『爆上戦隊ブンブンジャー』最終回まで見終わって:総合感想
『爆上戦隊ブンブンジャー』を最終回まで見終わったので感想を書きたいと思います。
*必要に応じて随時ネタバレがあります。
一言まとめ
戦隊らしい味わいは良好:わかりやすいフォーマット。アクション。怪人。
各要素の方向性がチグハグ:「爆上げ」が決め台詞なのに基本はダウナー。コミカルとシリアス。
独自色は失敗が多め:メインストーリーを後半で集中的にやったけど割が合わず、終盤が盛り上がらなかった。
良かったところ
■戦隊らしい味わい=ヒーロー性。明るさ。わかりやすさ。
・ブンブンジャーの良いところは基本的にいつもの戦隊をしっかりやっていたところだと思います。
ここ数年は異色作が続いたり、戦隊らしさを出したはずが過剰な明るさがサイコパスに通じてなんかズレてたり、落ち着いて見られる作品が少なかったです。
ブンブンジャーは「清く正しい正義の味方」「明るく元気で逆境にも挫けない」「敵はいかにも悪いことをして善悪の議論の余地無し」「ギミック重視の怪人をいろんなアクションで倒す」と戦隊の定番要素をしっかりやっていました。
・最終回まで見終わった後から考えてみても、私が楽しめたのはこの辺の定番要素でした。
メインストーリー重視になっていった3クール目以降よりも、販促重視な1クール目や夏休み回含めて他愛もない回が多かった2クール目の方が楽しかったです。
■アクションは上質
・アクションが毎回見応えがあったところが個人的には一番嬉しかったです。
ここ数年はアクションがパッとせず、「アクションは毎年右肩上がり」なんてもう過去の話か…と悲観気味でしたが久しぶりに安心して見れるクオリティが見れました。
・個別のアクションももちろん良かったですが、マスクの正面顔にも付いて目立ってる”タイヤ”をしっかりかっこよく使えてるところが特に良かったです。
かかとにあるタイヤを使って高速移動や不安定な姿勢でスライド移動するのはもちろん、背中に描かれたタイヤが実体化して背後からの攻撃を防ぐシールドになったり、そのタイヤで敵を挟んで拘束したり、ときには実体化したタイヤを蹴って相手にぶつけて飛び道具にしたり、場面ごとにいろんなアクションがありました。
必殺技もハンドルのモチーフを活かして、射撃技なら発射した弾丸をハンドル操作で動かして追尾したり敵の防御を避けて当てたりする使い方もありましたし、技に当たった敵自体をハンドルで操作して自滅させるなんて技もありました。必殺技もバリエーションがあってマンネリにならず面白かったです。
・スーパー化に相当する”チャンピオン”ブンブンジャーも通常フォームとは違ったアクションが面白かったです。
ロボ戦用の換装パーツ、「ブンブンカー」にちなんだ能力を等身大戦でも臨機応変に使えて戦い方のバリエーションが広がりましたし、「そういえばこんな車あったな」と久しぶりに思い出す機会にもなっていて、最強ロボが登場して換装パーツの出番がなくなりがちな後半でやるにはお誂え向きな能力でした。
チャンピオンブンブンジャーは必殺技のシークエンスが特に良かったです。背中に描かれた5つ並んだタイヤマークを他のメンバーが手のひらで叩くことでパワーが充填され、みんなに背中を押されたメンバーが必殺技を放つ流れは戦隊の戦隊にぴったりでした。
戦隊でありがちな「怪人とのバトルは全員で戦うけど、トドメのタイミングになるとその回の主役キャラ以外は急に見学モードで棒立ちになる」という不自然さを消せていました。
ペア回ならお互いに背中を叩きあって2人同時必殺技で倒すこともあったり、いろんな意味合いを乗せられてアクションだけでなくドラマの演出にも一役買っていました。
合体バズーカ的な方向性ですが、それよりも連帯感や一体感があって素晴らしかったです。
・巨大戦は22話のレオレスキュー単体の活躍が一番印象的でした
消防車形態のまま救助活動を行った後に、それまでに換装パーツと登場したブンブンカーを身体の周りに装着してライオン形態のまま敵を倒す流れは販促とバトルを無駄なくまとめて進めることができていて素晴らしかったです。
■怪人のデザイン
・怪人のデザインも戦隊らしいコミカルさとよく見ると凝っているモチーフの活かし方が良かったです。
ブンブンジャーの怪人デザインは漫画家の島本和彦さんです。仮面ライダーゴーストの時は特に印象に残りませんでしたが、ブンブンジャーはとても良かったです。
パッと見で何がモチーフかわかるわかりやすさとモチーフの細かい落とし込みが両立されていて造形が凝っていました。
怪人を見ること自体も毎回結構楽しみでした。
各要素の方向性がチグハグ
・作品全体としては、戦隊らしさとシリアスなメインストーリーなど複数の要素の方向性がそれぞれ逆を向いているところが良くなかったと思います。
■「爆上げ」なのにダウナー
・チグハグさの代表例はタイトルにもなっている決め台詞の「爆上げ」だと思います。
意味は「最高だな!」「盛り上がってきたぜ!」といった意味で捻りはありません。
いかにも熱血な響きのある言葉が主人公の決め台詞なんですが、ストーリーもキャラも全体的にダウナーであまり似合っていませんでした。
メインストーリーが進めば進むほど主人公にわりと隠し事が多く、他人をあてにせずに1人で抱え込むタイプだったことが明らかになっていき、ますますハイテンション感が薄れていき”爆上げ”とのギャップがより一層強まっていきました。
■わかりやすい看板とギャップのあるストーリー
・メンバーにつけられた「○○屋」の肩書もイメージを裏切る方向に働いてしまいました。
主人公は物も人も助けを求める人への正義の味方活動も何でも届けるから「届け屋」。
オレンジはロボのパーツから土地に監視衛星、怪人との戦闘中に役立つアイテムまで必要なものを何でも調達するから「調達屋」。
ブルーはスパイで「情報屋」。ピンクは運転が得意だから「運転屋」。ブラックは現役警察官だから「警察屋」。
と、こんな具合にわかりやすいキャラ付けがされています。
…はい、下の方に行くほど勢いが無くなっていくところを見てもわかる通り、初期設定から苦しいです。
情報屋や警察屋なんてそのまんまですし、ピンクに至っては運転屋なのに運転した機会が数えるほどしかありません。毎回違うバイトをしてるので「バイト屋」とか「何でも屋」を名乗ったほうが実情に合ってるくらいです。
「『爆上げ』とか『○○屋』なんていかにも戦隊らしいデフォルメされたわかりやすい作風なんだな!」と第一印象を引きずっていくと戦隊らしいくだけた話が多い序盤は良くても、どんどんシリアスになり現実的な重苦しさが増していく後半のメインストーリーとのギャップに混乱することになります。
基本明るい作風で重めな展開をやるとそれでもめげない明るさが際立つように、そのギャップがカタルシスを生めば良かったのですがひたすら重苦しくなっていく作風だったのでただの温度差や違和感で終わってしまいました。
独自色で失敗が多かった
■力を入れたストーリーほどコケた
・メインストーリーが薄く戦隊要素の強い前半は楽しめたのですが、メインストーリーが本格化して独自色の強まっていた3クール目以降はストレスを感じる展開が多く、「これを我慢したら面白くなるかな…」という感じることが慢性化し、楽しさが先立つ内容ではありませんでした。
失敗の要因が普通にクオリティがいまいちだったせいなので是非の程もありません。「積み重ね不足」「解決パートでの論理の飛躍」「引っ張ってきた要素があっさり進んで拍子抜け」 「 長くストレスの溜まる負け展開を続けた割に盛り上がらないクライマックス」などいかにもダメなパターンをやってしまいました。
・具体的には3クール目の8話引っ張った”メンバー離脱”とラスト6話丸々使った”最終決戦”が盛り上がらなかったことが特に大きなマイナスでした。
・メンバー離脱の方は、新しく登場した敵幹部が故郷を滅ぼした仇だったため「私怨にみんなを巻き込むわけにはいかないから1人で復讐する」と初期メンバーの1人がブンブンジャーを脱退して単独行動を始めました。
8話後に復帰するまで単独行動を続けたのですが…問題は離脱中の成果がゼロだったことです。
そもそも離脱前の初戦でボロ負けした強敵なので1人で再戦しても勝てるはずがありません。そして仇は敵幹部として地球に現れた以上はブンブンジャーにとっても当然倒すべき脅威です。結局、合流してからみんなで倒しました。
「最初から一緒に倒せば良かったじゃん…」としか言いようのない脱力展開に8話も割いたのは痛手でした。せっかくこれまでにない強敵として現れた新幹部も、メンバー1人と小競り合いしてる間に賞味期限が切れてしまったため幹部との決着も盛り上がらない内容になってしまいました。
離脱したメンバーと敵幹部だけでもグダっていたのに、「人気が出たから急遽ゾンビ化して復活させた敵幹部」まで挟み込んだから余計に話の腰が折れまくりでした。
・最終決戦はもっと割に合わない展開でした。
43話から最終回の48話まで丸々6話を連続したエピソードにあて、脚本も全てシリーズ構成が手掛けた最終決戦らしい一大展開でした。
しかし6話も使ってその大半が負け展開に費やされたことが致命的でした。
味方が裏切る。メンバーが裏切る。味方が死ぬ。民衆も騙されて敵の親玉に騙されてブンブンジャーを敵扱いする。親玉と側近は強くてまともに戦ってもボロ負け続きで勝ち目が見えない。
丸々4話半ブンブンジャーが追い込まれるばかりの展開を続けて、逆転したのがラスト2話のラスト数分になってからでした。残るは1話だけなので最終回はお決まりの最終決戦や少しのエピローグをやっただけで終わってしまって全く物足りない内容でした。
悪い展開ではないんですが、「ストレスや時間の割に合わない」「ここまで逆境を煽っておいて逆転があっさりで肩透かし」と至極当たり前に盛り上がらない展開で終わったのはマイナスでした。
結末が盛り上がらないことはそれ自体がもっと大きなマイナスでした。用意周到に狙い済ました展開が滑ったので言い訳の余地も見当たりません。
■善悪のバランスが悪い
・終盤はシリーズ構成の冨岡淳広さんの悪い癖も出ていました。
「ラスボスは人々の悲鳴を集め、力に変える」
「地球には貧困や戦争など悲鳴に溢れている」
「惨めな他者がいるから人は自分の幸せを実感できる。虐げられる側が一人もいなくなることなんて本当はみんな望んでない」
「主人公の恩人の会社社長や国際警察のお偉いさんも権益に目がくらんで侵略者である敵に協力し始める」
「メディア工作で扇動された民衆もブンブンジャーを批判し始める」
などなど、露悪的だが現実味も感じられる話がいくつもありました。
・その一方、主人公たちが逆転できた理由には説得力が欠けていました。
「勝てたのは主人公たちの一発逆転の作戦にラスボスたちがまんまと引っかかったから」
「子供たちの声援で死んだはずのキャラが蘇り、謎パワーも発揮して最終回でもブンブンジャーを圧倒していたラスボスをワンパン」
「ラスボスを倒しても経済格差など世界の抱える根本的な問題は消えていないはずだがそこには特に触れないで終了」
これではご都合主義と言わざるを得ません。希望が抽象的過ぎて悪党を倒した後も現実的重苦しさに負けたままです。
「確かにか細い希望だがそれでも俺は諦めない! 可能性を信じて戦い続ける!!」みたいな路線でもないのでスタッフも回答を用意できなかった感じが有り有りでした。
とりあえず形式的に終わらせただけって感じで脱力感が強かったです。逆転のためのピンチではなく、露悪的に描くこと自体が目的になってないかと疑問に感じる内容でした。
■ラスボスは魅力的だった
・終盤で最も優遇されていたラスボスのワルイド・スピンドー自体は魅力的なキャラだったことが余計に悩ましかったです。
宇宙中を侵略し勢力を拡大しているマフィア組織のボスでありながら、地球の売国奴の連中などにはフランクに接するしたたかさがあり、それでいて自身が搾取される側として生まれ育ったことからそういう連中を忌み嫌う感性も併せ持っている複雑なキャラクターでした。
その魅力がキャラ単体で完結気味でお話全体の盛りあがりには特に貢献しなかったことが困りどころです。「ラスボスが活躍する=主人公側が負ける」なので踏み台にする犠牲が大き過ぎました。
単純な敵としても圧倒的な強さでしたが、圧倒的過ぎて最終回でも圧倒しちゃって謎パワーでワンパンする以外まではブンブンジャーは手も足も出ませんでした。
「力の入れどころを間違っている」と評する他ない結果でした。この盛り上がりを主人公側でやるか、ラスボスの魅力によって主人公側の主張も引き立つ流れだったら最高だったでしょうに…
全体感想
■期待を下回った
・全体の感想は上でだいたい書きましたし、具体的な内容は各話感想で書いたので個人的な印象をざっとまとめるとこんな印象です。
シリーズ構成が冨岡淳広さんということで期待していたのですが全体としては物足りない結果に終わりました。普通のニチアサ未経験者の初作だったなら及第点、あるいは”良い方”とすら言えたでしょうが、私が冨岡さんに期待していたのはこの程度じゃありませんでした。
・バトスピ『ブレイヴサーガ』や『ガレット』みたいな露悪的な悪い癖が出ていました。
あっちは5話以下の短編だからまだ言い訳の余地がありましたが、ブンブンジャーでは話数をかけてこの結果だったので余計に問題です。「48話中25話」と半分以上自分で書いてこれですからね。話数相応のスケール感を活かせないどころか大也中心にマイナスに働いていたことは大きな不満です。
・次があるなら冨岡さんの手綱を握って悪い方面にはブレーキをかけられる監督やプロデューサーをセットにしてほしいです。
最低でもシリアスか明るさか、最初にはっきり決めて中途半端にならないようにしないとまた似たような失敗を繰り返す可能性が高いと思います。
*以降は「考えてみたけど綺麗な結論は出ませんでした」というオチのない話なので興味が無い人は見なくてOKです。
■仮説:ブンブンジャーはこういう話だった?
・終盤のお話にピンと来ない部分が多かったので、結末から逆算して「本来はこういう話にしたかったのか?」と仮説を考えてみました。
基本は「夢と現実」「未来と現在」が対立軸
「自分のハンドルは自分で握れ」は「意思決定権を自分で持て。他人に受け渡すな」という意味ではなく「自分の夢に向かって進め」→「自分だけの羅針盤を持て」
「悲鳴」ではなく、「夢を持つ気になれない、現実に押しつぶされた人々」。
メインキャラ
大也:「全ての人が夢に向かって進める世界」という壮大な夢を持ち、他者の夢を全力で応援し続ける者。傍から見ればゴールに見える巨万の富も大也にとっては夢を叶えるための第一歩に過ぎない。
スピンドー:明日を迎えられるかも知らぬ掃き溜めに生まれ育ち、明日の心配をしなくてもいい身分に成り上がった後も夢を持てない者。夢を持たないがゆえに満たされることもなく、他人の命も弄べるマフィアの首領となった今でも今この瞬間を自分が生き抜くことにしか関心がない。永遠の命と圧倒的な力を求め続け、常軌を逸した目標のない現状維持をし続ける者。
先斗:過酷な環境で生まれ育ち、自ら進んで非道も厭わぬ始末屋の生き方を選んで生きてきた点はスピンドーと似ている。しかしビュンディーという自分を導いてくれた存在や昔良くしてくれた地球の数少ない友達、利益のために悲鳴を生み出すハシリヤンへの嫌悪感などからハシリヤンと敵対する道へと進路を変えていく。最後には自分の現状維持を望むスピンドーではなく、他者の夢を望む大也を支持し、自らも「地球で苦しむ子供たちを1人残らず救い出す」という夢を持つようになる。大也とスピンドーの間に立ち、最終的なジャッジを下すためのキャラ。
サブキャラ
射士郎:秩序=現状維持のための汚れ仕事をするスパイ稼業は必要なこととして続けてきたが、長く続ける間に自分を見失い疲弊していた。大也と出会ったことで考えが変わり、今では現実的なアプローチで手助けし大也の夢を叶えることを自分の夢にするようになった。
未来:現実に押し流され虐げられる側として生きてきたが、大也に助けられたことで自分で自分の道を進むことを決心した。特に夢は決まっていないが自分の夢を見つけるためにいろんなこと(バイトや運び屋、ブンブンジャー)に挑戦している、夢を探して進む者。
錠:人々を守りたいと思い警察官になった者。しかしハシリヤン相手には力が足りず、悩んでいたがブンブンジャーになったことで力を補い再び人々を守れるようになった。終盤に警察官としての地位を失おうと、人々を守りたいという意思とブンブンジャーの力は変わらないので錠にとっては何の問題もない。
最初から最後まで変化していないようで、一つの夢に向かって一直線に走り続けている人物。その道筋の価値は錠に感謝する人々の声が証明している。
玄蕃:故郷を追われ多くを失ったことで未来を見失った者。それでも絶望しきったわけではなく、調達屋として夢に向かう他者を応援し手助けすることを喜びとしてきた。自分でもそれでいいと思ってきたが、大也に正面から夢を説かれたことで積極的に応援するために自らもブンブンジャーに参加するようになった。
物語の後半では故郷を滅ぼした因縁の相手ディスレースが地球にやってきたことで夢を捨て故郷の復讐へと走りかける。だが再び先斗やマッドレックスに真にやりたいことを問いかけられたことで「故郷のみんなのためにディスレースに復讐する」ではなく「故郷を解放するためにハシリヤンを倒す。そのためにまずは目の前のディスレースを倒す」という無自覚に諦めていた自分が本当にやりたいことに立ち返った者。(ブンブンジャーを手助けしてきたのも「自分には無理だけど彼らならハシリヤンを倒してくれるかもしれない」という他力本願な無自覚な思いが反映されていた行為だった)
ブンブン:「レースに勝ちたい」という目先の目的のために違法パーツに手を出しライセンスを剥奪され、スピンドーの元に行ってからもただ言われるがままに手伝った結果、悪事に協力することになった悪い方に転がり落ち続けてきた者。尊厳すら失い死のうとして地球に不時着し大也に救われた。レーサーとしてではなくメカニックとして、悪の手先ではなく正義の味方として第二の人生を始め、最後には憧れのBBGへの出走を果たした、夢を再び追いかけた者。
「自分のハンドル」や「悲鳴」をこんな具合に具体的要素に置き換えていくと作中の要素のまとまりが良くなる気がします。
実際のメインストーリーの論調に合わせてリアリティ重視の線でも考えてみましたが、そっちはまとまりませんでした。利益相反や共産主義、独裁政治の問題が出てきて、こっちが正義であっちが悪と白黒わかりやすく決着をつけることに無理が出ます。
■BBGはノルマにしか見えない
「ブンブンジャーの真の目的はBBGに出走すること」という部分はどうにもなりませんでした。
いくら考えても大也の真の目的である「大也の死後も続く個人に頼らない恒久的な平和を維持する仕組み作り」と衝突します。
「BBGで優勝すると願いが叶う」とすれば出場を優先する理由が生まれますが、今度はリアリティ重視の作風と衝突します。
「BBGで優勝することで全宇宙で知名度を集められ大也の夢が実現に近づく」みたいにするとリアリティはどうにかなりますが、今度は地球の悲鳴を解決できてない状況でBBGを目指すことと衝突します。
・いくら考えてもどこかしらで無理が出ました。
現実的に行くなら「序盤の時点では大也自身はレーサーとして出走する気はない(メンバー集めや開発を手伝うつもりはある)」→「エピローグでは先斗や劇場版のお姫様など任せられる相手が見つかったので目先の問題はひとまず託し、『宇宙を救うブンブンジャー』というハシリヤン退治から始まった機運を更に高めて大也の夢の恒久的な平和を宇宙規模で進めるためにBBGに出走することにした」くらいかなと思います。
・BBGをノイズとして除いても結局、「大也はなぜ自分と同じ志を持つ同志を集めようとしなかったのか?」という大きな疑問が問題になると思います。
大也の根底にある人間不信や「自分がやることにこだわる」といった救世主願望の話を加えないと辻褄を合わせられない気がします。
本編に合わせる限りは○○屋と同様に「入れろと言われたから設定だけ入れたけど活かす気は最初から無かった要素」にしか見えません。
・ネタとしては流れをイジれば充分使えるネタだったと思うんですけどね…
作中の流れでもたとえば、「BBGは生まれも育ちも過去も関係なく、レースの実力さえあれば誰にでもチャンスがある、持たざる者の最後の希望の舞台」なんて立て付けにすれば、なぜブンブンがBBGに参加したいのかその理由も、そんな最後の希望だったBBGがスピンドーに乗っ取られていた絶望も話に組み込めたと思うんですよね。こういう理想郷のような遠い希望の象徴として扱われていたら「BBGを実際に走らないの?」という疑問も湧きづらかったと思います。
テーマだったはずの「作る」要素が1話の時点でも消滅しているのは作中に存在出てこないから構わないんですが、BBGみたいに作中で取り上げておいて棚上げにするのは悪いことだと思います。
私は序盤のブンブンカー単体でのヤルカー相手のカーチェイスが販促にもなっていてそこそこ好きだったのでBBGメインに進めてくれても全然良かったんですけどね…でもそうはなりませんでした。
■先斗は何だったのか…
・本編の先斗は扱いが最後まで謎でした。個人的にはブンブンジャー最大の謎です。
仲間になっても行動は共にせず、それでいて「カレーを食べに来た」みたいな気安い場面が多く、単独行動が活かせたのは玄蕃が離脱している間の関係性くらいでした。
・始末屋と仰々しい肩書で登場した割にはこちらもパッとしませんでした。登場直後もブンブンジャーと敵対することはなく、やったのはキャノンボーグに剣を届けたくらいでした。
印象が悪くなるから敵対や殺しはできないなら、じゃあ過去でしたことを匂わせたり因縁のある相手が現れたりするのだろうかとも考えましたがこちらも何もありませんでした。
地球に来てからは実質「何でも屋」なんだろうと思おうにも何でも屋としての仕事も全然ありませんでした。
・1キャラクターとしても扱いが不可解でした。
「生まれ育った環境から地球に嫌気がして宇宙に出ていった」という身の上は、大也にとっては救うべき対象であり救えなかった存在であるはずですし、スピンドーからすれば似た環境で生まれた似た者同士のはずです。
そういう話も最後まで一切ありませんでした。じゃあこれも意味がない設定なのか?!と思うにも最後の最後に地球の子供を救うために動き出していたので余計にわけがわかりません。取り扱う気があるのか無いのかどっちなんです?
・設定や存在意義はあるはずなのに、実際のエピソードは無い無い尽くしで最後まで捉えどころのないキャラクターでした。
結局、先斗が言う「カオス」の意味に具体的なあたりをつけることすらできませんでした。「混沌」という程には状況は混沌としてないんですよね…
レギュラーキャラとしても出番も扱いも下の方でしたし、とても追加戦士とは思えない持て余しっぷりでした。いったいなんでこんなことになったのでしょうか。不思議です。
「始末屋」と言うわりに何も行動がなかったあたり、やる予定だったことを禁止されてキャラを骨抜きにされたからキャラ自体を見放しちゃったパターンなんでしょうか?
■カレー係だったブンブン
・「なぜこんなことに?」という疑問が浮かぶ点としてはブンブンもなかなかでした。
終盤のシリアス展開以外はカレーを作ってるかダジャレを言っている印象ばかりです。
ただのロボではなく小型化して日常パートでもレギュラー出演してるんだからストーリーでもBBG関連でもバトルでも賑やかしでも、出そうと思えば出せるところはいくつもあったと思うんですけど全然出番がありませんでした。
・振り返ってみて「前にもこんなことを思ったような?」とデジャブを感じました。
ゼンカイジャーのキグルミ勢ですね、これ。「『ロボットを目立たせるためにキャラとして日常パートも参加させるのか~』と最初は思ってたけど実際には大して目立たなくて空気だった」という点まで似てます。
相変わらずコンセプト倒れで機能していませんね。
なんかモヤモヤする作品でした
返信削除爆上戦隊とかいうわりにクールで本心を言わない系のキャラが多いし彼らの方がスポット当たってる
熱血、元気担当の錠や未来は親しみやすいキャラですが現実的過ぎていまいちパッとしないまま流れでBBGについていってしまいました
なんか良い意味での暑苦しさや頭の悪さが無いんですよね、そのわりに敵はコミカル
最終章は話は深刻で暗いわりに解決策出せてないしブンドリオはずっと意識無くて最後の最後にようやく声援パワーで起きるしブンブンカー出番無いしでこの作品は何を目指してるのか分からなくなりました
昨年も思いましたが斬新な事がやりたいという気持ちが先走り過ぎですよ
食い違っている要素は少なくない印象でしたね。
削除全体としては「爆上げ」や「BBG」の方がノイズなのかなと私は思いました。
>昨年も思いましたが斬新な事がやりたいという気持ちが先走り過ぎですよ
私はむしろ「明確なコンセプトがないからまとまりに欠けた」という印象です。シリアス部分も冨岡さんの手癖だと思っています。
お疲れ様です。1年間この作品の記事を毎週楽しみに読ませていただきました。ありがとうございました。
返信削除ところで自分は主さんよりニチアサの経験が少ないので教えてください。この作品はニチアサ未経験者の初作品として、平均より上の方なのでしょうか?
個人的に、ストーリーが盛上がらなかった点も気になりますが、それ以上に販促にイマイチ力を入れようとしなかった点があまり受け入れ難かったです。特に3クール目以降のダウナー展開をやるにあたって、ほとんど販促をされた記憶がありません。レジェンドロボまで販促ノルマがあったのは流石に可哀想でしたが、じゃあメインのレオレスキューやチャンピオンキャリアーや、消火ブラスターの販促をやりきったかと言われると首を傾げざるを得ない気がしていますが…
匿名さん、こんにちは。
削除>この作品はニチアサ未経験者の初作品として、平均より上の方なのでしょうか?
未経験者に絞るならば上も上の方だと思います。
だいたいはストーリーや作風にオリジナリティを出そうとすると戦隊定番要素や販促が疎かになり、戦隊らしい戦隊をやろうとすると味が薄く個性のない劣化版になりがちです。問題はあれどもどちらもそれなりにやれてるだけブンブンジャーは良い方だと思います。
未経験者に限らない客観的な評価としても「中の上」くらいだと思います。
経験者でもキラメイジャーやキュウレンジャー、ゴセイジャーなど外した作品はありますから。
>それ以上に販促にイマイチ力を入れようとしなかった点があまり受け入れ難かったです。
販促自体は全体としては熱心な方だったと思います。
匿名さんが書かれたようにディスレース撃破以降の4クール目は主にロボの出番が少なくぷっつり途絶えましたが、3クール目までは熱心でした。ブンブンカー単体の出番に換装パーツ、レオレスキューも初登場の前後では大々的に取り扱われていました。「アイテム開発や登場のドラマが弱い」という点はありますが、実際に活躍する場面の方を重視した姿勢だとしたら、それは正しいことだと私は思います。
ロボチャンピオンの出番が少ないのは良くないと思います。最後くらいは活躍があるかと思ったらそれもありませんでしたし。
その代わりにアイテムを共有しているチャンピオンブンブンジャーの活躍が多かったのでそっちで販促は満たしたという判断なんでしょうかね。
「等身大の方で使う方がコスプレ衣装のジャケットも売れていい」という判断でやってるならやや邪悪だと思います。比率が上回る程度ならまだしもロボチャンピオンとチャンピオンブンブンジャーで登場回数で大きな差がつくのは良くないと思います。玩具ブランド的にはロボの方がメインのはずですからね。
答えていただきありがとうございます。
削除実際に活躍する場面の方を重視した姿勢
この文ですごく腑に落ちました。販促に力を入れてなかったわけではなく、「販促の仕方が個人的に嫌いだった」だけで、客観的に見たときに販促に注力してなかったわけではないですね。認識を改めます。
自分としては、ブンブンジャーの「ストーリーを優先して空いた隙間に販促を入れる」手法よりも、ジュウオウやルパパトみたいな「販促をストーリーの中核に持ってくる」手法の方が好きなのですが、主さんは販促の仕方で好きな手法はありますか?
また、主さんの記事を全て読んだ上で改めて聞きます。
ニチアサには販促の良し悪しが上から下のものまで様々なものがありましたが、1番印象に残ってる販促に力を入れた作品を教えてください。
販促にもアプローチの方向性がいろいろあると思います。
削除「映像作品としてかっこよく/面白く見せる」
「強敵や苦難など開発や入手の過程にドラマを設けてストーリーを盛り上げる(ジュウオウジャーがこれですね)」
「意思を持ってるタイプなどアイテム自体にキャラクター性を持たせる(ブンドリオがこれですね)」
この辺の要素は理論上は混在可能だと思いますが、現実的には難易度が高いと思います。
ストーリーをきっちり決めると演出や撮影に制限が出て面白い映像になりづらかったり、ドラマ優先でドラマが挟まる度にアクションやバトルはぶつ切れになったりしがちです。
ブンブンジャーのシリーズ構成の冨岡さんは意図的にアクションができるような空白を多めにしていたと語っているのでこの逆だったのだと思います。その方針の成果がレオレスキューの活躍であり、逆にストーリーを入れすぎた結果が3クール目の玄蕃や終盤なのだと思います。
ストーリー重視もアクション重視も販促としては一長一短だと私は思います。
「どちらがいいか?」というよりかは、
「どれだけ多くの要素をどこまで伸ばせるか」
が重要だと思っています。なのでスタッフの意図がきちんと発揮されていて、それが販促につながっていれば私はそれで良いです。
ストーリーに関しては、商品展開のスケジュールは最初からある程度決まっているので重要アイテムにはそれに見合った展開やドラマを用意するのは最低限の義務だとは思いますけどね。
>1番印象に残ってる販促に力を入れた作品を教えてください。
戦隊なら私が見たことある中だと、
キョウリュウジャーとゴーカイジャーですかね。キョウリュウジャーは荒唐無稽なサンバのリズムをかっこよさにつなげ、各アイテムの印象付けも高水準でできていたと思います。
ゴーカイジャーはレジェンドものの走りでありながら完成形と言っていいくらいの出来栄えでした。ライダーも含めてその後のレジェンド系がどれもしょぼく見えてしまうほどでした。レジェンド要素だけでなく、レジェンド要素以外のゴーカイジャーオリジナル部分もよくできていました。
販促一つ一つも、作品全体のトータルもよくできていたのでこの2つが印象深いです。
ゴーオンジャーやアバレンジャーも個人的にはよくできていたと思っています。
この辺は「ロボもキャラ扱いする」という作品によってはやりたくてもできない要素も含んでいるので平等な比較には向きませんが、そこも加味していいなら上記2つに匹敵すると思います。
部分点の評価ならシンケンジャーも評価に値すると言えなくもありません。
あのデザインとモチーフをかっこよく見せただけ立派と言えます。販促に力を入れていたかと言うと、シリーズ構成が小林靖子さんなので頷きかねますが。
後半は残念そうでしたが、そこを差し引いても久しぶりにOwlさんの感想が楽しげでこちらも1年楽しく読ませていただきました。
返信削除販促や定番要素は近年の作品と比べても上手でしたね。
冨岡さんは放送が始まった頃のインタビューで、ストーリーのまとまりよりも各回のスタッフさんのアイディアを重視している様子でした。そのスタンスは前半の楽しさには繋がりましたが積み重ねが大事な後半では行き詰まったのかなと思いました。また登板することがあれば改善して欲しいところです。
>冨岡さんは放送が始まった頃のインタビューで、ストーリーのまとまりよりも各回のスタッフさんのアイディアを重視している様子でした。そのスタンスは前半の楽しさには繋がりましたが積み重ねが大事な後半では行き詰まったのかなと思いました。また登板することがあれば改善して欲しいところです。
削除私もそんな印象です。
アクションや販促という点ではプラスに働いたけれども、ストーリーやキャラクター面では積み重ね不足や明確に方向性を示せなかったことがマイナスに働いているように感じました。
次はもっと上手くバランスを取れることを期待したいです。
前作に続きブンブンジャーもラスボスが強い&活躍期間が長い点が問題でしたね。期間相応のカタルシスが用意できれば良かったんですけど、知略も武力も兼ね備えたスピンドーだからなぁ…。
返信削除ラスボスの活躍期間ってどれくらいが適切なんでしょうね?ラスト2話くらいで倒すくらいがちょうど良いのかな?
最終回前に倒して最終回を丸々エピローグにするならエピローグの方が本番の場合でしょうね(次回作へのブリッジ回は除く)。
削除個人的には基本がバトルものであり販促番組なので最終決戦は最終回にやって、最低でも前半丸々くらいは使う方が自然だと思います。
「戦いは重要じゃない」というストーリー構成にしちゃうと、最終回だけでなくそれまでの話数でも無駄に見える部分が大きくなって全体に無理が出ると思います。
ブンブンジャーの場合は「一つの展開を引っ張りすぎるのは良くない」という問題の方が大きいと思います。味方側の進展が遅い展開はダレます。途中でグランツを倒したり、エネルギータンクだったお猿を壊したり、全体では劣勢にしても一進一退の展開にしないと厳しいと思います。
お疲れ様です
返信削除初期の「ああ戦隊が帰ってきたなぁ」という感じが好きだったので
終盤の変に意識高そうで半端に暗い上に前後のつながりが滅茶苦茶なダメなニチアサの典型になってるのが残念でした。
それこそカーレンやゴーオンみたいに突き抜けてほしかったなと思います
匿名さん、こんにちは。
削除前半の戦隊らしい路線と後半のシリアスさは噛み合ってませんでしたね。
私はシリアスならシリアスで構いませんが、前半が全然活きてこない展開は問題があると思いました。あれならシリアスは入れずに前半のノリを維持した方が無理がなかったと思います。
一年間の視聴、感想共にお疲れ様でした。
返信削除自分の感性では意識していなかった、ブンブンジャーの良い所(戦隊らしい味わい、アクション、デザイン等)に気付くことが出来ました、ありがとうございます。
個人の感性、感想になってしまうのですが、他の方も悪い部分として触れている、後半ストーリーで評価が下がってしまう(下がってしまった)、なんというか勿体ない戦隊だったなという感想になってしまいます。
歴代のように、年間を通じてキャラの内面や精神の成長、変化を中心にしてお話を進めていれば、もっと良かったのではないかと思ってしまいます(それ以外も改善する要素はあると思いますが)。
そして、敵味方共にもう少しキャラを大事にして欲しかったな・・・と
匿名さん、こんにちは。
削除お役に立てて嬉しいです。
>歴代のように、年間を通じてキャラの内面や精神の成長、変化を中心にしてお話を進めていれば、もっと良かったのではないかと思ってしまいます(それ以外も改善する要素はあると思いますが)。
私もそう思います。
特に後半のシリアス路線の方を重視したいなら前半から積み重ねが必要だったと思いますし、爆上げやBBGも上手くストーリーに取り入れていく必要があったと思います。それができれば全体の完成度が上がってもっと良い作品になったでしょう。
>敵味方共にもう少しキャラを大事にして欲しかったな・・・と
出番が多かったキャラだけでも、サンシーターや先斗など出番の割に最後まで役割や立ち位置がはっきりしないキャラがいましたね。オチもピンと来なかったので満足感がありません。
調さんと未来の言動も終盤は”一般人代表”的な部分では被り気味でしたし。改善の余地はあったと思います。
総評お疲れ様です。読み応えのある内容で面白かったです。
返信削除懸念されていた通り尻すぼみに終わっちゃいましたね。
虐待など重めの問題も具体的な描写があり、手を差し伸べて終わりの偽善ではなく、夢を目指したり自己充実の余裕があってはじめて救いという視点に考えの深さを感じて見ていたのですが、最後は主張がぼやけてしまったように感じました。
自分もBBGが足を引っ張っていたのが気になりました。夢を象徴するスポーツで悪の手から絶対に取り返すべきものというのが、野球選手に憧れる子供のような具体例があれば想像しやすかった気がします。ラストの一連のドラマの感動ポイントをブンブン復活の一点に頼っていてレース要素はかなり重要扱いのはずなのに描写が全然ないという、あるべきパーツの欠落が目立ちましたね。CGの節約あるいは車モチーフの他作との差別化だったのでしょうか。
情緒的にはブンブンはいないと寂しくはありますが、大也が分身を失ったほどの喪失感とかは出せてなかったと思います。レーサーとメカニック的なコンビでの競技活動のイメージが弱くみんなの世話係マスコットで終わってしまっていましたね。
バディ要素はブンブンではなくブルーに割り当てられてたのかとも考えてみたのですが、裏切り表返り芸も何度もやられると萎えます。ただあれくらいこちらの手札であることを明確にしてラストの苦戦が続いてもちびっこにストレスを与えない配慮だったのかとも考えたのですが、そうまでしてやる価値がある展開だったかというと全然別の道もあったように思えます。
恩師のおじさんは「権力を持った大人が子供の未来など眼中にないので、幼稚園の先生のような個人レベルで変えようと努力しても一向に良くならない」ということを表す存在だったのかと思ったのですが、そういう悪を正論で殴り飛ばすような爽快感もなかったんですよね。個人的には理想論だとしても利益を得る=誰かが割りを食う理論への反論がほしかったところです。格差による妬みではなく向上心を持つことを推奨するような主張なら、ハンドルを握る→夢を持つという意味合いも出せたと思います。
記事で書かれていた通り、リアリティ重視の作風ゆえにボロが出ている感じだったので、最後だけでも希望を明確に示せれば印象は違ったでしょうね。
お褒めの言葉ありがとうございます。
削除>虐待など重めの問題も具体的な描写があり、手を差し伸べて終わりの偽善ではなく、夢を目指したり自己充実の余裕があってはじめて救いという視点に考えの深さを感じて見ていたのですが、最後は主張がぼやけてしまったように感じました。
「余裕のある大人ほど助けない」など問題提起までは良かったんですけど、解決方法や取り組みに具体性が薄くて肩透かしになっちゃったのは残念でした。
問題提起の時点で感じる面白みには「そんな問題をどうやって解決するんだろう?」という期待も含まれているので問題解決を投げられちゃうと結末以外も全体的にがっかりします。
>ラストの一連のドラマの感動ポイントをブンブン復活の一点に頼っていてレース要素はかなり重要扱いのはずなのに描写が全然ないという、あるべきパーツの欠落が目立ちましたね。
BBGは全体的に中途半端でしたね。
視聴者が理解できるほどの具体性は無く、「よく知らないけどそういうのがあるらしい」と他人事で済ませるにはメインストーリーで取り沙汰され過ぎていて、どっちつかずでした。
なぜこうなったのか実際の事情は私にはわかりませんが、印象としては「作る」要素や「◯◯屋」と同様にアイディア止まりで具体的な内容は考えなかったパターンなのかなと思っています。
>情緒的にはブンブンはいないと寂しくはありますが、大也が分身を失ったほどの喪失感とかは出せてなかったと思います。
終盤のブンブンの死を前提に考えると、物語全体でのブンブンの存在感は足りていないと思いますね。
たとえば「(実は大也の特許の一部はブンブンの技術によるもので)ブンブンの協力おかげで多くの子供を救えた!今度は俺がブンブンを助ける番だ!」みたいな大也にとってもブンブンが恩人であるとか、「地球だけでなく宇宙で悲鳴を上げている人も救う… それも爆上げだな!」みたいな別の活路の象徴としてブンブンが存在していればブンブンを失った大也の喪失感は出せたと思います。
「大也にとってのブンブンはどういう存在なのか」を充分に描けなかったことは実際のストーリー展開における主要な問題の一つだと思います。
>バディ要素はブンブンではなくブルーに割り当てられてたのかとも考えてみたのですが、裏切り表返り芸も何度もやられると萎えます。
作中でブンブンとどちらが大也の相棒感があるかと言えば射士郎の方でしょうね。
しかしストーリー的にはブンブンに相棒感がある方がわかりやすかったと思います。射士郎の方は大也への思いれを描かず射士郎のエピソードをブンブンに回し、最後の最後に「淡々としたビジネスライクな感じだった射士郎にも大也への強い思い入れがあった(だから今まで協力してきたし、本当に裏切ることもあり得ない)」という形にしてもお話は成立したと思います。
こういう「射士郎は利益のために大也に協力してきただけだったのか。スピンドーについた方が得だと思ったから裏切ったのか?」と思わせるような立ち位置にした方が、同じような自分の利益のために動く”悪い大人”である先生との対比もしやすかったでしょう。
これだと終盤以外の射士郎が冷徹で人気が出ないからやらなかったんでしょうけど、そういう論理でいくと実際の流れもこの仮定もどちらも「割が合わないことはやらない方が良い」って話になっちゃう気がします。
>個人的には理想論だとしても利益を得る=誰かが割りを食う理論への反論がほしかったところです。
そういう方向性の方が前半の戦隊らしい作風やキャラクター性とも合っていたと思います。
「他人から奪うだけではいずれ枯渇する」という資源的な考え方をあてはめれば、理想論でも持続可能性に現実味を持たせることもできたと思います。