『宇宙戦隊キュウレンジャー』 第4話 「夢みるアンドロイド」:感想

2017年3月5日

【ストーリー】

■ラッキーの苛烈な思想
・これまでラッキーの言動に距離感を感じると述べてきましたが、どうやらそれで正解のようです。
「夢を失ったまま生きるなんて死んでるのと同じ」というラッキーの思想が明かされたことで一つ距離感の原因がわかりました。私にとってはこの思想は間違ってはいないけれど、苛烈で怖い思想です。

・何が怖いかというと、言外に「夢を失うくらいなら戦って死ね」という思想を含んでいるように聞こえたことです。生きてればチャンスが来るとかそういう抽象的な夢は全否定しています。
そんなの私には無理です。死んでしまいます。小市民目線なのでストイックでかっこいいというより苛烈さのほうを強く感じてしまいます。

・ラッキーという人物の発想としては何も問題はないと思います。
なにせ1話の時点でその思想を自分で真っ先に実行しているから何も否定できません。実際ラッキーも死にかけて九死に一生を得ていましたからね。俺ができたのだからお前もやれというのは一理有ります。敵に対しても「お前の運を試してやる!」と言っていますしね。言動は一貫していて良いと思います。一貫しすぎて私のハートも串刺しにされていますが。

・「運試しだ!」が口癖なこともあって、私にとってラッキーは今に全てを見出す刹那的思考の人物という印象になってきました。
今回「宇宙の果てを目指す夢はこの前までの夢。今はキュウレンジャーとして世界を救うことが夢」と言っていたのも、今を最重視するこの思考の表れだったのではないかと思えてきました。

・これでラッキーが悪役でライバルだったら特に違和感ないのですが、味方のレッドなんですよね…
今回もスパーダやガルと反目し合っていましたがどこで折り合いをつけるのでしょうね。個人的には完全にラッキーに心酔するのは止めてほしいです。

■真剣味に欠けるラプターの描写
・ラッキーの話を先にしましたが、今回のメインキャラは初変身のラプターでした。しかしラプターの話はいまいちノレませんでした。戦うまでの流れの根本的なところで疑問を感じたからです。それが何かというと、ラプターに真剣味が感じられなかったことです。

・ラプター参戦の話のきっかけになった今回の第一戦でのラプターのポジションは私には”巻き込まれた”だけに見えました。本気でラプターが戦いたいと思っているなら武器を手にして戦う方法も考えてくるはずだと思います。この点から真剣味が感じられず、単にヒーローに憧れているだけで殺し合いをする覚悟はないのではないかと思いました。

・戦いに夢見ている相手を殺し合いに連れて行くことが正しいのかという点に関しては疑問が有ります。
相手を殺し自分も殺される覚悟があるのなら本人が望んでいるのだから連れて行こうという話も有りだと思いますが、ラプターにそこまでの覚悟があるのでしょうか。個人的にはスパーダやガルの言っていた「死んだら取り返しがつかないから止めたほうが良い」という意見のほうに賛同しました。

・それと今回ラッキーの思想と合わせて語るなら、ラプターの相手はスパーダよりも命のやり取りに敏感なガルが認める流れにするほうが適任ではないかとも思いました。
ガルの一族自体が戦って全滅したわけですから、ガルが認めないと正当性に決着がつかないと思います。

■背景でも話は進む
・バトル後半でベルトのキュータマ転送機能が追加されました。
最初見たときは気づかなかったのですが、二回目でラプターが桃缶を買って帰還したときにバランスが改造作業をやっていたことに気づきました。

・この背景での描写は良かったです。バランスたちが居残りに決まったときに司令官が言っていた装備の調整作業を実際に本編内で実行していました。
ルーレットは合理的だが面白みに欠ける設定だと思いましたが、こういう裏方作業で余剰メンバーを活かすなら控えになったメンバーの組み合わせにも意味が出てきて面白いかもしれません。キュウレンジャーのストーリー面で初めて手放しに褒められる描写でした。


【アクション】

■杉原監督
・今回はワシピンクのCGの使い方が良かったです。
実写背景の中でCGで空中戦を描ていて見応えがありました。CGだけでやろうとすると作業量の関係でカメラが全然動かなくなり、絵面が単調になりがちです。実写のカメラワークとCGの非日常感を上手く組み合わせていて面白いものに仕上がっていました。

・実写との組み合わせは迫力があるし、手軽で継続性がありそうで期待が持てました。
同じ印象を抱いたジュウオウジャーの終盤を担当したのも杉原監督でした。CGや巨大戦に関して杉原監督をは信用しても良いかもしれないと思いました。
生身アクションの加藤監督にCGの杉原監督、良い感じのバランスになってきましたね。

・巨大戦の舞い散る羽も良かったです。
手前に舞う小さい羽と奥で切り結ぶ巨大ロボの対比は遠近感が効いていてロボのスケール感がよく出ていました。


次回はもうオレンジが仲間入りしそうです。
敵側についたわりにまだ何もしてない印象なので肩透かしを通り越してずっこけそうです。今のところ私の心境では「それなら前回のうちに仲間に入っておけよ」という苛立ちのほうが先立っています。次回でこの印象は変わるのでしょうか?

コメント

12 件のコメント :

  1. ラッキーはなかなかタチが悪いですね。幸運のせいで、「できない」という発想自体が欠落しているように見えました。
    根拠もほとんどなく周りを焚き付けて、責任は取らない。そんな印象です。今のところはラッキーの幸運が周りにも及んでいるので、結果的にそれが責任を果たしているみたいですが。

    このままだと他のメンバーも全員ラッキーの幸運に、おんぶに抱っこになってしまいそう(実際は違ったとしても、そう見えてしまいそう)で怖いです。
    何らかのかたちでラッキーの幸運がなくなり、それぞれが自立する回があればいいのですが……。

    返信削除
    返信
    1. 個人的には「できるできない」ではなく、「やるか死ぬか」がラッキーの思想なのではないかと思いました。
      できないとかではなく、「やってみて失敗したら死ぬだけだろ」と平然と言うタイプに見えます。幸運というより、死んだら死ぬ運命、死ななかったらここでは死なない運命と捉える運命論者のように私には見えます。

      >このままだと他のメンバーも全員ラッキーの幸運に、おんぶに抱っこになってしまいそう(実際は違ったとしても、そう見えてしまいそう)で怖いです。

      ラッキー中心に感化されると、行動が一か八かのギャンブルになってしまうので周りがまともさを保ってくれると良いですね。
      今の流れからするとメンバーのラッキー化が既定路線に見えますが…

      削除
  2. >真剣味に欠けるラプターの描写

    最初のうちは気になりませんでしたが、支配されてる地球人側の反応見たら結果的にこうなっちゃいましたね。基本的に明るいカラーで行きたいのはわかりますが、それにしては地球人側の反応が妙に生々しい感じだったのがいけなかったですね。結果ちぐはぐな感じになってしまったので、支配される側の反応をソフトにするか、ラプターに真剣みを持たすかどちらかに寄せてほしかったですね。こういう匙加減て、なかなか難しい。

    返信削除
    返信
    1. >それにしては地球人側の反応が妙に生々しい感じだったのがいけなかったですね。

      そうですね。それもけっこう大きいと思います。
      「失敗したらどうする?」「怪我したらどうする?」とかそんな程度だったらラッキーのイケイケ路線でも有りと思えますが、命がかかってる話で断定するのは共感しかねます。わりと危機的状況にある世界観とストーリーのノリが噛み合っていないと感じる部分があります。

      削除
  3. 前回までより地に足が着いたキャラ描写になってきた感じですが、まだ物語に危うさが抜けてないと思います。
    他の方がおっしゃるように、背景の重さを主人公達のノリの軽さで中和しようという狙いは分かるんですが、肝心の軽ノリがどうにも安心して観れない…今回は(今回から?)地球が舞台になっていたので、遠い未来という設定であっても(この設定も本編中に明言されないのが残念ですが)どうしても視聴者としては地球人側の立場を想定して観てしまいます。そうなると余計に全員外様のキュウレンジャーに対して「なんだコイツら良い気になって」感が拭えないですし、波風を立てる展開でキュウレンジャー側を応援する気になりづらいですね。
    メンバー内でも、唯一世界観に即した過去が明示されていて共感しやすいガルが一番目立たず発言の機会もないのがモヤモヤします。一番発言権のあるラッキーはいい加減とんちの効いた回答だけでなく言動の根拠になるバックボーンを明かして、安心感を出してほしいです。
    ヒーロー物で視聴者との距離を縮めることはそれなりに重要な手法だと思うのでここのフォローが欲しいです。

    返信削除
    返信
    1. >背景の重さを主人公達のノリの軽さで中和しようという狙いは分かるんですが、肝心の軽ノリがどうにも安心して観れない…

      設定と実際のストーリーの温度差が気になりますね。
      口癖多用やキュータマからは軽めのノリを想像するのに、現状繰り広げられているストーリーは命を賭けることを厭わないラッキーの強烈な思想が中心となっています。未だにどっちのノリが主流になるのか読めません。

      >メンバー内でも、唯一世界観に即した過去が明示されていて共感しやすいガルが一番目立たず発言の機会もないのがモヤモヤします。

      1話での隠遁生活はどこへやら、って感じですよね。
      立ち直るのは良いことですが、ラプター参戦へのリアクションも軽めだったのは違和感がありました。

      >ヒーロー物で視聴者との距離を縮めることはそれなりに重要な手法だと思うのでここのフォローが欲しいです。

      距離感を感じている身としては欲しい展開ですね。
      従来のフォーマットだと、一段落したら各メンバーの個人回を挟むのが定番ですがラッキーとどちらを優先するのでしょう。

      削除
  4. ラッキーに対して相変わらず空気が読めないと言ったのはナイスと思いましたが、地球の人々にキレたあれで一気に興醒めです。空気が読めなくてもあくまで正義のヒーロー側なのに酷すぎてね。「子供だけ犠牲にしてお前らなんとも思わねーのか」とか「安心しろ!俺たちは救世主だ」とかいつもの「おっしゃ、ラッキー!」な文句に変えたらテーマと関係なくなりますもんね。
    あのシーンはカットした方が良かったのではと思いましたよ。
    今回、全くの予想外で、スパーダがキュウレンジャーで一番好きなキャラになりましたよ。
    今の時点で言うのもあれですが、個人的にラッキーのキャラは脚本の…つまりストーリー展開の化身ですが本当に訳わかんないキャラです。
    上から目線のしったか、すぐころころ目標を変える(これ、あっさり夢を変えたお前がラプターに言うんじゃねーよと)、他人の意見をいきなり全否定してろくな解答もしない、空気が読めないではなく只の無礼、適当とか個人的にこれはもう完全に嫌な野郎な印象しかないですよ(笑)
    いくらストーリー展開の化身といえど、幸運への熱狂的な信者で極度のポジティブ思考で尚且つ幸運が味方しているという快活なキャラで十分なのに、これじゃあ宗教にどっぷりハマって信仰を振り回して他人にところ構わず色々過度に介入してくる間違った意識高い系のティーンまんまじゃねーか!と。
    この先、キャラ掘り下げ回で、不幸な身の上だったり過去のトラウマか何かから幸運に強い執着を持つようになった、とかあったらなぁ…(笑)

    返信削除
    返信
    1. >今の時点で言うのもあれですが、個人的にラッキーのキャラは脚本の…つまりストーリー展開の化身ですが本当に訳わかんないキャラです。

      どういう路線なんでしょうね?
      独特の俺様理論で引っ張っていくタイプのように見えますが、コンセプトの一つである多人数制と相性が悪いのでそれも疑問です。

      >この先、キャラ掘り下げ回で、不幸な身の上だったり過去のトラウマか何かから幸運に強い執着を持つようになった、とかあったらなぁ…(笑)

      どういうものかはわかりませんが、何かあるだろうと思っています。
      これまで登場メンバーの行動理念も、一族を殺されたガルや一族の生態に疑問を感じたナーガ、戦うために作られたチャンプなど、ほとんどが出自に関係したものですので。ラッキーに関しても何かあるほうが自然だと思います。
      逆にラッキーには背景を持たせないことでメンバー内での特別化を強める可能性もあり得ますが。

      削除
  5. 地球到達回、すこーしゴーカイジャーを意識してる回なんでしょうね。
    最初から救世主名乗ってるので、どんな風に盛り上げていくのかが気になるところ。
    アンバランスなシナリオですが、ラッキーの違和感がうまく昇華されて後半に活きてくるといいですね。
    刹那的思考の人物という印象は同感で、ラッキーの説得力というか魅力がまだわかりません。
    なんで幸運にこだわる事にしたんでしょうね?挑戦的な課題だなーと思います。
    ソシャゲーのガチャが流行っているからかな。去年は程よくマインクラフトを取り入れてましたね。
    才能でもなく、努力でもなく、夢を叶えるのは運?
    深いな〜。

    返信削除
    返信
    1. >地球到達回、すこーしゴーカイジャーを意識してる回なんでしょうね。

      地球到着やカレーはゴーカイジャーと共通項でしたね。
      ただ、個人的にはカレーは脚本の意向なのか怪しいと思っています。撮影側が勝手に入れたか、プロデューサーや監督の意向を汲んで脚本に入れただけではないかと疑っています。

      >最初から救世主名乗ってるので、どんな風に盛り上げていくのかが気になるところ。

      全くの勘ですが、私は大した意味はないのではないかと考えています。
      「九人の救世主」という作品のキーフレーズを意識しただけでストーリーにまで落とし込む気があるのか疑問に感じる部分があります。

      >なんで幸運にこだわる事にしたんでしょうね?挑戦的な課題だなーと思います。
      ソシャゲーのガチャが流行っているからかな。

      ガチャですか。ニチアサは流行り物が好きですからそういう可能性もあるかもしれませんね。
      今のところ幸運に関わりそうなものは、ルーレットくらいしか思いつきません。

      削除
  6. ラプターはリベリオン製のアンドロイドでおそらく他のキュウレンジャーよりも長くジャークマターの非道を目の当たりにしていたと思うのですが、そんな描写は特になく「私も(かっこよく)戦いたい!」に終始していたのは怖かったです。それこそプログラムおかしいんじゃないかと。ラッキーも「死んでるのと同じ」なんて言わずに「それでいいのかよ」くらいにとどめておけばいいのに、なんでわざわざ斜め上を行こうとするのかが分かりませんでした。ラプターとスパーダを絡ませたのも「そろそろスパーダも掘り下げないと」という事情が透けて見えるようで必然性が感じられませんでした。
    ただアクションは素晴らしいですね。前半後半ロボ戦どれにも見どころがあって楽しいです。なんとかここだけは保ってほしいです。

    返信削除
    返信
    1. >ラプターはリベリオン製のアンドロイドでおそらく他のキュウレンジャーよりも長くジャークマターの非道を目の当たりにしていたと思うのですが、そんな描写は特になく「私も(かっこよく)戦いたい!」に終始していたのは怖かったです。

      ここは真面目に考え出すと悪い考えばかり浮かんできますね。
      好意的に解釈するなら「あの世界ではジャアクマターに支配されていることが当たり前。救う側も可哀相とかできるだけ早く助けないという考えが浮かばなくなるほど当たり前になっている」といったところでしょうか。

      >なんでわざわざ斜め上を行こうとするのかが分かりませんでした。

      ラッキーのキャラ造形の攻めどころはまだよくわかりませんね。今のところ驚くような方向に突き進んでいます。

      >なんとかここだけは保ってほしいです。

      アクションは心配要らないだろうと私は思っています。
      ゴセイジャー以来5年以上もずっと右肩上がりだと思っているので、特に衰えを感じていない現状では不安を全く感じません。
      アクション単独ではなく、前後の流れも含めたバトルとなるとストーリーが影響するので何とも言えませんが。

      削除

 コメントは承認後に表示されます。
*過度に攻撃的な言葉や表現が含まれている場合、承認されない場合がございます。節度と良識を保った発言をお願いいたします。