『ゴーストコンサート : missing Songs』最終回まで見終わって:全体感想
『ゴーストコンサート : missing Songs』を最終回まで見終わった感想です。
シンフォギアの原作者が送る『戦姫絶唱シンフォギア』に続く新たな『ソングバトルシリーズ』
という触れ込みの作品でした。
原作者って言っても作ったのは音楽&スポンサー担当の上松範康だけで、脚本担当だった金子彰史さんはノータッチの作品です。
発表を目にした時点でダメそうな臭いがプンプンするなと思っていましたが見事にダメでした。
当初想像したようなダメさをフルパワーで発揮していて意外性すらゼロでした。
90年代のOVAや「構想20年」の臭いがする作品
・1話を見た時点で懐かしさを感じました。
90年代のOVAや2000年前後によくあったオリジナルファンタジーアニメ映画などで何度も見た覚えのあるダメさで溢れていました。
主人公がどんな性格で何をすればいいのかも伝わってこない序盤から始まる設定と世界観の羅列。
「主人公はすごい!」と台詞では何度も言われているが視聴者には全然ピンと来ない主人公の特別性。
解決できたことは一つもないうちにどんどん広がっていく壮大なストーリー。
人死に裏切りなど無駄に多いショッキングな展開。
最後は投げっぱなしのダイジェスト展開から「え、これで終わり?」と思うほど呆気ないラスボスの撃破、そして無駄に長いエピローグからの最後の最後で更に広がる新展開。
・こんな気分になる作品は昔はいっぱいあったよね…とノスタルジーを感じる内容でした。
今、2026年なんですけどね…
合理化や利益主義が蔓延した世知辛いこのご時世にこんな余力があったことに驚きを通り越して感動すら覚えつつも、「何年経っても人間の愚かさは変わらないな。歴史に書かれた過ちを繰り返してばかりだ…」と絶望感も感じました。
・作品としては普通にダメでした。
スタッフのやりたいことを詰め込んではありますが、2クール有ると勘違いしてないか?と思えてくる分量でした。
実際にはそんな時間は当然ありません。ゴーストコンサートの場合は全12話しかないのですから。
短い時間しかないのに膨大な設定と壮大過ぎるお話をどうやって描くか…
そこでありがちな「設定の羅列」です。
ひたすら設定、設定、設定でキャラクターやストーリーと呼べるものがほとんどありません。
もはや「新展開=新設定の開示や伏線の消化」という有り様です。
見ている側は「だからそれが何なの?!」「どことどうつながってて、主人公たちは何をしたいの?!」と要領を得ない話にイライラするばかりです。
説明も要領を得ない内容ばかりで、それでいて作品の内容は平凡でありふれたものなので「繰り返し見て理解したら面白い」みたいな可能性も感じられませんでした。
「ソングバトルシリーズ」って何なんだ?!
・「シンフォギアに続く”ソングバトルシリーズ”」という触れ込みだったので
「歌いながら戦う」
「音源を流すのではなく、アフレコで毎回歌い直す即興性の高い演出」
という要素を私は連想したのですが全然違いました。
じゃあ「歌中心の世界観」や「歌って世界を救う」話なのかなと思いましたがそれもピンと来ない内容で最初から最後まで戸惑いっぱなしでした。
・それどころか、この作品における歌がどういう存在なのかすらよくわかりませんでした。
優しい歌だろうが童謡だろうが、歌は人の殺意を呼び起こす。
歌を歌うと殺人ドローンが飛んできて処刑されるディストピア世界。
作中で語られた歌にまつわる世界観すら理解に苦しむ内容でした。
「歌が殺意を呼び起こす」という概念から理解できなくて困りました。
しかも「みなさんご存知だと思いますが~」みたいなノリで流されて登場人物も全員無反応だったので説明されてもなお理解できませんでした。
自動操縦が当たり前の車やドローンなどを除けば現代と見間違うような違いを感じない近未来だと思っていたら殺人ドローンが出てきてびっくりしました。
「音楽自動生成AI以外では音楽が禁止されている世界」だからといって一度歌っただけで殺人ドローンまでやってくるとは思ってませんよ!
・「ソングバトル」と言うからには戦いと歌が関係有るんだろうなと思っていたらその関係性すら謎で心底戸惑いました。
実際の流れは、
凶暴なグレートゴースト(偉人の霊)と霊界で出くわす。
→主人公の仲間の霊能力者が小競り合いをした後に突然主人公が歌い出すとミュージカル調になり、
さっきまで「死ねぇー!」とか「ニクイ…ニクイ…ニクイ…」みたいだった敵までノリノリでデュエットを歌いだし、途中から主人公とハモりだしたと思ったら綺麗な人格に浄化されて正気に戻って主人公に宿る。
という理解に困る内容でした。
「”憑依鎮魂歌”か!」とか言っただけで説明を終えた気になられても困ります。
後の話を見ても、霊媒体質の主人公が英霊を憑依させて相手の心情や記憶とシンクロして互いに理解し合い正気に戻すという見たままの出来事以上のことは理解できませんでした。
いったいなんで主人公だけがそんなことができるのかとか、なんで歌うの?とか、開始するための必要条件って何なの?とか、そういう視聴者が疑問に思う部分は何にも説明が無いまま終わりました。
何より肝心な「おい、”バトル”はどこ行った?」という一番のツッコミどころが何一つ解消されなかったので本当にこれのどこが「ソングバトル」なのか最後まで理解できませんでした。
バトル要素は小競り合い部分で有るんですけど、やることが英霊を憑依させた主人公か霊能力者の仲間が普通に戦うだけで主人公すら戦闘中は歌わないんですよね…
・最終決戦に至っては歌で世界を支配しようとするラスボスに対して「あなたには歌ってなんてあげないんだから!」と言い放ち、英霊や仲間たちを全憑依させたアルティメットフォームでそのまま殴り殺して終わりでした。
歌は和解や理解のためのものであり、主人公に対しても「あなたのその歌で一緒に世界を支配しましょう」と提案してくるラスボス相手に歌わないことはストーリー上の筋は通っていました。
いや、でも歌もので見せ場で歌無しはダメじゃないですか?
仲間が主人公のために歌うとか、アルティメットフォームになるために主人公が歌うとかもなく、それどころか視聴者にしか聞こえない挿入歌すら流れないバトルでした。
戦いの後にラスボスに利用されて殺されたかつての敵の追悼のレクイエムは歌ったのですが、視聴者が求めてるのはそれじゃないだろ…と思わずにはいられませんでした。
本当に「ソングバトル」とは何だったのでしょうか…?
「歌うし戦う」くらいでシンフォギアどころか、メインはバトルものですならないアイドルものの対バンとかよりも歌とバトルの関係性が遠いように感じました。
ゴーストコンサートがソングバトルシリーズ扱いで、金子さんが原案を手掛けて歌いながら戦うバトルものだった『プリンセッションオーケストラ』はソングバトルシリーズには含まれないっていったいどういうことなんでしょうね?
最後まで「ソングバトルとはいったい…?」という疑問が強まる一方な作品でした。
・ちなみにバトルのクオリティ自体は基本的には低調でしたが、一部の回は良かったです。
エフェクト盛り盛りみたいなのではなくよく動いているし、独自性や演出の個性が感じられる内容もありました。
でもやりたいことやストーリー上の流れがはっきりしてないから「作画が良い」「よく動いている」で終わってしまってバトルシーンとしてすら出来が良いとは思えませんでした。
何がどうなって、誰がどうしてるのか、ベースになってる設定や考え、キャラクターがしっかりしてないから「主人公は今の状況でどうしてこの英霊を選んだの?」
「この英霊は何ができるどんなやつなの?」といった能力バトルものの地盤になる個性すら掴めないままバトルが進んでいました。
そういう面でも普通にダメでした。
ミュージカル調のデュエット自体は悪くなかった
・デュエットの前後の流れは全くついていけませんでしたが、デュエット自体は悪くありませんでした。
「突然主人公がわかったような口を聞き始めた?!」とか、「敵が急に理性的で饒舌になった?!」とか、そういう戸惑いを無視すれば、
歌詞と背景、それに感情のこもった歌声の持つ情報量はなかなかでしたし、敵対する2人が歌う相反する対立するような対照的な歌詞から打って変わって同じ歌詞をハモりだす流れは音楽と歌声の持つ高揚感が合わさってカタルシスを感じることはできました。
デュエット自体は有りだと思えました。
・でも特別感はありませんでした。
アイドル系やマクロスみたいに歌を世界観の基軸にした作品だと歌を通した交流は特に珍しくありませんよね。
それこそ時には「いちいち歌わないで言いたいことがあるなら普通にしゃべればいいだろw」なんて揶揄されることもある、本物のミュージカルなら尚更ありふれた演出でしょう。
前後のストーリーの脈絡が無いから盛り上がるどころか展開についていくことすら疲れました。
このクオリティでは「単体では良かった」以上の評価の出しようがありません。
スタッフは何が言いたかったのか
・「どういう話だったんだ、これ?」という疑問を感じて感想を見に来た人のために、私なりの解釈を書いてきます。
ストーリーとしては「秩序に対する存在としての”混沌”の肯定」みたいな話だったのかなと思いました。
秩序
AI、合理性、感情の抑制、それらがもたらす平穏という名の虚無。
混沌
善悪が混じり合った人の感情。
周囲に厄災をもたらす呪いであり、その人の生き様の表れでもある業。
生きる上では不必要で無駄だが人生を豊かにする音楽。
・こんな方向性のイメージがあって、混沌を象徴するものが歌であり、英霊(グレートゴースト)だったのだと思われます。
主人公を差し置いて実質主人公だったのがチームリーダーのおっさん、雪庭だったのもそういう流れだと思います。
諸悪の根源扱いだったミュークスを開発した張本人であり、その目的は殺された妻の復讐で、憑依体質の主人公を助けたのも自分の妻の霊を宿して再会することが真の目的だった、煩悩に溢れた悪党一歩手前のかなり迷惑な人です。
真相が明らかになった後も仲間からも「だいたい想像はついてた」「ダメ親父だし」「このまま死んだら悪霊化しそうだったから放っておけなかった」など散々な言われようでした。
その一方、主人公やテラのメンバーを招き入れ、人生を良い方向に変えた救世主でもありました。
雪庭というキャラクターの在り方がこの作品が肯定した概念を代表するキャラクターだったのだと思います。
・基本的に人の迷惑とか平穏が軽視された価値観だから終盤は
「ミュークスは人間を思いやっていたから無罪! 人類の感情を抑制しようとしたオデッセウスは悪!」
っていう飲み込みづらい話になったのだと思われます。
・主人公が最後に自分の人生を捨てて、やってくる脅威と戦い続けるゴーストとなる道を選んだことはたぶんグレートゴーストにかけているのだと思います。
自分の意思で自分のために戦い死後にゴーストになった英霊たちにかけて、
「人々の歌と自由を守るために自分の意志でゴーストとなった主人公」
と崇めたてたかったのだと思います。
見てるこっちは全然ついていけてませんけどね。
「ゴーストってなろうと思えればなれるものなの?」とか、
「雪庭とかゴースト化してるし、死んだらゴーストになれるなら死んだ後に来る脅威には今から備えなくてもいいんじゃない? 戦いが無い間は普通に人生楽しんだら?」とか、
「そもそもここで言うゴーストって幽霊のことなのか、幽体離脱なのか、霊界で戦う戦士のことなのか何のことなの?」
「ラストの俺達の戦いはこれからだ!な場面の主人公たちは生身なの全員幽霊なの? それともコールドスリープしてた主人公だけ生身で仲間はもう死んでて幽霊なの?」とか、
前提がわからないことだらけなのでその先の話をされてもわかるわけありません。
論理的に考えるとたぶん
「コールドスリープで肉体を保って永遠に生きて、霊界で英霊を宿して永遠に外敵と戦い続ける人類の守護者になった」みたいな話だと思うのですが、ゴーストコンサートに論理を持ち込むことに自信が持てません。
私の常識が通用したことが一度でも有ったかな…?
・個人的な作り手側の印象は「歌ってすごいものなんだぜ!と言いたいんだけどどうすれば表現できるのかはよくわかんない…」という印象でした。
タイトルにもなってる割にグレートゴーストが目立たなくて出した意味をあまり感じないとか、AIや近未来設定も邪魔で、エネルギー源にするための霊界の陣取り合戦とか省いた方がすっきりして良かったんじゃないかと思う設定が多かったり、面白いと思って作ってるというよりも「歌という存在をすごく見せたいから、すごそうだと思われそうなもの(偉人、AI、SF)を付け足しただけ」なんじゃないかなと感じました。
「好きなものを全部詰め込んだ」みたいな感じは全然ありませんでした。
むしろ「なんでわざわざこの要素入れたの?」と異物感に戸惑うことの方が多かったです。
怖いもの見たさか、己の感性に自信がある人以外にはオススメしない
・全体としてはこんな印象です。
内容は普通にクオリティが低めで独自性も高くないのでオススメできるほどの良さは感じません。
「このご時世にまだこんなものが生まれるとは!」と驚きを感じたい年寄りオタクか、
「こんなめちゃくちゃなものを好きで作ったっていうの?!」と衝撃を感じたい若者か、
「みんなわかってないだけだ。俺ならこの作品を正しく理解できる!」と自信を持った人でも無い限りは見ても「変なものを見たな」という以上の感慨は湧いてこないと思います。
あとは歌や音楽、アニメにおけるその使われ方に強い興味がある人でしょうか?
私はその分野は全然見る目が無いと思っているので保証はできませんが。
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