『仮面ライダーゼロワン』 第01話「オレが社長で仮面ライダー 」:感想

2019年9月1日

【ストーリー】

■主人公のキャラが伝わってこない
・1話の時点だと話が硬すぎて無理やり詰め込むだけで精一杯だったという印象です。
個人的には主人公の話は全然なく、ヒューマギアなど舞台設定の話が中心だったように見えました。ヒューマギアについてはわかりましたが主人公の人となりは全然わかりませんでした。それ自体は有りなんですけど、初変身を中核に据えた展開でやるのは矛盾しているように感じます。

・主人公は主人公のお笑いにかける気持ちが描かれていない点が物足りなかったです。
「みんなを笑わせるお笑い芸人から、みんなの笑顔を守るヒーローに転向した」という展開のはずなのですが、なぜお笑い芸人にこだわるのか理由がわからないし、実際ウケてないので止めるのは主人公にとって良いことなんじゃないかと思うところもあって、いろいろピンと来ませんでした。

・笑顔に対する真摯さに関しては今回怪人にされた芸人AIのほうがよほど感じられた点もストーリーとしてはマイナスです。
AIは客のいない舞台裏でもお客さんの笑顔を想像して微笑んでいたりして、不機嫌そうに「なんでウケないんだろうなー」と言っている主人公よりずっと印象が良かったです。現時点で一番好印象の人物です。
AIに対する印象が良い分、「AIには人間のお笑いは理解できないでしょ」と悪態をついていた主人公の印象は余計に悪く感じました。
AIの印象を上げるなら主人公もAIを認めて「あいつ面白いなー 俺ももっと笑わせられるようがんばらないと」とリアクションしたり、そんなAIの意思を捻じ曲げた敵に対して激怒するとかしたほうが主人公の印象は良くなったと思います。

・1話の印象から逆算すると主人公の人格は、
「ヒューマギアを父親と育った結果、人間もヒューマギアも別け隔てなく接する優しい青年。贔屓にしているAI芸人の人格が捻じ曲げられ殺戮兵器にされる場面を目の当たりにし、人間とヒューマギアを守るために戦うことを決意する」
くらいでお笑い芸人を差し挟む余地がないように感じました。お笑い芸人の設定を入れるにしても1話でやる必要はないと思います。2話以降でも「社長になる前は俺はお笑い芸人だったんだ」と話を振るのは難しくないと思います。「人の笑顔を見るのが好き」という価値観は一般的なことで、わざわざ強調する意義は薄いと思います。下手にやるとかえってうさんくさく見えます。

・台詞と主人公の馴染まなさも気になりました。
変身するところでいきなり「ラーニング完了」と言い出すから変身すると人格が変わるタイプかと思ったら全然そんなことはなく、元の一般人メンタルのままでした。
かと思えば「お前を止められるのはただ1人…俺だ!」と勝ち誇り始めたり、決め台詞として用意した台詞がどれも主人公に合ってないように感じました。 どの台詞も銃を撃ってた戦闘部隊の人に言わせたほうが似合いそうな台詞で違和感が強かったです。

・父親と呼んだ相手がヒューマギアだったり、「社長に孫がいたなんて知らなかった」と言われていたり主人公もロボなんじゃないかと思わせる描写がありましたけど、このぎこちなさはそこに収束するんでしょうかね?

■倫理観が違う
・お話の違和感では倫理観の違いも気になりました。
あの遊園地の支配人は本編でも公式サイトでも善人のように扱われていますが、私にはそうは見えませんでした。ヒューマギアが暴れ始めても避難誘導もしないで「私の遊園地が…」と呆然とするだけでお客さんのことをまるで考えていないように見えたからです。単なる撮影での齟齬かもしれませんが、同じスタッフで作れられた『エグゼイド』が狂った倫理観だったのでゼロワンの倫理観も不安を感じます。


■あの敵は人間?
・敵幹部らしき人物も雑魚ヒューマギアに襲われていたことが気になりました。
ヒューマギアに襲われていたということは、あのモジャ髪のキチガイ風の幹部はヒューマギアじゃなくて人間なんでしょうかね?
物体認識とかいうのを作中で強調していたので「人間じゃないけど人間として認識される」みたいな設定なのかもしれませんが。たとえば「凶暴な人間への対処法をヒューマギアに学ばせるために用意された『人間という設定をされたヒューマギア』」とか。
それとも「暴走してないヒューマギアは正常なヒューマギアも攻撃する。幹部は”正常”なヒューマギアなので攻撃された」という話に過ぎないのでしょうかね。

■人工知能最強論
・最初の衛星とリンクしての学習時の様子が引っかかりました。
敵の動きが止まって見えたり、5秒以内にゼロワンの使い方を覚えられるほど知覚レベルが高いようです。しかしゼロワン自体は常時リンクできるわけではないようです。
これだと反応速度が違い過ぎて、もしもあの人工知能と常時リンクできる存在が現れたらゼロワンも怪人も勝ち目がないと思います。1話時点から主人公が強化フォームになろうが「まぁ人工知能のほうが強いけど」と言われ、ピンチになる度に「人工知能使えないの?」と毎回ツッコまれるポイントができるのはよろしくありません。明らかにオーバースペックな設定で放り投げるしかなさそうに見えるけどどうするんでしょう?


【アクション】

 ・これまでよりだいぶ良さそうでした。
アクション監督とメインのスーツアクターが変わったのでその成果だと期待を持てます。

・今回の中だとキックが良かったです。
空中に蹴り上げて更に下に叩き落としてからキックするのは流れがあって良かったです。棒立ち相手の必殺技はもううんざりですよ。

・敵の攻撃をかいくぐって突進するシーンは個人的には好みでなかったけど良いんじゃないかと思います。
私は一つ一つのカットが長過ぎて間延びしているように感じてしまいました。バスの中とか車の上とか状況をはっきりさせる記号があるのだからもっとスピード感を出しても視聴者は理解できるんじゃないかと思いました。


【デザイン】

■かばん剣
・正式名称は「アタッシュカリバー」だそうです。
デカくて重そうで使いづらそうでした。剣としては普通にかっこよくないのもマイナスです。
とはいえ、最近のライダーの初期武器は空気で、フォームチェンジや新武器次第で早ければ5話くらいにはもう存在抹消されててもおかしくありません。そんなに心配しなくても大丈夫かもしれないのでとりあえず様子を見ます。かっこいい使い方をしてくれればそれが一番ですが。

■デザイン間違ってない?
・ヒューマギアの顔の設定がおかしいように感じました。凶暴化した後のマスクより素顔のほうが怖かったです。
仮面を被せるイメージなら素顔はもっと善良そうな顔にしたほうがギャップが出るし無理やり従わせていることとも合うと思います。マスクを壊して下から素顔が見えたときの後のほうが「うわ、怖」となるのは変だと思います。


次回はもう2号ライダーが変身するようです。
これだと主人公がお笑い芸人を止めなくても良くなってしまいそうに思えますが2号ライダーは人間守る気ゼロ系の人なんでしょうか。
 

コメント

10 件のコメント :

  1. 主人公の要素詰め込んでる感を除けば、ヒューマギアが市民にまで受け入れられて共存している世界観は1話で十分に伝わって来たので良かったかなと。
    ヒューマギア自体もありきたりな感情を得て暴走するタイプの機械では無さそうな上に、感情の発露を窺わせる要素を1話目から取り込んで来たのも興味深いです。
    ジオウは十数話で脱落したので今回も取り敢えず様子見しようかと思いますが、兎に角前作が1話の段階でチリも残らないような印象しか無かったので、今回2話目以降が気になる展開なだけでも安心してしまいました。
    心配事と言えば指摘にあった通り倫理観問題でしょうか、事件のショックで腰が抜けて言葉もぽつぽつしか出なくなったというのも考えられない話では無いと思うのですが、毎回この調子では心配になりますね。

    返信削除
    返信
    1. >ヒューマギア自体もありきたりな感情を得て暴走するタイプの機械では無さそうな上に、感情の発露を窺わせる要素を1話目から取り込んで来たのも興味深いです。

      今のところは主人公たちよりヒューマギアのほうに興味がありますね。主人公たちは基本的に「壊す」「守る」しか言ってませんし。現状維持より変化のあるほうがそそられます。

      >心配事と言えば指摘にあった通り倫理観問題でしょうか、事件のショックで腰が抜けて言葉もぽつぽつしか出なくなったというのも考えられない話では無いと思うのですが、毎回この調子では心配になりますね。

      そういう解釈はできるんですが、「夢は暴力で壊れる。夢が壊れた人間は立ち尽くすばかりで何もできない」という話になってこれから事件が続発するであろう世界では事件後の支配人の言葉が更に空虚になってしまうと思います。それはそれで行き詰まると思います。

      合ってない決め台詞も相まって、かっこつけようとしてるけど足元がお留守で締まらない作品にならないか不安です。

      削除
  2. こんにちは

    倫理観については、主人公がヒューマギアの命をどう思っているのかがすごく気になりました。
    知ってる芸人ロボが突然目の前で暴れだしたから変身してぶっ壊したようですけど
    ぶっ壊すことに何のためらいも後悔も感じていないんでしょうか。
    或人にとっては「あれはモノだ!」ということなのかもしれませんが
    個人的にはあれほど精巧に作られている以上、
    怪人化させられた上に無慈悲にぶっ壊されたヒューマギアに胸を痛めずにはいられませんでした。
    (腹筋崩壊太郎が怪人化する場面は主人公見てますよね…?)

    「人とヒューマギアの命は同等か」については今後作中で語られていくのかもしれませんが
    現状の主人公の考えや価値観を知りたいです。
    個人的に、フューマギアに育てられた人が「あれはモノだから壊してもOK!」なんて
    思っていてほしくないです…

    単なるロボットでなく人工知性を取り扱う以上、エグゼイドの「患者やバグスターの命」のように
    めちゃくちゃな扱いにならないことを期待したいです。

    返信削除
    返信
    1. 匿名さん、こんにちは。

      作中での主人公のヒューマギアへの認識はまだ不明だと思います。
      特に反応がなかった点から考えると「ただの機械」とみなしているのではないかと私は考えます。そうでないと敵を倒した後に「着地に失敗したから足が痛い」とか言っていたことが、人を殺した直後に自分のことしか気にしてないヤバいやつという意味になってしまうでしょう。エグゼイドのスタッフなのでそんな人物でも不思議はありませんが。

      削除
  3. エグゼイド2、という感じでした。要するに嫌な予感です。

    ヒューマギアを「父さん」と呼ぶ回想、機械に笑いがわかるかよと悪態を吐く、次回予告で人類の夢だと主張する、と主人公のスタンスがさっぱりわかりません...。次回で考えを改めるのか腹筋太郎が物凄く嫌いかのどっちかなんでしょうかね。まあ無節操に極端なギャップをつける大森Pのいつもの手癖なんでしょうけど。登場して1クール経てばだいたい全員にかわいそうな過去が付加されることでしょう。

    5秒間で仮想空間でチュートリアルを済ませたシーンは、今後考える時間やイズと相談する時間が大量に用意できてしまうのですが、うまく扱える気がしません。
    そして腹筋崩壊太郎、あっさり粉砕しましたね。チュートリアルで手遅れを知ったのかもしれませんが、なんの葛藤も挟まずギャグシーンで締めたのはたぶんマズいです。今後どれだけヒューマギアを擁護しても薄っぺらくなってしまうでしょう。何かにつけ後々足を引っ張りそうな要素を多く感じました。

    アクションは序盤&CG多めだったので保留。個性は感じませんが徒手格闘がスピーディーで良かったです。

    返信削除
    返信
    1. >ヒューマギアを「父さん」と呼ぶ回想、機械に笑いがわかるかよと悪態を吐く、次回予告で人類の夢だと主張する、と主人公のスタンスがさっぱりわかりません...

      今のところよくわかりませんね。父親に関しては子供の頃と大人になった今では考え方が変わったのかもしれません。それなら1話からあのシーンを入れる必要はなさそうですけど。

      >5秒間で仮想空間でチュートリアルを済ませたシーンは、今後考える時間やイズと相談する時間が大量に用意できてしまうのですが、うまく扱える気がしません。

      黒歴史にするのが一番マシな処理だと思います。衛星を壊すという手もありますが、あれがないとヒューマギアが動作しないっぽいんですよね…

      削除
  4. 遊園地の支配人って善人扱いでいいんですかね? 客の笑顔を願う気持ちは本物でも、売れないからといって或人をあっさりクビにした人が手放しにいい人とは思えないのですが、作中で特に問題のある人間とは描かれていなかったことに違和感がありました。
    脚本家には仕事を放棄してゲーム病になりかけた院長を肯定的に描くなどの前科があるので、認識のズレがメインキャラの描写にまで侵食してくると不安です。

    返信削除
    返信
    1. 作中では善人扱いで間違いないと思いますよ。東映公式曰く、笑顔の大切さなどのテーマを体現した存在だそうですから。

      クビにした件については矛盾なく解釈するなら、
      「笑えない芸人はゴミなので当然の対応である(ヒューマギアは役に立つから価値がある。暴走したヒューマギアは有害なゴミで処分されて当然)」という価値観なのでしょう。

      削除
  5. まず主人公がお笑い芸人志望であるということ、これは周囲のスタッフから止められたらしいですがPの大森くんは『良いんだよ』で強行したみたいな話がどこかで書かれていましたが、大森くんのこの謎の自信は何処から来るんでしょうか?案の定、アルトがスベったときは『そらスベるやろ』『サムいなこいつ』と、ある意味視聴者が主人公に抱いてはいけない負の感想を抱くようになってます。そこに何ら作劇上の利点は無く、ただの大森くんの気分でしかないことが容易に想像出来ます。(過去の彼の作品でそういう要らない設定は無数にあったので)実際の現場でスベることなく面白いというのは、その話術の中に多分に毒を含んでいる事が多く、そういう笑いから『人を守ることで笑顔を守るというのもアリかな?』に転換するというのは、アルトという人物のお笑い観がそうとう薄っぺらく、間違ってるという気がします。まあ人を守るという方向性に転換したというのは百歩譲るとして、今後もあのサムい、笑えないノリを続けるんだろうな、と思うと、一年間共感出来ない主人公になる感が満載で頭を抱えざるを得ません。また、園長が被害者として描かれていましたが、そもそも彼の雇っていたヒューマギアが暴走したから怪我人も出たんだろうし、という責任問題を全て回避した脚本になっているのは、あまりにもペラペラで、“仮面ライダーを観た世代が子供を持つようになり、親子で視聴するようになった、平成ライダーのその先を考えるべき時期”の令和ライダーの一発目としてはあまりにも子供だましな脚本と思いました。

    返信削除
    返信
    1. Shuzoさん、はじめまして。

      >アルトがスベったときは『そらスベるやろ』『サムいなこいつ』と、ある意味視聴者が主人公に抱いてはいけない負の感想を抱くようになってます。

      あの手の設定は「失敗している間は視聴者は退屈するだけ」という点が問題だと思います。笑えないギャグだから失敗をギャグシーンとして扱うこともできません。本腰を入れて取り組むのでなければ、映像作品向きではないと思います。

      >園長が被害者として描かれていましたが、そもそも彼の雇っていたヒューマギアが暴走したから怪我人も出たんだろうし

      それは現時点では何とも言えないと私は考えます。
      あの世界のヒューマギアへの認識が「ヒューマギアには欠陥があるわけないのが当然。絶対に失敗しないヒューマギアに比べたら人間が何かをやること自体にリスクがある」くらいの信頼度であれば支配人の落ち度とは言えないでしょう。

      削除

 コメントは承認後に表示されます。
*過度に攻撃的な言葉や表現が含まれている場合、承認されない場合がございます。節度と良識を保った発言をお願いいたします。