『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』 最終回まで見終わって:総合感想

2026年7月25日
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』を最終回まで見終わったので感想を書きたいと思います。
*必要に応じて随時ネタバレがあります。




一言まとめ

基本的に低予算でクオリティが低い。

とりあえず戦隊を否定してみただけで代替案が無い。

マルチバースで大儲け!という取らぬ狸の皮算用。


どう見ても予算が少ない

・予算の少なさを表す端的な例は雑魚怪人の種類です。
全23話の中で登場した雑魚怪人の種類は”1種類”です。
はい、1です。10でも11の書き間違えでもなくオンリーワンです。
しかもデザインがこれです。




・まん丸な外見のとおり、全然動けません。
できるアクションは腕を振り回すことと謎ビームなどエフェクト頼みの攻撃です。
一体成型で首を動かすことすらできないのでギャバンたちが横や後ろから攻撃しようものなら振り向くことすらできないまん丸サンドバックをいじめるだけになります。
アクションを考えてないド素人が作ったキグルミかと思うようなこれ1体しか雑魚怪人がいません。
おかげで普段のバトルが全然盛り上がりませんでした。「また糞つまんないこいつが相手かよ…」と萎える一方でした。

・雑魚怪人は1種類と書きましたが厳密に言えば”8種類”います。
上の画像の手が爪になってるタイプ、手が鎌みたいになってるタイプ、手がボクシンググローブみたいなタイプ、手が蟹ハサミみたいなタイプで4種類。
そして片手が爪で片手がグローブなど左右の手のリミックスでもう4種類。合計8種類です。
全23話で8種類も雑魚が出るなんて豪華ですね!!!
…っとでもスタッフは本気で思っていたんでしょうか?
マジで手の形が違うだけで身体や頭は同じでカラーリングすら変わりません。
やれるアクションは結局腕を振り回すだけなのでキャラクターとしては当然何も変わりませんでした。



中ボスはコスプレ役者さん

・さすがにストーリーの要所要所では幹部相当の敵が出ました。
それがこんな感じです。



公式にちょうどいいアングルの画像が無かったので見づらいですが、肩から右腕にかけて外付けのでっかいマシーンアームを着けています。
怪人より弱いモブ雑魚もお面を被った忍者やミリタリーコスプレした人などスーツアクターさんの生身コスプレでした。
これもだいぶ安っぽい演出なのですが、それでも変わり映えしないサンドバック怪人よりはずっとマシでした。
モブ雑魚はスーツアクターさんだから動きは良いし、中ボスはアクションは微妙ながら役者さんの演技力という低コストで付加価値を付けられるため悪役としての存在感は出せていました。
キグルミを作れない以上は幹部クラスのキグルミも用意できないので、ギャバンインフィニティでやれる選択肢は「中ボスがコスプレして戦う」か「中ボスも1種類しかない雑魚怪人を召喚して戦わせて見てるだけ」のどちらかだったと思われます。
コスプレの方を選んだことはギャバンインフィニティにおける貴重でまともな判断の1つと言えると思います。
本質ではありませんがコスプレ怪人は一面的には「ギャバンらしい」要素でもありますしね。


大ボスは悪いギャバン

・事件の裏で暗躍する大ボスは闇落ちしたギャバン、その名もデスギャバンでした。
さすがにライバルでギャバンだけあってはちゃんとスーツを用意してまともにかっこいい見た目でした。
ただ、2クールを1人で引っ張ってラスボスまで務めるのは無理がありました。
7話の1戦目は格上として圧倒したものの、14話の2戦目では100%本気ではないものの負けたためラスボスの器ではなくなってしまいました。
その後も19話、21話と終盤でちょいちょい出てきて負けて帰っていたため、ますますラスボス不在になってしまいました。
でも他にキャラもキグルミもないので結局ラスボスはデスギャバンでした。
予算がないので最終回限定本気フォームとか第二形態とかもありません。
最終回なのでさすがにアクションや映像が凝っている以外はいつもどおりのままでした。


やっぱり見た目がしょぼいと厳しい

・そもそもが戦隊終了からの敗戦処理状態なので予算が下がるのは予想の範疇だったのですが、覚悟していてもなおやっぱり映像作品としては辛いですね。
直近の例で言えば『ビートランナーズ』よりも見劣りすると思いました。あっちもストーリーやコンセプトに無理があって良い作品とは思いませんでしたけど、バトルの映像は良かったですから。
見ていて「とりあえずヒーローはかっこよく戦ってたな!」と言えないのは想像よりもきつかったです。
ゴウライガンみたいに明らかにギャグに振ってるわけでもなく、ギャバンインフィニティ自体は普通のヒーローものとして作られているので逃げ場がありません。


世界観にかけられるお金もない

・ギャバンインフィニティはマルチバースものです。簡単に言うと『スパイダーバース』です。
主人公には別次元へ移動できる特別な能力があり、それを使って次元を渡り歩き、各次元にいる「宇宙に1人しかいないギャバン」と出会いWギャバンで協力して事件を解決していき、やがて訪れる全次元の破滅をもたらす危機に対してギャバンが集結して立ち向かう。そういうお話です。
この手の異世界ものと言えばそれぞれの世界のわかりやすい特徴づけやユニークさが魅力の1つなのですが、予算がないギャバンインフィニティには無理なことでした。
基本的に文明レベルや町並みは同じで「敬礼のポースが変わってる」やら「”お汁粉そうめん”が当たり前に食べられている」などそんな差別化しかできませんでした。
別次元の面白さが全然出せてない一方、別次元である以上はいろいろ説明が必要なことが増えたりして設定に伴うマイナス要素の方が多くなってしまいました。
見ていて「これなら舞台は主人公の次元だけにして、『別次元のギャバンが主人公の世界にやってくる』って筋書きにした方が余計な時間を取られなくてマシだったんじゃないかな?」と思いました。

・「人間並の知能を持つ昆虫が人間と共存する世界。その世界の蟻が変身するギャバン」や
「生存不可能なほど寒冷化した環境に適応するために人類がデータ化して存続している世界。保守用ロボットが変身するギャバン」など、
独自の世界観とセットで出せたものはありきたりな発想ではあれど相対的な物珍しさも含めて比較的楽しめた方だったのでコンセプト自体は大きな問題があったわけではないと思います。
ただ、この予算では絵に描いた餅どころか絵に描く余裕すらなくて論外だっただけです。
「多次元宇宙世界」とか言っておいて、実際に出た次元の数は主人公のホーム次元含めて6個だけではかえってしょぼく見えてしまいます。


戦隊を否定した戦隊ライダーの成り損ない

・歴史的経緯から見るとこんな印象でした。
基本的なコンセプトが「戦隊はウケなくなった。ダメだった部分は変えるけど、でもあくまで戦隊でいよう」という半端に保守的な考えで作られているようでした。

戦隊だから主役は赤ギャバン、青ギャバン、黄ギャバンにする。
→でも戦隊はウケないからチームは組ませない、終盤以外は基本的に2人までしか並べない。
→結果、出たり出なかったりする別次元のキャラへの愛着は薄れ、全体的にキャラの印象が薄くなる。


メンバーの個性が薄かった戦隊はウケなかったからライダーみたいにキャラ1人1人の個性を出す。
→でも警察官だから基本的に良い子にする。身内のギスギスや仲間割れは禁止。
→結果、似たような”正義の味方”が並ぶだけになり、味方の人数を増やした意味が無くなる。


戦隊だから巨大ロボや巨大戦は続ける。
→でも戦隊はウケなかったから巨大戦はおまけ程度にしてメインは怪人とのバトルにする。
→結果、巨大戦が空気になる。


・こんな具合に基本的に矛盾した内容が多くてどうにもなっていないと感じる内容が多かったです
ギャバンを何人も准レギュラーで出したいならチームを組ませた方が早かったし、個性を重視するなら准レギュラー化するギャバンの人数は減らすべきでした。
巨大ロボもやるのかやらないのか中途半端過ぎました。元々戦隊でも玩具の都合という理由だけで出してるのが見え見えで映像作品としてはノルマ化している部分が多かったので戦隊がダメだったと言うなら尚更見直す必要があるポイントだったと思います。

・「戦隊シリーズは終わらせて次の作品はギャバンにします!」と発表を聞いた時点で
「ギャバンって巨大ロボ(電子聖獣ドル)は出てるけど、作品の方向性としてはどっちかと言えばライダーに近くない?」と疑問に思いましたし、
「赤ギャバンが主役で他に青ギャバンと黄ギャバンも出ます! テガソードみたいな変身アイテム兼巨大ロボも出します!」と聞いた時には、
「それもう戦隊だろうが!」と思いました。
これじゃ「巨大ロボが毎回出るライダー」にしかならないんじゃないのかな…?と疑っていましたが、実際にはライダーの成り損ないでした。
作品としても完成度が低すぎましたし、戦隊はダメだ!と言いながら戦隊要素を残そうとしていて改革としても何も上手く行かなかったと思います。


ギャバンらしいとも思えなかった

・「戦隊じゃなくてギャバンとしてはどうだったのよ?」という点が知りたくてこの記事を読んでいる人もいるかと思うので書いておきます。
そもそも「ギャバンらしさとは何か?」の定義が曖昧で難しいと私は考えますが、ギャバンインフィニティが明確にギャバンっぽくないなと感じた点が2つありました。

・1つは「ギャバンなんて変身前に倒せばいい」です。
作中で3回もありました。1回は不発で、残り2回は成功していました。
これは原典の『宇宙刑事ギャバン』的にはあり得ないことだと私は思いました。
変身前の攻撃なんてギャバンに仕掛けても
「やったか?!→煙の中から光の玉が現れて雑魚を蹴散らしながら高いところへ向かい、変身済みの状態で着地したギャバンが決めポーズ!(いつものBGMが流れ始める)」
なんて逆転展開の前フリにしかならないと思います。
ギャバンインフィニティの方でも変身時には毎度「蒸着はわずか1ミリ秒で行われる。蒸着のプロセスをもう一度見てみよう」とお決まりのナレーションを入れてるのに変身前を狩られるって馬鹿みたいです。
そりゃインフィニティの変身プロセスは本家ギャバンと違って「蒸着と唱えるだけ」じゃなくて、
「変身アイテムの銃を取り出す→銃を開いて小物をセットする→銃を閉じてトリガーを引きつつ”蒸着”と叫ぶ」プロセスが必要で、わずか1ミリ秒で済むのはトリガーを引き終わった後だから攻撃する隙はありますよ。
でもそれやっちゃったらギャバンとしては台無しでしょう!

・私がギャバンっぽくないと思った2つ目は「ギャバンが権威に弱いこと」でした。
終盤になって「上層部に禁止されたせいで変身アイテムが起動しなくなってピンチになる」展開がありました。
逆転方法は「上層部を説得して禁止を解除させた」でした。
これもギャバンっぽくないなと思いました。
ギャバンって従順かどうかで言ったらどちらかと言えば独断専行気味で「俺がルールだ」系のキャラだと思うんですよね。
「単独で行動できる強大な力と強大な権限を与えられた存在がギャバン/宇宙刑事であり、力の大きさが責任の重さを表している」
みたいなタイプだと思っています。
上層部に変身を止められたら何もできなくなるというのはギャバンぽくないなぁと個人的には思いました。
シンプルにヒーローとしてもかっこよくありません。
スーパーヒーロー大戦Zでも権力の犬になり下がった本家ギャバンを出して大不評を買ったのになんでまた似たようなことをやっているのでしょう…
変身できなくても「俺はギャバンだ!」と敵を蹴散らす力強さや上層部に禁止されようが自分の正義を貫く姿を見せてほしかったです。
ライバルのデスギャバンが「元ギャバンで警察を抜けた後も制御装置を自分で壊してハッキングして変身システムを使い続けている」という設定で上に従わない選択肢があっただけに余計に情けなく感じました。


ストーリー

・ストーリーは普通にパッとしませんでした。
普段のエピソードは普通の刑事ものと戦隊の間の子で、事件が起きて捕まえる直前に犯人が怪人を出して、倒した後に逮捕して終わりです。
事件を起こすのが怪人か犯人か、人間かどうか、爆死するか逮捕されるかの違いくらいでフォーマットに戦隊と大きな違いはありません。

・メインストーリーは「飄々とした明るい主人公に実は恩人を失った暗い影があり、その過去の概要や犯人が途中で明らかになって下手人絡みの話がメイン回で取り扱われる」という内容でした。
これまた普通で特に捻りもなく、大きな問題もこれといった魅力もありませんでした。

・問題があるとすれば内容そのものだったと思います。
ここがマズかったという致命的な問題はなく、ただ「あんまり面白くない…」と思うようなパッとしない内容でした。
箇条書きで簡潔に述べると、
「序盤は作品の要点がわからないままダラダラ続く1話完結エピソード」

「7話でようやく始まったメインストーリーは『宇宙の真理だ』だの説明になってないポエムか、『邪神アザゾルス』だの『闇マクール』だの単語だけ聞いても意味のわからない固有名詞を提示されるだけの内容が大半』

「最初から最後まで主人公とライバルの闇堕ちギャバンの話なので、最終回までの途中経過は『(この前の回で言ってた)邪神アザゾルスとは~だ』みたいな後付け説明か、主人公とライバルが戦っては『お前も闇に堕ちろ!→堕ちない』『お前を逮捕する!→逃げられる』という進展の無い内容を繰り返すばかり」

「最後はライバルも個人エピソードも何も完結しないまま投げっぱなしでシーズン1終了(続編は未定)」

という絵に描いたような楽しくない構成でした。
個々の内容は各記事の感想のように詳しく述べないと困難で読んでも伝わるとは思えないので、あとは構造的な問題に触れることにします。


妙に複雑で直感的でない主人公のキャラクター性

・大きな壁の1つは主人公のキャラクター性だったと思います。
ギャバンインフィニティでは別次元に行けるのは「主人公、追加戦士、ライバル」の3人だけで他の登場人物は別次元に行くと息が詰まるような症状が出て死に至るため原則的に別次元で活動できません。
各回の内容は基本的に「主人公が別次元に赴き、現地にいるギャバンと2人で事件を解決する」です。
ライバル回も追加戦士が増えてからも大きな違いはありません。戦う相手がライバルかどうか、現地ギャバンに加えて追加戦士も参加するかどうかの違いくらいです。
基本的には主人公が師匠的なポジションになって、事件や精神面でいろいろ悩みを抱えている現地ギャバンを助けて去っていくことが基本的なストーリー構成でした。
主人公はベテランってわけではありませんが、基本的に実力的にも精神的にも他のギャバンの格上のリーダー的存在として描かれていました。
そんなお話の中核に位置する主人公のキャラクター性が掴みづらかったことがお話についていくための1つの壁になっていたと思います。

・主人公の決め台詞は「お前の怒り、俺が預かる!」です。
各ギャバンは「感情を司るアイテム、”エモルギア”」をエネルギー源として使い変身します。主人公の場合は「怒り」のエネルギーで変身します。
作中でも対応する強い感情を持っていないとエモルギアは扱えないと語られています。
怒りと言うからには荒々しいイメージを連想する主人公なんですが、普段のキャラクターは飄々としたチャラめな青年です。
別次元の事件にも対応している活動を隠すために普段は「資料課」というお荷物扱いされている部署に所属しており、
「現役ギャバンなのに不祥事を起こして資料課送りとかギャバンの恥さらしめ!」と警察仲間に罵られたり、「え、資料課って実在したんですねw」と見知らぬ人に嘲笑われたりしても全く怒らない昼行灯のふりをしています。
じゃあ事件のときだけ腑抜けたフリを止めて本性を表して熱血漢になるのか…というとそういう話でもありませんでした。普通に戦闘中もヘラヘラしていることが多かったです。
決め台詞の「お前の怒り、俺が預かる!」も実際のトーンは「お前の気持ちはよくわかる。だが抑えてくれ」くらいの落ち着いた口調のことが多く、決め台詞がむしろキャラに似合ってないように感じることの方が多いくらいでした。

・最序盤を見た率直な第一印象としては「思ってたのと違った」でした。
『宇宙刑事ギャバン』の看板がついてるし、「喜怒哀楽」の感情を割り振ったカラフルなヒーローなのにこんな直感的でないギャップを感じる内容が出てくるとは思っていませんでした。

・主人公の造形が何がどうなってるのかというと
「怒りが最初の原動力だったがそれは本人の中でほぼ終わったことで今は人生や各次元を渡り歩くことを”楽しんでいる”」人物なんです。
犯罪が当たり前のスラムで育ったが、刑事だった人に救われ自分も警察官になり、未来へ明るい希望を抱くようになった。
しかしその恩人はある事件の調査中に命を落とし、その犯行には警察内部の腐敗が絡んでいる疑いもあった。
ライバルであるデスギャバンは元々はちゃんとした正義の味方のギャバンでありであり、主人公の恩人の弟子でもあった。
最終決戦の最中に恩人にとどめを刺したのがデスギャバンであると知り、一時は怒りのままに倒そうともしたが味方の声で冷静さを取り戻してからは一転してデスギャバンのことも救うことにし、「理不尽にも怒るな!憎むな! 楽しめ!!」と語りかけ、怒りと楽しみ二重のエネルギーで圧倒した。
どうやらこういう人物像で「怒ってるように見えないんだけど?」という疑問は織り込み済みのキャラクターだったようです。
ブンブンジャーを見たことがある人なら主人公の大也を思い出すとイメージが想像しやすいと思います。
あちらも「爆上げだな!」が決め台詞のわりには基本的にダウナーで台詞とのギャップで無理してる感じがあるキャラでしたが、終盤で明かされた内容では実際そういう憂鬱さや悲壮感を抱えていて無理をしてる人物でした。
「心に怒りという大きな炎を宿していても外には漏らさず、みんなを明るくするために悪と戦う太陽のようなヒーロー」
みたいなイメージだから決め台詞のはずの「お前の怒り、俺が預かる!」よりも「お天道様を怒らせんな!」や「お天道様もニッコリだな♪」みたいなお天道様語録の方が目立っていたようです。

・全体像が見えればおおよそは理解できる内容だったのですが、理解するためのキーパーツが提示されたのが最終回だったのはあまりに遅過ぎました。
主人公の真意や源流が後で明かされる作品はたまにありますけど、明かされるタイミングが最終回ってのはなかなか無いと思います。
やるにしても真意を知ることで全てがひっくり返るような大どんでん返しがメインの作品でしょう。
ギャバンインフィニティの場合は主人公の理解にはつながりますけど、特にどんでん返しにはなっていないのでカタルシスとかは特にありませんでした。
「あ、そういう話だったんだ。あ~なるほどね。だからか…」くらいの辻褄は合ったけど特に面白いとは思わないくらいのリアクションしか出ませんでした。
最序盤から全体に渡って主人公の人物像が掴めないストレスを引きずってまでやる価値は感じませんでした。


メインキャラの人数が多すぎる

・もう一つの構造上大きな問題はメインキャラの人数と個人回の占める割合だと思います。
メインキャラは主人公(赤ギャバン)、青ギャバン、黄ギャバン、10話で本格参戦した追加戦士(紫ギャバン)の4人です。
個人回は”主人公を除いて”各5話ずつありました。追加戦士は他メンバーと合同で済まされた分があったのでそれを除いても、全23話で個人回だけで約合計13話もあったのです。6割近くも割いています。これじゃメインストーリーが進みません。

・その上、”主人公は除く”です。
仲間の個人回に加えて主人公の個人回もあったのかというとそうでもありませんでした。
メインストーリーが実質個人回ではあったのですが、あくまでメインストーリーであるためライバルキャラの方に時間を取られたり設定説明や状況の変化に費やされたりで主人公の具体的な人物描写は多くありませんでした。
主人公のメイン回だったと呼べる回は過去が明かされた7話と最終回くらいだと思います。仲間よりも全然少ないです。
そのせいで余計に主人公の人物像の理解に迷う期間が長引きました。

・このように話数の割合とお話の構造が合っていませんでした。
仲間キャラ中心に描くならドンブラザーズのように主人公は基本的に狂言回しで最初から完成されたわかりやすい人物像にした方が適していたでしょう。
逆に実際のストーリー展開のように主人公だけがメインキャラで、他の仲間はサブキャラ程度の存在感にするなら仲間に割く話数はもっと減らすべきでした。
あるいは仲間は主人公の話を引き出すための添え物として扱うべきだったでしょう。
全体の構成に関しては「軸を絞れずに全体が散漫になった」という印象が強いです。
全49話と長い従来の戦隊ならともかく、全23話と短い内容でこのまとまりの無さは普通にダメだと思います。
プロジェクトREDとか外の事情を何も知らずに見ていたら「ギャバンインフィニティって当初は3,4クールあったのに急に打ち切られたのかな?」と勘違いしたんじゃないかと思うような奇妙なペース配分でした。


マルチバース気取りとしては典型的な失敗例

・ギャバンインフィニティは「プロジェクトRED」という大きな企画の中の1発目の作品として作られました。
公式曰く「赤いヒーローが作品をまたいでいろいろ登場する一連の共通のユニバースを持つ作品」として作りたいそうです。
ここまでの記事の内容を見ればお察しのとおり、とても上手く行ったとは思えません。
どう見てもそんな欲を張れる余裕は見当たりません。
沈みかけの船の中で身体が半分水に浸かってる絶体絶命の状況で来年のことを考えているような悠長さだと思います。

・他作品への共演だけでなく、単体での続編まで最初から狙っているところはアホ過ぎて言葉が出ませんでした。
ライバルでラスボスだったデスギャバンは完全には倒せず、黒幕に操られたまま行方不明で終了。
主人公もよくわかんないけど何か事件を追って変身アイテムだけ残して行方不明になったところで最終回は終わり。
シーズン1扱いにしたって内容が酷すぎます。
他にもわざわざ出したのに特にオチがないまま終わった怪盗フェイドやまだ何もしてないけど露骨に怪しいまま終わった斬鬼長官などなど引っ張っただけの要素が目に余りました。
「ひとまず終わらせるけど次回作以降への客演だけでなく、単体で人気があったら後で『ギャバンインフィニティ2』も作りたい」
みたいな都合の良い皮算用が見え見えです。
それで作品単体のクオリティを大きく損なっているんだから馬鹿としか言いようがありません。
1発目からこんなことしてどうするんですか…

・マルチバースやオールスター系の醍醐味って「単体でも主役を張れるキャラが勢揃い!」という部分であって「たくさんいろんなキャラが出ます」じゃないと思います。
それはヒットした後に制作側が得られる利益であって、オールスターものの面白さではありません。
「ヒーロー1人で1の面白さならそんなヒーローを2人いっぺんに出したら1+1は2じゃん!」という話だから「最初からマルチバースにするために作品単体では半端で0.3くらいしか面白さがない内容にします。仕方ないですね」じゃ成立しないんですよ。
アベンジャーズの成功はアイアンマン映画単体での成功ありきで、あの時点では単体の人気が微妙だったキャプテンアメリカやソーだけしかいなかったら成功は難しかったでしょう。
単体での完成度や面白さありきだという話は他ならぬMCUが絶頂から転がり落ちる過程で散々言われてきたことなのになんでそんな周回遅れな失敗をしているなんて馬鹿みたいです。
引き合いに出すならちゃんと歴史を学んでからやれよと呆れるばかりです。志が低いどころか制作能力が低いのでは話になりません。


アクションデザイン

・アクションはパッとしませんでした。
予算の低さもあったんですけどそれ以前に普通に全体的に低調でした。
「見た目は派手だけどオリジナリティが弱い。他の作品でやっても印象は大差ない気がする。もっとギミックや固有能力を活かしたアクションを見せてほしい」
みたいな話じゃなく、普通にいまいちでした。


武器&玩具

・既に書いた1種類しかいない怪人以外にも良くないと思う要素がいくつもありました。
1つはデザインです。前作のゴジュウジャーでウケた「変身アイテムと武器と巨大ロボを1つにまとめたメイン玩具」は今回も続投でした。
今回は「宇宙船と人型巨大ロボにも変形する銃」でした。実際のデザインはこれです。



はい… どう見ても無理があります。
そもそも銃と宇宙船の形状の違いがほぼ上下をひっくり返しただけですもん。個人的には銃にも宇宙船にも見えません。
巨大ロボの方も箱型でかっこよくない上に換装できるのが右腕と頭部だけせいで強化フォームになろうが全体のシルエットやボリュームが変わらずパッとしない見た目だと思いました。
デザイン面では普通にゴジュウジャーより退化してると思います。

・武器としては言うまでも完全に終わってました。
銃に見えないし、無駄にデカくて取り回しが最悪です。
スタッフもそう思っていたからか戦闘でも銃として使われることは少なかったです。
変身するときだけ取り出す、ただの変身アイテムです。
その代わりに大太刀のギャバリオンブレードがメイン武器として多用されました。
ただ、これも問題がありました。まず武器自体がドンブラザーズの剣のリデコだったので印象が冴えません。
武器としても大きすぎて振るのが大変で実現可能な動きが限られました。武器の種類も少ないのに動きも制限されるのでは面白くしようがありません。
おまけに敵は基本的にサンドバックであり、アクションが爪攻撃しかない怪人1種類なせいで、数えるほどしかなかったギャバン同士の戦い以外ではチャンバラすらできませんでした。

・トドメにこのギャバリオンブレードには小物に対応するギミックがついていませんでした。
本来は銃に電池型の小物(エモルギア)をセットすると音声が流れて、作中でも特殊な効果を放出するギミックがあったのですが、銃の使用を避けているせいか戦闘中に使われることは数えるほどしかありませんでした。
ギミック的には獣電池やリュウソウルみたいに使うのは同じ武器でもギミックを活かしてキャラごとに違った戦い方をしてバトルを盛り上げたり、
敵の力の源でもあり事件解決すると新しいのが手に入ることを活かして「そうだ!この前のやつが持ってたアレを使ってみよう!」みたいな敵の能力を今度は味方が使うワクワク感を出したりできたはずです。

・銃のデザインが最悪だからバトルには使わないって判断はわからなくはないんですけど販促としては逃げだったと思います。
キョウリュウジャーのサンバBGMみたいに違和感を積極的に取り入れていくことが販促の正道だと思います。
銃と呼ぶには大き過ぎるデザインを活かしてドライブのドア銃みたいに敵の攻撃を受けられる盾みたいに使ったり、やりようはあったと思います。
小物をセットするのに真ん中から2つに開かないといけない構造も「開いて広げた本体で敵の攻撃を受けつつ、小物をセットして素早く反撃する」とかそういう臨機応変さを示す戦い方とかに昇華できたんじゃないかと思います。
見た目的には鈍器兼用で殴りたいところなんですけど、それは玩具的にはタブーになりそうなのでさすがに諦めます。


ギャバンのデザイン

・ギャバン自体は普通でした。実際に活躍を見ても大きく印象は変わりませんでした。
今風にスタイリッシュにしたギャバンという印象で特に良いとも悪いとも思いません。

・アクション面でも特に良くも悪くもない印象でした。
デザインの都合からか戦隊のスーツに比べて動きが鈍めな印象はありましたが、一方では丈夫そうな外見を活かして敵の攻撃も結構受けてもいい点は殴り合いに向いていると思いました。
小回りは効かないけど直進性の高いスラスターもあったので上手く使えば外見にあったアクションは充分できたんじゃないかなと思いました。
こちらもコンセプトやデザインの根本的問題ではなく、実装されたクオリティの問題という印象です。

・必殺技のときに使われる発光ギミックがありました。
宇宙刑事ギャバンがギャバンダイナミックをするときだけゴーグル部分に眼の模様が現れるみたいやつです。
必殺技を発動するとツルツルのフルフェイスヘルメット状の頭部に眼や隈取のような模様が現れて怒ったり悲しんだり表情のように見えるようになります。
ギミック自体は悪くなかったんですけど、これも有効活用はされていなかった印象です。
表情自体はギャバンごとに毎回一緒ですし、全員普通に感情があるので「物言わぬロボットが雨で泣いているように見える」みたいな絵面も特にありませんでした。
本当に「光るから光ります。表情に見えます」という即物的な現象でしかなくて、特にどうこう思うところがありませんでした。

・こういう演出をやるんだったら、変身する前と後で性格にギャップをつけた方が合ってたと思います。
クウガとか仮面ヒーローらしい演出にも使えたでしょうし、普段は飄々としている主人公なら組み合わせるのは難しくなかったでしょう。
戦隊らしさを出すなら「マスク割れ」と組み合わせる手もあったでしょう。マスク割れ状態で必殺技を放って、普段のマスクの表情との違いを出すなり、役者さんの顔で生々しい感情を出すなり、ここぞという場面を盛り上げる一手に使えたと思います。


全体感想


没落した貴族の醜態

・「新規プロジェクト第一弾!」という視点から見た印象はこんなかんじでした。
かつての栄華を忘れられず本人はいまだに貴族のつもりでいるが実態は貴族どころか貧乏人で、心意気だけが高いままだから実情に合わせて要るものと要らないもの、実現できることとできないことを取捨選択し現状に最適化することもできず、ただ周りに身も心も貧相な姿を晒すことになっている。
再起をかけての決死のチャレンジ!どころか、没落する直前と大して変わらないものを出して「そんなんだから没落したんですね」とますます周囲に見限られることになってしまった。
そんな物語みたいなダメ具合でした。「事実は小説よりも奇なり」と呼ぶほど不思議でもありません。
挑戦してダメだったんじゃなく、今まで通りのことを続けてダメだっただけなのでクオリティ的にも試みとしても「何やってんの…」と呆れてしまいます。
作中のギャバンの決め台詞の1つだった
「涙せよ、己の不始末…」
と切って捨てたくなるようなダメさで感想として言いたいことがあまりありません。
幸先の良いスタートどころか、出港する前に沈没しました。
もしもこれが事前にプロジェクトREDという枠組みが提示されていなかったら、今頃
「きっとギャバンインフィニティは予算も制作期間も切り捨てた、放送枠を埋めるためだけの捨て駒で本命は次回作の方なんだろう」
とかここに書いていたと思います。

・全然決着がつかないまま終わるラストや怪盗フェイド、刹那などオチの無さは明確に悪いところだと思うんですけど、悪いところも大半はプロジェクトREDという企画意図に引きずられた結果だと思うので作品としては言いたいことがあまり無いんですよね…


良いところがあまり無い…

・個人的な感想を書く上で一番困ったのは良いところが特にこれといって思いつかないことでした。
滑ってるとかじゃなく、「これは何がしたいの?」と真面目に面白さが伝わってこない内容が多かったです。
私にとっては最終話になってようやく全体像が見えてきたように感じるくらいに作品の方向性が掴めませんでした。


強いて言えば

・”比較的”であっても面白かった点は何かなかったかな?、と考えてみた思い浮かんだのは”鴉麿”でした。
初のコスプレ幹部でインパクトもあったし、キャラクターとして存在感もありました。
最終回まで見てから振り返ってみても「よその宇宙まで命を捨てに来たかぁ!」や「酔狂が過ぎる…!」は味のある台詞でした。
次点で考えてもやっぱり生身幹部のルルギエかなぁという印象でデスギャバンよりずっと面白みを感じました。
なお、先生は個人的には滑ってました。奇をてらえばいいってもんではないと思います。あくまで”悪党”だから許されるキャラクター像であって、よくわからん一般人を同格扱いされても反応に困ります。
今の東映スタッフだと「鴉麿や先生がウケたのでw」とか言って二番煎じをそのうち出してきそうですけど。

・ただ、あくまで「ギャバンインフィニティの中では面白い方だった」に過ぎないんですよね…
演技力も直接バトルに参加しやすいことも、どちらも本質的には戦隊で定番だった声優さんが声をあてたキグルミ幹部の方が上位互換だと思います。
「この路線を突き詰めれば新機軸が見つかるかも!」みたいな可能性を感じる内容ではないと思っています。
あくまで「低コストならば」という条件付きで評価される工夫だと考えています。


「感情」はもうちょっと活かしようがあったと思う

・普段なら改善点などを挙げるんですが、全体的に低クオリティで形になってなさ過ぎてこちらもあまり言うことが思いつきませんでした。
精一杯好意的に考えるなら「感情」かなぁと思いました。
プロジェクトREDのせいで作品単体では完結してないし、「宇宙刑事」もほぼお飾りで内容は警察ものに戦隊を合わせただけで主題と呼べる内容は無かったと思います。
キーワードとして認識できるレベルで形になっていたのは「感情」くらいじゃないかと思います。

・レイジの人物像とかキャラクター面は当初想像していたものとは全く違っていたので変えようがないんですけど、お話の筋書きなら感情というテーマに合わせて変えようがあったんじゃないかと思います。
たとえば「哀しみや涙」がテーマの刹那なら人情物のお話や事件をやったり、キキだったら性格に合わせて破天荒な方法で事件を解決するとか、そういう感情に沿った内容をやった方が合ってたんじゃないかと思いました。
こういうわかりやすい差別化があれば何度も刹那次元やキキ次元を訪れることになっても、ゲストギャバンがいる世界を訪れるときでも「今度はどんなお話になるんだろう?」と予定調和気味に視聴者の期待感を安定させつつもワクワク感も感じさせられたんじゃないでしょうか。
ラストのレイジの「楽しめ!」という話も視聴者が各次元の個性を楽しめていた方が共感しやすかったと思いますし。


今のところプロジェクトREDには不安しか感じない

・もう既に「そんな大それたことが東映スタッフにできるわけないから止めた方が良いんじゃないですか?」という気持ちになっています。
「マルチバースみたいなヒットの仕方でもしないと戦隊が続けられないんだよ!」という自分の都合だけで動いていて、客から見て面白いかどうか斬新かどうかなど客観的な視点がまるで感じられません。
次回作のオメガホーンはプロデューサーやシリーズ構成も続投だそうで、ますますもってダメそうだという思いが強まっていきます。
これでオメガホーンが目を見張るような出来栄えだったら「1作品丸々捨て駒にしてクオリティを上げるとは思い切ったことしたな!」と手のひら返しできるんですけどそう上手く行ってくれるでしょうか…





コメント

2 件のコメント :

  1.  前作のゴジュウジャーでウケた販促スタイルをそのまま取り込んだのはわかるんですがギャバンではイマイチ活かせてなかったと思いますね
     ゴジュウジャーの販促スタイルってアクションの幅は狭くなるけど代わりに吠好きならウルフテガリバー50をキャラグッズとして購入できるみたいなそのキャラのファンアイテム的な印象をつけられる点だと思うんですが、ギャバンはその専用アイテムにすることでファンアイテム的な印象付けをするという部分を捨てていてロボを出さない上にギャバリオンブレードを優先してるからマジで印象に残らない。
     専用武器じゃなくなったのなら状況に応じて多種多様な使い方をするべきなのにそれ担当のキキはそこまでアクションの印象がないし、ポッと出のダイアグラムのほうが積極的に使い分けてるのがよくなかったと思いました
     アクションの好きな部分としては宇宙に一人しかいない特別な刑事という設定を意識してか装備は共通だけど全員アクションに使う得物や戦闘スタイルがそれぞれ異なっていて必殺技のエフェクトや名称もしっかり分かれているのがめちゃくちゃ良かったです、特に同じルミナスでもブレード1本たす身体能力主体のコト、分析と武器を利用するキキで違うのは良かった

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    1. >ゴジュウジャーの販促スタイルってアクションの幅は狭くなるけど代わりに吠好きならウルフテガリバー50をキャラグッズとして購入できるみたいなそのキャラのファンアイテム的な印象をつけられる点だと思うんですが、ギャバンはその専用アイテムにすることでファンアイテム的な印象付けをするという部分を捨てていてロボを出さない上にギャバリオンブレードを優先してるからマジで印象に残らない。

      主語が欠けていて要領を得ないのですが、匿名さんが言いたいのは「ロボ換装パーツを兼用した武器」の話で合ってますか?

      「子供にウケたのはファンアイテム化したからである」という話もよく意味がわかりませんでした。
      それはゴジュウジャーに限らず大半の戦隊でもライダーでも共通武器以外はキャラとセットにする方だったと思うのですが、ゴジュウジャーが特別である理由とは何でしょうか?

      「ソードなど武器としても使えるのになぜかギャバリオンブレードでばかり戦っていて販促になっていない」
      「キキを筆頭に使い分けがいまいち」
      という点は私もそう思います。
      販促としてはやらない理由が見当たらないと思います。
      エモルギアをバトルに全然使わないことやドルネードやエクスプレスなど強化アイテムの活躍の少なさもそうですが、販促面は論外だったと思います。


      >装備は共通だけど全員アクションに使う得物や戦闘スタイルがそれぞれ異なっていて

      私は特筆するほどではないと思いました。
      共通武器を使う作品では珍しくない内容だと思ったので私は特に語ることがありません。
      相手がエモンズしかいないことが主な原因だと思うので悪い方向でも特に思うところがありません。

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