戦闘がわかりやすく、奥深い フリーゲーム『ふしぎの城のヘレン 』:感想&レビュー

2013年6月22日
フリーゲーム『ふしぎの城のヘレン』をクリアしました。
VIPRPG紅白2011の投票でシステム、演出、ストーリーなど主要項目ほぼ全てで1位を取ったそうです。クリアするまで、その事実を知りませんでしたが納得の内容です。

【シンプルなのに熱い駆け引き】
■独特の戦闘システム
・ふしぎの城のヘレンでは独特の戦闘システムが採用されています。
戦闘自体は一対一で、相手のHPを0にすれば勝ちなのですが、戦い方が個性的です。
helen.jpg
・通常のRPGのような『攻撃』『防御』『魔法』といったコマンドはありません。代わりに持っている装備を選んで戦います。
全ての装備には『効果』『防御』『行動までにかかる時間』の3つが設定されています。
装備の種類は大きく分けて、弓、剣、魔法、盾の4種類です。
『弓』早くて攻撃力もあるメイン武器。最も使う頻度の高い武器。
『剣』攻撃、防御、共に高いが行動にやや時間がかかる。ゴリ押し用。
『魔法』防御無視で最高の攻撃力を持つ。代わりに防御力はゼロで、行動まで長い。必殺技にあたる。
『盾』攻撃ゼロの防御特化。

上のスクショを例にすると、下画面のヘレン=プレイヤーのほうが『行動まで』のカウントが短いので先に行動します。攻撃力は40、相手の防御は35なので単純な引き算で、40-35=5ダメージを与えることになります。行動終了時に、次に使う装備を選び、どちらか倒れるまで戦い続けます。

基本的には、『剣>弓>魔法>盾>剣…』という4すくみになっています。
剣は防御しつつ攻撃できるので、手数は多いが一発あたりが弱い弓に強いが、防御特化の盾には勝てません。盾も使用中、攻撃できないため魔法を使われると大ダメージを一方的に食らってしまいます。
お互いに相手の行動と行動までの時間が見えてるので、それを見越した行動を選べば戦いを有利に運べます。

■裏の裏をかく読み合い
・上の例だと、こちらの弓に対して敵が防御=盾を選んだのでろくなダメージが与えられません。
序盤は4すくみを念頭に置いて、適宜対応していけば充分勝てますがだんだん相手も賢くなっていきます。

・敵のAIが驚くほど優秀で、敵が剣を選ぶ→カウント中に弓で削る→敵のカウント0に合わせて盾で相手の剣をガード→弓→盾・・・、と地道に削ってやろうなんてせこいこと考えてもう一度繰り返すと、弓→盾の後に魔法を使ってきて一気に逆転されたりします。(プレイヤーが盾を選んだのが敵にも見えてるため)
だけどそこが最大の魅力です。わざと相手に盾を見せて魔法を誘い、敵が魔法を選んだ直後に盾の行動終了=次の行動選択、が来るように調整してやると、詠唱中の無防備なところに弓で連続攻撃して一気に勝負をつけたりできるんです。
ときにはわざと一手、相手への見せ球に使って誘導する。そんな裏の裏をかく頭脳プレイが決まると最高に気持ちいいです。

【予定調和と定石崩しのバランスが絶妙】
・独特の戦闘システムが最大の魅力ですが、ゲームバランスの良さもこのゲームの隠れた魅力だと思います。
クリアまで長くて5時間。慣れれば2時間以下とボリュームは短めですが、その分、練りに練られています。

■親切で面白いチュートリアル
・序盤の戦闘は実戦形式のチュートリアルで構成されていますが、説明は一切ありません。代わりにプレイヤーが自覚できるように仕組まれています。

たとえば初戦は武器は弓一つしかないので攻撃するだけです。弓→弓→敵の攻撃→弓と3回攻撃すると倒せます。
ところが2戦目は盾の入った宝箱を開けた直後に起こります。プレイヤーは自然と盾を使い、弓→盾→敵の攻撃→弓→弓、と初戦では盾無しでダメージを受けましたが、今度はノーダメージで勝てます。

また、次に立ちふさがるスケルトンは小細工が効かず、ひたすらお互い剣で斬り合うことになります。かなりダメージを受けるので必然的に回復のために戻ります。そこで戦い方を教えてくれる師匠と話すと『武器を強化すると楽に倒せるぞ。』と教えてもらえます。実際に強化してみると性能差から次はかなり楽に勝てて、プレイヤーは効果を実感できます。

このように戦っているうちに自然とシステムを理解し、このゲームの楽しみ方がわかるように作られています。

■油断禁物
・序盤はセオリーに忠実に戦っていけば勝てるのですが、2つ目のダンジョンに着くとかなり勝手が変わります。敵のAIが賢くなり、各敵の特徴も明確化され、次にどう動くのか予測しないと厳しくなっていきます。

・どうにか裏をかく戦闘になれば中ボスの四天王までたどり着くと、ここでも開発者の一捻りが待ってます。敵の行動もカウントもHPすら見えない暗闇状態のボスに始まり、動く度に毒で苦しめられるボス。攻撃を受ける度に、その武器が使えなくなる封印攻撃をするボス。カウントを延長するスタン攻撃→ドレインでじわじわ削ってくるボスと、攻撃の都度、ただ最適解を選んでいけば勝てる相手では無くなっていきます。
「システムを理解したから、しばらく楽かな~」と油断してたら痛い目を見ました。

最後まで「これで大丈夫だろう。」と思う頃に定石崩しがあるおかげで、緊張感のある楽しい戦闘が楽しめます。

【巧みなゲームバランス】
■隅々まで行き届いた気遣い
・戦闘面ではかなり独特で、カウントや攻防の計算など、とっつきづらさがあります。でも実際にプレイしてみると快適で驚きます。それは細かいところで、嫌にならないよう配慮されているからです。


・たとえばこのゲームでは負けると、HP1アップのアイテムがもらえます。
ダンジョンの外まで戻されるだけでデメリットはほぼ有りません。その敵への再挑戦まで移動時間にして数分のロスといった程度です。
しかし負けることは少なからずプレイヤーにとって精神的負担があります。そこでこのHPアップが効いてくるのです。負けるたびに数の限られているHPアップが手に入るので若干のお得感があります。戦闘の面では、1なんてほんの僅かな効果ですが、精神的な面では大きいです。

・クリアまでいって、改めてその意味に驚きました。
何度も死んで、トータルでHP6くらいは上がってたのですが中盤以降はほとんど影響の無い数値だったのです。またちょうど敵が強くなり、初見の相手やボス相手に頻繁に死ぬようになる後半になると、もらえなくなります。ですがHPが20~30と少ない序盤には1上がるだけでも大きな違いになります。

・特に上がるのがHPというのがポイントです。
独特な戦闘システムのため理解するまで苦戦を強いられます。風来のシレンのようにプレイヤースキルが重要なため、たとえ負けても一回戦うだけでも大きな違いが生まれます。
HPが上がって変わるのは、耐久力が上がる=ミスが許される回数が増えることです。「HPも上がったし次は勝てるかもしれない!」と、プレイヤーの背中を押してくれる気遣いは本当に素晴らしいと思います。他にも経験値稼ぎしやすい敵が出入り口付近に配置されていたりします。
この気遣いを感じられただけでも、このゲームをやった価値があったと思います。

【ストーリー】
■操作できてこそのRPG!
・最後にストーリーについても触れておきたいと思います。
短いボリュームからもわかる通り、ストーリー自体は特筆するほどのものではありません。説明を省いて、世界観を中心にした王道ストーリーで悪くない。といったところです。
ですが、一つだけ個人的に最高に良かったところがあります。

・それはラストの今まで倒した敵と共闘するシーンです。
逃げる敵を追う主人公のために道を切り開くシーンで、これ自体はよくある演出です。
一つ大きく異なるのが、イベント戦闘を自分で操作して倒せるんです!

・ストーリー的にも主人公を試すために手加減してた敵が、使ってみると異様な強さで本気出したら最強って言われてた意味が実感できたりと、RPGならではの説得力があります。
それも各キャラの戦い方が、以前自分が苦しめられた戦法が敵にも効きます。「あの敵が味方になってくれた!」ってカタルシスもあって、本当に良い演出でした。

【感想】
・独自の戦闘システム。よく練り込まれたバランス。細やかな気遣い。RPGの王道を行くストーリー。どれを取っても面白かったです!!

・初心者にはオススメできませんが、RPGに慣れた人ならこの良さは絶対わかると思います。
ダウンロードはこちらの公式サイトからできます。ツクールですが、動作にこれ以外のソフトは必要ないのでご安心ください。


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