『BEAT RUNNERS』(シーズン1) 最終回まで見終わって:総合感想
『BEAT RUNNERS(シーズン1)』を最終回まで見終わったので感想を書きたいと思います。
*必要に応じて随時ネタバレがあります。
一言まとめ
よくあるパッとしない新規オリジナル作品。
戦隊的なアクションメインの普通の特撮としては問題なく見られる。
オリジナリティは看板倒れ。
ストーリーはマイナス。
個人的にはメイキングが一番楽しめた。
番組概要
・新規IPであり、わりと独特な要素が多いので感想の前にどんな番組だったのか、ざっと解説しておきます。
生身の役者さんが出ないスーツアクター+声優さんによるキグルミ特撮。
スタントチームの事務所主導の企画でアクションがメイン。監督は戦隊やウルトラマンでお馴染みの坂本浩一監督。
映像は『ギャラクシーファイト』みたいなグリーンバックの狭いステージのみが舞台の小規模撮影。
放送時は「本編10分+メイキングなど企画で15分=合計25分」の構成で全10話+メイキングなどだけで本編無しの番外編1話。
公式曰く本作は「シーズン1」。ただしシーズン2以降の具体的な予定は何も決まってない。
基本的な印象:普通の特撮
・基本的にはアクションメインの普通の特撮でした。
より具体的に言うなら「バトルは戦隊風。ストーリーはライダー風」で販促が無いので玩具要素も無く、ギャグや子ども向けの要素も無くなっています。
スーツアクターさんの事務所主導の企画だけあってアクションが中心でストーリーは添え物でした。
2話に1回はアクション回を入れるくらいのペース配分だったのでストーリーに期待するのは止めた方が無難だと思います。
・アクションは戦隊や仮面ライダーでもお馴染みの坂本浩一監督が全話監督です。
これも坂本監督のアクションを見慣れてる人なら想像に難しくない内容でした。
玩具は無いんですけど、戦隊みたいなギミック武器は有りました。
ヒーローの共通武器がハンドガンで、ハンドガンにアタッチメントを付けることで個人武器に変わります。
個人武器はガトリング、狙撃銃、扇形に斉射できるビーコックスマッシャー、それに主人公格の武器が両側に狙撃銃の銃身を取り付けた”ロッドガン”でした。
ロッドガンは比較的ユニークで面白かったです。基本的には”棍”なんですけど、銃なので銃撃できます。
目の前の敵に棍で突きを入れつつ背後の敵に銃撃したり、左右から来る敵を両側射撃で倒したり、突いてから棒を返すときに回しながら銃撃で足元を狙ったり、いろんな形で射撃を挟めました。
常識的に考えたら暴発して危なくてたまらないん武器ですが、作中ではちゃんと危なげなく使いこなせているのでケレン味があってかっこよかったです。
独自性は今ひとつ
音楽とアクションを完全同期させた世界初のキャラクターアクション「ビートシンク・アクション」
っという触れ込みでしたが、こちらは全くパッとしませんでした。
このフレーズを聞いたときに私が連想したのは
「音ハメに特化したアクションで、最初からBGMや歌に合わせることを前提にしたアクション」
みたいな感じだったんですがそういうのではありませんでした。
・実際の作品がどんなのだったかというと、
「挿入歌を流しながら戦う普通のバトル、の間に音楽ユニットが歌って踊るライブ映像を挟んだもの」でした。
戦隊やライダーでもよくある挿入歌を流しながら戦うだけで音ハメなど歌に絡んだ動作は特にありません。
ユニークなのは戦いの合間に音楽ユニットが熱唱したりダンスしたりしてる映像が挟まることだけです。
わかりやすく言うと、マクロスシリーズの決戦みたいな感じですね。あれを実写で毎回のようにやるだけです。
有り体に言えば新しいどころか既存の要素を雑にくっつけただけでした。
・個人的にはライブ映像を戦闘中に挟む面白さが全くわかりませんでした。
バトルへの没入感や臨場感が削がれ、不快感とシュールさを感じるだけで何一つ面白いと思えませんでした。
主人公たちは技術力で歌をパワーアップに使っているだけなのでストーリー性なども特にありません。そういう点でもマクロス以下です。
これなら普通に挿入歌を流すだけの方が良いと思います。
キグルミ劇
・ビートランナーズは敵も味方もキグルミのみで生身の役者さんは1人も出ません。
…最近だと珍しいだけでそんなに特別では無いと思います。
特撮でもロボタックやキョーダインなどキグルミ中心の作品はありましたし、敵幹部に限ればキグルミしかいないことは戦隊やライダーでは珍しくもありません。
ビートシンクアクション同様にお題目以上の内容が無いので尚更です。
ストーリーはマイナス
・ストーリーは典型的な悪い意味での「壮大な物語」でした。
映画一本分くらいの時間しかないのに単体で意味を成さない「次回作への広がり」とか欲張り過ぎでした。
主人公格のキャラが記憶喪失で「赤い目の男」のことしか覚えてなく、その男の正体が敵幹部らしいことまで話が進んだけど思い出せたのは全然印象と違う別離の様子で結局何もわからないままだったり、
ヒーローチームのメンバーの1人が「本当に女王の言うことは正しいのか?」と主君に疑念を持っていたり、敵幹部が自分たちと同じ女王に作られたロボットだったらしいことが明らかになったり、あからさまに次回作以降での出奔フラグが立てられてたり、
最終回の最後の最後で宇宙の秩序を守ることを標榜していはずの女王様が「破壊と創造の力が遂に揃った! これで宇宙は…!」みたいにほくそ笑んでいたり、
時間が少ないのに力を入れてやっていることは、いつ回収されるのかもわからない伏線のばら撒きばかりでうんざりしました。
・伏線のばら撒き以外のシーズン1用のストーリーは普通に面白くありませんでした。
基本が負けイベントの連続でした。
1話から最終回までずっと同じ敵と戦う都合上、ずっとヒーロー側が負けてばかりで普通に爽快感がありませんでした。
数少ない成功の部類ですら喜べる内容ではなく、アリバイ作り感の方が強かったです。
博士:1話で唯一救出できた相手だが敵は雑魚しかいなかった上に、後で博士が裏切ったので台無し。
少年:身柄自体は確保できたがその前に敵の目的だった生体エネルギーは抽出済みで敵は目的を果たした後。しかも生体エネルギーを奪われたせいで少年は死にかけて女王の力添えがなければそのまま死んでいた。
「宇宙の安寧を守るビートランナーズ」という触れ込みでしたが、全然守れてる印象が無いところは普通にマズかったと思います。
設定だけ前のめりになってる壮大な物語と相まって「エンタメや物語の基礎ができていない」という悪い印象が鼻についてしまいました。
・敵幹部との小競り合い以外に有ったのは封印された怪獣の復活と復活した怪獣退治だけでした。
散々負けてきた敵幹部には最終回でもやられっぱなしの状態では、ポッと出の怪獣を倒したところで何のカタルシスもありませんでした。
せめて1人くらい幹部と決着つけさせてくれませんかね…
・怪獣がしょぼかったせいで敵組織の悪辣さも薄れてしまいました。
作中でやったことが怪獣復活までの道筋だけで、怪獣が復活したら「すげー! デケェ! 強ぇ! うひょ~」とはしゃいで、暴れ出したら「やべぇ! 俺達も死ぬ! 逃げよう!」と逃げただけだったので巨悪感すら全然感じられませんでした。
怪獣を使ってどうこうするとか世界の破滅を望むとか、そういう大望が無いせいで「好奇心で動いていて周りの迷惑などは考えないはた迷惑なトラブルメーカー」くらいにしか見えませんでした。
たぶんシーズン2以降では敵幹部の味方化や味方と敵のシャッフルなどを考えてるから、ヘイトを高めたくないのでしょうが最初から及び腰なせいで悪の幹部という初期位置すら曖昧になってしまいました。
怪人っていた方が良いですね
・そもそもバトルものと敵も味方も延々と同じキャラを引張り続ける長期シリーズものの相性が悪いんですよね…
何度戦っても決着がつかず、敵も味方も次の戦いでは元気いっぱいで出てくると戦いが始まっても「どうせ決着はつかないんだよな…」と気持ちが冷めてしまいます。
実際、最後まで敵1人倒せず終わり、最終回では倒していい存在としてポッと出の怪獣まで出していました。
こういうことにならないためにもポッと出だろうが毎回景気よくやられてくれる週替りの怪人はいた方が良いんだなと実感しました。
皮算用が一番目立つ
・個人的に強く感じたのは「こうなってくれたら良いな」という制作側の希望的観測の山盛りでした。
全体的に商業的な都合が鼻につきました。
キグルミ+声優も、実態を伴っていない音楽押しも、どれも「それが面白いと思ったから」じゃなくて商業的都合にしか見えませんでした。
やったことから判断すると、制作側としては「2.5次元的なヒーローショー&ライブ」をやりたいんだろうなと思いました。
生身の役者さんだと外国で売るときには人種の好みや言語などローカライズに手間がかかる。
役者さんが売れたりすると出演してくれなくなることもある。
キグルミと声優さんならキグルミは世界共通で中身だけ各国好みに入れ替えれば済むし、キグルミを量産すれば世界何箇所でも同時に公演を行える。
ついでに音楽も売ればもっと儲かるからキグルミ音楽ユニットも入れる。
一度当たったら長く続けられるように「シーズン◯◯」という海外ドラマ形式にする。
・今どき貴重な新規IPで、かつアクションスタジオの企画となれば、「そうでもしないと採算が取れない」という現実的な必要性は理解できます。
でも「面白いからやる」が基本であるエンタメという側面から見ると、どの要素もマイナスに働いていてプラス要素が感じられないのも事実です。
”面白いもの”が長く続くから視聴者がついて来るのであって、「長く続けるために作った面白くないもの」には視聴者はついていかないと思います。
良いところも悪いところも予想の域を出なかった
・全体の印象としては、よくある「威勢が良いだけの新規IP」で終わってしまいました。
思ってたよりも尖ってなくて、かといってそれほど悪いわけでもないんだけど基本的には予算相応のクオリティで、全体としては「普通」
という新規IPとしては一番反応に困る出来栄えで、その感情すらも「新規オリジナル作品ではよくあること」でしかありませんでした。
おおよそ本文を書き終わった後に自分の書いた本作の各話感想を振り返ってみたら、全体感想で改めて書いた趣旨は1話を見た後に書いた第一印象とほぼ同じでした。
「生身の役者さん無しの普通のキグルミ系特撮ヒーロー番組」
「革新性というより商業的都合の方を強めに感じた」
「個人的には『皮算用が多いなぁ』という印象」
良いと思ったこともいまいちだと思ったことも第一印象からほぼ変わりませんでした。
ストーリーに関しては後になるほど悪化していきましたが、壮大な物語感も早々に感じたことだったのでそっちも第一印象から大きく変わりませんでした。
良く言えば内容がはっきりしていて安定感はあったようです。この安定感が望ましい方向に働いていたら万々歳だったのですが…
唯一の成果
・唯一メイキングだけは第一印象より印象が上がりました。
メイキング付きの特撮としてメイキング中心に見る分には他には無い楽しみようがありました。
アクションの撮影風景は面白かったです。
「ぎりぎりで当てないはずの攻撃が顔に当たっちゃって慌てる」など舞台裏はもちろん、実際の本編映像とは質感もカメラ位置も違った映像になっていたことも興味深かったです。
引き気味にカメラを動かさず平坦に撮ってもアクションに迫力が感じられたことはアクションの持つ底力を感じられてとても良かったです。
本作も含めてCGやエフェクトを多用することが珍しくありませんけど、加工しない素面のアクションも充分にかっこいいものだと改めて再確認できました。
・個人的には”雑魚役”のスーツアクターさんたちのインタビューが一番興味深かったです。
「外見は同じ雑魚だけど、ストーリー上は毎回違う個体だから動きややられ方は毎回違うように見えることを心がけている」
「やられるときには自分から吹っ飛んだりしてヒーロー側が強く見えるようにしないといけない。でも派手過ぎてヒーローより悪目立ちしてはいけない。リアルさを追求しつつも視聴者が『痛そう』と思ってしまうほどではダメ。ちょうどいいやられ方を考えている」
「怪我はしないように心がけている。やられ役だからやられる度に怪我をしてたら仕事にならないし、撮影も止めることになって全体に迷惑をかけることにもなる」
など、いろんな話が聞けました。
やられ役の雑魚の工夫や心がけに着目したことは無かったので深く感じ入りました。
一つ視野が広がった感じがして、個人的にはこのインタビューがビートランナーズを見た中で最大の収穫でした。
私的にはこれだけで作品全体を見た元が取れたと思っています。
・他にはスーツ作成も結構面白かったです。
具体的な工程が映されたのは少しでしたが、スーツに付いてるトゲトゲのパーツをコンロで一つずつ炙って形を曲げて整形している場面を見た後にスーツ全体が映されたら「このいくつもあるトゲトゲをさっきみたいにして一つ一つ作ってあるんだなぁ」と大変さを少し感じ取ることができました。
こういう具体的な工程や工夫をもっと見れたらもっと嬉しかったです。
半分くらいは「スタジオやスタッフのイデオロギー語り」や「Aさんは凄いです。いやいやBさんこそ凄いですよ」みたいな褒め合いみたいな意識高い系っぽいやり取りで個人的にはノーサンキューでした。
本編と撮影風景が半々くらいにメイキングがたっぷりあったなら「メイキングを見るのが本番の作品」としては満足度が高かっただろうなと思います。
・アイドルのやつもある意味では面白かったです。
「アクション経験ゼロのアイドルに坂本監督が仕込んだらどのくらいアクションができるようになるのか?!」という企画でした。
結局全然動けてなくて完成度が低かったです。表情すらダメってのが終わってます。
それでも映像としてはそれなりに見られる仕上がりになっているのは、やられ役側のアクターさんでリードして、できるだけアイドルを映さないようにしたり、一番悪さが目立つ動き出しを極力映さないようにしたカメラワークと編集のおかげだったと思います。
そういう点では「坂本監督が指導してもどうにもならないアイドルを他の専門技術でどうにかします」というプレゼンとしては機能していたんじゃないかと思いました。
スタジオのPRとしては良かったんじゃない?
・メイキングも踏まえると全体の感想としては作品は平凡でしたが、アクションスタジオのPRとしてはそれなりに良かったんじゃないかと思いました。
これを東映や円谷など既に大手の有名プロダクションが作ったものだったら、「意欲的な新規作とか言っておいて出来上がったのは手垢がつきまくったこれかよ…」とがっかりしていたと思います。
でも失礼ながら有名とは言い難いスタジオが”戦隊みたいな感じ”と思われるくらいの作品を作れたことは当事者的には意義があることなのだろうと思います。
ビートランナーズ自体が商業的に成功してシリーズ化するとは思えませんが、ビートランナーズを見た会社が新しい企画の話を持ちかけてくれることは有るかもしれません。
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