴイスティックな行動も目立っていきました。それでも相変わらず友達がどうのと言うことが不可解でした。表と裏のあるキャラクターなのかとも考えたのですが、特にそういうわけではないようで、最後まで考え方がわからないキャラでした。

「悪役だけど人間味がある良いやつ」を描こうとしたのに、悪役としてのイデオロギーを描き忘れてしまったような印象です。人間の迫害なども描かれていないので、なぜ悪事を働くことにこだわったのかさっぱりわかりません。

■満足度の低さの原因
・振り返ってみると期待外れだったと感じるところが多かったです。

・主人公を刑事という設定にしたのは、正義感の強さなど基本的な説明を省略しその分ストーリー展開にスピード感を出すつもりなのかと思いました。
しかし省略され過ぎて進ノ介のキャラが曖昧になり、劇中での扱いも主役はチェイスやハートのほうで、進ノ介は空気になってしまいました。全体の話も一向に進まずスピード感はまるでありませんでした。

・相棒としてヒロインが存在しているのは良いなと思いました。
ライダーのヒロインというと、嘆くか人質にされるばかりで自分からは動こうとしない空気みたいなヒロインばかりでうんざりでした。その点、霧子は主人公よりも人間としての身体能力が高く、自立した警察官として活躍に期待していました。
しかし活躍があったのは序盤だけで結局いつものヒロインになってしまいました。

・マッハも当初は「強いけど制限時間のあるライダー」という位置づけで、そこで差別化を図るのかなと期待していました。しかし時間制限はすぐに克服してしまい、後は普通のかませ犬役の2号ライダーになってしまいました。

・最後まで見て、最も納得がいかなかったことはテーマ性かもしれません。
結論としては「悪とは人の邪な心である」というのがドライブにおける善悪の定義だったようです。これだけではよくある一般論で物足りません。

警察官で正義のヒーローでもある進ノ介。
組織内においては正しいことである処刑を行う死神のチェイス。
大義のために友達を犠牲にする矛盾をはらんだ行動をとるハート。
正義のためなら悪行も為す剛。
序盤の時点でもこれだけ善悪の入り組んだ要素がありながら、結論が単純化されてしまったことに衝撃を受けました。

・特に味方になった後のチェイスの正義が扱われなかったことは不思議でしょうがありませんでした。
チェイスがよく口にする「人間を守るのが俺の使命だ」という思考はベルトさんがプログラムしたものに準じています。本当にそれがチェイスの考えていることなのかは定かではありません。ここを突き詰めていくだけでも1つの作品が作れるほど広がりを感じさせる要素でした。

・「できるからといってやるとは限らない」というのは、それは正論なのですが納得はいきません。この善悪の定義に限らず、いろいろ膨らみそうなのに話が何も膨らまないところがドライブのもやもやするところだと思っています。

・これで期待したものとは別のことで内容があるならまだ納得がいきます。自分に合わなかっただけだと考えられますので。私にとって井上敏樹作品はこのパターンです。
しかしドライブの場合、他の何かが見当たりません。それ以前にこの作品の魅力が何なのか総評を書き終えた今でも断言できずにいます。始めは面白そうだと期待したところは、ほとんどが後で期待を裏切られることになってしまいました。具体的に形になったところが思い当たらないことが見た後の満足感の低さの原因だと思います。