【序文】

■価値観が根本的に合わなかった
・私とは全く反りが合いませんでした。
既存の人間関係にしか興味を持たず排他的で周りに迷惑をかけても平然としている少女たちを愛でる趣味も、相手の言うことに耳をかさず、戦いを作業として無慈悲に排除し続ける様子を楽しむ趣味も私にはありませんでした。面白い面白くない以前に嫌悪感が先立つ内容でした。

・そんなわけで「どこがどう合わなかったか」という主観的な感想を主に書いていきます。客観的レビューでは全くありませんのであしからず。


【悪かった点】

■作画が酷い
・価値観がまるで合わないので何が良くて何が悪いのかほとんど判断がつかないのですが、作画に関してだけは確実に悪いといえます。

・プリキュアといえばアクションが見どころの一つでしたがまほプリはそれ以前の問題です。
従来のシリーズでいえば捨て回にあたるクオリティが普通で、敵幹部を倒す回などバトルが比較的重要であろう回ですらシリーズにおける通常回程度のクオリティでした。根本的に動かす枚数がないのではアクションなんて夢のまた夢です。アクションには期待してはいけません。

・原因は製作会社の東映が同時期にいつもより多くのアニメを作っていたことではないかと推測します。ドラゴンボール、デジモン、タイガーマスクWに映画のポッピンQとオリジナルものをいくつも平行して作っていました。
これに関してはスタッフにどうにかできることではないので悪い印象は抱いていません。しかし見どころの一つが削がれていることは確かなので作品としてはマイナス評価せざるを得ません。




【良かった点】

■デザイン
・プリキュアのデザインは良かったです。
変身前は従来より子供っぽく小学5年生くらいの印象で、変身後は大人っぽく大学生くらいに見えました。変身前後での落差が良いです。
プリキュアシリーズでは服装と髪の長さが変わる程度の変化で済むことが多く、全体の印象が大きく変わることは少なめです。個人的にはこれくらい落差があるほうが変身の意義が感じられて良いと思います。

・フォームチェンジも服装から髪型まで大きく変わり、着せ替え感があって面白かったです。同じキャラとして認識できるように前髪や頭部は変えずに、アクセサリーと頭上や横に伸ばした髪だけでこれだけのバリエーションを作っているのはすごいなと感心しました。

・個人的なお気に入りはルビーです。
ガーターベルトなどけっこうアダルトな服装をリボンとハートをたくさんあしらうことで可愛いといえる領域に押し込んでいるところがすごいです。よく通ったものだと思います。次点で大人っぽさを正統に昇華したサファイアが好きです。

■演出の土田豊さん
・悪かった点で述べたように基本的にまほプリのアクションは劣悪でした。
しかし時折、動かなさは同じなのに構図や動かし方に光るものを感じることがありました。そういうときはいつも土田豊さんが演出・絵コンテを担当されていました。土田さんという優れた演出家に気づけたことは私がまほプリから得られた数少ない成果です。

・具体的に話数で挙げると、21話のドクロクシーとの決戦、29話のモフデレラ、38話のカボチャ祭り、46話のサンタ回の演出と絵コンテを担当されています。どの回もリンクルストーンの魔法やホウキなど、まほプリの独自要素を活かしたアクションを行っていて好感が持てました。

・残念ながらまほプリの環境ではその才能を存分に発揮することができませんでした。他の作品で実力を思う存分活かせることを願っています。


【合わなかった点】

■主体性の無さ
・どこにマイナス要素を大きく感じるかと考えた末の結論が主人公、みらいの主体性の無さでした。

・まほプリは初期メンバーの二人、みらいとリコが中心に構成されています。
より絞りこんでいくとリコも「みらいのパートナー」というポジションでしかないことがわかっていきます。つまり、まほプリはみらいのお話であると言えるでしょう。

・しかしこの主人公のみらいに魅力がありません。主体性がないからです。
主人公のみらいがどんなキャラクターであるかはその口癖が物語っています。みらいの口癖、それは「ワクワクもんだー!」と「(相手の発言に対して)今○○って言いました?」の2つです。
言葉の響きのとおり、受け身の姿勢です。自分から楽しいことを始めたり、人を楽しませたりすることがありませんでした。自分からは何もせず、ただ何かが怒ることを期待しているこの主人公の行動を見ていたいと私は思えませんでした。
あまりにもマイナス要素が目立つので卒業すべきネガティブな意味で使われているのかとも考えましたが、実際には最終回に至るまで何度も繰り返し使われていきました。スタッフにとってはこれが肯定的な言葉であるようです。

・話の中核である主人公がこの有様なので、お話は基本的に年中行事やゲストなどのイベントや敵の襲来など向こうから勝手にやってくる構成が大半でした。
みらいとリコ、二人の関係性が主軸なのにイベントに頼ったのは間違いだと思います。むしろ「何もない日常でも二人なら楽しい」という路線のほうが合っていたと思います。
二人のお話なのに二人の”日常”が感じられないことは私にとって致命的でした。楽しそうに見えないどころか、「もしも敵も襲ってこない何もない平凡な日があったら、二人は何をして過ごすだろうか?」と想像しても答えが浮かんできません。毎回のように「私たちの邪魔をしないで!」と敵を打ち倒すのですが、敵をただの邪魔者として邪険に扱うなら戦いよりも優先したい普段の生活の大切さを描いてほしかったです。たとえば似た構成の初代プリキュアでは部活動や恋愛、学業など日常の要素が描かれていました。初代を意識したと思われる構成のわりには大切なところがすっぽり抜け落ちています。

・キャラクターで比較的印象が良かったのは、妖精であり変身アイテムのモフルンと赤ちゃんポジションである子供時代のはーちゃんでした。
でもこれは喜べない結果です。二人ともいわゆる”良い子”でしかないからです。他の問題を抱えたキャラに比べて有能で物分りが良いから印象が良いだけで、キャラクターとして優れているわけではありません。一過性ならともかくこういうキャラが最後まで目立ってしまうのはメインのお話が上手く行っていないことを示しています。

■怖い
・近年のプリキュアシリーズは、浄化と敵との和解や許しが基本でした。そんな風潮が嫌いだった人にはまほプリはオススメかもしれません。まほプリでは敵に対して無慈悲に何の感情も抱かずに倒すからです。私はそこに恐怖を感じました。何を考えているのかわからない人物が無秩序に圧倒的力を振るう姿を見ていると、いつその矛先が自分に向けられるのかと不安になります。

・敵の悪行が目立たないことが原因の一つです。
まほプリのバトルには基本的に一般人は巻き込まれません。
敵を倒すと壊れた物も元に戻ります。敵は幹部以外は無生物に魔法で命を吹き込まれた存在で、近年のシリーズで基本になっている人間の感情を素体にした敵ではありません。敵は世界の破滅を目的とし、主人公たちの持つアイテムやプリキュア自体を狙ってひたすら襲い掛かってくるだけです。基本的に人を襲わず街も壊さず、野望が叶ったときに世界が破滅するだけで実害がろくに描かれませんでした。
そんな敵をプリキュアがただ倒していきます。敵の言い分も聞きません。恨み言を言われようと気にしません。敵のほうが個人的理由や目的をはっきり言う分、プリキュアよりも戦う理由があるように見えてしまいます。悪役の人物描写をしないのは構いませんが、最低でも悪役が倒すべき敵に見える程度には描かないと話が成立しないと思います。

・越えられない断絶を感じたのは、敵幹部の一人、ヤモーとの戦いでした。
まほプリは敵勢力が二部制になっていて2クール中に最初の勢力がボス含めて壊滅し、3クール目から入れ替わりで新勢力が登場する構造になっています。
問題の敵幹部のヤモーは組織壊滅後も一人でプリキュアに挑みました。復讐の理由は「(数話前に倒された)大切な主君を殺されたから」というものでした。この理由が大問題です。
プリキュアの二人がそのボスを倒したときに挙げた理由が「大切なものを返せ(妖精の赤ちゃんがパワーアップのためにボスに取り込まれていた)」というものだったからです。私にはプリキュアもこの敵も掲げた理由は同じに見えました。しかしプリキュアはそんな敵でも動揺するどころか、いつもどおり聞く耳を持たずに抹殺しました。
これには愕然としました。普通のバトルものだったらショックで戦えなくなってもおかしくない展開です。それを理論武装して自分たちを正当化するどころか何の反応も見せずに倒してしまいました。自分たちと似た主張をするものも淡々と排除する姿はどちらが悪役なのかわかりませんでした。

・この後にもう一つ受け入れがたい出来事がありました。
敵のスパイとしてプリキュアに近づいた小悪党、チクルンをプリキュアが許す展開です。許すことは一向に構わないのですが、問題はチクルンの人物像とプリキュアの許し方です。
チクルンが敵に協力していた理由がまず私にとってはあり得ないものでした。それは「仕事をサボっているところを敵幹部に偶然目撃され、女王様に告げ口されておしおきされるのが嫌だったから」というものでした。つまり、母親に頼まれた仕事をサボっていたことをバラされたくなくて、世界の破滅とプリキュアの抹殺に加担したということです。
これには呆れました。いくらなんでも世界の破滅に加担する以上、人質を取られているなど相応の理由があると思っていました。やってきた悪行と理由が全く吊りあっていません。同情の余地のないただのクズに見えます。
このチクルンが情にほだされて敵を裏切り、スパイだったこととその理由をプリキュアの前でバラされてしまうのですがプリキュアたちはチクルンを庇いました。その理由は「チクルンは友達だから」というものでした。既に友達だから悪党でも庇うという展開に目眩がしました。
ヤモーの一件と合わせて考えると、似た考えの同類でも敵なら殺し、どうしようもないクズでも友達なら助けるということになります。そんな価値観の人物が世界を左右する力を握っていることに寒気がしました。身内はそいつの不始末が原因であっても助け、よそ者は道理があっても排除するなんてまるでヤクザです。
当然のことながら、敵を倒した後にチクルンの責任を追求したり、罪滅ぼしを促すこともありませんでした。敵への苛烈な対応との落差にますます首を傾げました。

・ヒーローをヒーローと呼ばれる存在にするものは”信頼”だと私は思います。
ヒーローも敵も強大な力を持つことに変わりはありません。「その人物が力を手にしていても不安にならないかどうか」、それがヒーローの絶対条件だと思います。ダークヒーローが使う力が邪悪であってもヒーロー足り得るのもそれが理由ですし、アウトローやヤクザでもときにヒーローのように見せられるのはその人物に一定のルールや美学があり力の矛先が限られているからです。
まほプリの場合は魅力がないどころか見ていて不安になります。バトルを基本とするプリキュアシリーズの作風からするとあってはならないことだと思います。



■販促が手抜き
・プリキュアシリーズに限らず販促が適当と感じることはしばしばありますが、まほプリの場合は度が過ぎていました。

・ロッドに使うアイテムのリンクルストーンが道端に落ちている。おまけにロッドが使われるのは数話に一度だけ。
追加戦士の武器のエコーワンドも初期メンバー二人のリンクルストーンに対応しているはずなのに全く使わない。

・フォームチェンジはどれを使うか戦闘開始前に選んでバトル中の変更は一度もなし。なぜそのフォームを選んだのか説得力を感じるバトル描写もなし。

 ・定番のビーズでアクセサリーを作れる玩具は3月発売だったのに作中で登場したのは半年後の8月になってからの一度だけ。それまではBパート開始時のアイキャッチで映るのみ。

・まるでやる気が感じられませんでした。違和感なく馴染ませるどころかノイズにしかなっていません。
よくこれでスポンサーが怒らないものだと思いました。いかに販促を上手く扱うかもキッズアニメの醍醐味だと私は思っています。これでは上手い下手以前の問題です。

■無駄が多い
・まほプリは多くの要素を切り捨てています。
バトル、変身の意義、悪役、販促…、プリキュアシリーズの構成要素の大半を不要なものとして扱っています。
これには無理がありました。プリキュアシリーズではその回に登場する敵とバトルに毎回5分以上使っています。それらの要素を切り捨てたまほプリも例外ではありません。放送時間はCMとOP、EDを除いて正味20分強ですから、各話全体の20%以上も無駄にしていることになります。それで影響がないわけがありません。プリキュアシリーズの土台を無視した結果、その分だけ無駄になり全体の構成に大きな穴を空けることになりました。

・ストーリー面で特に驚いたのは、終盤で主要キャラクターであるモフルンとはーちゃんも切り捨てたことです。
従来のシリーズの基本構造やノルマだけならともかく、自分で生み出したキャラクターまで切り捨てるとは思っていませんでした。みらいやリコと対等なキャラだと思っていたら、いつの間にか「あれ、今回モフルンは相槌以外に何かしゃべったっけ?」なんて疑問を抱くはめになっていました。 
はーちゃんに至っては唐突に責任感に目覚めたり、話をまとめるために急激な方向転換を強いられていました。プリキュアが大人数だったりサブキャラならともかく、3人+妖精の構成で半分が切り捨てられるとは予想以上でした。

・切り捨てたものはたくさんあるのですが、その甲斐があったと思える内容の厚みがなかったことが最大の問題です。
それだけ削っておいて、描いたものは薄いキャラと薄いストーリーで、振り返ってみれば1クール目の時点で書いた感想と印象がまるで変わっていません。当初は2クール目、3クール目終了時にそれぞれ各クールの感想を書こうと思っていたのですが、草案を考えた時点で内容が1クール目の時点の感想と大差なかったため中止したほどです。無駄を削っていったはずが、最大の無駄は本筋そのものに見えました

■ラストも許せない
・私の評価基準の一つに”最終回ボーナス”があります。
上手く最後にまとめられればプラス評価がつきます。しかしまほプリの場合はボーナスどころかマイナスでした。

・ラスト3話前にいきなりそれまでの展開と食い違う取ってつけたような展開が始まってげんなりしました。
みらいたちが突然世界をつなぐとか言い出したときには耳を疑いました。21話の時点で「世界とかそんなことはどうでもいい!」と言い切っていた人物がどこでどのように変化したのでしょうか。それまでの展開を思い返してもそんな変節見た覚えがありません。世界をつなぐことに関心がある人物が旧幹部だったバッティの変化に無反応だったとは何とも不思議な話です。
トドメに展開が普通に酷いのがあんまりでした。主人公が悩む選択が「ラスボスを倒して副作用で離れ離れになること」 と「ラスボスを放置して2つの世界どころか宇宙まるごと滅ぶこと」の二択だったのです。そんな二択で悩む人がいるのでしょうか? 葛藤も何もありません。
やりたい放題やっておきながら体裁を気にして最後だけかっこつけようとするのは人として許せません。この流れを考えたスタッフを軽蔑します。

・作品としてそれでいいのかと思う点もありました。はーちゃんとモフルンの未来が語られなかったことです。
最終回でみらいとリコはそれぞれ「世界のみんなを仲良くさせたい」、「魔法界をもっとまとめるために校長を目指す」と将来の抱負を語っていました。一方、はーちゃんは「2つの世界をもっと近づける」という既に取り組み中の出来事を語り、モフルンに至っては無視でした。
どうしてそうなるのかさっぱりわかりませんでした。この期に及んで二人の人格を認めないとはどういうことでしょう? まして強引にまとめようとしているのに二人を除け者にしたらまとまるものもまとまりません。最後の最後まで理解しがたい出来事に驚かされました。


【総評】

■ワーストプリキュア更新
・キャラクター、ストーリー、バトル、ヒーローものとしてのあり方、キッズアニメとしてのあり方。私の評価基準の主要項目全てで記録的低評価を叩き出しました。
プリキュア5が個人的ワーストプリキュアの地位を独占してきましたが、この度めでたくまほプリが王座を勝ち取りました。しばらくこの盤石な体制は揺るぎそうもありません。というか、そうでないと困ります。