『Gのレコンギスタ』 最終回まで見終わって:総合感想

2015年4月16日
遅くなりましたが、『Gのレコンギスタ』の全体感想を自分なりに書きたいと思います。
なかなか書けなかった理由は自分の思いをいまいち言語化できなかったからです。


【良かった点】

■アクション&人物描写
・この2点に関しては言うことなしでした。
機体の仕組みを活かした戦い方に、パイロットの性格を反映した動き。目線なども含めた人間味のある芝居。ここまでは富野アニメでは当たり前ですが、Gレコでは更にエフェクトなど現代技術も加わって更に素晴らしくなっていました。
アクションと演出に関しては、もう次元が違うと言ってもいいと思います。他の作品と比べること自体がナンセンスに思えます。

■キャラクター
・キャラは特に良かったです。
脇役含めてみんなキャラが立っていました。サラマンドラやガランデンの艦長など名前すらない登場人物まで、どんな人物だったかはっきり思い出せることはとてつもないことだと思います。こういう端役まで人格が感じられると、戦闘に緊迫感が生まれて作中内で重要性の低い戦いでも盛り上がれます。

・私のお気に入りのキャラクターは、ラライヤとケルベス中尉です。
二人とも作中屈指のリアリストであり、良い人でした。安定感があって、見ていてリラックスできました。この二人がいなかったら相当きつかったと思います。良い人過ぎて終盤に死ぬんじゃないかと心配していましたが、死ななくて良かったです。

■贅沢な機体の使い方
・GレコではGセルフのパックなどマイナーチェンジを除いても、26話の間に36種類もの機体が登場しました。
中にはやられ役どころか、ほぼ移動だけで終わった機体まで何体かいました。ものすごく贅沢な使い方です。Gレコの機体は、当初は全然キット化の予定がなかったことが良い方向に働きました。販促に縛られずに済むおかげで、無理して活躍したりさせないで済みました。

・スポンサーに期待されないことは本来なら悪いことなのですが、Gレコに関しては怪我の功名と言えそうです。キット化も放送終了後にだいぶ進むことになりましたし、最終的には最良の結果となりました。

・作中での戦闘の特徴は「使い捨て」のように感じました。
MA以外は内蔵武器がかなり少なく、出撃時の手持ち火器+マウントor格納した兵装を使用するのが基本でした。戦闘開始直後はお互いいろんな武器を使って戦うのですが、使い切ったり壊されたりでだんだん武器が減っていくことが多くありました。ファンネルも使い捨ての広範囲攻撃武器として使われていたのは驚きでした。
Gレコは複数の機体&勢力が入り乱れての戦闘が多かったのがここが面白かったです。ある敵と戦って倒したものの武器をだいぶ消耗し、直後に別の勢力の敵と遭遇して劣勢を強いられることも度々ありました。このおかげで同じ機体であっても戦いがマンネリ化しないで済み、かつ万全でない状態で戦うことでリアリティも生じていたと思います。


【合わなかった点】

■全体のストーリー
・最初から最後まで「生きる」「能動的に動く/考える」といった抽象的な人間の原動力にまつわる話だったように見えました。

・このテーマ自体は悪くないのですが、見ている間も見終わった後も物足りなさを感じました。この点についていろいろ考えてみたのですが、具体的に期待できるところがなかったことがネックだったように思えます。
作品の満足度は「作品の面白さ*期待」によって決まると私は考えています。Gレコはビジュアル面では毎回楽しかったのですが、ストーリーは方向性が見えず、どこに期待すれば良いのか掴めませんでした。

・物語自体も抽象的で具体的なゴールが見えなくて、登場人物の個人レベルでも実現できそうな目標を立てているキャラはいません。その上、話が相当詰め込まれていて時間経過の省略が頻繁にあったため、登場人物の気持ちについて行くことも困難でした。
主人公のベルリは思考の飛躍が特に顕著でした。6話でデレンセン大尉を殺害した後や16話で出生のことを聞かされた後など、悩んでいたかと思ったら場面が変われば気持ちが切り替わっていることが多く、今何を考えているのかわからないことがよくありました。
Gレコは主人公であっても「キャラクター=物語」とはならないので、ベルリのことがわからなくても支障はないのですが他に指標になるものもありませんでした。今どういう方向に物語が向かっているのかわからず、途方に暮れることもよくありました。

・こういうことを何度か繰り返しているうちに、自分で先のことを考えたり期待することを止めてしまったのだと思います。こうなると期待以上も期待外れもなくなって、ただ出されたものを食べるという状態になってしまいます。受動的になってしまうとあまり楽しめません。ここが私がGレコの満足度が高くない理由かなと思いました。


【総合感想】

・作品としては良いと思うのですが、根っこのところで合いませんでした。
ビジュアル面で毎回楽しみはあるのですが、私は視覚面での内容には重きを置かないので物足りなく感じてしまったからです。先の楽しみなしに2クールも関心を保ち続けることは厳しいです。その点で一番きつかったのは16~22話辺りでした。序盤はまだ先があるからと楽観視でき、終盤はこのままの流れで終わるのだろうなと見切りがついたので気楽でした。

・ストーリーは俯瞰的過ぎたことがエンターテイメントとしては問題だったかなと思っています。
登場人物の動きで情勢が動くわけでもなく、ドキュメンタリーのように登場人物に寄り添った視点でもなく、登場人物も世界情勢も離れたところから撮っているようでした。こういう形式だと視聴者に考えさせることを目的とした構成があるんですが、それにしては与えられる情報が少な過ぎたと思います。無編集の記録映像を見ているような感じで、果たしてそのシーンに意味があるのか、それともただ記録されたものを覗いているだけで意味なんてないのか、自分で考えても手応えが感じられませんでした。

・このとりとめのない感じは、ガンダムというより『ブレンパワード』に近いように思えました。
ブレンパワードは勇やジョナサンなど悩みを抱えた人物が中心の物語になっていましたが、Gレコはベルリたちの物語ではありませんでした。わかりやすい結末や登場人物の目に見える成長がない分、Gレコはよりわかりづらくなっていると思いました。

・作品全体としてはあまり好きにはなれませんでしたが、富野監督の腕はやっぱりすごいなと思いました。
商業的にも想定より売れたみたいですし、次の富野作品が見れると嬉しいです。



コメント

6 件のコメント :

  1. こーひーかっぷ2016年6月13日 9:25

    >>その上、話が相当詰め込まれていて時間経過の省略が頻繁にあったため、登場人物の気持ちについて行くことも困難でした。

    個人的には、一番のネックはここでした。時間経過を臭わせる暗転を随所随所に挿入する;服装や髪型をもう少し頻繁に変える(後者はノーマルスーツ着用という制約上ややこしいですが)、だけでも印象が大きく変わったのかな、と思いました。

    感情について行けないから、ストーリーもかなり置いてけぼりでした。初代プレステのサガフロ2と似たような現象だと感じましたが、あれはまだ「わかりやすいメインストーリー」を主軸においていたので、いままで目立たなかったキャラがいきなりとんでも発言をしたりしてもとりあえず無視することはできましたが。

    ちょっと残念。ただ世界観は繰り返し視聴に耐えうるほど作り込まれているので、ゲーム化に向いているのかなと思ったりもします。

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    1. 感情描写が欲しかったですね。
      まぁ、人物の話ではなく生き様の話なので仕方ないのでしょうが。苦悩や深慮が必要な状況なんて自分で”どうにかする”しかないというのはリアルだとは思います。

      あとは物語の上で一番わかりやすいアイーダに私が魅力を感じなかった点がネックだったのかもしれません。ポジション的には∀のディアナ様のような立ち位置だったはずです。

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  2. 管理人さんはZや∀を例として挙げておられていて、富野さんが手がけたガンダム作品は見られているようですが富野さん以外が手がけたガンダム作品はご覧になってないのでしょうか。

    またアーケードゲームのエクバ2でプレイ動画を見たりしてガンダム作品に興味がわいたのですが、もしよろしかったら管理人さんが好きなもしくはオススメするガンダム作品を教えていただきたいです。

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    1. 際銀狼さん、はじめまして。

      >富野さん以外が手がけたガンダム作品はご覧になってないのでしょうか。

      だいたい見たことがあります。ここ最近の作品と劇場版や漫画、ゲームなどの傍流までは見ていないものがいくつもありますが。

      >好きなもしくはオススメするガンダム作品を教えていただきたいです。

      ガンダムといって中身はバラバラなのでご自身が気になったものを見るのが一番良いと思います。
      一般常識として求められる”ガンダム”を手軽に見たいなら、初代の劇場版。
      富野監督の作風を手軽に知りたいならF91。
      もっと今風なのが見たいのなら00(ダブルオー)かユニコーンあたりでしょうか。
      個人的には∀ガンダムが好きですが初心者にオススメする作品ではありません。


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  3. 返信ありがとうございます。自分としては初代とOOに興味がわいたのでそのあたりから見てみようと思います。

    あと∀が初心者にはお勧めできないとおっしゃるのはやはり過去作を見ていないとストーリーが理解できないからだとかそういう理由でしょうか?(調べてみたら∀がガンダムの総決算的な作品と表記されていたりしていたので)

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    1. いえ、話は全然過去作とは関係ありません。その点では心配はいりません。
      初心者向けでないというのは、「よくあるガンダム」とはだいぶ異なるからです。ガンダムというと戦争ものであり、殺伐としたストーリーであることが多いですが∀はそういった側面は薄めです。どちらかというと「過酷な環境の中で前進するバイタリティ」といった類の側面のほうが強いと思います。
      際銀狼さんの最初のコメントの趣旨からすると”ガンダムというシリーズ”に漠然と興味を持ったというお話でしたので、ガンダムとしては色合いの異なる∀は積極的に勧めるべきではないだろうと私が判断しただけです。∀に興味を持たれたならそれもまた良いと思います。

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