POVは伊達じゃなかった・映画『武器人間』:感想

2014年7月26日
映画『武器人間』を見ました。


旧ドラえもんの大山のぶ代さんがトレーラーを務めたことで話題になったやつです。
結論から申し上げますと、思っていたのと全然違う内容で面食らいました。
見終わった後、面白いともつまらないとも言えない微妙な心境になりました。
内容どうこうと言うよりも、私のようなミスマッチを避けるための参考になればと思います。
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■not アクション notスプラッター
・トレーラーを見たときの私の第一印象では、
  1)武器人間と戦うB級orZ級アクション
  2)武器人間がじゃんじゃん人を殺すスプラッター
のどちらかだろうと思っていました。
低予算なのはわかっているので、安っぽいなら安っぽいで笑えば良いと考えていました。
ところがこの映画は全然そういう映画ではありませんでした。
POV形式であることに意味があると思っていなかったのが私の犯した最大のミスでした。


■POVは伊達じゃなかった

・『POV』とは『ブレアウィッチプロジェクト』や『パラノーマルアクティビティ』などで有名な撮影方法で、主人公の持ったハンディカメラなどを通して描く手法のことです。
わかりやすく言えば一人称視点のようなものです。
本作でも主人公のドミトリーは映画のカメラマンで、ロシア軍の偉業を記録するという名目で部隊に参加しています。
私は「はいはい、設定ね。どうでもいい」と流してしまったのですが、実はこのPOVのモキュメンタリー形式が最も重要なところでした。
肝心の武器人間に関しても、あくまでドキュメンタリータッチに淡々と描かれているのです。
派手に人を殺したり、飛び出してきたりは一切ありません。
リアル志向なので噴水のように吹き出す血しぶきなんてあろうはずもありません。
最後の最後まで見終わってから、モキュメンタリーのほうが主題だったのだと気付かされました。

■武器人間の造形は素晴らしい
・トレーラーでもインパクトのあった武器人間の造形は本編でも素晴らしかったです。
ドリルを蚊の嘴に見立てたドリル人間の『モスキート』や馬鹿っぽいけど回転するファンが恐ろしい『プロペラヘッド』、着ぐるみ?の作り込みもなかなかでとても低予算とは思えないクオリティでした。

・しかしここにも問題はあります。全く動かないのです。
アクションがないどころか、まともに映ってるシーンがほとんどありません。
ドキュメンタリー形式なので引き画でしかも暗いシーンが多く、せっかくの細かい作り込みが全然見えません。
アップはアップでカメラワークも演出も恐ろしく酷いため見れたものではありません。
正直言って、デザインが気に入った人はトレーラーを見て、その後公式ホームページにある『武器人間図鑑』を見て終わらせるのが一番良いと思います。

■映画としてはZ級
・デザインのところでも述べましたが、カメラワークと演出が最低です。
誰がどこで何をしていて、今何が起きているのか全くわかりません。
「敵が突如現れて味方を殺され、慌てて逃げる」というシンプルなシーンでさえまともに撮れていません。
主役の武器人間が登場するのも後半になってからで、それまでは延々と退屈な主人公と部隊の話が続きます。
それでいて部隊の人たちは戦闘シーンがあるわけでもなく、いつの間にか殺され死体になって出てくるばかり。
博士が登場し武器人間博覧会が行われ、大規模な軍隊も攻めてきて、ようやく本番かと身を乗り出したらそこで終わり。
アクション映画からアクションとハッピーエンドを抜いたような味気無さです。

■感想
・合う合わない以前に面白いともつまらないとも言えず、今でも困惑しています。
デザインは良いのだけど、デザインを楽しむにはトレーラーと武器人間図鑑で充分。
アクションは無い。スプラッターも無い。ストーリーも無い。撮影はどうしようも無い。
といって内容が無いわけでもない。
意味がわからないものを大真面目にやっている人を見ているような気分でした。
この映画のジャンルはいったい何に含まれるのでしょうか?
何がわからないのかさえわからない映画でした。
少なくともアクションやスプラッター要素を期待して見るのは止めたほうがいいと思います。

■魅力は吹き替え?
・強いていえば吹き替えが楽しみ方の一つでしょうか。
主要キャストが全て新旧ドラえもんの声優陣で固められています。
たとえば武器人間を作った狂気の科学者の声は、旧スネオ役の肝付兼太さんで、一番先に殺される隊長役は旧ジャイアンのたてかべ和也さん。
実質的リーダーのセルゲイは新ジャイアンの木村昴さんで、対立するチンピラ古参兵は新スネオの関智一さんです。
さすがにドラえもん役の二人は出てこないのですが、ドラえもんに出てくる声の登場人物がグチャグチャに殺されていきます。
「スネオがジャイアンの脳みそをクチュクチュしてる!」とか、
「のび太がついにスネオに復讐したぞ!」など、ドラえもんに思い入れのある方ならばひょっとしたら楽しめるかもしれません。
演技自体は全然似せてないので相当努力が必要ですが。

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