ドキュメンタリー風映画 『アルゴ』:感想

2013年9月12日
ベン・アフレック監督&主演の映画『アルゴ』を見ました。
アルゴ [DVD]
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(2013/09/04)
ベン・アフレック、ブライアン・クランストン 他

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お気に入り度 7/10

■あらすじ
・1979年にイラン革命中に起こったアメリカ大使館人質事件でのCIAの極秘救出作戦を題材にした映画です。架空のSF映画『アルゴ』をでっち上げて、占拠直前にカナダ大使館に逃げ込んだ大使館員6名を救出した実在の作戦を元にしています。



【感想】
■笑いは無し
・トレーラーの印象では作中内映画『アルゴ』がどう見てもZ級な感じで、作戦を立ててる主人公や関係者も「どうしようもない内容だ。」とか貶しまくりでした。映画撮影のコミカルな描写に紛れて、大使館員を助けだすコメディタッチな作品かと思ってました。
・ところが本編だと、アルゴの話はほとんど出ません。あくまで作戦のための偽装だから当然ですね。
撮影役の大使館員がレンズを逆に構えて注意される描写が序盤にありましたが、映画絡みのトラブルはそれくらいでした。空港での尋問シーンはもっとその辺を突っ込んで掻き回すかと思ってましたがあっさりでした。
本筋は、逃げた大使館員を追うイラン側と、厳戒態勢の空港をくぐり抜けたい大使館員&ベン・アフレック演じるCIAの主人公たちのスリリングな描写が中心です

■ドキュメンタリー風映画・サスペンス仕立て

・全体的にはまとまっていて、内容もわかりやすく見やすい映画でした。
衣装やセットには拘っていて、当時の情景を再現した映像の質感が良かったです。役者も大使館員はマイナーな役者と使っているので如何にも役者という感じはせず、等身大な感じがしてリアルな雰囲気が出てました。最後のEDロールで元になった風景や大使館員の顔写真が出てくるのですが、そっくりで驚きました。ベン・アフレックは浮いてましたが立ち位置がCIA職員なので、違和感も許容できます。

・展開は脱出作戦を粛々と進める一方、イラン側も大使館員が少ないことに気づいていく。そして脱出の決行日に待ち受ける空港での尋問とトラブル、動きに気づいたイラン側の猛追。水面下でのスリリングな動きから一気に動き出すサスペンスが一番の見せ場です。

■相性が良くなかった
・サスペンスが見せ場なんですが、冒頭で実話と明言されているので市長や当然助かることはわかっているんですね。
その点でまず勢いが削がれます。その上、演出面でも微妙なところがあります。私には引きが弱く見えました。
「気づかれた?ピンチかも?!」と思っても30秒後には「大丈夫でした。」とあっさり種明かしされるのでハラハラするより肩透かし感のほうが強いのです。

・この辺りは実話ベースのドキュメンタリー風なところが足を引っ張っているように思えました。
空港でのシーンはフィクションが混じっているようでした。どうせやるなら映画的に盛り上げたほうが良かったと思います。

【総評】
■雰囲気はばっちり!
・大使館員やイラクの緊迫した雰囲気や当時の時代感など、ドキュメンタリーものとしては雰囲気がばっちり出てて面白かったです。

■サスペンスは期待外れ
・サスペンスは肝心なところで外すので、サスペンス目当てで見るのはおすすめしません。あくまでアクセントの風味付け程度です。

■偏った視点が苦手な人は避けたほうが無難
・この映画はプロパガンダ映画というほど偏ってはいません。
イラン側の極端な暴力描写はありませんし、主人公が街に来たときにケンタッキーのフライドチキンを食べている一般市民を映したり、ある程度イラン側への配慮が感じられます。

・ただそうは言ってもアメリカの作品なのでアメリカ寄りの描写が中心です。
映画に関する批評を読むと、カナダの協力を全く描いてないなど史実としても偏りがあるようです。
個人的には『ナショナル・トレジャー』と同様に、アメリカ人向け歴史啓蒙映画だと思います。

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