『魔法つかいプリキュア』1クール目:感想

2016年4月28日
『魔法つかいプリキュア』の1クール目まで見終わった時点での全体感想です。
どこまでが1クールの節目なのか掴めなかったのですが、10話の魔法学校編で一区切りと考えたいと思います。全体では最新の12話まで視聴済みです。


【全体の印象】

■軸が見えない
・この作品は何がやりたいのか、どこが長所なのか伝わってきません。
全体の構造は二人セット変身ですが、初代とSS、スイプリのフォーマットに乗ってやっているだけで目的があってそうしたわけではなさそうに見えます。プロデューサーなど上層部の要望をそのまま入れて、ただやっているだけという感じです。販促の中で何をやりたいのかという主体性が感じられず、およそ販促用キッズアニメに向いていないタイプに見えます。

・ストーリーやキャラクターなど一貫して前進し続けるものがなく、かといって1話1話を楽しくという気概も感じられず、まったりとした日常系でもなく、単純にとりとめのない内容が続いて見続けるモチベーションが湧きにくいタイプです。


【良いところ】

■変身バンク、というかルビー
・変身の演出はどれも良い感じでした。中でもフォームのうちの1つのルビースタイルはすごかったです。
演出も作画も素晴らしく、地面が縮むように二人の距離が詰まるアニメ的なケレン味のある動きもあり、今のところ本編全ての要素の中でもぶっちぎりでワクワクしました。この先まほプリがどうなろうと「ルビーはすごかった」と断言できる確かなものを感じました。

■デザイン
・変身前と後で落差が大きいところが良いです。
変身前は小学生かと思うような子供っぽいデザインで、変身後は大学生くらいの大人っぽいセクシーなデザインになります。フォームによっては胸がある点も攻めてて良いと思います。「変身」はプリキュアの重要な要素なのでそこを強調していくのは正しいと思います。

・スタイルごとに衣装と髪型が大きく変わる点も楽しいです。
基本フォームのダイヤは定番の魔法使い風。ルビーはガーターベルトなど過激だけど全体はカンフー風でスポーティーにまとめ、サファイヤは踊り子風でより大人っぽく、トパーズはお菓子モチーフにかぼちゃパンツでファンシーに、と着せ替え感があって見ていて楽しいです。

■モフルン
・今回の妖精枠その1で、変身アイテムも務めるくまのぬいぐるみの形のマスコットです。
その有能さには目を見張るものがあります。主人公二人がケンカをすればそれとなく諭し、戦いとなれば変身アイテムとしての役目を全うし、変身が終わったら足を引っ張らないように速やかに離れ、必殺技のときにはタイミングを逃さずに駆けつける。果ては後述の赤ちゃんを一人で育て上げ、可愛いマスコットというより「モフルンさん」とさん付けしたくなる貫禄があります。完璧キャラのようで私情からわがままを言ったり怯えたり、人間味も感じるところもある非の打ち所のない妖精だと思います。

■はーちゃん
・今回の妖精枠その2で、赤ちゃんです。
まず目を引いたのはそのデザインでした。暴力的な可愛さでした。ピンクのほっぺに、目にはピンクの花柄マーク入り、更にその上目にハイライトまで入っています。1つだけでも充分可愛い要素のものをこれでもかとてんこ盛りにしてあります。これでくどくならずにまとめたのは大したものだと思いました。

・性格もプリキュアの赤ちゃん枠とは思えないほどに従順で素直で、子供なのに時には役割を果たしていて偉いです。できすぎな気もしますが育ての親がモフルンならそれも納得です。


【悪いところ】

■ストーリー展開
・脚本にやる気が感じられません。
一見本筋に関係のないどうでもいいところに力を入れて、その力を入れたところをメインにして話を組もうとしないことは理解に苦しみます。魔法界の生物やアイテムを突然紹介したかと思ったら、紹介したものの出番はそれっきりでその回もその後も話に関わらないってどういうことですか。
3人の補習仲間なんて何だったのでしょう? みらいたちと先生だけでも同じような話を作れたと思います。ほうきで飛ぶのが苦手な子がいて、ほうきを使った試験があったのに何の描写もなく課題をクリアしていたときには目を疑いました。いったい何のためにキャラを足したのか理解できません。
本筋の話もしっかり煮詰めて、息抜き程度に挟むならわかりますが本筋がスカスカな現状でやられても「いいから本筋に力を入れなよ」とイライラするばかりです。

■販促
・販促にもやる気が感じられません。
スマホ商品で子育てアイテムの「はーちゃん」はモフルンが面倒を見るばかりで主人公の二人は全く関わらず、特にトラブルを起こすこともなくどんどん育っています。これじゃ赤ちゃんというよりたまに遊んであげる隣の家の子供です。

・ロッドなど別のアイテムにはめて使う「リンクルストーン」の入手過程は適当にも程があります。
道端に落ちてたとか急に空から降ってきたとか思わず偽物なんじゃないかと疑うような手法で手に入ります。それも一度使ったら終わりで戦闘用アイテムとしても全然ワクワクしません。

・フォームの使い分けも謎です。
特徴があるはずなのに活かさないのです。たとえばルビーとサファイヤです。ルビーはパワー、サファイヤは空を飛べる、と明確な違いがあります。それなのに空を飛ぶ相手にパワータイプのルビーを使ったりするのです。主人公たちに何か考えがあってのことかと前向きに考えてみても、力押しの真っ向勝負がほとんどでどうしてそのフォームを選んだのか納得できることがあまりありません。
フォームチェンジといえば相手に応じた臨機応変な戦いができることが最大の面白さだと思います。しかしまほプリの場合は最初にフォームを選んだら最後までそのフォームで戦い続けます。本質と言っても過言ではない王道を外しながら、それに代わるコンセプトが見えてきません。見れば見るほど何がしたいのか不思議に思えてきます。

・他にもAパートとBパートの間のアイキャッチでしか登場しないビーズメーカーなど信じがたいほどに玩具の扱いがぞんざいです。とりあえず出しておけばいいんだろうと思っているのではないかと邪推してしまうほどやる気が感じられません。

■リソース不足
・作画にあからさまに力がありません。キャラ作画もアクションも変身バンクや必殺技でさえも余力の無さがにじみ出てしまっています。
予算が減らされたのかと思うほど明らかにクオリティが落ちています。前作のプリプリが全話力が入っていただけに落差を感じずにはいられません。これは現場スタッフに落ち度はないと思うのですが、見たときの印象が単純に下がることは避けられません。


【総合感想】

■モヤモヤします
・前作のプリプリと比べる以前に単純に作品として微妙な印象です。
悪いところも良いところもはっきりしないところがモヤモヤします。原因がはっきりしているリソース不足は克服できるかもしれませんが、ストーリーやバトルは疑問です。どこをどうすれば解決できるのか、それ以前に何をしたいのかがわかりません。
ストーリー展開も設定もバトルも何もかもやらされている感じで、「私はこれがやりたいんだ!」とスタッフの意気込みが伝わってくる部分が見当たりません。こういうのは、やりたいことはわかるけどちゃんとできてない迷走タイプより辛いです。

■現状だとオススメできない
・面白いと断言できる要素がはっきりしない点が致命的です。
W主人公のみらいとリコの関係は良いのですが、それは初代やSS、スイプリでもありますし、まほプリにしかない他にはないユニークさがあるわけでもありません。バトルや玩具も同様で、「まほプリは○○が面白いからオススメ」と言える要素がありません。まだ1クールなので結論を出すには早いですが現状だと分の悪い賭けと言わざるを得ません。他の作品を見るほうが無難だと思います。



コメント

4 件のコメント :

  1. 1クール目は、まあ話としては悪くないかなという感じでした。

    モフルンはデザインも可愛くて、足を引っ張っている様には感じさせなくて好きです。
    ただ「甘いにおいがするモフ」がちょっとしつこいかなと思います。

    リンクルストーンの入手に関しては確かに雑だなと思いました。
    伝説として語られているのに入手の経緯がまるで初めてこの世界に現れた様に見えるからです。

    敵勢力もなんか魅力に欠けるような気がします。
    ガメッツは武人キャラのはずなのに、自分では全く戦おうとせずヨクバールに任せているのが不自然でした。
    スパルダは問題ないと思います。
    バッティは最初に出てきた幹部のはずなのに印象が薄いですね。前作のクローズのイメージが強いからかもしれませんが。
    3人に共通して違和感を覚えるところはエメラルド以外に興味が全くないところです。
    てっきりオーズのように争奪戦になると思っていました。
    なんとなくですが全員ヤモーに踊らされてるとも取れました。

    戦闘に関してはリンクルステッキを使うのが早いように感じました。

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    1. >ただ「甘いにおいがするモフ」がちょっとしつこいかなと思います。

      「甘いにおいがするモフ」は、役に経っていないことが問題かなと思います。
      あれがなくても特に困らない印象があります。本来ならモフルンの探知がきっかけで冒険が始まるべきなのですが、実際には学校の授業など関係ない出来事からリンクルストーン発見につながっています。モフルンが言う頃にはリンクルストーンの補足が視聴者にとってわかりきった展開で面白みがないどころか興ざめです。

      みらいの「今『○○』って言いました!?」やリコの「落ちてないし」もそうなのですがまほプリは口癖を全然扱えていないと思います。こういう台詞回しは何も考えずに使うとマンネリになってつまらなくなってしまいます。言うシチュエーションに変化を加えて同じ台詞でも違う意味合いを持たせないと口癖の意味がありません。口癖以外にリンクルストーンやフォームチェンジなどもそうですが、まほプリの場合ただプロデューサーなど他人の指示どおりに入れているだけに思えます。

      >伝説として語られているのに入手の経緯がまるで初めてこの世界に現れた様に見えるからです。

      そこが奇妙ですよね。
      ルビーやサファイアのように謂れがあるほうが自然だと思います。空から振ってきたタンザナイトなんてあまりにふざけすぎだと思います。

      >敵勢力もなんか魅力に欠けるような気がします。
      >3人に共通して違和感を覚えるところはエメラルド以外に興味が全くないところです。

      私も魅力はないと思います。またスタッフには魅力的に見せる気もないのだろうとも思います。
      ただの敵、それ以上でもそれ以下でもないのでしょう。それ自体は選択肢としては有りだと思います。敵キャラを描こうとすれば時間がかかります。敵に時間をかければ他のキャラにかけられる時間が減ります。みらいやリコたちに集中したいというのなら、敵を空気にすることも悪くない判断だと思います。もっとも、「敵に割く時間なんてない!」と言えるほど、まほプリが時間を有効活用できているかについては疑問ですが。

      >戦闘に関してはリンクルステッキを使うのが早いように感じました。

      早いことは早いですね。他のプリキュアで言うところの「道具なしでの初期浄化技」に相当する存在ですので。しかしステッキ以外の技がないのでバトルの構成などには特に影響はないと思います。

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  2.  1クール目の総評を読んでみてと自分の感想も込めて、前回のプリンセスプリキュアの全体の完成度が高かったので、同じ目線で見てしまうと些か肩透かしを貰ってしまうのが顕著でしたが、向こうは『夢に向かう成長』こちらは『変わりたい自分(変身)』という風に解釈しています。
     主人公のみらいとリコは初期シリーズに近いボケとツッコミがあり、メリハリが効いているのがよく思えます。どのシリーズに言えますが主人公の親族(母親)は器が大きく包容力があるのが見ていて安心できます。また水晶の中にいるキャシーさんは新井さんの演技と相まって見ている側から今度はいつ登場するの?と心待ちになっています。
     しかし些か残念なのは、敵キャラの方々、前回のクローズさん達の印象が強かったせいか、今回の幹部キャラは魅力に欠けるのがあります。またモチーフとなっている、コウモリ・クモ・カメも統一性がなくタイトルにある「魔法使い」とは縁遠い気がします。(とは言っても魔女は前回ラスボスやスマプリでも登場しているので二番煎じ感があるが)またジュウオウジャーから連続してみている為、敵の行動のワンパターン化が目についてしまうのも、欠点だと思います。
     前作がプリキュア初心者にオススメできる作品でしたが、今回は事前知識の必要とする作品になっていますが、この先どう舵取りをしていくのが見ものです。最後に学園長先生がブルーと同じ道を歩んでいきそうで、また悲劇が繰り返されるのか心配です(補修試験の時、生徒を見捨て、自分だけ絨毯でその場を離れたシーンを見ての感想)

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    1. >こちらは『変わりたい自分(変身)』という風に解釈しています。

      なるほど。私は若干懐疑的です。
      というのも匿名さんの文章にも含まれていますが、それは変身の持つ意義と重なるからです。プリキュアの主要要素の一つが「変身魔法少女」である以上、それは当然持つ特性であり、全てのプリキュアにも含まれている要素ではないかと思います。まほプリスタッフがあえてテーマに据えた可能性もありますが、それほどの強い覚悟を感じません。

      主役二人から意欲を感じないことが一つの反証です。
      これまで描かれたみらいの願望はおおよそ2つ、「ワクワクすることをしたい/見たい」、「魔法使いになりたい」でした。魔法使いになる夢は既に叶いました。しかもプリキュアとは関係なく、魔法学校に通うことで実現してしまいました。その後は「リコが進級できるように手伝う」など自分のこととは関係ないことが目標になっています。「人助けをしたい」といった大目標があるならわかりますが、今のところ志が提示されたとは思えません。
      リコの願望は「立派な魔法使いになりたい」です。プリキュアになったことで叶えられたのかと思いましたが、本人はプリキュアの力に頼るつもりはないように見えます。現状提示されている一人前の魔法使いになるための筋道も「学校で勉強したり、経験を積む」だと思います。
      変身がテーマにしては物語の構造との関連性が低いと私は判断します。とはいえ、まほプリ自体が毎回ぼんやりした内容で1話ごとのテーマ性も感じられないことがあるので自信はありませんが。

      >水晶の中にいるキャシーさん

      キャシーさんは思ったよりも濃かったです。
      校長先生の使う道具だからあくまで道具かと思っていました。

      >些か残念なのは、敵キャラの方々

      敵は描く気がないみたいですね。
      みらいたちに集中したいようなのでそれも一つの手だと思います。ただ、もう少し悪役としての働きはしてもいいと思います。現状だとリンクルストーンが存在しなかったら一生洞窟にこもっていそうな印象です。

      >最後に学園長先生がブルーと同じ道を歩んでいきそうで、また悲劇が繰り返されるのか心配です(補修試験の時、生徒を見捨て、自分だけ絨毯でその場を離れたシーンを見ての感想)

      校長先生のポジションが重要になればそういうこともあるかもしれませんね。
      今のところは空気なので心配する必要はないのではないかと私は考えます。逃げたり手伝わなかったりするのは他の大人も同じですし、特別注目する価値は薄いと考えます。

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