読んで驚け! 『獣電戦隊キョウリュウジャー公式完全読本』:レビュー&感想

2014年8月4日
キョウリュウジャーのムック本『獣電戦隊キョウリュウジャー公式完全読本』を読み終わりました。
獣電戦隊キョウリュウジャー公式完全読本 (ホビージャパンMOOK 574)獣電戦隊キョウリュウジャー公式完全読本 (ホビージャパンMOOK 574)
(2014/06/20)
東映株式会社

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【こんな人にオススメ】

・キョウリュウジャーが大好きな人
・脚本家の三条陸先生のファン
・特撮の製作(監督・脚本・撮影・プロデューサー)に興味のある人
・怪人のデザインに興味のある人



【内容説明】

・最初に簡単に内容を説明したいと思います。
ページ数は全部で127ページ。中身は全てインタビューで文字がぎっしりです。
文字がないページは、最初のスチール写真10P+扉絵など15P程度のみ。
インタビューが100P近くも詰まっていてボリュームたっぷりです。
しかも雑誌サイズのA4版で文字小さめで、デザイン系以外は写真もほとんどなく上から下まで文字がぎっしり詰まっています。
私の場合、ひと通り読むだけで3時間以上かかりました。

・ページ数の細かい内訳は長くなるので、別の記事にまとめました。
そこだけ知りたい方はお手数ですがそちらをご覧ください。


【目玉紹介】

■三条さんの怒涛の全話解説!
・シリーズ構成で全話の脚本を書き上げた三条さんが12ページかけて、Vシネまで含めて全話について解説してくれます。
実は私が購入を決意したのも、この話をツイッター上で見かけたからでした。
普段はこの手の関連資料までは買わない主義なのですが、この話がきっかけになりました。
全話解説という時点で珍しいのに、その上全話の脚本を書いた本人が解説してくれる。
こんなケースはそうそうありません。

・内容も素晴らしかったです。
楽しみを奪わないようにこの場では多くは語りませんが、「後でシアンになる優子の出番は脚本段階ではもっと多かった」など、興味深い制作秘話が書かれています。
カットされた部分には、優子のように当時見ていたときに唐突に感じた部分もいくつかあって、おかげで謎が解けました。
三条さんがやったことの解説と監督など他のスタッフとの関わり合いと両方書いてあったのが嬉しかったですね。
監督のインタビューでも三条さんの話題が上がることがあるので、両方読むとまるで現場で二人の間に立って話を聞いているような感じがしました。

・カーニバル初登場&トリン死亡の27~29話に関しての解説は実に三条さんらしいと感じました。
「3話構成だと普通パワーアップ前に当たる真ん中の回が、ただピンチになるだけの”谷間”になってしまいがちなんですが、トリンが死ぬことでそこを一番印象的な盛り上がりにできたのが良かったですね。」(54Pから一部省略して抜粋)
全くその通りだと思います。谷間だからしょうがない、と投げやりにならずにどうしたら面白くできるかを考える。
キョウリュウジャーを見ていて感じる人柄が文章になっていました。

・個人的には「(ストーリーに絡む)あの要素は監督の提案なんです」という解説がある一方で、逆に映像部分で「あれは僕が提案したんです」と解説される場面もあったりと、意外な発見がありました。
その中には何度も登場する物語に欠かせない部分も含まれていて、とても驚きました。
良い意味での”ライブ感”ってこういう意味なんですね。初めて理解できた気がします。

・一番驚いたのは作中のキーフレーズ「戦隊」が当初の予定になかったことです。
1話の台詞をプロデューサーが気に入って、もっと入れてほしいと言われたから作中のテーマとして組み込むことにしたそうです。
最初から組み込まれている要素だと思っていましたが、そんな背景があったのですね。
その後の「どうやって『戦隊』という言葉に意味を持たせるか」という部分も勉強になりました。

■撮影秘話
・内容について語ってくれるのは三条さんだけではありません。
役者さんに監督、それにスーツアクターのみなさんも撮影秘話を語ってくれています。
役者さんと変身後を演じるSAさんの関係性が特に興味深かったです。
どちらもそれぞれ演技に刺激を受ける部分があるそうです。

・特にカオス様のSAの日下さんの発言は面白かったです。
「1話で最強のモンスターを送り込んだのにやられちゃって、それに対して怒ればいいのか、平然としてればいいのか難しかった。結局、中途半端にして『監督、あとはアフレコでお願いします!』」と逃げたそうですw
緩いネタがかえってリアルに感じられます。

・個人的には名乗り時の変身ポーズの秘話が面白かったです。
ブルーが一番シンプルでグリーンがやたらに凝っていたのが、SAさんのやる気の問題だったとは思いませんでしたw
そういうもんなんですね。もっときっちり考えているのかと思っていました。

■デザイナーあれこれ
・私はキョウリュウジャーの怪人デザインが好きなので、デザイナーのK-Sukeさんの話はとても興味深いものでした。
特に「自分の怪人はジオラマ怪人です」という説明はすごく納得がいきました。
キョウリュウジャーの怪人は「泥棒」「宝探し」など一つのテーマに沿って、身体の節々までデザインされていて好きなのですが、私が怪人に対してぼんやりと抱いていた印象が明確に言葉にされてすっきりしました。
デザイン画と解説コメントを見ると、見ていて気付かなかったこともわかって読んでいて楽しかったです。
キョウリュウジャーの怪人デザインが好きな人なら、それだけで読む価値があると思います。

・話の中で一番印象に残ったのはデーボスとラッキューロに関するくだりです。
「自分では不気味なようにデザインしたはずなのに、周りからは『可愛いですね!』と言われて凹んだ」とインタビューの中で何度も繰り返していました。相当ショックだったみたいです。
私も読んだときに「デーボス様はワギャンみたいでどう見ても可愛かったぞ?」と不思議に思っていたのですが、次のページのデザイン画を見て納得しました。
確かに不気味です。デザイン自体は大きく変わっていないのに、全然可愛くありません。
実際に着ぐるみになったものと比べると、着ぐるみのほうが独特の丸みがありました。
立体化したらデザイナーの人も予想していなかったことが起きたんですね。
こういうのを化学反応と呼ぶのでしょうね。
ラッキューロたちを可愛くしてくれた着ぐるみ製作の人にお礼を言わなければいけませんね。


【総合感想】

・始めは「とりあえず三条さんの解説が読めれば、それで充分」と覚悟していたのですが、どのインタビューも話題がキョウリュウジャーについて絞られていて安心しました。
役者さんの演技論とか興味のない話があるんじゃないかと思っていましたが、杞憂だったようです。

・特に「共演者・監督同士の対談」がほとんどなかったのが嬉しかったです。
対談は対人関係が絡むので、お互い気を使ってなぁなぁな感じになってしまって、インタビューとしては内容が薄くなってしまって苦手です。
一部は対談形式もありましたが、デザインの二つに関しては共同制作という形なのでむしろわかりやすく、SAさんと声優さんはプロの見地からお互いに褒めたりつっこんだり真摯な態度で好感を持てました。

・ただ唯一の例外がありました。そう、坂本監督です。
役者さんも監督もSAさんもみんな話すときには、「キョウリュウジャーは~」「第何話は~」「戦隊では~」という主語で話し始めているのに、一人だけ「僕は~」という主語で話すことが多かったです。
もちろん女優さんの話もありました。さすが坂本監督です。つくづく予想を裏切らない人ですね。

・全話見た作品の資料集を腰を据えてじっくり読んだのはこれが初めてでした。
どうしても値段がネックになります。2000円以上も払って見たことある写真や内輪話がたくさん載っているだけだと嫌ですから。
しかし見方が変わりました。ちゃんとした本もあるんですね。
知らないこともわかり、知っていたことも更に深く理解するのは楽しいことです。
これからは気に入った作品ができたら、積極的に読んでいきたいです。

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