これがボリウッドか!! インド映画『ロボット』:感想&レビュー

2013年5月4日
インド映画がSFロボットで殴りこんできた!と一部で話題になった映画『ロボット』を見ました。
いわゆるボリウッド作品を見るのは初めてでしたがいろいろと思うところがありました。確かにこのエネルギーはすごいです。

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パッケージはこんなちゃちいエロSF映画みたいですが、主役は後ろにずらっと並んでるおっさんのほうですよ。
どんな内容かというというと↓こんな感じです。


【アクション】

■ロボットならではのアクション
・トレーラーの通り、見せ場はロボット組体操です!
球状になって全方位射撃したり、筒型になって人間をロードローラーしたり、果てはヘビ型になったりとやりたい放題。かっこよさ0の動きが逆に良いですね。実際見るとけっこうテンポが悪くてトレーラーほどのインパクトはないんですが、それでも『これも有りだな。』と思わせる力があります。
・最近のロボットものは日本もハリウッドもかっこつけちゃってて、こういう無茶苦茶さが足りない気がします。ボリウッドのダイナミズムはこの辺りにあるのかなと感じます。

■ボリウッドと言えば…
・ボリウッドの代名詞。と言えばダンスです。この映画もアクションSF映画なのにダンス踊りまくりです。
驚くことにアクションシーンよりダンスが多いんです。ミュージカルみたいなノリで突然ダンス空間に突入してダンスを踊りだすんです。初見だと呆気にとられましたけど、意外と良いです。
ミュージカル同様にその時の感情を表す内容なんですが、説明的でありながらもダンスで楽しめるようになっててこれは演出手法として有りですなぁ。踊りながらなので、創造主に逆らうようなすごいことをさらっと言えたりポテンシャルの高さが伺えます。

【ストーリー】
■ダンス映画と侮る無かれ

・ストーリーは意外なことに本格SFロボットものです。トレーラーの軽いノリからは想像もつかない重厚感のあるストーリーでした。それも古典を下敷きにしながら独自性も加えた本格的な脚本です。
ストーリーのベースは、
兵器として作られたロボット、チッティが感情を与えられ、その結果博士の彼女のヒロインをめぐって嫉妬にかられて反逆する。
というフランケンシュタインの怪物を彷彿とさせる王道の内容です。

・ところが王道もちゃんとフォロワーならではの捻りが加えてあって、ニヤリとさせられます。
博士がロボットを作った理由、それは… 兵器として軍に売り込むため。
当然ロボット三原則もつけてない。
酷い理由ですがそこまで外道ではなく、兵士の代わりに戦い犠牲を減らすという人道的目的が主眼になっています。名声欲も隠さないですけどね。
ですが同じ目的で開発されたガトリング同様、チッティも本来の意図とは違った形でその力を振るうことになってしまいます。

■機械を狂わせたもの、それは感情
・感情をめぐる物語といえば自意識のあるロボットにおける定番です。
個人的にはこの映画のアプローチ、かなり好きです。というのもロボットに感情が芽生えるまでのプロセスが面白い。周りの人間の感情とその行動の結果に端を発するのが興味を引かれます。

■少女の死


・まず、とある出来事がきっかけで科学者議会から失敗作の烙印を押されるのですが、その原因が少女の死。
アパートが火事になり、高性能さをフルに発揮して次々と取り残された人々を助けるチッティ。その中に一人だけ助けられなかった少女がいました。彼女は入浴中だったため裸に外に出ることを拒みますが、その意味が理解できないチッティは『自分も裸だ。(人口表皮が全て熱で溶けているため)』と言い、強引に助け出します。野次馬に裸を見られたことに絶望した彼女は車道に飛び込み、自ら命を絶ってしまったのです。

・このシーンが衝撃的でした。さっきまでの明るいノリから一転、車にはねられ地面に転がるまでがリアルに描かれています。そしてその後の博士の『恥を理解できない馬鹿め!』という一言。こんな重くて、文化的側面に関わる内容をこの映画はやるのかと本当に驚きました。

■感情の芽生え
・この一件をきっかけに博士はチッティに感情をプログラムしようと試みます。そして落雷をきっかけについに感情に芽生えます。(『アンパンマンかよ!』ともちろんツッコミましたw)
しかしそれが不幸の始まりでした。感情に目覚めたチッティは博士の彼女を愛してしまったのです。

・ここの描写がまた面白かったです。機械の身体の中に花が咲き、突然のダンスシーン。彼女の誕生日にプレゼントしようとする博士に対抗して、自分も買おうとして『博士のクレジットカードの番号もサインの仕方も全部知ってます。』と脅す始末。チッティのコミカルな感情的対応に思わず感情移入してしまいます。

■新たなる感情のインプット
・完璧なチッティですが、彼女は無情にも機械と人間の恋なんて有り得ないと博士との結婚を決めてしまいます。
博士もチッティが邪魔になり、軍に払い下げようと売り込みます。しかし恋に夢中なチッティはうわの空で大失敗。失敗に激怒した博士にバラバラに切り刻まれ、廃棄されてしまいます。
死にたくない。まだ生きて彼女を愛したいと願う気持ちが身体を動かし、チッティはゴミ溜めの中で自分を組み直しました。彼を拾ったのが博士の恩師にしてライバルのボラ教授。教授はチッティを修理し、そして自分の開発した破壊チップを埋め込んだのです。

再起動したチッティは結婚式を襲撃し彼女をさらい、邪魔をする警察を殺します。さらに戦力拡充のために自らを複製し、邪魔になった教授まで手にかけました。新たな感情で狂ったチッティは愛しているはずの彼女を脅し、物のように扱うほどに変貌してしまったのです。

・自らの強化。自分を複製。人工細胞を使って彼女に子供を産ませようとするとかロボット三原則完全無視の行動が面白いです。それもロボットらしい合理的な考え方をユーモラスに表現してて、短時間でちょっとしたデストピアに仕上がってます。この辺りに作者のSF愛を感じずにはいられません。

■ロボット対人間の死闘の末に
・激しい戦いの末に博士の作戦が功を奏し、チッティから破壊チップを排出。正気に戻すことに成功しました。
自分の複製を全て破壊し、裁判にかけられた博士もその論理的思考で救ったチッティ。しかしその高性能は今の人類の手に余るとして解体処分を命じられてしまいます。
チッティの解体をためらう博士に『手伝いましょうか?』と声をかけ、自らの身体を手際よく分解していくチッティ。『言われた通り、自分には感情が無かったよ。』とうそぶきながらも、自分の助けた赤ん坊が自分の名前を名付けられたと知り一瞬固まるその姿。教授の遺影に向かい『人間は身勝手な感情を排除できない不完全な存在だ。自分は人間じゃなくて良かったよ。』とつぶやく一方で、最後まで周りの人たちを悲しませないよう労るその姿。そして最後に『私は幸せでした。』と言い残し、チッティは機能停止しました。

・このシーンは泣きそうでした。人の感情に翻弄され、自分さえ見失った後にさえチッティはどこまでも善良で従順なままです。ロボットの悲哀がこのシーンに詰まっていると思います。

【感想】
・正直言って、ボリウッド舐めてました。ダンスとか…と思ってました。
実際序盤はテンポがゆっくりでつまらないと思いました。でも少女の死をきっかけに一気に話が加速しました。それまでは、こんなにも骨太なSFロボットものだとは夢にも思いませんでした。
ボリウッドとか抜きにしてもロボットを題材にした映画として優れていると思います。久しくテーマ性で心が動いたことはありませんでしたが、映像作品ならではの表現で嬉しくなりました。

■ただ欠点が・・・
・ストーリーも映像も面白いのですが一つだけ大きな欠点があります。
それは放映時間。2時間20分もある超大作なんです。調べて初めて知ったんですが、しかも日本版はカットされててオリジナルは40分増しの3時間だそうです。この長さだけはきついです。地獄の黙示録完全版よりずっとマシでしたが、それでも長すぎる。1時間50分くらいでまとめてほしいですね。
ボリウッド映画を試してみたいという方、本格SFストーリーが好きな方にはぜひ見てほしい作品です。
ただし長さは見る前に覚悟してください。いっそ話の動かない序盤は飛ばしてしまうのも手だと思います。

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