『仮面ライダージオウ』 第6話 「555・913・2003」:感想

2018年10月7日

【ストーリー】

■完成度が低い
・部分的には良かったです。
叔父さんの部品交換の話は叔父さんの職業に則した話で説得力がありました。
ファイズのキャラである巧と草加のねじれた友情も、本編と異なる世界という状況を活かしていました。

・しかし全体としては破綻しているように感じました。そこで台無しです。
叔父さんの話はピントがズレているように感じました。確かに機械ならば「中身が別物で外側だけ同じ物は交換する前と同じ存在なのか?」と言えますが、今回のゲストのカリンにはあてはまらないと思います。もしも人格が別人の状態でも生き続けさせようとしていたならあてはまったでしょうが、どう見ても人格は生前のままでした。これでカリンが別人かどうかと問われたら私は同一人物だと断言します。これでは叔父さんの話は関係があるようで特にない話でしかありません。できるとしたら「これで『生きている』と言えるのか?」という話だったと思います。

・巧と草加についても前提条件が描かれていないので話がぼやけていました。
巧が自称「流しのクリーニング屋」になっていたり、基本的には本編とは別人のようでした。草加も同じ施設の仲間というだけで自分の命を危険に晒してまで助けようとする善人のようになっていました。
この状況で原作のストーリー展開やキャラの関係性に被せる構図を作っても、原作と重ねようとする分だけむしろズレてしまうと思います。「同じだけど違う」という原作に絡めた意図がそのまま「(状況が)違うけど(意図したドラマは原作と)同じ」という違和感に直結してしまいます。どこを変えてどこは同じなのかをしっかり描かないとifのストーリーを作り上げるのは無理だと思います。「原作では仲が悪かったけど、この世界では仲が良いんじゃない?」という疑問で終わってしまう内容ではダメだと思います。

・ゲストキャラのカリンと佐久間の話に限っても、カリンが今更あんなことを言い出すのは変だと思います。
15年も経ってるんですよ? 本当に犠牲者や佐久間自信に対する罪悪感があったなら、その間ずっと思ってたけど言わなかったなんてあり得るでしょうか。仮にそうだったとしたら今度は今更言い出したカリンの性根が疑われると思います。
この話にするなら「カリンはずっと止めてくれと懇願してきたし、自殺しようと試みたこともあったけど佐久間は止まらなかった」か、「カリンはこれでいいのだと目をつむり続けてきたがソウゴたちとの関わりによって今の状態は間違ってると思い直した」といった流れのほうが適切だったと思います。

・どこを取っても全体としては破綻しているように感じるお話でした。
個人的には「う~ん、下山さん」という印象です。思いつきで作っては全体をまとめるのが下手な人という印象です。

■結局フォーゼは関係なし
・前回の時点で思ったことですが結局ファイズ編であってフォーゼは関係ありませんでした。
これなら「風都に転校してきた」と言えばW編になるし、「聖都大学附属病院のある街に転校してきて、怪我をして病院に運ばれた」と言えばエグゼイド編になったのではないかと思いました。
プロデューサー曰く「レジェンドから逃げない」がモットーの一つだそうですが「逃げる」の定義って何なのでしょうね… 原作からは逃げてもいいって話ですか?

■アナザーの謎
・またしても理解不能な描写が続きました。
まずはアナザーファイズ/フォーゼです。タイムジャッカーの目的はジオウに代わる王を作り上げることだそうですが、ろくな実績も出せていないうちに「8年以上経っても何の成果も出せずに潰えてしまう」という例が先に提示されてしまいました。ダメになるのは仕方ないにしても成功するようにサポートもしないタイムジャッカーがボンクラに見えてしょうがありません。いったい何がしたいんでしょう。ますます謎が深まりました。

・ソウゴたちの行動も時系列が摩訶不思議でした。
今回は過去のファイズと現代のフォーゼをジオウとゲイツで別々に両方倒すことにしていました。これがまず理解できませんでした。過去のファイズを倒せばその時点で歴史改変の影響でフォーゼも消えるのではないんですね。
「アナザーフォーゼは歴史に記された本物のフォーゼに成り代わった存在だから歴史改変の影響を受けない」という仮説も考えましたが、少なくとも変身している佐久間という人物は別人になると思います。「アナザーファイズになれなかった=カリンはあの時点で死んでいる」となるはずなのでフォーゼになる理由が失われているはずですから。

・これだけでも謎なのですが、更に「ジオウがフォーゼを倒した直後に戦い終わったゲイツもやってくる」という描写までありました。これで「まだファイズを倒した歴史改変の影響が発揮されていない」という可能性も薄れました。少なくともゲイツが時間移動するだけの時間は経っているわけですからね。普通に考えればゲイツが過去から時間移動する先は「歴史修正された現代」でしょう。歴史が変わっているけどまだ変わっていないという理解しがたい状況のように見えました。
相変わらずジオウの世界の在り方は理解できません。


【アクション】

・今回はゲイツが変身過程で生身アクションを披露していました。
空中回し蹴りが見事でしたね。吹き替えって感じでもなかったですし本物でしょうか。 変身する前のほうが動きがいい、鎧武と同じ困った状況になりそうだと思いました。

■ゲイツ:ファイズフォーム
・ゲイツのファイズフォームの必殺技は原作を踏襲したものでしたね。
「ゲイツの動きは原作オマージュで、ジオウはオリジナル路線」とか棲み分けすればいいのにと思いました。現状だと行き当たりばったりで特に統一感は感じません。アクションのスタイルはそのキャラの個性を反映したものだと思うのでそこに統一感がないのは問題だと思います。キャラの人格まで疑われてしまいます。


次回はウィザード編のようです。
ウィザードのストーリーというと「操真晴人の物語」という印象なので何をするのかこれまで以上に疑問です。ソウゴが「希望」、ゲイツかアナザー怪人が「絶望」の対比にするとかでしょうかね。予想よりは薄くない話だといいのですが。

コメント

16 件のコメント :

  1. あのアナザーライダーにはフォーゼと555の同時攻撃で撃破するのかと思っていましたが、過去で555、現代でフォーゼの順でよいならばソウゴ1人で順に解決してもよかったはずです。
    前々から思っていたことですがどうもこの作品は「異なる時間」を「異なる場所」くらいにしか思っていないフシがある気がします。
    (「同時に異なる場所で倒す」必要があるならば、ゲイツの助けを求めるのは適切と思うので)

    また過去で555を倒しても現代のアナザーライダーに何の変化もあったように見せなかったのが残念でした。
    少なくとも冒頭で「アナザー555の力も合わせ持っているからフォーゼの力でも倒せない(らしい)」というのをやったからには「555の力を失ったから今度は倒せるはず」という描写もしっかり入れてほしかったです。
    正直この作品にはもうそのような歴史改変についてのまともな描写は期待できなさそうです。

    カリンについては「2003年で事故を防いでやればいいじゃないか」と思いました。
    少なくともエグゼイド編の少年はそうやって過去に干渉して救ったはずです。
    なぜあれは良くて今回は駄目なのか。なにか明確な違いがあったようには思えません。

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    1. >あのアナザーライダーにはフォーゼと555の同時攻撃で撃破するのかと思っていましたが、過去で555、現代でフォーゼの順でよいならばソウゴ1人で順に解決してもよかったはずです。

      分担する理由も特に見当たらないんですよね。独自ルールがあるはずなのに説明されないので何がどうなってるのか見当がつきません。

      >前々から思っていたことですがどうもこの作品は「異なる時間」を「異なる場所」くらいにしか思っていないフシがある気がします。

      そのくらいに思っておくほうが健全だと思います。
      私は正確には「思いついた設定の前後の帳尻を合わせるという発想がない」ではないかと疑っています。

      >なぜあれは良くて今回は駄目なのか。なにか明確な違いがあったようには思えません。

      全くわかりませんよね。
      「実はエグゼイド編の少年は手術した後でも心臓の理由で死ぬのと同じ時期に別の理由で死ぬので最終的な未来にとっては大差ない」とかあるといいのですが。

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  2. ゲイツ役の押田岳さんは小学生の頃から10年以上ダンス経験がある方らしいですね。あのアクションのキレはそこから来ているものと思います。

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    1. ダンスなんですか。
      ソウゴの人はバレエをやっていたそうですが、二人にここまで差が出るのは不思議です。

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  3. アナザーライダー出現に伴い、オルフェノクも無かったことになるんですかね?

    ただそうなると巧はそのまま事故死しちゃうことになりますが...

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    1. >アナザーライダー出現に伴い、オルフェノクも無かったことになるんですかね?

      どうなんでしょうね。描かれていないので判断がつきません。
      オルフェノクはその性質上、ひっそり暮らすのは難しいと思いますが。

      >ただそうなると巧はそのまま事故死しちゃうことになりますが...

      これは歴史改変があるのでどうとでもなると思います。
      たとえば「事故にあったけど九死に一生を得た。しかし事故の身体的、環境的影響により内向的な性格になった」といった具合にすればオルフェノク設定無しで生存しつつ性格などは原作寄りに調整することは可能だと思います。

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    2. 横から失礼します。
      前回のアナザーフォーゼ誕生のシーンで、弦太朗が変身解除した瞬間にスコーピオンゾディアーツもいなくなってましたよね?なので多分敵キャラもいなくなるって解釈でいいと思います

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    3. 私はその可能性もあると考えていますが、確信には至っていません。
      というのも歴史改変があるので「ライダーがいなくなる=怪人もその場で戦う理由がなくなる」というだけで「そのとき別の場所にいた」ことにされただけとも考えられるからです。怪人自体が存在しないと断定するには足らないと思うからです。

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  4. せっかくオリジナルキャストを出したのにファイズにもカイザにも変身しなかったのは非常に残念でした。
    歴史改変の設定が働いていたのかどうかもよくわかっていませんが、これなら巧や草加が出ていなくても状況に大きな変化がないように感じます。
    記念作品と銘打った以上、久しぶりにテレビでオリジナルキャストによる変身が見られると思っていたのですがそんな期待をするだけ無駄だったようです。
    エグゼイド、ビルドが良くてファイズがダメだった理由がわかりません。

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    1. なんででしょうね。
      個人的には「どうせ変身解除して無様に負けるだけなら出ないほうがいい」と思っていますが。もっと言えば「そもそも過去キャラ自体が出なくていい」になりますが。

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  5. 話的に仲間を強調したかったみたいですが草加がツクヨミに銃を向けられてもカリンは放置でしたよね?
    カリンが草加に依頼しており同じ流星塾の仲間なら「止めてその人は仲間なの」とか言って止めにはいるのが普通かなと思うのですが、わざと視聴者に謎にしておく演出が優先で細かいことは完全に無視なのかなと言う印象でした

    後555のウォッチをゲイツに渡したときにウォズが全く止めに入らなかった事も???でした。
    前回ではアナザーが変身の邪魔に入ったらしっかり出てきたのに今回は完全スルーゲイツが既に二つ持っているのも言及していないし。
    ジオウとゲイツに均等にウォッチを持たせるのが狙いなのでしょうか?ストーリーによるもので大人の事情で無い事だけを望みます。

    最後にアナザーライダーはどうすれば王になれるんでしょうね?普通だとソウゴを抹殺するなりだと思うのですがタイムジャッカーはアナザーにしたら完全放置ですよね何年間もの間。アナザーがいなければソウゴと過去のライダーも接点がなく魔王にならないはずのでソウゴに力を奪わせるのが真の目的なのでしょうか?会話からはそのようには見えないですよね

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    1. >カリンが草加に依頼しており同じ流星塾の仲間なら「止めてその人は仲間なの」とか言って止めにはいるのが普通かなと思うのですが

      好意的に解釈するなら「ツクヨミは自分を守ろうとして来たのだから自分が逃げれば追いかけることを優先するはず」というところでしょうかね。
      説明しようとすると、カリンの身体の状態や佐久間のことなど部外者に話したくないことがありますし。

      >後555のウォッチをゲイツに渡したときにウォズが全く止めに入らなかった事も???でした。

      なぜでしょうね。それも歴史書に書いてあるからOKなのでしょうか。
      私はウォズの言動を信じるに値すると思っていないので、何か思惑があるならそういうことをしても特におかしくないと思います。

      >最後にアナザーライダーはどうすれば王になれるんでしょうね?

      情報が皆無なのでわかりません。
      ソウゴを抹殺してもウォッチが集まらないと王になれないとしたら、下手に抹殺して誰も王になれなくなるより然るべき時まで生かしておくのは選択肢としては有りだと思います。アナザーライダーはタイムジャッカーが何をしたいのか全くわかりませんが。

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  6. 結局の所何故てんびん座が狙われたのかがイマイチ分かりませんでした。何故同じ星座の人間の命?を使えばカリンを救えるのでしょうか?

    それに回を増すごとにレジェンドライダーとの共闘がなくなってるのが気になりました。
    タイトルが『555 913 2003』なのに変身させないなんて一体何のための客演なのかと。

    5話と6話はファイズ&フォーゼ編なんでしょうけど関連性が薄くてどちらかというとそれぞれ独立した1話完結の話としか思えませんでした。

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    1. >何故同じ星座の人間の命?を使えばカリンを救えるのでしょうか?

      理屈は私も全くわかりません。オカルトなので理解しようがないと思っています。
      「同じ星座の命で延命できる」も「誰でもいいから殺せば延命できる」もどちらも私にとっては等しくオカルトです。
      メタ的にはたぶんスタッフ的には星座を敵のモチーフにしたフォーゼと絡めたつもりなのだと思います。

      >それに回を増すごとにレジェンドライダーとの共闘がなくなってるのが気になりました。

      まだ6話なんですけどね…

      >5話と6話はファイズ&フォーゼ編なんでしょうけど関連性が薄くてどちらかというとそれぞれ独立した1話完結の話としか思えませんでした。

      私はそもそも「この汎用テンプレのどの辺がフォーゼだったの?」と思っているので同意はしかねます。

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  7. L.E.D.ガイスト2018年10月9日 12:06

    6話を観て思ったのですが、『555』からのゲストって草加だけで事足りている印象が強すぎていて「巧の存在って正直要らないのでは?」と本気で思いました。



    上の方のコメントや他のブログ等で「アナザーの出現により正史のライダーが消えた結果各作品の怪人も消えたのでは?」といった意見があるのですが、怪人」の存在が消えることで「ライダー」の存在が消えることはあっても(『龍騎』、『555』等)、「ライダー」の存在が消えることで「怪人」の存在が消えることはないのでは?
    5~6話で言うなら、フォーゼやゾディアーツは「コズミックエナジー」、ファイズとオルフェノクは「オルフェノク因子(“オルフェノクの記号”とも)」という要因が存在しなくなれば、ライダーと怪人の存在は無かったことにはなるかと。

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    1. >『555』からのゲストって草加だけで事足りている印象が強すぎていて「巧の存在って正直要らないのでは?」と本気で思いました。

      疑問に思い出すときりがないと思います。
      そもそも論でいくと草加も要らないと思います。もっとそもそもで考えるとレジェンドを出す必要性もありません。それはフォーゼ編でウォッチさえ手に入ればいいと実証済みですから。更に考え出せば、ジオウという物語は過去作を関係させなくても成立できる物語とすら考えられます。疑い出すとジオウという作品自体のアイデンティティが疑わしくなってくると私は思います。

      >「ライダー」の存在が消えることで「怪人」の存在が消えることはないのでは?

      これも設定次第でどうとでもなることだと思います。歴史自体を書き換えられますので。
      「ライダーはいるが怪人は生まれなかった世界」にすれば済むと思います。コズミックエナジーを誰も悪用しなければゾディアーツは生まれないでしょうし、オルフェノク因子は治療可能な設定にすればファイズだけ存在することも可能でしょう。
      「先に怪人があってライダーはそこから派生したもの」という設定自体を無くしてしまえば全く問題なくなると思います。

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