『動物戦隊ジュウオウジャー』を最終回まで見終わっての全体感想です。


【一言まとめ】

・アクションは上質。
・ストーリーも全体は楽しめた。終盤が尻すぼみだったのは残念。
・戦隊のシリーズ構成初めてとしては充分すぎる結果。


【良かった点】

■ストーリーの完成度の高さ
・ジュウオウジャーの最大の魅力はストーリーだと私は考えます。
ストーリー全体がキーワードの「つながり」と結び付けられていて、面白くわかりやすい内容になっています。
「戦隊=動物の群れ」という置き換えに始まり、異世界人である戦隊メンバーがアクシデントで地球にやってきて元の世界に帰れなくなったことから生まれた関係。自分の楽しみのために手下を駒として使い一般人を虐殺する、つながりの対極に位置する敵。メンタル面での課題となるのは他人と関わることで生じる軋轢や葛藤。メンバーやゲストの絆から生まれる勝利と未来。
キーワードの”つながり”を中心にして話が回るので内容がわかりやすく、展開が進むにつれてキーワードの意味が掘り下げられて深みが増していく相乗関係が魅力です。キーワードのおかげで今何の話をしているのか迷うことがなく、それでいて一見関係のない話でも「あぁ、これも一種の”つながり”ということか」と発見する意外性もあり、単純でいて複雑なお話になっています。

■キャラクター
・キャラクターの造形も魅力的でした。
とりわけ目立っていたのは、レッドでありメンバーの精神的主柱だった大和、大和の対になるアム、そして追加戦士の操です。

・主人公の大和は優しい好青年で、異世界からやってきた文化が異なる問題児が多い中での常識人ポジションで安心して見られます。しかし父親との関係に問題を抱えていて、メンバーの誰よりも問題の根が深い存在でもあります。

・大和は「動物学者」 という設定も面白かったです。
大和の思想や生い立ちを裏付ける設定として説得力を持ち、ストーリー上でもたびたび動物の生態についての見解を述べることでストーリーを補強していました。これまで何をしてきたかと今現在やっていることの両方に絡んでいて上手い設定だと感心しました。

・ヒロインのアムもユニークなキャラクターでした。
戦隊でもよくいる明るいぶりっこ気味なキャラなのですが、内面にリアリティが感じられました。登場直後から自分本位に周りに迷惑をかける小悪魔っぷりを見せたかと思いきや、思考は至って現実的でした。
帰る方法を見つけようと必死になっている他のメンバーのように元の世界に帰りたくないか、と主人公に問われてアムが返した返答は「元の世界に帰りたいけど帰る方法が見つからないのだから焦っても仕方がない。この世界で暮らす方法を見つけようとして何が悪いの?」というものでした。人につけ入るしたたかな態度も母娘二人っきりで生活してきた生い立ちから身につけた生きる手段であり、実態は楽観的態度とは真逆のリアリストでした。

・アムはその動かしやすさから様々なキャラクターと関わっていきましたが、中でも大和に対しては家庭環境に共通項があることから大和の掘り下げに大きく関わっていました。
唯一の家族である父親と仲の悪い大和と母親と仲が良いアム。帰ろうと思えば実家に帰れるが帰りたくないから帰らない大和と帰りたくても元の世界に帰れないアム。共通項がありつつも対照的な立場にいるアムからの問いかけは終盤の大和の掘り下げに大きく貢献していました。なぜ大和に語りかけるのが他のメンバーではなくアムなのか、その理由がはっきりしていて流れがわかりやすかったです。

・操は追加戦士の扱いという点で興味深いキャラクターでした。
操は感情の揺れ幅が激しく、日常でも戦闘中でも一喜一憂し、落ち込んで戦力外になったり調子に乗って敵を圧倒したり落差の激しいキャラでした。
戦隊の追加戦士は元々、販促面では登場直後は優遇されるが販促期間がすぎると逆に不遇になり、ストーリー面でも主人公並に優遇されるか、いつの間にか仲間の一人というポジションに落ち着くか扱いがまちまちです。それを「感情の躁鬱が激しいから回によって出番と活躍がまちまち」という基本設定にしたのは考えたものだなと思いました。。第二の主人公というほど目立つことはなく、メンバーその3というほど存在が薄れることもなく、途中参加の半分部外者というポジションで存在感を発揮できました。
何度も使える手ではありませんが面白いアプローチだったと思います。

・ジュウオウジャーのキャラといえば、敵のバングレイも印象に残るキャラでした。夏休み後半から1クールの間だけ登場した幹部にあたる敵ですが主要キャラと並ぶほどの存在感を発揮しました。
他の敵幹部はジュウオウジャーに興味がなく、敵もジュウオウジャーもお互いにただの邪魔な敵どうしでしかありませんでした。その点、バングレイはつながりを重視する大和の考えに反発し、大和の考えを否定しようと積極的に絡んできました。バングレイとの対立とバングレイの持つ、記憶を読み取り具現化する能力のおかげで大和の掘り下げがスムーズに行えました。敵として単体で見ても魅力的で話の本筋を進めることにも貢献した良い敵キャラでした。
 
■販促に熱心
・個人的にジュウオウジャーで印象に残っていることの一つは販促です。
武器やロボなど基本的な商品はもちろん、プレミアムバンダイで扱うような細かい商品まで積極的に盛り込んでいたところが素晴らしかったです。
中でもぬいぐるみは特に感心しました。ジューマン組のぬいぐるみが操の作ったやけに凝った造形のぬいぐるみとして実物が登場しました。操なら性格ならやりかねないなと思える展開で、ぬいぐるみ自体の出来の良さを操のキャラの掘り下げにつなげていたのは見事でした。他にも店頭で一定金額以上買うともらえた金色のパンダアックス(通常商品のクマのリデコ)まで登場してそこまでやるのかと驚かされました。

■フォームチェンジ
・ジュウオウジャーではレッドがフォームチェンジできます。通常形態のイーグル、パワー型のゴリラ、従来のスーパー化に相当するホエールの3形態があります。

・戦隊はレッドが活躍することが多いのでフォームチェンジは相性が良かったです。 アクションに幅が出る以外にも、やられ役を他に用意しなくてもフォームチェンジで代用できるところが便利でした。
最後にはレッドだけにフォームチェンジを持たせた意義のある展開でまとめられていて綺麗な締め方でした。

■アクション
・アクションは例年どおりハイレベルでした。
ジュウオウジャーで特に良かった点は、戦隊らしいコンビネーションが多かったところです。一人、二人で戦うとライダーと被りますからね。人数を余らせずに戦隊らしさを発揮した良いアクションでした。

・個人的には武器や野性解放など使いづらいものも上手く使っていたところに感心しました。
基本武器は変形で銃と剣が切り替わるタイプなのですが、四角形が基本モチーフで角ばったデザインになっているため構造上素早く切り替えることができず、見た目もいまいちでした。
メンバーの固有武器にあたる「野性解放」にいたっては、ライオンと虎は手が大きくなるだけ、象は足が大きくなるだけ、サメに至っては背びれが出るだけというもので見るからにアクションで扱いに困るものでした。
そんな扱いづらいデザインでも例年に劣らないクオリティを保ち、終盤にはこのデザインならではのアクションまで見せてくれました。最初見たときにはこれでは見劣りしても仕方ないかと覚悟していたので嬉しいサプライズでした。

・それとジュウオウジャーのアクションではCGがいつもより効果的に使われていました。これまでの作品でもCGは使われてきましたが、クオリティは低く不自然であまり見ていて面白いものではありませんでした。ジュウオウジャーでも技術レベルは大差ないのですが、使い方が良かったのだと思います。
地上戦の合間にCGを使った空中戦を行ったり、実写アクションとCGを混ぜたり、CG単独で見せるのではなく実写のアクセントとして使われているように見えました。この方向性は良いと思います。




【残念だった点】

■オチの付け方が弱い
・終盤の展開が弱かったです。
2クール以上引っ張ってきた鳥男やクバル、大和の父親との和解など長く引っ張ってきた要素があっさり済まされて拍子抜けしました。解決にもそれ相応の時間をかけるか、もっと短いサイクルで展開を繰り広げるか、バランス取りをする必要があったと思います。

■敵の影が薄い
・敵幹部の存在感は物足らないところがありました。
敵の人物像を描かない方針に関しては特に問題ないと思います。話の構造から考えても戦隊側に集中するのは正しいと思います。

・ただ、強敵としての活躍は増やしたほうが良かったと思います。
アザルド、ナリア、ジニスと全部で4人しかいない幹部のうち3人をラスト3話で立て続けに倒したのはもったいなかったです。もっと分けて倒して話のアクセントに使ったほうが良かったと思います。結果としてはラスボスよりも途中で登場したバングレイのほうが目立ってしまいました。


【総合感想】

■話数の内訳
・記事を書くにあたって、全体の構成とシリーズ構成の香村さんが登板した回を振り返ってみました。ざっと1クールごとに分けて書くと、以下のようになりました。

1~11話(11話でギフト戦)
7話(ライダーコラボ回)と9話が荒川さんで、それ以外は香村さん。

12~22話 ザワールド編
(ザワールド17~20、ワイルドトウサイ22話)
12,14,15,16話が荒川&田中仁。

23~35話 バングレイ編
(28,29でゴーカイジャーコラボ)
25,26,27話が荒川&田中。32,33だけ下山。

 36~48話
(37.38バード。41,42クバル。43,44まりお&アザルド。45,46アザルド。47,48ジニス)
36,39、40話が田中。

・全48中、計34話が香村さん。残りの14話がローテーションの二人+下山さんでした。
香村さんが担当したのは全体の約3/4なので、戦隊でシリーズ構成が担当した回の比率としては平均的です。やっぱり面白いかどうかは量ではなくて腕の問題ですね。

・こうして振り返ってみると、香村さんが個人回を担当するか否かでキャラの明暗がくっきり分かれていますね。
香村さんが担当した大和、アム、操は目立ち、ローテ陣の担当が多かったセラとタスクは優遇されたメンバーに比べて目立たず、担当がまちまちだったレオは中間くらいでした。香村さんとローテ陣で話の品質に落差がありすぎてローテ回が捨て回状態だったのは仕方ないことかもしれませんが、残念でした。荒川さんは元々ローテではいまいちですし、戦隊初経験の田中さんもパッとせず、ローテ陣に恵まれたとは言い難い環境だったので何が原因だったのかは定かではありません。

・ストーリーの流れは2~3クール目の盛り上がりと4クール目の段取り臭さが目立ちます。
17話のザワールド登場以降はザワールド、操、バングレイと盛り上がる展開が立て続けに盛り込んであります。この辺りが一番面白かったと思う人が多いんじゃないかと思います。
4クール目はこうして切り出してみると、2話の前後編で一人ずつ終わらせ終わったらそれっきりで、見るからに問題がありますね。バングレイ編で幹部を放って置いた分、ツケが回ってきたのかもしれません。

■ジューマンのきぐるみ
・4人のきぐるみ姿は最初から最後まで思ったよりも出番があって驚かされました。造形がリアル調で凝っていてあれはインパクトがありました。役者さんの関係で序盤以外は出番が無いかなと思っていたのでけっこうあって嬉しかったです。

・一視聴者としてはユニークでビジュアル的に面白いし、若手の役者さんよりスーツアクターさんのほうが演技も上手なので良いことづくめでしたが、役者さん的にはやっぱりマズいみたいですね。
終盤になってからの映画のインタビューで役者さんたちが印象に残った回として、セラと詐欺師の回やレオの番長など私が微妙だと思った非シリーズ構成回ばかりが挙げられていて考えさせられました。作品として要らないと思う回が役者さんにとっては意義があったと言われると何とも複雑な心境になります。きぐるみを定番化させるには役者さんの反発は避けられそうもありません。次の戦隊でもきぐるみオンリーのキャラがいるみたいですが、どんな扱いになるのか気になります。

■総評:初シリーズ構成としては大成功
・総評としては大成功と言っていいと思います。
ここ数年、主にライダーで新規シリーズ構成の起用が試みられてきましたがことごとく失敗してきました。戦隊でも下山さんを起用した去年のニンニンジャーはおぞましい結果に終わっています。そんな状況下において香村さんはベテランにも引けを取らない成果を上げてくれました。終盤の展開など失敗もありましたが全体としては充分成功と言えます。一年間安心して楽しく見れました。

・個人的な要望としては、次はもっと欲張ってほしいです。
ジュウオウジャーでは完成度の高さや話のまとまりを意識しすぎて小さくまとまり過ぎているように見えるところがありました。入りそうな隙間があったらとりあえず要素を足してみて、それを後からまとめていくくらいが几帳面な香村さんにはちょうどいいんじゃないかと思います。