その時、GATAROが発動した:漫F画太郎『罪と罰・4巻』感想

2013年4月28日
ついに完結した漫☆画太郎最大の問題作『罪と罰』の4巻を読みました。
表紙からしてクライマックス感が炸裂してますが内容はもっと過激です。
罪と罰 4 (バンチコミックス)
罪と罰 4 (バンチコミックス)
(2013/04/09)
漫F画太郎

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■その時、GATAROが発動した
・最強の武器=巨根を手にしたエビゾー。世界を救う使命に目覚めたマヨ。命をかけた戦いに憤る幼女、ポニョ。デブでブスで怪力と画太郎世界の三冠王ユカリ。全ての役者が同じ舞台に立ったとき起こること。それは…
階段落ち→トラック轢き逃げ→核爆発→夢でした♪
いつもの画太郎じゃねーか!

本当にいったい何だったのでしょうか? 最終巻なんていつもの倍、300ページの文庫サイズですよ。ここまでしてやったのがこれです。もういったいどこがドストエフスキーの『罪と罰』なんだ!?と思えてしまいます。
でもよくよく読んでみると驚くことに趣旨は合ってるのです。

■画太郎版『罪と罰』、その意味とは。

・質屋のババァを殺そうとするエビゾーもマヨも、そして元上司を殺そうとする飲んだくれのダメ親父イワン。目的は違えど殺そうとする理由はただ一つ。『常識を超えた自分が人を殺すことで腐った世界を変えられる。』この考えに基づいています。これは原作の罪と罰の主人公と全く同じ理由です。

・その結果は散々たるものでした。イワンは罪悪感に勝てず、敵前で嘔吐と下痢を繰り返した挙句に返り討ち。マヨはユカリに四肢をもがれ虫の息、最後の望みをかけた説得さえも一笑にふされてしまいます。唯一勝ちが見えたエビゾーも突然の核爆発により失敗に終わりました。誰ひとり望みを遂げられず、地球まで吹き飛んだ最悪の結末です。
でもここからが漫画家、漫☆画太郎の真骨頂です。

ユカリが『夢か!』とベッドから飛び起きて会社に向かうラストシーン。『いつもの夢オチかよ!』と思いきや画太郎版『罪と罰』として充分なメッセージ性がこもっています。
ユカリは叶わぬ夢だった編集長になり人生を謳歌しています。その脇に執拗に描かれるのは王冠を被ったマヨの肖像画。そう、最後に勝ったのはマヨだったのです。
エビゾーを出し抜きババァを先に殺すつもりが圧倒的な巨根の前に気圧され、ユカリに捕まり達磨にされる。そんな逆境の中でも諦めないマヨの意思が勝ったのです。

ババァ=画太郎世界最強の存在、でさえ殺せる巨根。それすらもより巨大な力、核爆弾の前には無力でした。それに勝ったのが、説得が通じない相手に『これでも食らって、目を覚ませーーッ!!!』とうんこをぶっ放すようなみじめな女。
マヨが救われる理由が何もないご都合主義な結末ですが、私はそこが良いと思います。これは画太郎の『罪と罰』なのですから。マヨだけは最後まで諦めず、幼女が売春することに深く憤り、社会を変えたい=他者を救いたい。その思いを持ち続けた。その思いはマヨの最後の台詞『危ない!階段に気をつけろ!!→(転げ落ちるユカリ)バカやろーーッ!!』に表れています。自分の手足を叩ききった相手さえ思いやるこの心。先生はたとえ理不尽な展開だとしても、それでも救わずにはいられなかったのでしょう。
物語としての整合性を捨ててなお、『救われるべきは誰なのか?』と問いかける。作者の思いの込められた良いラストだったと私は思います。


【罪と罰を読み終えて】
・いきなりモノホンのババァが逆レイプするわ、ババァに復讐=ガチンコセックスと、この本が18禁にされないのが不可解な地獄絵図でした。読んでる自分が恐くなってきました。
1巻読み終えるごとに『もう読みたくない…』と思い、実際3巻の感想は書けませんでした。4巻の表紙絵からもわかる通り、読むだけで衰弱する作品です。一生、あのババァの姿は忘れられないでしょう。損害賠償ものです。
普通の人は絶対読まない方が良いです。この文章の最後に『なおこの感想はあくまで個人の感想であり、効果の保証をするものでは有りません。』とつけ足したいくらいです。

・だけどそれでも最後まで読みきったことは後悔していません。
この漫画には他に無いオリジナリティがありました。画太郎作品はどれも独創的ですが、中でも罪と罰は原作を独自解釈したコミカライズで一味違います。およそ普通でない漫画を書く先生が原作をどう表現するのか。それだけでここまで着いてきましたが、最後にはまさかのメッセージ性までありました。
オリジナルの展開で原作の意味を語る。コミカライズとしては最高峰と言っていいのではないでしょうか? そう思える感動さえありました。

・読者の予想を裏切る画太郎ワールド。その先に作者の思いまで感じられる。漫画家・漫☆画太郎を語る上で外せない作品となるでしょう。

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