『仮面ライダーガヴ』 第1話「おカシな仮面ライダー!?」:感想

2024年9月1日
■シリーズ構成:香村純子
・シリーズ構成は香村さんでした。
香村さんは、戦隊では3作(ジュウオウジャー、ルパパト、ゼンカイジャー)。プリキュアは1作(ヒーリングっど)のシリーズ構成を手掛け、ライダーではウィザードで20話以上参加した脚本家さんです。

・私の印象としては「登場人物の繊細な感情を描くのは得意だが、ストーリーは逸脱が嫌いで小さくまとめたがる人」という印象です。どの作品も2クールくらいの分量しかなく、序盤は面白いけど、2,3クール目は話が停滞しがちで4クール作品には向いていない印象が強いです。ガヴで悪癖が出でないで済むかは懸念事項です。

■わかりやすい1話
・1話は構成要素が「主人公のここまでとこれから」に絞られていて変に引っ張ることもなく、1話の中で簡潔にまとまっていて見やすかったです。

異世界からワープするところで始まるから異世界人であることはわかる→少し後でお腹のドライバーを見せて明らかに人間と違うことを説明。

「これが母さんのいた世界」という台詞からどうやら主人公の母親が地球人で同じようにドアを通って異世界に辿り着いたらしいことがわかる。

お菓子の名前や特徴は知っているが食べたことはないことから母親から聞いたか何かで知識だけは有ることはわかる→後でどうやら異世界のお菓子を母親が食べることを禁じていたから知識だけがあったことがわかる。

今回の怪人が冒頭で主人公を襲っていた敵と人間を飴にしたものを取引してるから怪人の目的がわかる→主人公の母親も飴にされたことにもつながるし、なぜ主人公が人間のために同族と戦うのか、なぜ主人公がお菓子を食べたことがなかったのかもわかる。

・説明が必要な設定と視聴者が疑問に思うようなところは先回りして一通り描かれていました。
最後がバイクに乗って新天地へと旅立つところで終わっていたので「この先は何やるの?」という疑問も湧く余地がありません。
ガヴはこういう話なんだろうなと全体像が掴める感じで、1話の完成度は高かったと思います。あとはこの調子が続いてくれれば及第点以上は確実なんですが中盤の息切れが心配です。

・個人的には予想外のこともあったところも良かったです。
犬形態に変身して逃げたときにはバトルの続きは次回なのかな?と思いましたがのまま巨大戦的な乗り物バトルに続き、この子供がレギュラーで秘密基地がアジトになるのかなと思ってたら出ていくし、予想を裏切る展開がこまめに続いて退屈しませんでした。

■敵は同族
・伝統的な仮面ライダー要素に関しては「主人公も敵と同じ化け物」という点を重点的に意識しているみたいでした。
最初は人間が怪しいディーラーの渡したお菓子で化け物化してるのかと思いましたが、その後の話からするとそうではなさそうでした。グラニュートという名前だそうですがお腹に口のある異世界人が地球にやってきて人間をお菓子に変えているようです。
あの食べてたようかんみたいキューブが”闇お菓子”ってやつなんでしょうね。麻薬的な感じなのか、怪人パワーの源的な意味もあるのかどうなってるんでしょうね。

・1話は主人公が同族殺しを決意するまでが丹念に描かれていて面白かったです。
キックで処刑する前にベルトをゆっくりと、でも確実に回す動作から伝わる主人公の葛藤と決意が演出としても機能していました。バトルや映像をちゃんとドラマに取り込めていて良いことです。

・最後に子供が「こんな手紙を残したらお兄ちゃんが化け物だってバレちゃう」と泣きながら手紙を破るシーンは頭が回りすぎる印象はありましたが子供の善良さが伝わってきて良かったです。
その一方、前半で出てきたライターに夫の行方を尋ねられたおばさんは「あれはきっと夫を殺してるな」と先輩に疑われていました。ライターの人がたぶんレギュラーキャラになるんでしょうけど、わざわざこういう話にしたからにはこの先主人公が酷い人間に会って「人間は同族を殺してでも守るべき存在なのか?」と気持ちが揺らいだり苦悩したりすることがあるんでしょうね。

■眷属
・CMで見たときには全然可愛く見えなかったのですが、映像で見ると結構可愛かったです。
ほぼ「グミー!」とか単語でしか話せないのに、主人公に必死にアピールしたり、集団で絵文字を形作って変身の仕方を説明したりする姿は健気でした。自分からアピールしておいて上の口で食べられそうになったら「そっちじゃない~!」と悲しげに泣いてるけど死を受け入れている姿は可愛くて可哀想でした。

・キックを決めた後に天使みたいな羽が生えて昇天してるっぽい感じの演出がありましたけど、使われた眷属って毎回死んでるんですかね。
わりと可愛くて健気な良いやつだと思っていたので「え、死ぬの? 可哀想だな…」と思ってしまいました。でも眷属本人は承知の上で志願しているようなので止められません。死んでほしくはないんですけどねぇ。最終回で戦う必要がなくなって眷属も主人公と一緒にのんびりお菓子を食べてる場面とかあったら嬉しいですね。

・一方、口を開いたモンスターっぽい形態はあんまり良いと思いませんでした。怖くもないし可愛くもないし微妙な印象です。
玩具的にはこっちのほうがメインっぽい気がするのでそこは少し不安を感じました。まぁそうは言っても実際「これをどうしろと?!」って話ではあると思うので強く言う気はしません。ライダーと怪人という強くて怖い存在がいるのにこの程度の不気味さや怖さではポジションの確保も怪しくなるのは無理もありません。

■仮面ライダーガヴ・ポッピングミフォーム
・という名前のフォームだそうです。
CMや番宣で見た第一印象ではグミっぽいとは思いませんでしたが、映像になったら結構グミっぽかったです。弾けるアーマーやキックの弾力感はグミっぽくて特徴が出ていて良いと思いました。
最近の予算削減用に素体アーマーを共有化させている構造を前提にしたデザインとしては上手く取り込んであってそこが良いと思います。

・ただ、顔の色がついている部分が平面的な印象もあります。
文字通りお面みたいに張り付いている感じなのでアニメならまだしも実写映像で映ると、ところどころ不気味の谷みたいな違和感を感じる角度が少なくありませんでした。

■アクション
・1話はいかにも杉原監督って感じのアクションでした。ゼロワンっぽいのがやっぱりやりたいんですねぇ。
「ひっくり返ったコンテナの隙間からライダーが映る」とかは決まっていて良いと思うんですけど、コンテナの隙間に入って戦うシーンはガヴも怪人も思いっきり自分から入っているところが強引過ぎて微妙な印象でした。「偶然挟まっちゃってピンチ! でもガヴなら大丈夫!」みたいな自然な流れがほしかったです。

・巨大戦はライダーにしては見れるクオリティでした。ほとんど走ってるだけで戦いらしい殴り合いとかはしてないところが功を奏した面もありそうです。

・キックは弱らせてから大ジャンブして振りかぶって振り下ろす流れは威力に説得力を感じました。
ただ、キック用の装備を装着して蹴って弱らせて、また装着し直して…と繰り返すのは冗長な感じもしました。その前に格闘戦もやってるので重複してる感じは否めません。

・踏みつけた後にグミが脈動するように動いて、グチャッと肉が潰れる音が聞こえそうなダメ押しをするのは確かな殺意と「主人公は人が潰れる感触を直に感じているんだろうな…」という後味の悪さが感じられて演出としては良いと思いました。

■あの犠牲は必要だったのか?
・剣必殺技はなんかシュールでした。あの眷属をぶつける意味はいったい何だったのでしょう…
流れから判断すると眷属をセットして発射するのは「エネルギーチャージ→完了&ポイ捨て」であくまで切るほうが必殺技ってことでいいんですかね?
剣にはめた時点であの眷属は死亡確定で最後のご奉公ってことなのかもしれませんが、大した役割もなくぶつけられる姿がちょっと可哀想に見えてしまいました。

■牛かと思ったけど犬
・怪人は最初は牛がモチーフなのだと思っていましたが、巨大戦になったら犬になっていてアレ?と思いました。
名前が「ハウンド」ですし、たぶんドーベルマンですね。ドーベルマンの断耳して外に向いた耳が私には角に見えたんですね。


次回はラストで拾われた女性のところで働くみたいです。
今度こそレギュラーなのかまたゲストなのか、どっちなんでしょうね。
フォームチェンジも早速登場するようです。ポテチの眷属ってどんなデザインになるのか個人的には気になります。シンプルにポテチの袋を箱型にした感じなんでしょうか。



コメント

12 件のコメント :

  1. こんにちは。ガヴの物語が始まりましたね。メイン脚本の香村さんにとっては、自分が手掛ける初の仮面ライダー作品となります。

    近年の仮面ライダーといえば、ベルトや強化アイテム等の溢れんばかりの販促の量が、他のニチアサを圧倒しています。

    私は香村さんにそれの壁を乗り越えて、スポンサーのBANDAIを満足させることができるかどうかで、ガヴの作品の質や面白さが問われるんじゃないかと思います。

    1年間宜しくお願いします。

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    1. 匿名さん、こんにちは。

      販促面に関しては不安もありますね。香村さんは販促に熱心だったり得意だったりという印象はありません。入手過程や変身に相応のドラマを用意したり、及第点かドラマ自体に力を入れてる分だけ及第点よりやや上か、くらいの印象です。
      ただ、今のライダーの水準だとそれでも良い方にはいる可能性もあり得るなと思いました。

      純粋に期待が持てる要素があるとすればアイテムの入手過程かなと思います。
      今回のように「お菓子を食べて眷属=新アイテムを入手する」という過程が基本ならば、主人公がお菓子を食べる過程で「誰からもらったか、主人公は食べてどう思ったか」などドラマを差し挟む余地が大きいと思うのでそういう面では香村さんにとって有利な環境なのかもしれません。

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  2. お菓子をくれた子供に対して時間を使わせてしまった事を謝っていたり、「気をつけてね」と見送っていたりと、細かい所で主人公に対して結構好印象を持てたのが良かったです。やはり物語は主人公が好きになれないと追うのが辛くなってしまうので、こういうちょっとした部分の積み重ねで良い印象が持てればと期待しております。

    アクションは弾けたグミ部分のアーマーを再度グミを食べて直すシーンがガヴ(ポッピングミフォーム)らしさが出てて面白いと思ったのと、ライダーキックがよく見るジャンプ蹴りだけで終わらせるのではなく、踏みつけてトドメというのが新鮮に映りました。割と珍しいライダーキックだと思ったので他ライダーの差別化として今後も見てみたいところですが、ここはフォームで変わるのかどうかがちょっと気になるところです。
    気になった点としては、変身する際や技を出す際にビルドのようにレバーを回す必要がある点でしょうか。あちらと比べるとボトルを振る動作は無いので、そこで見せ方の差別化が出来ればと思っております。

    総じて、1話は香村さんらしい手堅い作りで、ここ最近のライダーの中では中々期待できそうな1話だなと感じました。香村さん脚本の作品ですと、ジュウオウジャー、ルパパトは良かったもののヒーリングっど、ゼンカイジャーは期間を開けず無理が祟ったのか残念な出来になってしまったので、ゼンカイジャーから期間の空いた今作では期待したい所です(ここ最近の特撮作品がどうにも乗り切れないのもあるので余計に…(笑))。
    Owl様のブログもまた1年楽しみにしております。

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    1. >お菓子をくれた子供に対して時間を使わせてしまった事を謝っていたり、「気をつけてね」と見送っていたりと、細かい所で主人公に対して結構好印象を持てたのが良かったです。

      人格も描写もまともで良かったです。
      ゼロワン、セイバー、リバイス、ギーツ、ガッチャード、と振り返ってみればまともな行動を取る主人公は久しぶりでした。安心感が持てることはやっぱりヒーローには重要です。

      >割と珍しいライダーキックだと思ったので他ライダーの差別化として今後も見てみたいところですが、ここはフォームで変わるのかどうかがちょっと気になるところです。

      足の特徴を活かしているので他のフォームだとどうなるのかはまだ未知数ですね。
      1クール目に出る普通のフォームチェンジでもキックのときにはあの眷属を使うから共通なのか、それとも別のや武器中心になるのか。いろいろバリエーションがあると良いですねぇ。

      >気になった点としては、変身する際や技を出す際にビルドのようにレバーを回す必要がある点でしょうか。

      アクション的には邪魔になりがちな要素でしょうね。
      アイテムを刺したりするタイプならかっこよく刺すとか素早く刺すとかやりようがありますけど、レバーだとあんまり早く動かすと玩具が壊れるから良くないし、省略も難しいでしょう。どうにかなると良いのですけど、難しいだろうなと思っています。

      >香村さん脚本の作品ですと、ジュウオウジャー、ルパパトは良かったもののヒーリングっど、ゼンカイジャーは期間を開けず無理が祟ったのか残念な出来になってしまったので、ゼンカイジャーから期間の空いた今作では期待したい所です

      そうですね。後に行くほど見るからに完成度が下がってましたね。今回は構想をしっかり練ってあってほしいです。2,3クールの中だるみがないだけでだいぶ良くなると思います。

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  3. 少し気になっただけなのですが、上記コメントにてゼロワン以降の主人公の人格に難色を示すということは、ジオウの主人公の人格はowlさん的にはOKという判断なのでしょうか
    それともただ令和で括っただけでゼロワンまで列挙したことに深い意味はないのでしょうか

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    1. 直近の令和で区切っただけですね。ジオウの感想を読めば私がどう感じたかはすぐわかると思います。

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    2. ジオウの子は好きなタイプではないだろうなと思ったので、ああ意外とジオウはOKなんだなと思いましたね
      正直なところガヴの主人公が好感触なのにも驚きです

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    3. ガヴの主人公は今のところ、特に嫌いな要素は無いと思ってます。
      子供っぽい方に振られると辛いかもなぁってくらいでしょうか。ローテ陣の担当回はそんな感じになってもおかしくないだろうと思っています。

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  4. 香村さんはサブは上手いけどメインは...って印象です
    面白い時期もあるけど長く続かない

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    1. ボリュームが少ないんですよね。
      始まりと終わりの1クールずつしか内容が詰まってないことが多くて、間の2,3クール目がしぼみがちで、そのせいで今更初期路線の話をする4クール目も盛り下がりがちだと思っています。
      ガヴは違うと良いのですが。

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  5. 管理人さん。こんにちは
    香村さんは2〜3クール目に話が進まないのなら2クール目に敵幹部全滅。上位の存在or新たな敵組織の出現や2・3クール目に1人ずつ敵幹部を倒すとかすれば少しはマシになるんですかね?
    どちらかと言うと敵幹部の倒し方というより話の進め方が下手な感じなのでそこを直さないと意味が無い気もしますが

    あとは敵幹部のキャラ付けが薄いなと思うのでそこも改善してほしいなと思います。思い切って敵幹部のキャラ付けや3クール目はサブに任せるとか?
    まあサブに任せるのはリスクの方が高そうなのでやめてほしいですけど

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    1. 匿名さん、こんにちは。

      >香村さんは2〜3クール目に話が進まないのなら2クール目に敵幹部全滅。上位の存在or新たな敵組織の出現や2・3クール目に1人ずつ敵幹部を倒すとかすれば少しはマシになるんですかね?

      既存のニチアサのフォーマットを使うならそんな感じにしたほうが今までよりはマシになるんじゃないかと思います。
      この手法にこだわる必要は特に無いし、いずれにしても重要なのは面白いかどうかなのは変わりませんが。
      香村さんならバングレイやザミーゴみたいなライバルキャラがラスボス候補を倒して組織を乗っ取ったりするのも話の変化には有りだと思いますが、敵側で変化をつけようとすると主人公側が置いてけぼりなまま話が進みがちになるので構成全体としてはリスクは高い気がします。

      >あとは敵幹部のキャラ付けが薄いなと思うのでそこも改善してほしいなと思います。思い切って敵幹部のキャラ付けや3クール目はサブに任せるとか?

      目立ってるキャラと目立ってないキャラの落差は結構ありますね。そういうところでも改善の余地は有ると思います。

      ローテ陣に任せるのは手法としては有りだと思いますが、香村さんには合わなそうな気がします。
      基本的に「自分が書いた話以外は話数埋めに過ぎない」みたいなワンマン路線だと思っています。これまでの印象だと人を上手に使う方向性に期待するよりは、香村さん自身が書ける範囲で構成を改善するほうが可能性は高いんじゃないかなと私は思っています。

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