ロボットに人の血が通うとき奇跡が起きる 映画『リアル・スティール』:感想
ヒュー・ジャックマン主演のロボットSF映画『リアル・スティール』を見ました。
リアル・スティール [DVD]
(2013/04/17)
ヒュー・ジャックマン、ダコタ・ゴヨ 他
商品詳細を見る
【あらすじ】
【感想】
・この映画、良いところと悪いところがすごくはっきりしています。
どちらに目を向けるかで、人によって印象が大きく異なると思います。
■熱いロボット精神
・この映画最大の魅力、それはやはりロボットバトルです。
と言ってもアクションシーンとしてはそれほどでもありません。現実に工専ロボットバトルで行われているような実に機械的な動きで、それほど派手さはありません。
では何が熱いかというと、バトルに込められた人の思いです。
誰からも見向きもされない日陰者たちが持てる全ての力を結集して、夢を勝ち取る。今では廃れた『アメリカンドリーム』に遠隔操作型ロボットものの良さを加えて再構成しているのです。
■夢の原動力
・うらぶれた生活から一転、全米規模の大会の最強のチャンピオンに挑むまで導いたもの。それは子供の前向きな心でした。
スクラップ同然の旧式ロボットを拾ってきて、それで最後の挑戦に挑もうと懸命に足掻く息子。父親である主人公も最初はそんなロボットで勝てるわけがないと取り合いません。それでも諦めない息子は子供なりの全力を尽くし、場末の賭けバトルで小さな勝利を掴みます。この勝利が栄光への一歩でした。
■子から父へ。父から子へ
・息子に触発され、ボクサーとしての自分の技術を教え込み、父親はトレーナーとして立ち直っていきます。
始めは金目当てでしたが、その中で父親として成長し、親子の絆を取り戻していきます。やがて大きな大会に出るころには二人の立場は逆転し、息子がもうダメだと諦めかける中、『まだ終わっていない!』と息子に語りかける父親がそこにいました。
■立ちはだかる壁
・ロボットの第一人者と大富豪が組んで作り上げた最強のチャンピオン、ゼウス。
圧倒的なスペック差の前にも諦めず、ボクシング技術で反撃する二人。しかし中盤で音声認識装置が故障し操作不能に陥ってしまいます。絶望的な状況に主人公は再び諦めかけますが、息子の気持ちに再び立ち上がります。
ここからが最大の見せ場です。
■機械の身体に血が通う時
・ATOMのシャドー機能を使い、再び立ち上がります。
この音声操作よりアナログなシャドーのほうが反応が早いって設定が実にわかってますね。
これまでの表情とは打って変わって真剣で、それでいて楽しそうな主人公の姿。そしてそれをリング上で忠実に実行するATOM。これぞ人とロボットの人機一体です。
この直前に音声認識が壊れたことを表現するためにATOM目線の無音のシーンがあるのがグッときます。
・この後の展開が熱いです。
流れにのって一気に畳み掛ける!わけではなく、操作を切り替えた後もしっかりとガードを固め防御に徹します。息子の反撃を促す声にも焦らず、ひたすらに耐える。焦ったチャンピオンはターボやニトロを駆使しラッシュをかけます。それでも焦らずじっと耐えて、ついにパワー切れになった瞬間炸裂する必殺のアッパー!!
シャドーなので生身の主人公が先に動いて、ロボットが追従するってのが絵になります。
・敵も諦めません。オーバーヒートしてAIが作動しないため製作者自らゲーセンにありそうなレバー操作で反撃します。皮肉にも機械は機械。動作不能に陥った機械を動かそうとしてもたかが知れています。
ここで敵も全力を尽くすのが素晴らしいです。敵もやれることはやって、それでも主人公たちが打ち倒す。文句なしの勝ちです。
このラストファイトだけでこの映画を見る価値があります。
■ATOMの描写
・ATOM自体は完全な機械で、動かないはずが動くとかそういうのは一切無いんですが描写が素晴らしいです。
控え室で二人が席を外している間、じっと鏡を見つめていたり、妙に人間味のある感じで感情移入しやすいです。自発的に動くことはありませんが、その分こちらの感情をしっかりと受け止めてくれる感じで最後の逆転劇も主人公の感情の爆発をそのまま原動力にしてるみたいで盛り上がります。
こういうのは遠隔操作型のロボットならではですよね。
■残念な面
・ラストファイトは素晴らしいのですが、この映画そこ以外に難点があります。
主人公が中盤まで本当に絵に描いたようなロクデナシで見てて不快です。人の話を聞かない。ギャンブル中毒。勝つ勝つと言うわりに何も方策を考えない。他人に迷惑かけっぱなしで嫌になります。
息子も強情さは父親譲りで人の話を聞きませんし、周りもクズばかりで最低です。掛け金踏み倒して逃げたせいで、中盤でヤクザにボコられるのですがこれも自業自得に見えてしまいます。
そしてこれが2時間のうち1時間20分続きます。長い。長すぎる。
・それとラストの締め方。息子の親権とか今後の行末とか何も示されないまま終わります。
あれはあれで有りなのですが、前半が前半だけに臭いものに蓋をするような印象を受けます。
過去は過去と割り切るか。今更何を。虫が良すぎると思うか。見方によって作品の印象が大きく変わる作品だと思います。そういう意味ではある種のファンタジーと言ってもいいかもれしれませんね。
(2013/04/17)
ヒュー・ジャックマン、ダコタ・ゴヨ 他
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【あらすじ】
人間同士の格闘技に代わってロボットバトルが大きな娯楽となった近未来。将来を有望視されたボクサーの主人公も今では落ちぶれ、ギャンブル同然の裏ロボットバトルに熱中していた。
ある時、10年前に別れたきりの妻の息子を引取るところからこの物語は始まる。
・夢破れ、落ちぶれたプロボクサー
・勇気と行動力のある息子
・人の動きを真似られるシャドー機能とタフさだけが取り柄のスパークリング用ロボット『ATOM』
二人と一体の心が重なったとき、機械の身体に血が通い、奇跡を生み出す。
【感想】
・この映画、良いところと悪いところがすごくはっきりしています。
どちらに目を向けるかで、人によって印象が大きく異なると思います。
■熱いロボット精神
・この映画最大の魅力、それはやはりロボットバトルです。
と言ってもアクションシーンとしてはそれほどでもありません。現実に工専ロボットバトルで行われているような実に機械的な動きで、それほど派手さはありません。
では何が熱いかというと、バトルに込められた人の思いです。
誰からも見向きもされない日陰者たちが持てる全ての力を結集して、夢を勝ち取る。今では廃れた『アメリカンドリーム』に遠隔操作型ロボットものの良さを加えて再構成しているのです。
■夢の原動力
・うらぶれた生活から一転、全米規模の大会の最強のチャンピオンに挑むまで導いたもの。それは子供の前向きな心でした。
スクラップ同然の旧式ロボットを拾ってきて、それで最後の挑戦に挑もうと懸命に足掻く息子。父親である主人公も最初はそんなロボットで勝てるわけがないと取り合いません。それでも諦めない息子は子供なりの全力を尽くし、場末の賭けバトルで小さな勝利を掴みます。この勝利が栄光への一歩でした。
■子から父へ。父から子へ
・息子に触発され、ボクサーとしての自分の技術を教え込み、父親はトレーナーとして立ち直っていきます。
始めは金目当てでしたが、その中で父親として成長し、親子の絆を取り戻していきます。やがて大きな大会に出るころには二人の立場は逆転し、息子がもうダメだと諦めかける中、『まだ終わっていない!』と息子に語りかける父親がそこにいました。
■立ちはだかる壁
・ロボットの第一人者と大富豪が組んで作り上げた最強のチャンピオン、ゼウス。
圧倒的なスペック差の前にも諦めず、ボクシング技術で反撃する二人。しかし中盤で音声認識装置が故障し操作不能に陥ってしまいます。絶望的な状況に主人公は再び諦めかけますが、息子の気持ちに再び立ち上がります。
ここからが最大の見せ場です。
■機械の身体に血が通う時
・ATOMのシャドー機能を使い、再び立ち上がります。
この音声操作よりアナログなシャドーのほうが反応が早いって設定が実にわかってますね。
これまでの表情とは打って変わって真剣で、それでいて楽しそうな主人公の姿。そしてそれをリング上で忠実に実行するATOM。これぞ人とロボットの人機一体です。
この直前に音声認識が壊れたことを表現するためにATOM目線の無音のシーンがあるのがグッときます。
・この後の展開が熱いです。
流れにのって一気に畳み掛ける!わけではなく、操作を切り替えた後もしっかりとガードを固め防御に徹します。息子の反撃を促す声にも焦らず、ひたすらに耐える。焦ったチャンピオンはターボやニトロを駆使しラッシュをかけます。それでも焦らずじっと耐えて、ついにパワー切れになった瞬間炸裂する必殺のアッパー!!
シャドーなので生身の主人公が先に動いて、ロボットが追従するってのが絵になります。
・敵も諦めません。オーバーヒートしてAIが作動しないため製作者自らゲーセンにありそうなレバー操作で反撃します。皮肉にも機械は機械。動作不能に陥った機械を動かそうとしてもたかが知れています。
ここで敵も全力を尽くすのが素晴らしいです。敵もやれることはやって、それでも主人公たちが打ち倒す。文句なしの勝ちです。
このラストファイトだけでこの映画を見る価値があります。
■ATOMの描写
・ATOM自体は完全な機械で、動かないはずが動くとかそういうのは一切無いんですが描写が素晴らしいです。
控え室で二人が席を外している間、じっと鏡を見つめていたり、妙に人間味のある感じで感情移入しやすいです。自発的に動くことはありませんが、その分こちらの感情をしっかりと受け止めてくれる感じで最後の逆転劇も主人公の感情の爆発をそのまま原動力にしてるみたいで盛り上がります。
こういうのは遠隔操作型のロボットならではですよね。
■残念な面
・ラストファイトは素晴らしいのですが、この映画そこ以外に難点があります。
主人公が中盤まで本当に絵に描いたようなロクデナシで見てて不快です。人の話を聞かない。ギャンブル中毒。勝つ勝つと言うわりに何も方策を考えない。他人に迷惑かけっぱなしで嫌になります。
息子も強情さは父親譲りで人の話を聞きませんし、周りもクズばかりで最低です。掛け金踏み倒して逃げたせいで、中盤でヤクザにボコられるのですがこれも自業自得に見えてしまいます。
そしてこれが2時間のうち1時間20分続きます。長い。長すぎる。
・それとラストの締め方。息子の親権とか今後の行末とか何も示されないまま終わります。
あれはあれで有りなのですが、前半が前半だけに臭いものに蓋をするような印象を受けます。
過去は過去と割り切るか。今更何を。虫が良すぎると思うか。見方によって作品の印象が大きく変わる作品だと思います。そういう意味ではある種のファンタジーと言ってもいいかもれしれませんね。
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