『動物戦隊ジュウオウジャー』最終話「地球は我が家さ」:感想

2017年2月5日

【ストーリー】

■ふろしきは畳むのが難しい
・基本的に綺麗にまとまっているジュウオウジャーですが、個人的には最終回が一番ドタバタしていて、まとめられたところとおざなりになったところがくっきり分かれた回だったと思います。

・大和たちにとってジニスは本命の前の障害でしかないのでジニス関連があっさりしているのは頷けるのですが、一年引っ張ってきた敵としてはしっかり倒してほしいという思いもあります。
キャラの目的意識と敵の兼ね合いはバトルとストーリーの対立項でよく問題になる箇所ですがやはり難しいですね。

■良かったところ:大和とジューマン関連
・まずは何といってもイーグルの野生大解放が盛り上がりました。
レッドだけが複数のフォームを持っている設定を活かしていてとても良いです。”つながり”というジュウオウジャーのキーワードと関連していてバトルとストーリーがすっきりまとまりました。

・これはアクション面の話になりますが、巨大戦のトドメの演出も良かったです。
ロボの前にエネルギーが溜まっていき謎ビームが発射されるのは定番中の定番ですが、力が結集するところにジュウオウジャーのテーマと重なるところがあって意義の感じられる演出になっていました。

・エピローグとダンスの取り合わせも良かったです。
EDでのダンスはキッズ向け作品では定番を通り越してノルマと化しています。下手に扱って、どういう経緯で踊っているのかさっぱりわからないと違和感を生むこともよくあります。
ジュウオウジャーの最終回では人とジューマンが手を取り合って楽しく踊っている情景として活かしていました。まりおさんとモブジューマンや最後に登場した子供のジューマンなど新規要素も加えてあって面白かったです。

■悪かったところ:ジニスと地球関連
・ジニスの正体は唐突な上に説明されても謎が多くていまいちでした。
メーバをジニスの作った雑魚としか認識してなく、どんな存在のか知らないのでピンと来ません。今回の展開を活かしたいなら、もう少し作中でメーバが敵幹部に悲惨な扱いを受けたり、下等生物扱いされたりしておくべきだったと思います。
ジニスの素性についてはいろいろ浮かんだことがあります。「個に見えたジニスは複数のメーバの意思を束ねた群体だった(ジニスとジュウオウジャーの戦いは個vs群れではなく、同種の群れvs異種族の群れの対決だった)」とか、「メーバの群れを完全にコントロールして手足として使っている」とか、「”ジニス”という人物はかつて存在していたが、いつの間にか奴隷であるはずのメーバに成り代わられていた」などなど仮説は浮かぶのですが根拠になる情報が圧倒的に足らないので妄想の域を出ません。

この辺りは「敵のことは描かない方針だったけど、ジニスの背景は語っておきたい」とスタッフが欲をかいた感じがしました。完成度の高さを優先している印象のジュウオウジャーではスタッフの顔が垣間見えるのは珍しいことだと思いました。

・地球のパワーもあり方が謎でした。
サジタリアークがなくてもジニスに吸い取られ続けているいるかと思ったら、反発したり大和たちに今更力を与えたり、不透明なところがたくさんありました。「善にも悪にもなる圧倒的パワーをめぐる戦い」なんて設定だったらわかりますが、ジュウオウジャーで地球がジニスにも力を貸すのは奇妙に感じます。

・巨大化前のジニスの倒し方も個人的にはモヤモヤしました。
野生大解放は良いのですが、大和以外のメンバーが特に貢献していないように見えたのは良くないと思いました。大和に力を託すなり戦いをサポートして決め手のチャンスを作るなり役割を与えてほしかったです。


【アクション】

■CGとの融合
・興味深い試みですが、今回は上手く行っていませんでした。
明らかに画が浮いていたり、CGと実写でアングルや地形の兼ね合いが一致していなかったり、クオリティが低かったです。
最後のジューマン組の家族とのシーンで明らかに手が浮いていたり合成撮影の質が低かったので、技術的問題というより作る時間が足りなかったっぽいように見えました。今後に期待です。


■最終回を終えて
・問題もいくつかありましたが、しっかり終われたと思います。
アクションはいつもながら折り紙つきでしたし、個人的には通年ものはテーマ性がしっかりしている作品のほうが好きなので満足できました。戦隊シリーズ構成初体験としては充分すぎる出来栄えでしょう。
全体の感想はいつもどおりまた別の記事で書きたいと思います。

コメント

8 件のコメント :

  1. 個人的にはラストの人間界とジューランドが融合するって展開が一番不満でしたね。大和たちも「世界を繋げる」とか言っていましたが、そういうことじゃないと思うんですよね

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    1. だいぶ飛躍しましたね。
      個人的には良い面もあると思うし悪い面もあると思います。

      良い面としては予定調和を防いだという点です。
      あのまま行けばみんなの奮闘で遠くない将来2つの世界が平和裏につながるのは見えていますからね。段階を一気に飛ばしたあの世界ではどんな困難があるか予想できません。その点ではジュウオウジャーの世界が広がったと言えるでしょう。

      悪い面としては突拍子もないことです。
      本文に書きましたが地球の意思が不透明なので次にいったいどんなことをしでかすのか予想がつきません。もしもいじわるだったら2つの世界が友好的に交わったところでまた別々に離したりするかもしれません。余計な不安材料を残すのは良いこととは言えません。

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  2. いつも記事読ませていただいております

    私も同じ感想で盛り上がった最終回ではありましたが、気になるところも多かったというところです
    ジニスに関してはやはり唐突でしたよね、メーバの性質に関して言及しとくべきでした

    また4人の家族との交流シーンでやたら画全体が浮いてるように見えたのはおそらくそれぞれのジャーマンのマスクが1個ずつしかなく
    家族1人1人を別撮りで重ねていたからかと思われます
    本来落ち着きと安らぎを与えるはずのシーンがとても不自然な場面となってしまっていましたね

    私はレッドとジニスの一騎討ちの際にOPの2番が流れ、「人も動物も助け合い生きた」のフレーズとともに闘っていたのがシーンともリンクしてとても感動しました

    長々と書いてしまいすみません、全体評価の記事も楽しみにしております。

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    1. いつもご覧いただき、ありがとうございます。

      >4人の家族との交流シーンでやたら画全体が浮いてるように見えたのはおそらくそれぞれのジャーマンのマスクが1個ずつしかなく家族1人1人を別撮りで重ねていたからかと思われます

      私もそう思いました。直接触れ合わないレオやタスクは違和感が少なく、抱き合っていたセラやアムは違和感がきつかったです。
      今どきあんな露骨なのは珍しいですから、位置調整など合成処理を綺麗にやっている時間がなかったのでしょうね。

      >私はレッドとジニスの一騎討ちの際にOPの2番が流れ、「人も動物も助け合い生きた」のフレーズとともに闘っていたのがシーンともリンクしてとても感動しました

      OP歌の挿入の仕方は良かったですね。「陸海空制覇」の意味がわかりました。

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  3. 自分はジニス様の正体については以外と唐突感ありませんでした。彼の行動が徹頭徹尾ブレずに描写
    出来ていたと思うからです。
    ジニス様は当初からゲーム感覚で星を滅ぼすという、子供じみた悪行を重ねてきました。その行動の
    根本にあったのは、「自分が下等な生物だから」というコンプレックスに基づくものと考えると、これまでの行動一つ一つに却って説得力があるように思えました。
    もしかしたらアザルドに言ってた「同じ立ち位置」とは、ニュアンスが真逆の自嘲だったのかとも考えられますね。(狙っていたかは不明ですが、もし狙ってたら脚本家は凄い!)
    あっさりやられたのも、所詮子供じみた思想から脱却しきれなかったものの末路として考えると割と納得がいきます。1年通して成長し、チームとして力を上げてきたジュウオウジャーと、子供のまま変わることなかったジニス様との対比の妙を感じます。
    また、ラスボスの正体が意外と矮小なもの、というのは戦隊シリーズだとフラッシュマンの大ボスラー・デウスとか、サンバルカンの大ボス全能の神とかを思い出しますね。

    ラストの世界融合は・・・新たな争いの火種になっちゃう気が(笑)
    ジューランドの闇とかがそのまま放置されてますが、EDのダンスを見る限り、きっと大丈夫なのでしょう。最後は少々力業で締めましたね。

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    1. >その行動の根本にあったのは、「自分が下等な生物だから」というコンプレックスに基づくものと考えると、これまでの行動一つ一つに却って説得力があるように思えました。

      私が唐突に感じたのはそこではありません。「身体がメーバの集合体である」という点のほうです。
      行動概念については匿名さんの仰られたようにコンプレックスの裏返し、あるいは「強い者はそういうことをするものだ」という権威へのすがりつきだと思います。

      >ラストの世界融合は・・・新たな争いの火種になっちゃう気が(笑)

      そこに関してはわざと火種を作ったのだと思っています。
      無難にすっきりまとめたいなら、あのまま「問題はいろいろあるけれどそれぞれが周りに働きかけて協力していけばきっと達成できる」というムードで終わらせれば済んだはずです。成功したかはともかく、そこで終わらせずにもう一展開入れたかったのだと思います。

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  4. ジニス関連のエピソード、あっさり必要なことだけ出して終わりましたが、視聴者の方で補完してくれということなんでしょうね。つまり作品のなかでは敵の動機は重要じゃない、と。

    メーバが下等生物ってことをエピソードで強調し過ぎると、ジュウオウジャーが劣悪種をイジメてるような解釈をする人が出るから、唐突にジニスがメーバに対する主観(あさましい!とか)を語る事になったのだと予想。もしそうなら規制って表現を阻害するよねって感想でした。

    戦隊ものってどこに向かえば(時代的にも)正解なんだろうね、という視点が生まれた気がします。
    ゲームの解釈次第では、全方位安全な楽しいだけの作品になった可能性もあるので、シリアスでよかったなとは思います。

    お疲れ様でした。

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    1. >ジニス関連のエピソード、あっさり必要なことだけ出して終わりましたが、視聴者の方で補完してくれということなんでしょうね。つまり作品のなかでは敵の動機は重要じゃない、と。

      敵の心情を描かない方針は一貫していたのでそういうことだと思います。
      根拠はありませんが、超全集辺りのインタビューで誰かがジニスについて語るんじゃないかなと個人的には思っています。

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