『機界戦隊ゼンカイジャー』最終回まで見終わって:総合感想
『機界戦隊ゼンカイジャー』を最終回まで見終わったので感想を書きたいと思います。
*必要に応じて随時ネタバレがあります。
良かったところ
■追加戦士の変身前のダンス
・追加戦士のツーカイザーは変身前の待受音楽が流れている間に踊ります。そのダンスが良かったです。
私はダンスに特に興味がありません。戦隊のEDでもよく踊っていますがダンス自体に興味を惹かれたことはありません。良し悪しもわからないし面白さもわかりません。
キョウリュウジャーみたいに戦闘中にダンスのステップを踏むことにアクション性を持たせるならわかりますが、ツーカイザーの場合は普通に敵の見学タイム中に踊るだけです。
・では何が良かったかというと、「スーパー化したときにパワーアップ具合が目に見えて伝わってきたこと」です。
強化アイテムでスーパーツーカイザーになったときにダンスも振り付けが派手なものに変わりました。戦隊のスーパー化というとだいたい既存のスーツに被せものをしたような微妙な変化が多いですが、その点ツーカイザーはダンスが凄くなっていることでパワーアップ具合がわかりやすく伝わってきました。
戦う前から凄さが伝わってくるというのは変身前のダンスならではのことだと思い、感心しました。
残念なところ
■良いところが特にない
・長所と呼べるほど伸びた要素がありませんでした。
ストーリーは薄味な上に展開が引き伸ばされ、キャラクターも大半が初期設定のまま掘り下げなしで終わり、メインキャラですらも引き伸ばし展開からのあっさりな結末で終了。アクションと販促は”ギャグ”の名の下に露骨にやる気がないように見えました。
悪いところや癖も少ないけれども、それは単に内容が薄いからでしかありません。それでいてギャグの扱いも半端だからギャグものとして扱うことも難しいです。
長所が見当たらないことはゼンカイジャーの一番大きな問題点だと思います。
■水と油
・ゼンカイジャーは基本的にギャグがメインの作風です。一方、シリーズ構成の香村純子さんはシリアスなストーリー展開と情感のある人物描写が得意な脚本家です。
相反する方向性を混ぜた結果、ゼンカイジャーはシリアスなストーリーと勢い重視なギャグが互いに無視し合って全く混ざろうとしない水と油の関係になってしまいました。
・ギャグはストーリー展開から無視されているので扱いがだいぶ雑でした。
どのくらい無視されているかというと、初期メンバーの5人中主人公以外の4人がギャグ専門でした。ギャグ専門キャラはキャラの掘り下げがろくに行われず、普段のギャグ回ではたくさんしゃべっていたキャラがシリアス回になると途端に空気になるので違和感が大きかったです。最初からいるレギュラーキャラでさえギャグに関わるとこの扱いなのでギャグ回自体の扱いもぞんざいでした。
・脚本家のやる気がないせいか、ネタの切れもパッとしないように感じました。
ギャグの好みは個人差が大きいので正否はわかりませんが、個人的にはもっと一つのネタを広げてほしいと感じることが多かったです。
基本的にその回のネタ要素=怪人の能力です。たとえば柏餅のためならなんでもする柏餅中毒にする柏餅ワルドや一定時間ごとに嫌なことを忘れさせてしまう正月ワルドなどがいました。
怪人の能力が基本的に出落ちで終わってしまうことがギャグとしてもバトルとしても物足りなく感じました。「実践付きの敵能力の説明→戦隊側が対策を取って倒す」というのが基本的な流れなんですけど、本当にこの通りの流れで紆余曲折が何もない平坦な展開で終わってしまいます。「対策をしたら敵は予め対策を予想して対策の対策を用意してあった」とか「対策をやってみたら敵にとっても予想外の事態になって敵も味方も大混乱になった」みたいな二転三転がありません。展開に捻りがないところがギャグとしても能力バトルの展開としても物足りなく感じました。何の工夫もなく1つのネタで30分持たせられると思っているなら大間違いです。
・一方のシリアスなストーリーは普段のギャグの不真面目さに水を差されていました。
普段は「全力全開~♪」とか「ちょわ~」とか叫んでる主人公がシリアスパートだけ基本真顔になるのでこれも違和感が凄まじかったです。
内容の説得力の無さは輪をかけてきつかったです。普段ふざけたことしかしてないのに、シリアス回になると急に「世界が」「みんなが」「人々を苦しめるなんて間違ってる!」みたいな大言壮語を吐くようになるので温度差で風邪を引きます。
これがギャグもの戦隊でよくあるような「普段はニコニコ明るいが時折誰よりも真面目な顔を見せる」みたいな主人公だったら問題なかったのですが、ゼンカイジャーの場合はギャグパートを完全に切り捨てているためそうはいきませんでした。ギャグもシリアスも総合して真面目に解釈すると主人公はサイコパスか情緒不安定、あるいは浅はかな考えの馬鹿です。
・結果としてはギャグとシリアスを分断したことは完全に失敗だったと思います。
シリアス回があるのは5話に1度程度です。シリアス中心に考えると全49話のうち半分以上の回を捨てることになります。そんなことをしたら間延びした退屈な展開になるのは当たり前です。
・ギャグ中心の作品と考えるにはストーリーやキャラが薄過ぎました。
いくらギャグが単体である程度成立すると言っても49話もある長編では無理があります。特にキャラの切り捨てと掘り下げの無さはギャグには致命的です。単発の怪人中心のギャグでは4クールも持ちません。ギャグにだってキャラやリアクションの積み重ねは必要です。
また、ギャグだけに目を向けようとするとシリアスが邪魔になります。シリアス展開とキャラがつながっていないため、「明るく元気な歌のお兄さんも舞台裏では全然笑わず愚痴ばかり言ってやさぐれている」みたいな舞台裏を見せられているみたいで笑う気が起きなくなります。
・やはりギャグとシリアスを混ぜるなら融合させるようにしていかないと無理が出る、というわかりきった結論を再確認する結果になりました。
■ストーリーの引き伸ばし
・ストーリーは大きく分けて3つの要素が主軸として扱われていました。説明とあらすじは以下のようなお話です。
主人公の両親
(主人公の介人が幼い頃に両親は行方不明になっていたが、実は異世界の敵国に誘拐されていたことが序盤に判明する。しかし敵国に侵入する方法が見つからない。)
追加戦士の兄弟にかけられたSD化の呪い
(海賊としてSD世界を襲ったときに身体が二頭身になる呪いをかけられた。呪いを解く方法を探すためにSD世界にもう一度行って手がかりを探したいが肝心のSD世界が敵国に封印されていて行けない。追加戦士のゾックスは弟たちの呪いを解くために異世界の力を宿した敵怪人を片っ端から倒し、SD世界を解放することも目的に戦っている。)
ライバルキャラの父親への復讐
(途中から登場するライバルキャラ、ステイシーは人間と敵国の機械生物のハーフ。母親は幼い頃に悲惨な生活の末に死亡したため母親と自分を捨てた父親である軍司令を恨んでいる。父親を見返すために、手柄を立てて父親より偉くなる or 父親を自分の手で殺すことのどちらかを果たそうとサイボーグ手術の実験兵士として侵略活動に参加している。)
・この3つの要素がメインストーリーのほぼ全てでした。
しかしどれも序盤から引き伸ばした割に終盤であっさり片付けられて肩透かしになってしまいました。具体的には以下のような展開でした。
主人公の両親
5話:主人公は両親を助けたい。しかし今は方法がないから機会を待つことにする。
27話:主人公の母親が自力で脱走。異世界のどこかに逃げたはずだが行方不明。それ以降も本編で映っていないところで主人公がときどき探しているらしいが手がかりすら見つからない。
30話:主人公の父親を洗脳&改造して作った敵幹部が登場。34話で主人公たちに正体がバレ、40話で洗脳を解いて救出。
41話:主人公の父親が母(妻)を探しに一人で異世界に捜索に出る。
最終回の1話前:父が母を連れて急に戻ってきて終わり。
追加戦士の兄弟にかけられた呪い
8話で追加戦士が初登場。14話で仲間になる。以降44話まで、ひたすら「ち、ハズレか。どっちみち敵だから死ね」を繰り返す。
44話:急に探していたSD世界の力を宿した怪人が出てきたので倒す。呪いを解くために解放されたSD世界へ出発し戦線離脱。
45~48話:なかなか呪いを解く方法が見つからねーと言ってるうちに事態の異変に気づいて最終決戦に参加。
最終回:エピローグで「呪いが解けた」と報告しに来た。何をどうしたかは不明なまま。
ライバル
7話で初登場するも次の回で登場した追加戦士に早速ボコボコにされ以降は噛ませ犬街道まっしぐら。
主人公からも「無理して戦ってる可哀想なやつ」扱いされて憐れまれていく。駄菓子屋を営む主人公の祖母と偶然仲良くなり、自分の母親の影を重ねて慕っていくが、やっぱり復讐のほうが重要と振り切ろうとする。
23話:負けっぱなしで思いつめた結果ゼンカイジャーに決戦を挑むも敗北して崖落ち。
26話:改造されてパワーアップした姿で登場。しかしすぐに主人公にボロ負けして以降も負けっぱなし。
30~40話:主人公の父を改造して作った幹部と同僚になり、突然仲間意識が芽生えて主人公の父親だと知った後も「こいつは僕の仲間だから渡さない!」などとやっていたかと思えば、やっぱり主人公に同情して洗脳を解くのに協力する。しかしそれがバレて失脚し投獄される。
42~48話:いろいろあって脱出できたが失脚したため復讐を果たせそうもなくなり途方に暮れる。無意識に主人公の祖母の店を訪れ、「もう復讐なんて忘れて生きればいいんじゃないかな」と今更になって日和る。日和ったついでに罪滅ぼしとして主人公たちの最終決戦に参加。
最終回:敵国が滅んだ後の異世界で復興事業に取り組む。王になってほしいと市民から懇願されるも辞退する。
・ダイジェストにしてもわかるとおり、どのお話も序盤から終盤の間がスカスカです。香村さんの悪癖の引き伸ばしが全開になっています。
このスカスカ部分はストーリーに関係ないギャグ回で埋められています。ストーリー上ではギャグ回を切り捨てているため、ギャグ回をやっている間は基本的にストーリーが進みません。「今回もストーリーは進まないんだろうな→うん、何もなかった」というのが何週も続くため毎週1話ずつ見ていると余計にスカスカに感じます。
・文量からも察せられるように、ストーリー面での実質的な主役はライバルです。
しかし主役でさえも扱いはこの程度です。細やかな心情描写どころか心境の変化すらもろくに描かれず、「いきなりどうしたの?」と首をかしげる展開や「そんなんでいいのか?!」と戸惑うような情感も何もないあっさりした決着の付け方で終わってしまいました。
・ここに記載されていないメンバーはもっと悲惨でした。
個人回自体が全部で3回くらいしかありませんでした。それも大半がギャグのネタのために消費されていて、個人回らしい掘り下げのある回は1回ずつ程度でした。「今回はグリーンが空気枠だった」みたいな残念な扱いを受けたキャラが毎年いるものですが、ゼンカイジャーの場合はメイン3人以外は全員空気でした。初期メンバーなのに最終回になっても初登場回でやった内容だけをなぞっていて見ていて悲しくなりました。
■アクション:前年以上に悪い
・前作のキラメイジャー以上にダメでした。アクションができてないというより最初からやる気がありません。
ギャグ中心ということもあってまともに戦うことが数えるほどしかありませんでした。しかも大半がライバルキャラや幹部との小競り合いなので代わり映えもしないし盛り上がりもしません。
■キグルミを増やす=手抜きが増える
・ゼンカイジャーの特色の一つは初期メンバー5人のうち主人公以外の4人は人外(キカイノイド)で変身前の時点から役者さんのいないキグルミであることです。変身は普通にするのでキグルミ(変身前)→別のキグルミ(変身後)という形になっています。
役者さんでないキグルミであることは私にとって大した問題ではなかったのですが、造形のほうはアクションにとって大問題でした。変身後のスーツが巨大ロボの単独形態と同じものとして扱われたため四角四面に角ばっていて全然動けませんでした。等身大戦よりも巨大戦のほうがよほどマシに動けている回すらあったほどです。このデザインでアクションできるのだろうかと不安に感じていたらものの見事に動けませんでした。
・「事務所との契約があるから役者さんを目立たせないといけない」
「同じ役をずっとやってると単調だから怪人の能力でおかしくなったなど理由をつけてでもいつもと違う役柄をやらせないといけない」
といった役者ノルマが戦隊シリーズにはありがちです。時折うっとうしく感じていたため大半がキグルミキャラならいっそそういうしがらみからも解放されるのだろうか?と少し期待はあったのですがダメでした。特に何もやる必要はないと言われたら何もしないのが実情でした。これならノルマだろうと動機があるほうがマシなようです。
■デザインからヤバい
・武器も悲惨でした。共通武器であり変身アイテムでもあるガトリング銃の「ギアトリンガー」が壊滅的にダメでした。
・まず普通の武器としての扱いづらさが目に余りました。
普通に使うとただのハンドガンで特色がなく、ただ撃つことしかできません。特徴であるガトリング部分はオルゴールのような手回し式であるため敵の目の前で小さなハンドルをぐるぐる回すためとてもかっこ悪いです。その上、回してやることはただ連射するだけなので全然かっこよくありません。
あまりにもしょぼいせいか、実際のアクションでは使われないことが多かったです。主人公以外は専用武器の剣や爪で戦い、専門武器のない主人公は素手で戦うことのほうが多かったです。
・普段は剣などを使っているのに、変身するときと必殺技を使うときだけ銃を使うのがまた不自然でかっこ悪かったです。
毎回のように「どこから取り出したんだよ!?」 & 「さっきまで持ってた剣とかどこにやったの?!」というツッコミどころが湧いてきました。
■レジェンドものとは呼び難い
・共通武器の銃は歯車型の”戦隊ギア”を使うことで戦隊レジェンド由来の能力を使えるんですが、こちらもダメダメでした。使い方に基本的に説得力がありませんでした。
「ジュウオウジャーのジュウオウイーグルの力で空を飛ぶ」
「ニンニンジャーの力で高速移動」
など、それって他の戦隊でもできるんじゃない?と疑問に思うような曖昧な使い方ばかりでした。レジェンドごとの特色が特に感じられません。これならゴーカイジャーみたいにフォームチェンジのように直接変身したほうがビジュアルが目に見える分だけマシだと思います。
・このツッコミどころについて公式サイトでも「あくまで作中の製作者が戦隊を”イメージ”した力であって、本物の力とは別です」なんて予防線を張っていたんですが、例によって例のごとく途中からなし崩しになりました。
途中からは元ネタの戦隊のマイナーなエピソードで使われたアイテムを取り出したり、ゴーカイジャーのバスコみたいにコピーを召喚させて直接戦わせたりするようになり、言ったことすら守れませんでした。
・扱い方が雑なためレジェンド要素の印象はほとんど残りませんでした。
「ゼンカイジャーはレジェンドもので間違いありませんよね?」と念を押されたら、レジェンドものだと断言するのをためらってしまいそうなくらいです。
■そんな予算はない
・巨大戦や巨大ロボはかなり空気でした。ストーリー面でも販促面でも存在感がありませんでした。
・ロボの種類自体も少なかったです。
初期2体に追加戦士で1体、スーパー化アイテムでもう1体。そして最強ロボの全部で5体。ミニプラで売られたライバルのロボも入れても6体だけで換装パーツやロボ同士の組み換えはほぼありませんでした。
数も少ないし、出番も少なく、ストーリー面でも空気なので全然印象に残りませんでした。
・最強ロボのゼンリョクゼンカイオーは戦隊では珍しい毎回フルCGでした。
フルCGが良かったかというと全然ダメでした。クオリティはPS3並でヘボく、シンカリオンにすら及びませんし、10年以上前のレスキューシリーズにも及びません。
・そして何よりバリエーションの無さが壊滅的でした。
フルCGであるゆえに敵は”量産型の雑魚”のみでした。頭部パーツと武器が違うコンパチ怪人相手に戦うのが最強ロボの唯一の出番です。予算をかける気のない戦隊でやれば当然の結果ではありますね。ロボの最終決戦は実質ポッと出の幹部ロボと初期ロボが戦って終わりです。
CGの良さはロケ地やカメラのアングルなど物理的制約に囚われず映像を作れることなのに、ゼンカイジャーの場合はむしろ「1から作らないといけないから作れない」という真逆の姿勢でした。毎回同じデザインの怪人と同じようなフィールドで戦うのではいつもの巨大戦と変わりません。これでは進化どころか退化だと思います。
総合感想
■第一印象どおり
・作品の全体の感想としては第一印象から変わりませんでした。
座組を知った時点でインパクト重視で整合性を気にしない白倉さんと細かいところにこだわって大きな展開を嫌う香村さんの組み合わせでは厳しいと思いました。化学反応が起きない限りは正面衝突して何も残らない可能性のほうが高いだろうなと思いながら見ていました。結局、本当にそうなってしまいました。
・ストーリーやキャラの問題も1話の頃から引っかかった部分がそのまま残ってしまい、こちらも第一印象のとおりでした。
本当に序盤から何も変化がないので「つまらない」というよりも”退屈”と感じるところが多くなっていきました。あまりにも変化が無さすぎて、批判するところすらなくなっていきました。記事の内容も(前に同じようなことを書いたので丸ごとカット)で済んでしまう内容が増えていきました。
・おかげで主人公の決め台詞である「全力全開!」の薄ら寒さが深刻でした。
どこにも全力さを感じられない内容から繰り出されると反感が強すぎてスルーするのが難しかったです。戦隊の名前にも使われてる単語なのに全くしっくり来ませんでした。
全力全開というより「無気力適当戦隊ヤリタクナインジャ~」のほうが実態に合ってるんじゃないかと思いました。
【キャラの印象】
■介人
・介人は結局性格すらよくわからないまま終わってしまいました。
「世界初の~」という最初の最初に披露された要素は途中から完全に放り投げられましたし、決め台詞の「全力全開!」すらもどういう思いが込められた言葉なのか解釈がつかないまま終わりました。
個人的な解釈としては「偉大な両親への敬意とコンプレックスの混ざった言葉」なのかなと思いましたが、両親関連の話が薄すぎてコンプレックスがあるのかないのか大して根拠が見つからないまま最終回を終えてしまいました。
全力全開とは介人にとっていったい何だったのでしょう? 普段言ってる口癖すらよくわからないのでどういう人物なのかもわからないままでした。
最終回に至っては突然の旅立ちと本当は駄菓子屋やりたくなかった発言が出てきて今までそれが当然なんだろうとスルーしてきたことまでもわけがわからなくなりました。
・両親関連の話に具体性が乏しかったせいでステイシーとの絡みが破綻しているように感じました。
両親つながりがステイシーとの接点だと思うのですが、ステイシーが母への愛情や父への恨みとコンプレックスを何度も語った一方、介人のほうは世間一般に言われる偉大な研究者という以上の思い入れが具体的に伝わってきませんでした。
5話でジュランに指摘された「一般人を守ることだけじゃなく両親探しも大事にしろ」という話も特に何もないまま回を重ねて自然消滅し、母親探しが始まってからはむしろ逆行しているように見えました。そのことについてジュランが何か言うこともなく、「ひょっとしてむしろ自分の知らないところで両親が死んでてほしいと願っているのだろうか?」という疑念すら芽生えていきました。
かと思えばハカイザーでは父ちゃん父ちゃん連呼するようになり、だけどもそれほどがむしゃらになるってほどでもなく、余計に介人の心情がわからなくなりました。
実質的な主役はステイシーという点を考慮しても、純粋にキャラクターの描き方として理解できない描かれ方でした。
■ステイシー
・実質主役と言って間違いないと思います。割いてる時間が段違いです。
しかし個人的には費やした時間の割が合う内容だとは思えませんでした。大半の時間を特に何も考えずに戦っては敗走して「僕は何をやってるんだ…」とうなだれる日々でしたからね。シンプルに魅力が足りていません。
・最終結論である「復讐を止めて生きる」も最初からわかりきっていたことだったので徒労感が強かったです。
ヤツデにほだされた時点でもう戦う理由がありませんよね。復讐するよりも第二の母であるヤツデを守るためにトジテンドと戦うほうが圧倒的にステイシーにとってプラスなのは明らかでした。
そこでヤツデか復讐化のジレンマを丹念に描くのならまだ良かったのですが、実際には特に何もありませんでした。少し出世したり改造で強くなったりして「この調子でいけばバラシタラを超えられるんじゃないか?」と思ったり、あれだけ時間をかけていいなら理由はいくらでも用意できたと思います。
・ハカイザーへの仲間意識は唐突すぎて全くついていけませんでした。
洗脳されて言うことを聞いているだけの相手への仲間意識という時点で滑稽だと思うのですが、それについては言及されることもありませんでした。ハカイザーがバラシタラの言うこともあっさり聞いて愕然とするとか、ハカイザーの人格を消去する代わりに強化するプランが出てきて「復讐するための力を選ぶのかハカイザーという仲間を選ぶのか」と悩んだりするとかいろいろできたと思います。
実際に出てきたのはハカイザーを突然大切な仲間扱いし、介人の父親だと知った後もそれでも自分の仲間にしておくことを優先したかと思えば、やっぱり介人が可哀想だから元に戻すことに協力し始めるというついていけないあっさり展開の連続でした。
個人的にはハカイザー関連はステイシーにとって存在が無かったほうが良いレベルだと思いました。
■ゾックス
・追加戦士のゾックスには最初期待していました。
母艦を持っていたり、歌いながら登場したり、乱入しやすいキャラなので一本調子なバトルとギャグに変化を加えられるキャラに見えました。追加戦士はストーリー上でも主人公の次に目立つことが多いですし、海賊という正義の味方とは相容れない第三勢力として表れたので展開をかき回してくれることを期待していました。
・しかし海賊要素は早々に中止宣言が出され、以降は介人のことを気に入って手伝ってくれるただの助っ人と化してしまってがっかりしました。この時点でキャラとしてはだいぶ死んでいたと思います。
・ゾックスのストーリー要素であるSD化の呪いは想像以上に悪い展開の仕方でした。
どうせ終盤までSDワルドは出ないし、呪いも最終回まで解けないだろうと予想していましたがそれよりも悪かったです。
44話の時点でSDワルドを倒して地球から離脱したのは意外でした。それは良かったのですが、その後がダメでした。その後は顔を出しては「呪いを解く方法が見つからねぇな…」とボヤいているだけで進展がなく、最終決戦への参戦も特に流れがなくてグダグダでした。もうここまで引っ張るなら呪いは解けないのかな…と思っていたら最終回で事後報告されて呆れ果てました。こんなグダグダで面白みもない展開をされるくらいなら平凡な流れのほうがまだマシでした。
■ジュラン
・ジュランも最初は少し期待していました。
5話で介人に説教したときは「お、メンバーだけどカラーが赤なだけあって主人公並に見せ場があったりするのかな?」なんて思ったのですが全くの見込み違いでした。空気です。
構成要素が「おじさん」の一言で片付けられているため、独自性の無さという意味では一番無味無臭のキャラだったと思います。「おじさんだから」という理由付けばかりで「ジュランだから」という展開がまるで見当たりませんでした。
・ジュランに限らないことですが、プロの声優さんを使っていることが救いになっていたと思います。
これでド素人の下手な吹き替えだったら空気の冷え方を想像するだけで恐ろしいです。「頼むからしゃべらないでくれ! どうせ何も内容あることを言わないんだから」と存在意義を否定するような思いが湧いてきたと思います。
■ガオーン
・最後まで変態不審者でした。途中でダメ出しされたのに1話過ぎれば何事もなかったかのようにヒトナーケモナー嗜好が丸出しになっていました。普通に人としての好感度が下がる一方です。
・しかし変態だから味方にいると引くという致命的なマイナス点を除けば、ガオーンはまだマシなキャラクター性があるほうだったと思います。
初期設定しかないのは他のキャラと大差ありませんが、設定に基づいた言動が頻繁にあるだけマシでした。
■マジーヌ
・メンバー内では下から二番目に空気でした。女性メンバーが空気になりがちなのは戦隊では珍しくありません。マジーヌは出番がないとかいう以前にキャラが薄いのが問題だったと思います。
・唯一の個性である占いは速攻で自然消滅し、以降は「~なんだが!」とかオタク口調でしゃべるだけのキャラになってしまいました。
台詞が少ない口癖キャラは悲惨です。まともな台詞や役割が与えられないともっと悲惨です。最終回まで見終わった後に振り返って「マジーヌってどんな活躍があったっけ?」と真剣に悩むくらいに空気でした。
・「いろいろ物を出したりできる魔法」というギャグには使い勝手の良いギミックすらもパッとしなかったので本当に無惨でした。
キャラが薄いという以前に「まともに扱う気がない」キャラクターだったと思います。レギュラーキャラでこの扱いは酷すぎると思います。最終回に至っては自立して進歩したかと思ったら、特に目的意識もなく主人公についていく金魚の糞エンドで愕然としました。
■ブルーン
・空気を極めていました。
マジーヌの魔法のようなバトルで使えるギミックがないため出番が全然ありませんでした。上半身と下半身が分離するギミックすら活かされない徹底した空気っぷりはそういうギャグなのかと疑いたくなるほど空気でした。
・説明役に使いやすい好奇心旺盛なキャラでこれほど出番がなかったことは想像以上でした。
肝心のネタに脚本家の興味がないから当然の帰結ではあります。ギャグのために存在しているのにギャグでは使われない。最初から存在意義が失われたキャラでした。
■それ以外のキャラ
・メンバーですらモブ同然のゼンカイジャーにおける脇役なので空気以下でした。出番のあるときだけしゃべるモブキャラでしかありません。
・敵幹部は超空気なので敵本拠地に突入しての最終決戦が恐ろしいほどに盛り上がりませんでした。登場時に出落ちのネタがある分だけいつもの怪人のほうがよほど見せ場があったと思います。
・榊原郁恵さんを起用したヤツデがあそこまで空気だったことも想像以上でした。割り切りがしっかりしてるという点では褒められなくもありませんが。こんな扱いで怒られなかったのかは不思議です。
・フリントたちゴールドツイカー一家は出番はだいぶ多かったんですけどキャラとしては空気でした。
自己主張が全部「俺たちは兄貴の金魚のフンでいたいんだ!」ばかりだったので関心を持てませんでした。基本的にはジュランたちと同じ賑やかし役に過ぎないと思います。個人的にはフリントの演技が下手過ぎて賑やかしどころかしゃべる度に冷え冷えでした。
■休養が必要
・前々から感じていたことですが、香村さんは休ませないとダメだと思います。
ジュウオウジャー2016年~
ルパパト2018年~
ヒーリングっど2020年~
ゼンカイジャー2021年~
と、一年と空けずにシリーズ構成を続けるのはもう限界も限界だと思います。一つ前の作品からの改善が見られないどころかクオリティが悪化する一方です。ゼンカイジャーは全話単独脚本でしたが身になっているとは全く思えませんでした。こんなこと続けても何にもならないと思います。
総評お疲れ様です。やっぱり内容が、あまりないようですね。
返信削除薄いキャラだらけでしたね。ジュラン達は、ビジュアルや初期設定だけで充分個性的だから、掘り下げはいらないという意見もあるそうですが、私はそうは思いません。
話数をかけても薄いままだったカイトやステイシーには、何も言えません。
>こんなグダグダで面白みもない展開をされるくらいなら平凡な流れのほうがまだマシでした。
知らないところで勝手に解決するのは嫌ですね。映っていない間、何もしていないのも困りものですが。
>「いろいろ物を出したりできる魔法」
結局戦隊の力を使ってるっぽいのはマジーヌだけでしたね。終盤のボッコワスの方が使ってる感あったし。
ボウケンジャーのどこに上下分裂があったのか、聞いてみたいです。
>10年以上前のレスキューシリーズにも及びません。
レスキューフォースやレスキューファイヤーもご覧になってたんですね。
記念作品ということで、轟轟戦隊ボウケンジャーの感想を窺ってもよろしいでしょうか?
今度YouTubeで配信されるようなので、観終わったら返信します。
マルゲリータさん、こんにちは。
削除>ジュラン達は、ビジュアルや初期設定だけで充分個性的だから、掘り下げはいらないという意見もあるそうですが、私はそうは思いません。
私もそうは思いませんね。それはストーリーに対する侮辱だと思います。それで済むなら最初からストーリーなんて要りません。キャラのイラストやキグルミだけで成立するはずです。
ギャグに特化した作品なら初期設定のままで済ませてもそれも有りだと思いますが、ゼンカイジャーの場合はそういう方向性を目指していないと思います。
>知らないところで勝手に解決するのは嫌ですね。映っていない間、何もしていないのも困りものですが。
私は解決すること自体は構いません。ゾックスたちなら解決する方法が見つかれば叶えるのは難しくないと思うので。
ただ、あれだけ見つからない云々と引っ張ってきたならそれ相応の理由がないとご都合主義的で萎えます。あっさり解決していいならSDワルドを出さずに「ボッコワスを倒したら取り込まれていたSDトピアが解放された」で済んだと思います。SDトピアに行けなかったから解きようがなかった。行けるようになったから解けた。単純明快です。見つからねーとウダウダやってる無駄な時間も無くせます。面白さを出せないならつまらなさを消す方向で考えたほうが健全だと思います。
>結局戦隊の力を使ってるっぽいのはマジーヌだけでしたね。終盤のボッコワスの方が使ってる感あったし。
全員あれくらい派手にやっていいと思うんですけどね。メダルを使うこと自体がなぜか半分介人専用みたいな扱いになっていて理解に苦しみました。レジェンドは無視してゼンカイジャー独自の内容を追求するならまだわかりますがそっちもスカスカでは納得がいきません。
>轟轟戦隊ボウケンジャーの感想を窺ってもよろしいでしょうか?
ボウケンジャーは見たのがだいぶ前ですが、悪い作品でないけどそんなに良くもない印象です。
メンバーごとに対応する敵組織を出す形式は回ごとの特色やキャラの印象が強まって悪くない手法だったと思います。
ただ、悪い面も見過ごせないほどありました。
ブルーやピンクなど存在感の薄いキャラは結局出てしまいましたし、終盤には戦隊でもよくある残った的幹部の大掃除みたいに敵組織が次々と壊滅していき、段々飽きてきたり、メンバーと絡めたことで数話ごとに個人的な問題が蒸し返されてうんざりしたりと弊害もありました。
全体としては中盤まではバリエーションがあって楽しみやすいけれども、バリエーションに頼った反動で中盤からの中だるみと終盤のまとまりの無さが強まってしまったと思います。
販促として初動が強くて終盤が尻すぼみなほうがまだ適しているのでそういう意味では正しい方向性と言えなくもないとは思います。最近の最初と最後以外がスカスカのストーリーと比べた場合は学べる点はあると言える作品かもしれません。
こんばんは。前作のキラメイジャーもそうでしたが、登場人物の掘り下げがほぼないことが問題だなぁと。
返信削除ステイシーは画面に出てくる頻度が多いだけですからね…
後ゲスト回の少なさ。あっても介人の幼馴染のようにただ出てきただけみたいなのもありましたが…
キカイノイド達で個人的に一番残念だったのがブルーンで、トジテンドにいたのと好奇心旺盛という設定を上手くいかせないまま空気キャラになってしまったのは勿体なかったなと思いました。
ステイシーが過去戦隊のロボ召喚しましたけど、アレはなんだったんですかね。
したのは一度きりだったような気がしますが、インパクト狙いだったんでしょうか。
ただ出しただけって生かせなければ意味がないと思うんですけどね。
脚本の香村さんはジュウオウジャーの評判がよかったんで、どんどん使うぞってスタンスなんでしょうかね。
この方の癖なのか終盤に思い出したかのように伏線を回収することと、敵組織の描写が少ないという問題点はいつまでも改善しないので、メイン脚本に向いてないんじゃないかなと思いました。
特に今回のゼンカイジャーは、いくつもの世界を閉じ込めてるとやってることはすごいのにトジテンドの組織としての薄さ、終盤にずっと捜索していた母親が急に返ってくるはいくらなんでも雑すぎます…
Pとの相性も悪かったように見えますね。
Pがどれだけの権限を持ってるのか詳しいことはわかりませんが、ライダーゲスト回と八手三郎回以外は香村さんだったと思うので、酷使しすぎじゃないかと。
よく作中でふざけながらぜんりょくぜんかーいって言ってましたが、作品から全力全開なメッセージは何も伝わってきませんでした。
匿名さん、こんにちは。
削除>後ゲスト回の少なさ。あっても介人の幼馴染のようにただ出てきただけみたいなのもありましたが…
そういうの何にもありませんでしたね… 後から振り返ると幼馴染という接点があるだけ関係性が深いくらいでした。まぁ同居している祖母や両親への具体的な思いすら語られないくらいなので人間関係が出てこないのも当然なのかもしれません。
>キカイノイド達で個人的に一番残念だったのがブルーンで、トジテンドにいたのと好奇心旺盛という設定を上手くいかせないまま空気キャラになってしまったのは勿体なかったなと思いました。
この手のネタ中心の作風だと「あのワルドはきっと○○ワルドに違いありません!」と解説したりミスリーディングしたりと出番が多くなりやすいんですけどね。実際には自分から「俺は○○ワルド。お前達を○○にしてやる」と聞いてもいないのに自己紹介されてしまいました。
他のところでも単純に存在感がなく、バトルでも特に出番がない分だけマジーヌより悲惨な扱いだったと思います。
>ステイシーが過去戦隊のロボ召喚しましたけど、アレはなんだったんですかね。
一度切りでしたね。シリーズでも珍しく、比較的面白そうな要素だったのでがっかりしました。
予算がないとかスーツがないとか理由はあるんでしょうけど、一番の目玉要素っぽく見えたものが一度切りで消えたのは敵としてのステイシーのしょぼさを強調してしまった気もします。
>脚本の香村さんはジュウオウジャーの評判がよかったんで、どんどん使うぞってスタンスなんでしょうかね。
たぶんシリーズ構成ができる脚本家が居つかないので囲い込もうという魂胆だろうと私は思っています。だからといってこんなに乱用したら育つものも育ちようがないと思います。
>この方の癖なのか終盤に思い出したかのように伏線を回収することと、敵組織の描写が少ないという問題点はいつまでも改善しないので、メイン脚本に向いてないんじゃないかなと思いました。
最初に考えたストーリーの分量が4クールには足りてないのに、初期案に固執して広げようとしない傾向があると思っています。そういう点では向いてないと思います。
最初からもっと多めに詰め込んでおくなり途中で膨らませるなり、4クールの作法を覚えてほしいんですけど今のところ改善している様子は見られません。
プロデューサーという強権を振るえる存在がいれば強引にでも変えられるかもしれない、という点では白倉との化学反応を少し期待していたんですが実際には途中がいつも以上にスカスカになって余計に悪くなっただけでした。
総評お疲れさまです。
返信削除ジュウオウとルパパトのメインライターを努めた香村純子さんがメインライターをしていたので、放送前の期待値は高かった方でした。
しかし、蓋を開けてみると香村さんらしさがなく、ギャグ全開だったので、ゼンカイジャーを数話しか見ていません。
この総評を見て、香村さんの強みと弱みが浮き彫りになりました。
香村さんの強み
・血の通ったキャラクター
・ストーリー構成
・シリアスな場面を描くのが上手
・スーパー戦隊への愛
弱み
・引き伸ばしをしやすい
・ギャグが苦手
・多分敵の描写が苦手
強みと弱みはジュウオウやルパパトでも明らかになっています。
東映は香村さんの強みと弱みを知っているのでしょうか?
どちらにせよ、スーパー戦隊愛の強い香村さんを利用したのは許せません。
香村さんは脚本家の実力は高いので、自分のやり方で脚本を書いてほしいです。
わかりきった結果を確認するだけになってしまったのは残念でした。
削除苦手なりに積極的にやったようにも見えないので「失敗から得られるものもある」ともなりそうもありません。作品としても実験としても成果が得られたようには見えません。企画段階で検討した上でボツにするのが最良だったように見えます。