『動物戦隊ジュウオウジャー』第18話「きざまれた恐怖」:感想

2016年6月12日

【ストーリー】

■ノルマ優先
・今回も順当な流れでした。「新幹部/新メンバー登場直後といえばこれ」という流れでした。
巨大戦を先に持ってきたり敵の撤退を次回への引きに使ったり、ちゃんと整理されていました。

・これだけだと味気ないですが、その辺りもちゃんとしていて工夫がありました。
ザ・ワールドに対する恐怖を描写するときに、弱い怪人と重ねていたところが良かったです。トランパスは前回負けっぱなしでいかにも弱そうな印象のある敵でした。そのトランパスが仕掛けの解除方法を当てられてビビッてハートを落とすシーンを先に入れておくことで、恐怖に関する前振りをしつつ「今の5人のメンタル=トランパス並」という図式になり、比較対象を設けることでわかりやすくなっていました。

・余白を使おうとしていた点は感心しました。
本編の描写はわりとあっさりしていましたが、行間を読むといろいろな想像ができる構成になっていました。
ザ・ワールドが怖いと認めながら、行った作戦はイーグル一人で囮になる作戦でした。5人で勝てなかった相手に一人で挑むなんて怖がっている人にできる作戦ではありません。それでも実行できたことに5人の勇気と信頼を感じます。トランパスとの巨大戦でフルパワーが出せないとマイナスイメージが思い浮かんでも怯まずに戦い続けられたのは「イーグルは一人で戦っているんだ」ということが念頭にあったからかなと思いました。
また、これは「なぜ5人は過酷な戦いを続けられるのか」という話でもあったのかなと思いました。
ジュウオウジャーでもザ・ワールドが怖いなら、一般の人々にとってはトランパス程度の怪人やメーバでさえももっと怖いはずです。自分たちが怖がっていたら戦うの力のない人々はどうなる、という思いがあるから挫けずに恐怖を乗り越えて戦えるのかもしれません。

・本編内に心境を示唆する具体的な描写は少なくわかりやすいものではありませんでしたが、使えるものはフルに活かそうとする姿勢は素晴らしいです。
特にそれでもノルマを優先した点は賞賛すべきことだと思います。こういう話をやろうと考えが頭にあっても、それより先にまず仕事としてやるべきことを優先して話を組み立ててありました。これができない人はたくさんいます。この調子で研鑽していってほしいです。


【アクション】

■ザ・ワールド
・銃はやっぱりアクション面ではダメそうです。長いことに何のメリットも感じません。ただ、邪魔なだけになっています。

・ロッドは悪くなさそうでした。
長いと動きが大きく見えるので強そうにも見えます。ただ、多人数戦だと周りに干渉して取り回しが大変そうです。一対一でフィールドを広く使える環境なら問題ありませんが、怪人一人相手に戦隊全員で戦うときに困りそうです。

■トウサイジュウオー
・変形の形状が意外でした。予告で姿を見たときにウルフはどこにいるんだろうと思っていましたが頭部分だけなんですね。左手が空いたままだったことに驚きました。完全に換装用と割り切ったんですね。

・片方だけパーツが付いているので右手のワニが目立ちます。
でもそのおかげで、キックや左手のパンチに意外性がありました。ギミックや可能なアクションのパターンが少ないことを逆手に取っていて上手いと思いました。

・ジュウオウジャー側は負け戦の分、最初に分離状態でのバトルを入れて見せ場を作っておいたのは良い手だと思いました。1つでも活躍を見せておくかどうかで印象のバランスがだいぶ変わりますからね。


次回はザ・ワールドがもう仲間になりそうな様子でした。
仲間になるには早過ぎるので、きっかけになる最初の説得だけしておいて間に葛藤する時間を置くタイプでしょうかね。

ザ・ワールドの変身者の身体が細かったのも意外でした。
いかにも強そうな外見かと思ってました。「極限状況でサバイバルしてた」とか「弱い自分を変えたいと願っていた」とか、外見とキャラクターが結びついているのかどうかが気になります。役者さんは気にしてはいけないタブーの一つなので気にするべきなのか判断に迷います。


コメント

8 件のコメント :

  1. いつも興味深く読まさせていただいております

    今回は仰られてる通り、ノルマとドラマが上手くバランスが取れていたと思います

    序盤のワールドのキューブを圧倒的な破壊力で見せ、ジュウオウジャー全員がワールドに対する本能的な恐れを徐々に自覚し克服して行く流れが非常に丁寧でとても関心しました

    その恐れへの口火を切った大和というのもとてもキャラのらしさが出ていたと感じました
    久々に大和の動物学者の面が見れたシーンもあり、あるゆる面でバランスのとれた脚本だなと感じた次第です

    唯一心配なのは現状香村さん以外の脚本では上手くそれぞれのキャラやゲームが活かしきれておらず、違和感が残る点でしょうか
    その統制がとれていければ、今後とも期待できる作品となりうると考えております。

    失礼いたしました

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    1. お褒めの言葉ありがとうございます。

      >唯一心配なのは現状香村さん以外の脚本では上手くそれぞれのキャラやゲームが活かしきれておらず、違和感が残る点でしょうか

      確かにそうなのですが、こればかりは仕方ないと私は思っています。

      第一に香村さんはシリーズ構成の経験がありません。仮に実力があったとしても初めてで上手くいくとは考えにくいでしょう。シリーズ構成は管理職のような側面があるので脚本家としての仕事とはだいぶ勝手が違うところがあると思います。

      もう1つ、現実的にはその回を担当した脚本家の腕次第の部分が排除しきれないからです。良いシリーズ構成だと思う人であっても「でもこの脚本家が担当したところはつまらなかった」というケースはあります。田中仁さんは特撮初経験ですし、荒川さんもベテランながら適当な仕事をするときもあります。状況を考慮すると、実現すれば素晴らしいことですが、現実的には非シリーズ構成回が見劣りするのはやむを得ないと私は考えます。

      「それならば香村さんが担当する回が多くすれば問題ない」という考え方もあるのですが、前作のニンニンジャーで下山さんがやって思いっきり失敗したことを踏まえると、それは無謀かと思います。

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  2. ザワールドの役者さんのツイッターによればあの細さは意図的なもので体脂肪率3%くらいだとか。
    よく見ると細いながら腕の筋肉もついていて、意図はわかりませんが、例えば戦闘マシーンとして余計な丸みも潤いも全てそぎ落とされた様を体現しているんだとしたら凄まじいと重いました。

    香村さんには私も1話でも多く書いてほしいですが、おっしゃるとおり、あの丁寧なシナリオにかかる手間を思うと仕方ないのかな?と思います。
    もしかしたら田中さんが今後もプロットに沿って本筋周辺回を担当できれば香村さんの単発エピも増やせないか?なんて思ったりもしますが。
    そういえば以前、下山さんがなぜあんなに1人で抱え込んだのかとおっしゃっていましたが、プロデューサーさんの前作戦隊のライター起用と比べると、あまり良い答えは浮かんできません。

    ゴーバス:小林さん36話、下山さん8話、毛利さん6話、準備期間6ヶ月
    ニンニン:下山さん39話、毛利さん8話(小林さんは前作トッキュウメイン)、準備期間5ヶ月

    小林さんの代わりに新たなメインを起用せず下山さんを昇格させ、サブが1人減った穴をそのまま下山さんに埋めさせて、ベテランで多筆の小林さんを超える本数を書かせただけ、に見えてしまっております。

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    1. >ザワールドの役者さんのツイッターによればあの細さは意図的なもので体脂肪率3%くらいだとか。

      ふむ、「役作り」という意味でしょうか。戦隊で体型レベルでの役作りとは珍しいですね。戦隊やライダーだと「脚本を書いていた段階でのキャラの方向性と役者さんを実際に見たときの印象が違ったので役者さんに合わせてキャラを変えた」なんて話をよく聞きます。本当に役作りのためだけに体型を仕上げたのなら大したものです。

      >ベテランで多筆の小林さんを超える本数を書かせただけ、に見えてしまっております。

      常識的に考えてもあり得ない判断ですよね。どうしてあんな事態になったのでしょう?
      小林さんはベテランだし、本人の作風も人に任せるより自分で書いたほうが効率が良いタイプだから無理はないでしょう。しかし経験も実力も足りていない下山さんに全話の4/5も作らせるのは明らかに危険だと思います。仮にやらせるにしても、「1クール試してみて、芳しくないようならサブ担当を増やす」といった安全策を取ると思います。下山さん自身が何を思ったかはともかく、下山さんに任せる判断が承認されたことが不可解です。本当にプロデューサーがアホだったとでも思わないと説明がつきません。

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    2. >常識的に考えてもあり得ない判断ですよね。どうしてあんな事態になったのでしょう?

      あくまで推測なのですが、ライダー畑の長い方なので戦隊側にあまりツテがなく、他に戦隊を書けそうなメインもサブも連れてこられなかったのではないかと思えております。前作ゴーバスからして、オーズメインの小林さんをそのまま準備期間6ヶ月で続投させてますし。
      小林さんにさえサブを2人つけたのに不慣れな下山さんに1人しかつけずに負担を強いたのはつけられなかったからではないかと。そう思うと、バラエティ路線、伏線無視、毎回テコ入れといった方針は、方針ありきより、この体制でできる方針を模索した結果、のようにも見えてきます。

      ただ、メインに関しては、キョウリュウ→ドライブでも短い準備期間で三条さんを続投させているのを見ると、これは個人の力量だけの問題とも言い切れず、プロデューサーの戦隊ライダータスキがけ人事がうまくいかなかった一つでもあるかもと思います。
      サブ起用についてはジュウオウの田中さんのように外からという方法もあるのになあと。バラエティ路線ならむしろライターを増やして多彩さを出すやり方もあったでしょうし。

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    3. >ライダー畑の長い方なので戦隊側にあまりツテがなく、他に戦隊を書けそうなメインもサブも連れてこられなかったのではないかと思えております。

      なるほど。あり得そうです。
      ただ、やはり常識的に考えると不可解な手法ですね。星の数ほど脚本家がいるこのご時世に人手不足というのは奇妙です。匿名さんの仰るように田中仁さんのように特撮未経験の人を起用する手もあったはずです。メインが新人の下山さんなので実力が吊り合わなくて足切りってことはないでしょうし。

      >プロデューサーの戦隊ライダータスキがけ人事がうまくいかなかった一つでもあるかもと思います。

      現場側だけでなく、プロデューサーなど上層部の失敗があるのは確かでしょうね。ライダーはフォーゼ以降の脚本家の世代交代で見事に失敗していますが、戦隊もベテラン起用が多いだけで安泰かどうかは不明瞭です。ニンニンジャーはそのリスクが顕在化しただけである可能性は充分あり得ると思います。現状ではベストどころかベターな選択肢を取っているとは思えませんね。

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    4. もしかすると戦隊の世代交代問題も、既に売上面ではその兆候が現れているかもしれません。
      玩具売上はゲキレン以降、基本的に不振(100億未満)と大ヒットを交互に繰り返しています。シンケンとトッキュウがなければ完全に1年交代制です。
      不振の戦隊はゲキとゴセイの横手さん、ゴーバス小林さん、ニンニン下山さんと、小林さんを除けば皆新しい方達で、2回不振の横手さんは以後全く起用がありません。
      一方大ヒットの方は三条さんを除けばベテランばかり。

      そういう面でも今回初メインの香村さんにはぜひ良い結果が出て欲しいです。販促と物語の融合は、キリンやクマのウェポンは意外性一発勝負の傾向ですが、ゴリラや8体合体、追加戦士編には今のところ、それに合わせてできるだけ良い物語を作ろうという思いも感じますので。

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    5. >そういう面でも今回初メインの香村さんにはぜひ良い結果が出て欲しいです。

      そうですね。私も良い作品には良い結果が伴ってほしいです。
      私は売上にはあまり関心がありませんが、売上の結果がスタッフの進退に大きく関わることは確かだと思います。基本的には玩具自体の魅力次第だとは思いますが、作品の与える販促効果も少なくはないと思います。作品の出来栄えに応じた売上であって欲しいです。目先の利益のためのベテラン起用ばかりだとライダーのように後で苦労することは目に見えてますしね。

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