『Go!プリンセスプリキュア』最終回まで見終わって:総合感想

2016年2月9日
『Go!プリンセスプリキュア』を最終回まで見終わったので感想を書きたいと思います。





【全体感想】

・始めは不安に思っていました。
波乱に満ちたハチャプリの直後で、かつメインモチーフがお姫様やドレスというコテコテの少女趣味だったため、私がついて行けるのだろうかと不安に思いながらのスタートでした。
しかし始まってみればむしろ私向きでした。登場人物は地に足の着いたキャラばかりで、主人公のはるかの夢である”花のプリンセスになること”も敵からも周りの人からも具体性のない曖昧な夢として扱われていて安心できました。
プリキュアはフォーマットが安定していて各話単位だと書くことが少なめです。そういう理由で各話感想を書いていないのですが、プリプリに関しては各話感想の記事を書いておけば良かったと少し後悔しています。

■手堅い中の意外性
・1クール目は手堅い印象でした。
プリキュアになる3人がなぜ戦うのか、どんな夢を持ち、どんな生き方をしているのか。3人の交流を通して堅実に積み重ねていました。前2作が比較的フォーマットを外していたのでプリプリは無難な路線で行くのかと思いました。

・そんな手堅い中にも意外性を盛り込んであるところが面白かったです。
特に3人目の黄色のプリキュアである天ノ川きららはとてもユニークに感じました。プリキュアになったかと思ったら「モデルの仕事が忙しいからプリキュアなんてやってる暇がない」と辞退する流れはびっくりしました。それもただの奇をてらった展開で終わらせず、その後に「なぜきららは辞退したのか、そしてなぜ考えを変えてプリキュアとして戦うことにしたのか」と続けて、キャラの掘り下げにつなげた点が何より驚きでした。

・驚いた点といえばカナタもそうでした。
今回のイケメン枠で亡国の王子様で主人公の憧れの人、という絵に描いたような白馬の王子様です。私の場合だとこういうキャラはいけ好かないやつと思うことが多いのですが、カナタは違いました。かっこよさで言えばプリキュア以上に思えるほどの好青年で、序盤で一番好きなキャラはカナタでした。

・大きな違いはまず謝罪と感謝から始まった点でした。
プリキュアの3人に初めて顔を合わせたときに「戦いに巻き込んでしまって申し訳ない」と謝ってくれました。従来のプリキュアのイケメンや妖精は「プリキュアになったんだから助けてくれるよね?」と人の好意につけこんでくるような連中ばかりだったので真心を感じる態度にはインパクトがありました。誠実な態度以外にも敵地で単身潜入工作を続けたり、雑魚程度なら一人で倒せたり、身を挺してプリキュアを庇ったり、行動力も実力もある青年でまさにイケメンでした。こういう相手だと「こんな良い人を見捨てるわけにはいかないな」と助けたくなります。
ハチャプリの誠司もなかなかの好青年でしたがストーリー上では蚊帳の外ですっきりしないところがありました。その点、カナタはイケメンなところも含めてしっかりストーリーに組み込んであって、年々確実にイケメンの扱いが上手くなってるなぁと感心しました。

■巧みな構成
・作品として最も印象に残ったことは、お話の完成度の高さでした。
驚くことに中だるみがありませんでした。一年もののキッズアニメというと、たいてい3クール目が鬼門です。最強フォームが出てきて販促をしないといけない。でもクライマックスには早いから話を詰めるわけにはいかない。かといってキャラの新たな一面を掘り下げるには時期が遅い。こんな具合に何をやるにも中途半端で間に合わせみたいな内容になってしまうことが普通です。3クール目なのにそれまでどおり、メリハリを付けながらしっかりと話を進めていったことに驚かされました。

・話の構成で特に上手いと感じたのは、2クール目の終わり頃に途中加入した4人目のプリキュアのトワの掘り下げでした。
途中参加のメンバーというと、始めからいるメンバーとの距離感が埋まらずに浮いてしまうか、逆にメインは主人公と追加戦士という形になってしまい初期メンバーが空気になってしまうことが少なくありません。また話が追加戦士の掘り下げに集中するため他のキャラが疎かになったり、メインストーリーが進まなくなりテンポが悪くなることも珍しくありません。その点でプリプリは上手くやっていました。

・1話につき「追加戦士のトワ+初期メンバーの一人」のペアにすることでこの問題を解消していました。新しく登場したキャラの掘り下げとこれまでに描いてきたキャラの変化と成長を一度にやる手法は、シンプルだけど上手いやり方だと感心しました。妖精や敵幹部の話も入れてあり、キャラにかけた話数は特別多くないのに人物描写が濃厚に感じるのはこういう挟み方が上手いからなんだろうなと、総評を書くために振り返っている中でしみじみと思いました。

・全体の構成としては、
1クール目で、キャラの基礎固め。
2クール目で、新キャラの基礎固めと初期メンバーの成長描写
3クール目で、心境や状況の変化
4クール目で、苦境や挫折からの夢への大きな前進
と、起承転結に忠実な構成になっています。起承転結なんて初歩の初歩の話ですが、実際に出来上がった作品を見てみるとそれがどれだけ重要であり、実際に実行することが難しいのかがよくわかりました。確かに考えてみれば前半のほうが玩具のノルマが忙しく、3クール目頃には商品がだいたい出揃っているので2クールまでは安定させ、3クール目から話の起伏を大きくするほうがフォーマットに合っていますね。

■1話ごとの面白さ
・お話全体だけでなく一つ一つの話も面白かったです。中でもアクションの果たした役割は大きかったと思います。例年以上の素晴らしさで話を盛り上げてくれました。

攻撃時のエフェクトはプリプリの発明だと思います。
パンチやキックを繰り出すときや敵に攻撃が当たったときに固有のエフェクトが発生します。フローラなら花吹雪、マーメイドなら泡とキャラごとに違いがあり、画面を華やかにしつつ1話1話の差別化に貢献していました。実質的には血しぶきなんですが、爽快感はそのままにプリンセスらしい爽やかでエレガントな形に変えてある点に感心しました。プリキュアの敵の演出でよくある「登場すると周りが暗くなる」「植物が枯れる」といった演出もプリキュア側の華やかなエフェクトと対になっていて演出効果として機能している回もありました。
アクション面では派手で見栄えが良く、演出としてもわかりやすく機能する良い演出でした。

・個人的に強く印象に残ったのは、プリンセスロッドと浄化できない通常必殺技でした。
ロッドは11話で手に入れる武器で、ドキプリのラブハートアローやスイプリのベルティエのような追加武器です。直接殴ったりはせず通常必殺技を発動するための道具なのですが、演出と使い方がバリエーションに富んでいました。
たとえば泡を発射する”バブル”1つをとっても、そのままぶつけて敵に攻撃する以外に、敵を包み込んで動きを封じてから浄化必殺技につなげたり、自分たちの身を包んでバリア代わりにしたり、敵を泡で包んでから敵を凍らせる”アイス”を使って泡ごと氷漬けにしたり、様々な使われ方をしていました。
アニメーションにおいても、バンク以外に手描きで無造作に発動することもよくあり、キッズアニメでよくあるバンクが始まって「はいはい、いつものパターンね」と冷めることはほとんどありませんでした。たいていの販促アニメの場合、武器や技が増えるほど戦闘の流れが単調になっていき序盤のほうが面白かったと思うことが多いのですが、プリプリは発動の仕方も技を発動した後の流れも変化に富んでいて今回はどんなふうに戦うのだろうかと毎回ワクワクできました。

■「夢」と向き合う真摯な姿勢
・後半はテーマの掘り下げが印象的でした。
プリプリのテーマはずばり「夢」です。困難も乗り越えて夢に向かって走り続ける少女たちの物語、それがプリプリです。キッズ向けとしては定番のお話です。テーマ性に関しては当初は全然期待していませんでした。しかし「夢とは何か」と作品を通じて度々語りかけてくるスタッフに耳を傾けるうちに、いつしか自分も引きこまれていました。


・夢と現実の両立や曖昧な夢は夢足りえるのかといったアプローチも興味深いものでしたが、私が一番衝撃を受けたのは「なぜ夢を抱くようになったのか」という夢の始まりに踏み込んだことでした。
3クール目の終わり頃に身近な人に否定されたことで主人公のはるかの心が折れ、夢を見失ってプリキュアにもなれなくなってしまったとき、自分はなぜ絵本に登場する花のプリンセスになりたいと思ったのかと改めて振り返ったとき、浮かんだ答えは「キラキラ可愛いから」でした。強く優しく美しい立派な人間になりたい、プリキュアとして世界を守りたい。3クール目までの間に自分の中の決意と理想像を固めてきたはるかでしたが、夢の始まりはただ「可愛いと思ったから」という些細なことでした。自分じゃ無理だとか他人に否定されたとか、そんなことはどうでもいい。心からそうしたいと思ったならそれが自分の夢なのだと再確認して立ち上がる流れは心を揺さぶられました。

・夢の話というとたいてい逸話が付きものです。
「子供の頃は病気がちでお医者さんに助けられたから自分も医者になりたいと思った」とか「辛い過去を背負っていて、同じような境遇な人を救いたいから」とか、まして世界を守るヒーローとなると尚更ヒロイックなエピソードがついてまわります。そうしないと今戦っていることとバランスが取れないように見えるからです。プリプリはそこで大上段に構えずに「何となく良いなと思ったから」というシンプルで曖昧な答えを持ってきたことに痺れました。そうですよね、始まりなんてそんなものですよね。夢に向かって歩んでいく中でだんだん、こういう理由もある、こういうこともできるから、と上乗せされていき、自分自身もそれが始まりだと信じこむようになるだけで始めから説得力のある理由を持っている人なんてそうはいないと思います。
3クール目までかけて「夢とは何か」について様々な形で問いかけては力強い答えを出して夢のディテールを掘り下げておきながら、「夢の始まりは何だったか」という問いには素朴な答えを持ってくるとは思いませんでした。思い出したはるか自身も思わず「そんなこと?」とつぶやいてしまうような答えでした。一歩間違えばこれまで積み上げてきたものが全て崩れてしまいます。これを終盤直前の展開に持ってくることは相当勇気が要ることだったと思います。「そういう物語だから」と逃げずに真摯にテーマに向き合って作っているのだなぁと強く感じました。

・「自分よりも自分の目指す夢に近い人と出会い、その人に『お前には無理だ』と否定されたらどうするか」
「夢を追うほど孤独になる。夢が自分を苦しめる」
「どこにもゴールが見えない夢でも追い続けられるのか」
など、聞いた瞬間心が折れるような耳が痛い正論もありました。そんな辛い状況でも立ち上がって前を向けるプリキュアたちは本当に強いと思いました。それでこそヒーローですね。苦しくても辛くても折れずに前を向き続け、最後には打ち勝つ。そんな理想像を体現していました。
はるかが花のプリンセスを目指してがんばり続けたように、辛いときでも「プリキュアのようにがんばろう」と思う子供が一人でもいてくれれば作り手はそれで本望なのだと思います。

・個人的にはプリキュア以外の立ち位置も描いてくれたことが嬉しかったです。
前作の誠司のようなプリキュアをサポートする一般人だった、ゆいも最後には自分の夢の力で敵の力に対抗し、プリキュアだけが夢の担い手ではないことを示してくれました。
夢はプリキュアたちだけのものじゃないというのは敵も同じでした。敵幹部だったシャットたちもゆいたちの姿を見て自分も変わりたいと思い、組織から離反しました。
プリキュアのような立派な夢だけでなく、普通の人の夢も、まだ夢とは呼べないような小さな思いも等しく肯定してくれたことにスタッフの心配りを感じました。


【残念だった点】

■必殺技のCG
・今回から浄化必殺技がフルCGになりました。しかしCGのクオリティが残念でした。
手描きに劣るのはもちろん、EDのCGほども良くなく、同時期の他作品のCGと比べてもだいぶ見劣りする品質でした。単純にいまいちです。CGが使われているのは浄化用の必殺技だけなのでバトル全体に影響しなかったことは幸いでした。

・EDも個人的には微妙でした。
特に後期のほうは濃ゆい絵柄で、品質は良いけれども少し苦手でした。

■きららの仕事問題の解決方法
・完全にボアンヌさんのおかげというのはご都合主義的で、プリプリらしくないように感じました。
できればプリキュアとして助けた人の夢が回り回ってきららに返ってくる形であってほしかったです。

■グランプリンセスの設定が死に設定気味だったこと
・序盤に最終目標として提示されて以来、あまり取り沙汰されることもなく死に設定なのかと思っていました。最後にやっぱり必要になるのならもう少し途中で取り上げておいたほうが良かったと思います。

・ただ、間に入れた場合には各キャラの夢を描くこととぶつかることになっていたと思います。
邪魔にならないように、きっぱり切り捨てるのも悪くない選択だったとも思います。


【各キャラの印象】

・総合感想は全体の構造やテーマ性についての話が多くなったので、各キャラの印象を語る形で個々の内容に触れていきたいと思います。

■はるか
・最初はピンク定番のダメダメ系かと思っていたのですが、やればできる努力型の天才系でした。
周りと差があったのは育ちという初期レベルの差でしかなく、すぐに差が埋まりました。ノーブル学園に入学できるのだから凡人なわけないですね。

・精神的には本当に強い子でした。
考えてみれば1話冒頭の時点で「花のプリンセスになる」なんて抽象的な目標のために死ぬほど努力して、周りから絶対無理だと思われていた名門私立への入学を果たせる子なので納得は納得です。その点では具体的な目標のために努力を重ねてしっかりとした実力を身につけていたきららやみなみよりもすごいと思います。エピローグでは一人だけ具体的な進展具合が描かれていませんでしたが、「何であれ、はるかなら大丈夫だろう」と思える強さを感じるキャラクターでした。

■みなみ
・良く言えば優等生、悪く言えば伸びしろがない。序盤はそんな印象でした。
メインのうち一人、二人が空気になることは珍しくないのでプリプリではみなみがそうなのかなと思っていました。

・その分、後半で将来の夢に迷いが生じたところが盛り上がりました。
キャラの安定性を夢の安定性として捉え、どうしても割を食うキャラが出てしまう制作事情を逆手に取ったことに感心しました。

・ロッドの使い方はマーメイドが一番面白かったです。水と氷は使い勝手が良いですね。メイルシュトロムはびっくりしましたけど。
逆にフローラのロッドが飛び抜けて地味だったりもしていたので、この辺りもストーリー面の待遇に対してバランスを取っていたのかなと思います。

■きらら
・序盤からぐいぐい引っ張ってくれる力強いキャラでした。序盤はきららの一挙手一投足を見てるだけでも充分楽しめました。

・プリキュアでは珍しいサバサバしたタイプだったことも魅力的でした。
プリキュアは専守防衛が基本なので状況に流されがちですが、きららは序盤に敵のボスが姿を現したら「あいつを倒せばいいんだよね?」とすかさず必殺技をかますなど自分から状況に干渉していくタイプで見ていて小気味良かったです。黄色キャラ特有のあざとさに負けない芯の強さのあるキャラで上手くバランスが取れていたと思います。
「何でもいいよ、絶対負けないから」なんて台詞が似合うキャラに仕上げたのはすごいと思いました。

・黄色なのでビジュアル面も恵まれていました。
保守的になりがちな昨今では珍しいセクシーな服装で盛り上げてくれました。モデルって良い設定なのだと初めて思いました。冬でも肩出しセーターなのは見ていて寒そうでしたが。

■トワ・トワイライト
・個人的には2クール目はトワイライト様がメインでした。
プリキュアではあり得ない銀髪と黒のドレスに目を奪われました。何より目のデザインが素晴らしかったです。ツリ目のようで実はタレ目というギミックはインパクトがありました。目の端のタレた部分をマスクで隠してツリ目に見せ、マスクを外した後も上につり上がったアイメイクでツリ目ふうに見せるというデザインが最高でした。無理に隠している感じは後で仲間になるキャラとしてもぴったりだったと思います。個人的にはトワイライト編が2クールくらい続いても一向に構わなかったです。

・トワも良かったのですが、慣れるまでに時間がかかりました。
トワイライト様が良すぎました。どうしてもトワを見る度に「トワイライト様…」とシャットみたいな見方になってしまい困りました。

・その分、スカーレットにトワイライトの意匠が残っていたことが嬉しかったです
露出した大胆な脚周りなど大人っぽいスタイルで、プリプリの中では一番好きなデザインでした。

■ゆい
・ただの一般人サポート枠かと思っていたら、想像以上に大きな役回りがあって驚きました。
絵本作家になるというのも世間的には厳しい道のりなので、強いのも当然といえば当然なのかもしれませんね。よくあるヒーローの活躍を後世に伝えるポジションで終わらせず、肉付けして1人の登場人物として確立させていったことに感心しました。

■カナタ
・序盤で最も印象に残ったキャラでした。
心技体全て揃ったまさにイケメンでした。カナタがプリキュアになっても全然驚かなかったと思います。

・それだけに2クール目で一時退場したときはショックも大きかったです。
プリキュアや妖精には欠員を出せないので、代わりにイケメン枠を退場させるというのは上手いと思いました。実際、効果は抜群でした。
その喪失感をトワの仲間入りにつなげた点も感心しました。カナタの思いを引き継いで王国を救うと言うなら応援せずにはいられません。

・後半でもまた出番があり、カナタは優秀な狂言回しだったと思います。
役割としては妖精ポジションだったのでしょう。なんだかんだで主役ではないんですよね。はるかにとっても大切な人ではあっても夢と比べて欠かせない存在ではありませんでした。従来のイケメン枠ほど話に出しゃばらず、視聴者と物語を引っ張る役割に徹してくれました。最終回でカナタの心境が描かれなかった点は個人的には残念でしたが、プリプリは「夢に向かって走り続ける少女たちの物語」と言い切っているので仕方ないですね。

■パフとアロマ
・カナタに役割を持って行かれたため、妖精としての立場は微妙でした。マスコットって感じですね。
個人的には可もなく不可もなくといったところでした。特に可愛く感じなかった点がネックでした。玩具の関係とはいえ、パフの髪の毛を踏んで転ぶネタは閉口気味でした。

・でもそれなりに役に立っていて、小さいなりにできることには積極的に取り組んでいたので好感度は高かったです。

■クローズ
・序盤は悪役なのに話を聞いてくれる良い人っぷりが印象的でした。
積極的に相手のことを理解して落とそうとする悪役は珍しく見えました。わりと狂言回しの側面が強いキャラでしたが、最終的にはるかの片割れにまでなるとは思ってもみませんでした。後半はクローズさんがいなかったら、はるかはグランプリンセスにはなれていなかっただろうなと思える内容で最終回の「夢と絶望は表と裏。夢も絶望も両方あったから今の自分がいる」という台詞を裏付けているように感じました。

・クローズさんの復活は、当初の予定にはなく11話の死亡回の演出と声をあてた真殿さんの熱演を見て決まったことだったそうです。
この話を聞いたときに心から頷けました。鬼気迫る内容ですごかったですから。私もプリプリの声の演技で一番記憶に残ったのはクローズでした。真殿さんというと脇役が多く、名のしれた役というと「ガオガイガーのソルダートJ」くらいしか浮かびません。でもこれからはクローズは真殿さんの代表作になると思います。

■シャットとロック
・この二人はかなり限定的な役どころしかなかった印象です。
ロックは完全に2クール目専用で、シャットは最後以外ではずっと扱いあぐねているように見えました。負け犬のポジションも苦肉の策という印象でした。

■ディスピア
・Theラスボス、という感じでした。
出番は少ないのに最後まで威厳を保てていたのは見事だったと思います。スカーレット誕生の回や学園への侵攻など絶妙に嫌なタイミングで忍び寄ってきて恐かったです。

■ストップ・フリーズ
・個人的にはけっこう高く評価しているキャラです。
立ち位置としてはこれといった意思も示さず、ただひたすら悪事を働くロボットのような存在なのですが、そうは見えないほどユーモラスなキャラクターでした。台詞や表情もなしに、ポージングと動きだけでコミカルに仕立てたことはけっこうすごいことだと思います。やってることは悪どいので、もしもあの変なポーズがなかったらけっこうムカつくキャラに見え、全体の雰囲気が必要以上に暗くなってしまっていたと思います。地味ながら良い働きをするキャラでした。


【総評】

アクション良し
ストーリー良し
エンタメ性良し
と三拍子揃った素晴らしい作品でした。
追加戦士を見越した上でのストーリー構成、妖精や敵にも役割を割り振った構成などプリキュアシリーズのフォーマットと欠点をよく研究した上で作ってあることが伝わってきました。監督の田中裕太さんもシリーズ構成の田中仁さんも、初めてとは思えない出来栄えでした。戦隊とライダーはスタッフの世代交代に苦戦していましたが、プリキュアは後進育成に関しては一歩抜きん出たようです。

総合成績ではシリーズ歴代最高と評価したいと思います。
「プリキュアを見てみたいんだけど、どれがオススメ?」と漠然と聞かれたら、これまでは好みによりけりとしか言えませんでしたが、これからは「まずはプリプリ」と答えられるようになりました。
1話1話も面白く、全体の構造もしっかりし、安定した内容でありながらも適度に意外性も盛り込んであり安心して見られる作品です。

・一年間楽しませてもらいました。こういう作品を見るとキッズアニメって良いなと再認識できます。製作スタッフの皆さん、ありがとうございました。

コメント

10 件のコメント :

  1.  論評ご苦労様です。ハチャプリで急降下したプリキュアの信頼でしたが、GOプリは筆者氏の言う様プリキュアを始めて視聴する人に勧めることが出来る完成度の高い作品と言うのが見ていて感じました。驚嘆したのは、カナタがディスタークとの争に巻き込んでしまったことを謝罪し、その後も口だけではなく、自ら現場に立ちプリキュア達を援護していることでした。大概こういったキャラは口だけの役立たずがテンプレなのに、それを打破したスタッフ・脚本陣に感謝です。またプリキュア達の性格・人格もそれぞれが個性的であり、メリハリが利いており作品に中だるみが生じないように、個性を際立たせたのが印象的でした。主演の方々で印象に残るのはトワイライト・トワですね。序盤の冷淡に相手を屈服させ常に上からの目線、トワに戻った後のあどけなさの残るがしっかり者の末っ子属性、それを演じきった沢城さんに拍手を送りたいです。(欲を言えばもう少しカルチャーギャップによるポンコツ設定を見たかったが)
     私としては『一条らん子』さん推しです。矢作さんの演技と相まってキワモノキャラなのに作中で一番キラキラと輝いているように見えました。ギャグなのにふざけておらず、努力の体現者だと思っています。
     悪役の方々は近年同様、三幹部方式でしたがそれぞれの印象がダブることなく悪くはなかったですが、ちょっと消化不良なのは、ディスピアですね、ラスボスの威厳に満ち溢れているのに存在以上の恐怖を感じなかったのが肩透かしでしたね。

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    1. >カナタ
      カナタは良かったですね。今後のイケメン枠・妖精枠のお手本にしてほしいキャラクターでした。カナタが好青年でなかったらホープキングダムとの接点が薄れ、「はるかたちは面倒ごとに関わらずに自分の夢を追いかけたいだろうに。可哀想」と思ってしまったかもしれません。

      >トワ
      トワはその生い立ちから日常描写が多いキャラクターでしたね。
      個人的にはホープキングダムを救った後に別の夢を見つけたのか、それともプリンセスとしての道を歩み続けたのかが気になります。

      >らん子
      らん子はスタッフに愛されていましたね。ノーベル学園では貴重なコメディ要因だったので重宝されたのでしょう。らん子がギャグを引き受けてくれたおかげでパフのドジ要素が減ったことが個人的には嬉しかったです。ギャグが夢に対する意欲や努力につながるので、らん子も上手いやり方だったと思います。

      ちなみに私が好きなモブは8話でサイアーク被害にあったパティシエの子です。
      その後も地味に出番をもらえて嬉しかったです。

      >ちょっと消化不良なのは、ディスピア

      そうですね。そう思われる方もいると思います。
      私はクローズがラスボスになったので仕方ないと思っています。ディスピアにもラストで山場を作ってしまうとフローラとクローズの対話が霞んでしまうでしょう。私としては出番の少なさのわりに上手くやったと考えています。

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    2.  追記です。というより書き忘れです。ストップとフリーズについて、クローズさんの再登場と伴い、追加された幹部キャラですが、私はずーっとあの仮面の下にはプリキュア達の心を折る何かがあると思っていましたが、特に何もなかったのは、肩透かしよりも、いい意味で脚本にだまされました。深読みしすぎるのもよくないと痛感しました。
       また筆者氏に問いたいのはラスボス像についてです。最後の敵は、自分たちの姿よりも巨大な(大型)タイプと姿かたちは自分たちと同じぐらいで雰囲気だけで場の空気を恐怖に変えるタイプ(例:フリーザさん)がいますが、どちらの方が怖いと思いますか?

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    3. >ラスボス像について

      私はプリキュアと同サイズのほうが適していると考えます。
      大きいほうが威圧感があるのは確かですがアクションができません。プリキュアの基本は格闘戦です。格闘戦ができないとプリキュアだけでなく敵も強さの表現が難しく恐ろしさが伝わりづらくなったり、プリキュア側も打つ手がなくビームでドーンで終わってしまったり、結果的に小者に見えてしまいがちです。
      また目線の問題もあります。プリキュア側メインで敵と会話する場合には目線を同じくらいの高さにしないといけません。敵を見上げた状態で言うと説得力が薄まってしまいます。巨大な敵で話そうとするとプリキュアは空中に浮かぶことになり、不自然だったり背景の情報量が少なくなったり、いろいろと問題が起こりがちです。

      プリキュアと戦わせること、プリキュアと会話することが大前提になっている現行の仕様では、ラスボスは等身大の大きさのほうが適していると私は考えます。
      あくまで比較的適しているかどうかの話で人型サイズがベストというわけではありません。より面白いアイディアがあれば別の発想も歓迎します。

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    4.  なるほど確かに筆者氏の記す通りですね。ラスボス像がデカイとアクション面がおざなりになってしまうのはありますね。そうなりとプリキュア達も空中戦用のフォームが必要になり、使い方が限定されてしまいますね。近年ではプリキュア達が敵を説得してなるべく戦闘を行わない描写もありますので、等身大の方がしっくりきますね。
       面白いかは別として浮かんだアイディアは男塾の『大豪院 邪鬼』みたく闘気や相手からの恐怖で巨大に見えるとか、コナンみたく見た目は子供中身はジジイとかですね。
       またハチャプリでもあったように見方が敵に回るのもありますがコレはプリキュアではタブーですよね?(ブルーが寝返って敵になるなら、全力でボコる自信だけは有りますが)

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    5. >見方が敵に回るのもありますがコレはプリキュアではタブーですよね?

      私はタブーだとは思いません。
      ただし単純に面白くなりづらいので避けたほうが得策だと思います。プリキュアは明るく正しくが基本なので敵に回ったまま終わるということはできません。ヒーローものなので裏切った側が一時的にでも勝ち続けるということもできません。敵に回ってやれることと言えば、戦って負けるくらいなので単調で盛り上がりません。
      ハトプリやスマイルのようなダーク系のようにプリキュアの普段掘り下げることができない負の一面を描くくらいしか今のところ使いみちがありません。

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  2. コメントを失礼します。

    プリンセスプリキュアは本当に素晴らしい内容で、終わった後に拍手をしてしまう程でした。

    フレプリも面白かったのですが、あちらはブッキーが空気になりかけたり、ドーナツでラビリンスの人達の洗脳が解けたのも、ん?と思う内容でしたが、プリプリは伏線が綿密で、1話でも逃したら?になる位に完成度が高かったですね。

    これは私の勝手な解釈ですが、少しだけお付き合い下さい。

    まず、たとえ変身して戦わなくても、心の強さと力で絶望の檻を自力で破り、ノーブル学園の生徒・教師達の檻さえも開けた、5人目のプリンセスプリキュアともいえる存在、七瀬ゆいちゃん。
    見返せば、ディスダークの敗因は間違いなくゆいを侮った事もあります。
    28話でスカーレットの新しいキーが手に入りましたが、あれも伏線が張られていたと思ってます。
    それは、3話で見せた彼女の眼鏡を外した顔をです。
    のび太君みたいな 3 3 でしたね。
    3 3だからサンキー。
    つまらない洒落なのは百も承知ですのが、今考えるとあれは我々を笑わせるためだけではなく、この為だったのでは?と思ってます。

    同28話において、スカーレットはゼツボーグに踏み潰されそうになったゆいのスケッチブックを守りました。
    あれも、18話でトワイライトだった頃にはるかの夢の原点であった絵本『花のプリンセス』を燃やそうとしていたのと対比させているようでした。

    個人的に良い点は、非常に凝ったOPです。
    カナタが一時離脱した後の22話で彼がOPからもいなくなったのは、ショッキングでした。
    また、はるか達4人が歩いている時に、バックに沢山のゲストが出てきましたが、あれも良かったです。
    極めつけは、最終回ですらもカナタとグランプリンセスになったフローラ、ラスボスとなったクローズさんも一瞬だけ目が光りました。
    この演出は、見て飽きないもので本気度が伝わりました。

    笑いの方では、一条らんこ女史のインパクトのデカさもあります。
    根性ドーナツ君から手書きでの一条らんこ卒業記念銅像設立(44話)、明らかに芸人一直線の傘回し、EDのキャスト欄では下手したららがうに見えてしまうシュールな笑い、挙げ句の果てにはエンドカードにもシャットと共に出る始末、とにかくらんこ女史にも笑わせて貰いましたね。

    ゴーストは切ないライダーですが、正直ラストのはるかとカナタ達との別れの方が、格段に切な過ぎました。

    何はともあれ、本当に本当にありがとうと言える作品でしたね。

    長文、失礼しました。

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    1. >フレプリも面白かったのですが、あちらはブッキーが空気になりかけたり

      フレプリはミキたんとブッキーの扱いは残念でしたね。「主人公:ラブやん、ヒロイン:せつな」で良くも悪くも完結していました。もう少し活躍させてあげてほしかったです。

      >つまらない洒落なのは百も承知ですのが、今考えるとあれは我々を笑わせるためだけではなく、この為だったのでは?と思ってます。

      面白い着眼点だと思います。
      ただ、私は同意しかねるところがあります。ゆいを特別視しすぎることはプリプリのテーマにそぐわないのではないかと私は思うからです。
      ゆいがキーを生み出す元になったり檻を破れたのは早くからプリキュアやはるかたちから触発されていたのが理由であって、ゆいが特別だったわけではないと思います。はるかたちと深く関わるようになったのがゆいではなく、ゆうきくんでもらん子でも同じことが起きたと思います。はるかたちにかぎらず、ゆいに限らず、夢に溢れた人物であれば誰でもプリキュアになれるというのが、プリプリの言いたかったことの1つだと私は思います。

      >EDのキャスト欄では下手したららがうに見えてしまうシュールな笑い

      私も何度見ても”う”に見えて仕方がなかったです。
      髪の毛の色と髪型も含めて、狙っているのだろうかと疑ってしまいました。

      削除
  3. メッセージ失礼します。やっぱりどうしてもこのプリンセスプリキュアだけはレンタルして各話感想書いて貰えないでしょうか?

    内容が総評と同じでも全くOKなので一話からの筆者様視点での感想が知りたいです。

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    1. リクエスト頂いたことはとても嬉しいのですが残念ながらご期待には沿えません。
      途中のエピソードに関してもこの本文で触れた部分がいくつもあるため、各話感想を書いても概ねここで読んだ内容と似通ってしまうと思います。
      また全話見た後と初見では印象が違ってしまうことも理由の一つです。成長の物語とはすなわち成長していく途中経過に大きな意義があるものだと思います。結末を知った上で見るとバイアスがかかることは避けられません。「いったいこのキャラはどうなるのか?」という答えを知った上で内容について触れながら書くことは困難です。

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