キラキラ☆プリキュアアラモードを最終回まで見終わったので感想を書きたいと思います。



【全体の印象】

・一言で言うと「薄い」。
”スイーツ”という主要モチーフのイメージとは裏腹な薄味っぷりに戸惑うことが多かったです。
主な問題点は以下の2つの要素に集約できると思います。

1)コンセプトを展開に取り込めていない
・キラプリはコンセプトやモチーフを活かせていません。本来ならば作品の中核を成すはずのコンセプトが形骸化していることで大きな無駄が生まれています。

・その筆頭は”スイーツ”です。
「 伝説のパティシェ・プリキュア」と本作のプリキュアを定義したり、主人公がお菓子屋を営業したり、戦うときもクリームを使って戦うなど作品の根底を成すモチーフのはずです。しかし実際の作品内での扱いは散々なものでした。
作中で重要なのは「キラキラル」というポジティブな感情を結晶化したもののほうで、スイーツはキラキラルの入れ物扱いでしかありませんでした。敵が狙うのもキラキラル、プリキュアの特徴はキラキラルを自由に操り加工できること。酷いときにはプリキュアたちがスイーツを作らずに終わり、敵は「どこかの誰かの持っていた何かのスイーツ」からキラキラルを奪って怪人を作り出したこともありました。

・スイーツがこの有様なのでお店のほうも無残です。ただのメンバーのたまり場兼ゲストの訪問先にしかなっていません。お店としてろくに機能してないので学校や部活の部屋、あるいは誰かの自宅に置き換えても特に違和感がないと思います。

・スイーツ自体の扱いが酷いので「”アニマル”スイーツ」も見る影もありません。
どこが動物なのかというと「動物の姿のように見えるデコレーションをしているから」以上です。なんで動物なのかというと理由はありません。主人公の思いつきで作られるのですが、主人公が動物好きだとかその回に動物が絡んでくるということはありません。アニマルスイーツを作るのがこの作品のコンセプトだから作るのです。
このアニマルスイーツはリアルでは玩具として販売され、変身アイテムに嵌めると音声が流れるオプションパーツとして売られています。しかしアニメ本編ではお菓子として作られるだけでアイテム化もしませんし、バトルの役に立ったりもしません。CMや玩具の実物を見たことがない限り、売られていることにすら気づけません。
作中でも変身に必要なアイテムだけはお菓子からアイテムとして具現化されているのにその他のアニマルスイーツは頑なにアイテム化されることはありませんでした。販促番組としてこれでいいのだろうかと疑問に感じる描写でした。

・プリキュアといえばアクションも欠かせません。
キラプリはアクションにおいても「肉弾戦封印」というお題目を当初から掲げています。肉弾戦の代わりにモチーフであるスイーツに絡めてクリームを使って戦うのがキラプリの特徴です。
実際にはこちらも壊滅的でした。封印したはいいものの、代わりになるものを何も用意できませんでした。提示されたのは、ただクリームを発射したり鞭のように使ったりするだけの単調なバトルでした。試みが成功しなかったどころか創意工夫の欠片も感じられないアクションばかりで見る価値がありません。
過去のシリーズ作であるスプラッシュスターもプリキュア以外の数多くのバトルアニメでも鬼門とされてきた肉弾戦抜きにあえて挑戦したはずが、実際はただの無策の無謀でしかなくてがっかりでした。アクションが目当ての人や肉弾戦封印というお題目に興味を持った人は絶対に見ないほうが良いです。

2)「なんでみんなお店にいるんだっけ?」
・キャラも機能していない部分がいくつもあります。その代表例が「お店にいる理由がわからない」ことです。
初期メンバー5人の中でお菓子作りに興味があるのは主人公のイチカたち3人だけであとの2人は特に興味がありません。
それどころか2人にはいないほうがいい理由すらあります。お店にいる意味のわからないキャラの筆頭であるアオイは、ロックスターを目指すべく既にバンドを組んでライブを行っており、最後の決戦でも「私は歌手になりたい!」とスイーツが1ミリも関係ないことを語っていました。もう一人のアキラも病気の妹がいて、終盤には妹のために医者になりたいと抱負を語っていて、お店の手伝いをしている暇があるようには見えません。
結局最後までお店にいる理由や本人にとってのメリットが示されずに終わってしまいました。これならお店を切り盛りするのはお菓子に興味のあるメンバーだけにして、他のメンバーは客として来たり忙しいときに手伝うなど友人として関わる程度にしたほうが合っていたと思います。

・このコンセプトのぶれが転じて、最後まで「主人公&その他」になっているところが目立ちました。メインストーリーでは主人公vs悪の幹部で他のメンバーは話に加わらないことがほとんどでした。
他のメンバーは主人公が「それは違う!○○はスイーツのおかげでxxできた!」(私はスイーツのおかげでみんなと出会えた、など)と悪の幹部の言い分を否定するときのサンプルに過ぎません。

・プリキュアや戦隊など多人数制の作品ではメインストーリーで主人公以外が空気になることは珍しくありません。
しかし変身時の口上でも使っているキーワードの一つとして「Let's la 混ぜ混ぜ」と言っているのにメンバー同士が交わらないのは違和感が強かったです。メインストーリーで目立つのは主人公の「私は○○が好きだ!」という自己主張だけで、メンバーとも敵とも交わっていないように見えてしかたありませんでした。
スタッフのインタビューからすると、スタッフにとってのメインテーマは「個性」や「多様性」らしいのですが、作中で扱われるのは主人公の考えだけで私には多様性とは程遠いように見えました。
正義と悪の対立なら正義が勝ってもいいと思いますが作中で掲げている「自分の大好きと他人の大嫌いの対立」だったら、片方が一方的に正しいとされるのは受け入れがたいです。どちらかが一方的に勝つのではなく、共存やお互いに負担にならない適切な距離を模索するのが正しい方向性だと思います。




【ストーリー】

■ヒーローと悪役のドラマが逆転している
・監督が2人併記されているのでサブシリーズ構成が付いている作品みたいに2つの流れが併存していて回によってキャラや作品のコンセプトが異なる感じになってしまうのではないかと当初は危惧していました。しかし実際はストーリーの方向性が特に感じられない内容でした。
メインストーリーは主人公と悪役だけで話が展開し、他のメンバーは個人回で話が進むだけで横のつながりやメインストーリーへの寄与がありません。そんな中で唯一方向性を感じたのが”悪役”でした。

・プリキュアシリーズを始めヒーローものでは「悪役は悪役だから悪役である」と開き直って、淡々と襲い掛かってくるだけで何のドラマもないバトル要員にしているパターンが珍しくありません。逆にだからこそ悪役にもドラマを持たせるべきだと考える作品もよくあります。

・キラプリの独特なところは悪役とヒーローが逆で「プリキュアはプリキュアだから戦う」と開き直ってドラマが失われているように感じるところがありました。
ジュリオやビブリー、エリシオなど悪役のほうがドラマやメッセージ性が強く、そのドラマへのプリキュアの加担が少ないように感じました。悪の側のドラマにおいてプリキュアは正しさを具現化した存在としてしか扱われず、プリキュアに変身するメンバーとの関わりが薄かったです。プリキュア側のメンバーの掘り下げが薄くドラマの積み重ねが弱いため、悪役が心を動かされる過程で「あの話があったから」という内容が少なく、大半がヒーローという基本設定に依存した根拠で話が進んでいるように見えました。
普通のプリキュアシリーズの作劇とは真逆に「基本的に悪役側の視点から物語を描いていき、バトルのときに敵(プリキュア)と会話して少し交わる」という構成にしても悪役側のドラマは成立するように感じました。
「(双子の姉はプリキュアになれたのに)プリキュアになれなかった男」であるジュリオや「悪の首領に絶望から救われた」ビブリー、「大好きが転じて大嫌いになった」ノワールなど悪役のドラマ自体は良かったのですが、この作品のタイトルは「プリキュア」なんですよね…
ストーリー自体も結局はプリキュアで締めているので余計に悪役のドラマが浮いています。プリキュアメインとして見るにはメンバーの掘り下げが浅く、悪役メインとして見るには出番が数話しかなく、どちらも中途半端な内容になってしまいました。

■良かったところがないわけではないんだけど…
・ここまで否定的な内容が続いています。では良いところがないのかというと無いことはないんです。

・赤いプリキュア、キュアショコラに変身する剣城あきらはガーリィなデザインが基本のプリキュアでは異色のキャラクターでした。普段から男装というわけではなく好きでユニセックスな格好をしていて、変身後は宝塚ふうとこれまでにない方向性のかっこいいキャラでした。

・他にも上で挙げた悪役のドラマなどいくつかあるんですが、全て”要素”で終わってしまっているのです。
あきらは最後まで「かっこいい人」で終わってしまっていますし、悪役たちもしょせん悪役なので一旦スポットライトが外れるとそれっきりで脇役になってしまいました。結局、ジュリオがキラキラルを作れなくなったり、プリキュアになれなかった理由はなぜだったのか未だにわかりません。
大好き大嫌い問題もその切り口自体は良いと思います。しかしそれを解決する主人公に積み重ねがなく、説得力を感じませんでした。結局、克服すべき問題であるはずの”大嫌い”の権化であるノワールは「ラスボスが殺してくれたので死人に口なし」で終わりですし。これでめでたしめでしと言われても納得がいきません。
どれもこれも、題材として扱って描いたと言えるほどの深みを感じませんでした。そこが私の評価が低い大きな理由です。

・この件についてはシリーズ構成とプロデューサーのインタビューを見ていくらか納得がいきました。
要素を出すことが目的でそこから何かを形作る気はなかったみたいです。2クール時点の感想で触れた監督たちのインタビューでもそうだったのですが、基本的に「アイディア=ゴール」で一つのアイディアを膨らませ発展させていく考えはないようです。私の苦手なタイプなので私がキラプリに合わないのも納得です。

・「あきらみたいなキャラを出せた」、「好きだけでなく嫌いも取り上げた」、そんな問題提起だけで終わってしまう話は私は好きじゃありません。見たいのは製作者の考え出した答えだからです。
「ある人の大好きは別の人の大嫌いとぶつかることがある」ここまでは良いんですが、その答えを出さずに曖昧な理由でプリキュアを勝たせて終わりでは肩すかしです。それでは題材として取り上げる意味が無いと思います。理想論でもビターエンドでも構わないので「私はこうだと思う」と明確な結論を出してほしいです。




【総合感想】

■第一印象とあまり変わらなかった
・この文章の概要を考えた後に、自分で書いた1クール目や2クール目の感想を見直してみて驚きました。
最終回まで見終わった後でも序盤の印象と大差ありませんでした。お菓子作りへの関心の薄さも、バトルものである必然性も、危惧した問題はほぼ全てそのまま解消されずに残ってしまいました。短期ならともかく一年もので印象が変わらないのは厳しいです。

■満足感が低い
・全体の印象は良くなく、勢いがあるわけでもなく、キャラやバトルも薄い。満足感の低さがきついです。一年間もやって特に残らないのは徒労感が強くて辛いです。
スイーツというモチーフやゴテゴテしたプリキュアの外見からこの内容を想像する人は少ないでしょう。その辺りのギャップも追い打ちです。

・満足感の低さの最大の原因は「まとまった量の無さ」だと思います。
キャラどうしの横のつながりが弱く、ストーリーをキャラごとに分けたせいで1人のキャラに興味を持ってもその続きは次の個人回まで見られず、続きを見るには7話も10話も待たないといけません。メインストーリーも同様に実質主人公と悪役の個人回なので、全てのキャラに興味を持てない限りはメインストーリーとも他のキャラとも関わりの薄い回が何話も挟まることになってしまいます。

・悪役のドラマが濃く感じるのはこの形式のせいもあるのではないかと思います。
悪役は各メンバーの個人回でも数話にまたがって暗躍しますし、クールごとの節目には2,3話連続の続きものの話で扱われます。その分だけ、ばらばらに扱われるメンバーよりもまとまった出番のある悪役のほうが印象が強まるのではないかと私は推測します。

■オススメポイントが見つからない…
・総合感想の最後はたいてい「こんな人にはオススメ/オススメできない」と言って締めるのですが、今回はそのポイントが見つかりませんでした。
長所も短所もあまりこれだ!という点が思いつきません。良くも悪くも癖は少ないですし、だからといって「あっさりした展開で気軽に見れる」とか「 すっきりコンパクトにまとまっている」と軽さを評価できる内容でもありません。
視聴後にこれといった印象が残らないという点ではある意味最もオススメできない作品かもしれません。