『キラキラプリキュアアラモード』 1~7話:感想

2017年3月23日
・『キラキラプリキュアアラモード』を7話まで見た時点での感想です。
3話か5人全員出終わったあたりで書こうと思っていたのですが、いまいち考えがまとまらないので7話まで伸びてしまいました。まだまとまっていないのですが、キリがないので第一印象を書いておきます。


【第一印象】

・悪くないけど良くもない
・主軸が見えない。
・コンセプトを作品として落とし込めていない
・バトルは今のところ成果なし


【ストーリー】

■主軸が見えない
・「キラプリとは○○の物語である」の丸の中に入るキーワードが今ひとつ思い浮かびません。思い当たる要素を当てはめようとしても、今ひとつしっくり来るものがありません。

・基本コンセプトである「お菓子作り」は明らかに浮いています。販促ノルマで無理やりやっている印象です。それもノルマとしてすら扱いかねている様子です。
1話ではお菓子作りの過程を実写映像を交えつつ映したかと思えば、それ以降はアニメ絵の静止画と動画で描いたり、途中経過をだいぶ飛ばしたり、回によってまちまちでした。今のところ、「作品の登場人物がお菓子を作る情景を描く」つもりなのか、「視聴者がお菓子作りをするときに参考になるような情報量を盛り込む」つもりなのか、それすらもはっきりしません。

・では登場人物がお菓子を作ることに意義があるのかというとこれも感じられません。菓子を作っている間はキャラもドラマも止まっていて、登場人物の行動やドラマとして成立していません。むしろお菓子作りのせいで他の展開ができず、キャラの掘り下げが阻害されているように感じます。

・基本コンセプトがダメならキャラだ!、というのが定番ですがこれも主軸と呼べるほどのものは見当たりません。
7話の時点では、キャラの好感度は全体的に低めです。嫌いとかではなく、描写が少なく淡白で魅力が伝わってこないのです。

・主人公のいちかを筆頭に状況、すなわちその回の内容に合わせて場当たり的に動くことが多くて主体性が薄いです。1話からずっと主体的に動くことが少ないため、何が好きでどんなことがしたいのか、各キャラの自己主張が伝わってきません。今のところ判断材料が少なく、良し悪しどころか個人的な趣味に合う合わないすら何とも言えません。

・強いて言えば、ゆかりとあきらの高校生組のほうが自立している分、作中でのスタンスがはっきりしていて魅力的です。しかし高校生組は中学生組の3人をそっと見守る傾向があるようなので、高校生組が物語の主軸として働くことを期待するのは難しそうです。

・悪役も定まっていないことも悪い方向に働いていると思います。
キラプリでは今のところ悪の組織や毎回出て来る幹部がいません。使い捨ての怪人にあたる敵(幹部?)が出てきては消滅するわけでもなくバイバイキーンとふっとばされて終わっています。
ストーリーの方向が曖昧な状況で「とりあえずこいつらを倒せばOK」というシンプルな目標に目を向けて逃避することもできません。

・現状では各要素、ノルマやコンセプトを並べるのが精一杯で作品として一つにまとまっていないように感じます。
一言で言えば”未完成”だと思います。これから良くなるかもしれないという期待も、スタートがこれではこの先も…という不安も両方あります。

■キャラのモチベーションは良い
・唯一明確に良いなと思ったことは、変身するきっかけです。
キラプリのプリキュアが変身アイテムを手にするきっかけは基本的に
「個人的な事情でお菓子を作る→そのお菓子を狙って敵が襲ってくる→怪人『お菓子を渡せ』  プリキュア候補『これだけは絶対に渡さない!』→お菓子が変身アイテムに変化して変身」
という流れです。

・個人的な思い入れをベースにして動くのは、「人々を守るために!」なんて立派な姿勢より共感しやすくて良いと思います。
妖精や他のプリキュア候補者を守るときも、自分も同じような思い入れがあるから他人でも守ろうとするのは頷けます。

■どうやって戦わせたらいいのか
・変身した理由が個人的な思い入れであることは良いと思う反面、ストーリー展開上ネックになっていると感じる部分もあります。
今のところ各回の基本的な流れは、敵怪人が毎回街を荒らしてはお菓子を奪い、主人公たちの作ったお菓子を狙ってきたところを撃退する流れになっています。正義の味方と呼ぶには積極性が薄く、正当防衛という印象です。

・しかし、じゃあ主人公たちを能動的に敵と戦わせるにはどんな理由があるかというと難しいです。
街で奪われるお菓子はケーキ屋さんの店頭に並んだケーキからスーパーやコンビニで売っている工場製の既製品まで含まれます。そういう商品にまで作った人の思い入れを感じるのは不自然だと思います。こうなると正義感を理由にするしかなくなってきます。
ですがそれではキラプリの美点が損なわれるでしょう。正義感に頼らずにキラプリらしさを残したままヒーローをやる方法があるのでしょうか? 自分の中でさえ解答が見つかりません。


【アクション】

■キラプリのバトルコンセプト
・キラプリは「肉弾戦は封印」というお題目を掲げています。
プリキュア側はパンチやキックを使わず、基本的にクリームを飛ばしてぶつけるなど飛び道具主体の戦い方をしています。また、7話現在ではバンク必殺技もありません。

・実際のところ良いか悪いかというと微妙です。
これまでのやり方を捨てるというのは有りだと思うのですが、その後に築き上げるものが見当たりません。バトルのメリハリが弱いことが深刻です。

・必殺技を無くしたところは特に弊害がわかりやすいです。
さっきまで繰り出していた攻撃との違いが今ひとつ伝わってこない微妙な技で敵が倒されてしまいます。雰囲気が変わって「お、ここから逆転かな?」と思ったら次の攻撃で一撃で死んでしまい、不完全燃焼な感じを味わうことがよくあります。どこで決着がつくのかわかりづらく、気持ちの持っていき方が難しいです。

・飛び道具主体であることも問題を抱えています。
キラプリに限らずバトルものでよくあることなのですが、飛び道具だけだと画面が単調になりがちです。攻撃する側は立ち止まり、敵が当たるか避けるかだけで画面が固定的になりがちで飛び道具自体も直線的で躍動感が少ないです。
飛び道具を使うならそういうところになおさら気を使わないといけないと思います。マクロスでお馴染みの板野サーカスと呼ばれるミサイルのはちゃめちゃな軌道だってそういう欠点を補うために作られたものだと思います。

・格闘戦を使わない方針自体は問題ないのですが実装に問題があるのが現状だと思います。
格闘戦の代わりに飛び道具主体で戦うというと、スプラッシュスターも似た方向性でしたがキラプリはスプラッシュスターよりもパッとしません。この手の挑戦にはありがちな問題で躓いているので実験作と呼ぶのも難しいです。

■基本が怪しい
・個人的にはBGMの使い方の下手さが気になっています。トドメの一撃が物足りなく感じるのはBGMのメリハリがないせいかと疑っています。
1~5はキャラソンが使われていたので挿入歌の曲調が悪いのかとも思いましたがそういうわけでもなさそうです。普通のBGMだった7話もあまり変わりませんでした。バンク必殺技を無くすのはそれはそれで有りだと思いますが、決め技用のBGMまで無くすことはないと思います。


【個人的感想】

■キャラクターの造形はわりと好き
・変身する理由のところでも述べましたが、キャラクターの方向性には好感を持っています。

・主人公のいちかが「お母さんのことが好きだけど、仕事で家にいないことが多いことに関してはやりきれなさを感じている」というところから始まっているところは面白いと思います。

・黄色のひまりも正論好きなコミュ障で、キッズ向け作品の主要キャラとしては珍しいキャラクターです。
他の3人もロックスターを目指す少女に、天才過ぎて全てに飽きた妖艶な美女、病気の妹が心配な優しい姉と個性豊かです。この5人が集まるとどんなことが起きるのかという点には興味を惹かれます。

・しかし7話現在では5人の相互作用といったものは何も感じていません。それどころか5人が何を目的に集まっているのかですら曖昧なように感じています。
いちかとひまりは元々お菓子作りに興味があるし友達になったのでわかります。ゆかりもいちかを観察して楽しんでいるのでわかります。
一方、あおいは元々お菓子作りには縁がありません。「お菓子作りに興味を持った」という線が思い浮かびますが、そう考えるにはあおいがお菓子作りに積極的に参加していないことと矛盾します。前述のとおり、ヒーロー活動には誰もやる気を示していないのでその線も考えにくいです。
個性的なメンバーが魅力の一方、バラバラなメンバーをどこでどうつなげるのか筋道が見えない点が不安です。

■好きなキャラ
・一番気になっているのは、赤プリキュアの剣城あきらです。宝塚系というだけでプリキュアでは初の試みですし、単純に好みなので楽しみです。
個人的には「宝塚系だけど本人はその気はない」という点が好きです。イケメンムーブに見えるものはあきら自身の優しさと性格の良さに由来するもので、かっこつけるためにやってるわけではなくそれが自然体であるところが爽やかで良いです。

・妖精たちも思ったよりも好印象でした。
ペコリンが意外と精神年齢高めだったことには驚きました。1話で現実的な妥協をしようとする主人公に「そんなことをしたら後悔するぞ。もう一度よく考えてみるんだ!(意訳)」と言ったときにはびっくりしました。伊達に落ち武者みたいな髪型してないですね。

・長老も普段なら「そんなこと子供に頼むな、ダメ大人!」と言いたくねるポジションなんですが、1話冒頭で体を張った結果として地縛霊みたいになってるから許せちゃいます。今のところ、プリキュアを見守るだけで要求やお願いは一切してないことも好印象です。

■デザイン
・プリキュアのデザインは個性化しつつも安定感があります。プリキュアでも動物モチーフは安定していますね。

・中でも好きなのは赤プリキュアのキュアショコラです。
凛々しさで美しさが引き立っています。もふもふした尻尾と耳毛も異なる可愛さでまた良いです。 変身シーンは板チョコのエフェクトがメカメカしく、いろんな味わいがあるところが好きです。


・デザインに関しては、変身アイテムのお菓子のデザインはパッと見で気に入りました。従来の物はまぁ子供向けという感じで興味を持てませんでしたが、キラプリのやつはデザインや質感が良くてちょっと欲しくなりました。

■ボリューム不足
・キラプリで今一番欲しいのはボリュームではないかと思います。段取りが悪くて内容が薄くなるため今は良くも悪くも底が見えません。お菓子のイメージとは裏腹にとても薄味です。

・キラプリはもっとキャラの描写やドラマを詰め込む余地があると思います。
お菓子作りに取られる時間を除いても内容が薄く、無駄になっていると感じることがしばしばあります。ストーリーや心情描写を入れたくないからだとしても、楽しい光景やコミカルな描写を入れられるはずです。シリアスでもコミカルでもどんどん打ち出して作品のポテンシャルを示してほしいです。

コメント

4 件のコメント :

  1.  序盤プリキュアの総評お疲れ様です。事前の情報で今年は肉弾戦が無くなると知り、大丈夫かと思いましたが、1クール前ですが未だに不安です。見ていてお菓子作りの要素を混ぜているせいか、テンポが悪いように見えます。また従来の人としての成長を見れるのか心配です。これはこの先の展開に期待するしかありません。これはいつもの事なので番組が終わる頃に答え合わせします。

     キャラクターは追加メンバー無しで5人はスマプリ以来ですが、それぞれに個性があり魅力があります。私としては、立神あおいと剣城あきらですね。この二人はこの先面白い変化を見せてくれるのではないかと思います。まぁ他の面々もどうなっていくのかも楽しみの一つになります。

     戦闘シーンについて肉弾戦が無くなり(3話でジェラートが氷を手にまとって殴っていたような)一抹の不安を感じましたが、的中してしまいました。動きがもっさりとしてしまい。従来の戦闘におけるスピード感が無くなったのは否めません。もしかしたら視聴者からクレームが来て途中から解禁されてしまうのかも。やるのなら最後までやってもらわないと、簡単に風呂敷を畳んでしまうのはいけないと思います。

     全体としては、まだ完全な判断ができません。というよりゴール地点がよく解らないので、大きな期待を持つより、今を楽しむようにします。

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    1. >見ていてお菓子作りの要素を混ぜているせいか、テンポが悪いように見えます。また従来の人としての成長を見れるのか心配です。

      どちらも今のところ「できていない」ので何とも言えませんね。
      そのうち改善される可能性もありますし、このまま終わる可能性もあります(前作のまほプリがそうでした)。

      >私としては、立神あおいと剣城あきらですね。この二人はこの先面白い変化を見せてくれるのではないかと思います。

      私もキャラクターとしてはその二人です。
      あおいに関しては3話の時点では積極的に動いていて魅力的だったものの、5人のうちの1人になってから存在感が希薄になっていることが気がかりです。お菓子作りへのスタンスが不透明で他の4人との個人的な付き合いも怪しく、何しに厨房へ来ているのかすらあやふやな感じがしています。

      >もしかしたら視聴者からクレームが来て途中から解禁されてしまうのかも。

      好みの問題とかいう以前に、見るからに質がよろしくないのでバトルの路線変更はあり得ると思います。できれば諦めて元の路線に戻すより、今の路線をブラッシュアップする方向に行ってほしいと思っています。

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    2.  最後に書き忘れていたことです。今回のプリキュアって2017年版『ミスター味っ子』でしょうか?

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    3. >今回のプリキュアって2017年版『ミスター味っ子』でしょうか?

      すみません。味っ子は見たことがないので私には意味するところがわかりません。

      8話の内容と次回予告を見る限りでは、さしあたってはお菓子を使ったお悩み解決をやっていくように見えました。

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