『TO BE HERO X』(第一シーズン)最終回まで見終わって:総合感想
『TO BE HERO X』(第1シーズン)を最終回まで見ました。
どう見ても続きをやる前提の終わり方だったので第1シーズンと付けておきましたが続編の予定が本当に有るのかは知りません。
*画像は公式ツイッターより引用。
一言まとめ
「信頼値」という設定に基づいたヒーローのお話は面白かった。
でもヒーローの活動も活躍も、大半が黒幕である事務所の陰謀とマッチポンプだったので虚無感の方が強かった。
個人的には素直に設定に基づいたヒーローの悲喜こもごもが見れればそれで良かったのに…
「信頼値」という設定は面白かった
・To be HeroXの世界では「信頼値」という数値が存在しています。
名前通り他人からの信頼を表した数値です。誰でも勝手に手首に表示され、この数値が高いと超人的な力を自然と得ることができます。
能力もイメージによって変化します。人気DJなら相手の気分を上下させる能力になり、規律に厳しそうな人物なら場にルールを付与して相手を強制的に従わせる能力になるなど、どういうイメージを持たれているかに左右されます。
「この世界のヒーロー=信頼値が高い人物」と考えて構いません。
英雄的な活動をすればするほど更に信頼値が高まりますし、「イケメンでかっこいい!」「強そう!」みたいな漠然とした勝手な想像でも相手が本気で信じているならそれが力になります。
・ユニークな点は「イメージによってヒーロー自身も束縛される」というデメリットも有る点でした。
たとえば、元消防士で火災現場で崩れかけた柱を独り支え続けて少女を救ったことでヒーロー扱いされるようになった「不屈の男・”スタンド”」なら、不屈というイメージであるがゆえに決して膝を曲げることができません。
それは誰も見てないトイレで用を足す最中や自宅で寝るときでも変わらず、横たわることも許されないのでベッドは縦に置いて寄りかかるようにして寝ていました。
本人にとっても苦痛なことでしたが、ヒーローである限りは逃れることはできませんでした。
・その他にも「見た目も振る舞いも完璧な青年・”ナイス”」なら、完璧と思われてるがゆえに絵画の額縁の傾きや自分が飲んでいるジュースの缶のラベルの向きなど全てを正しくしないと気がすまない完璧主義者な性格に無意識になってしまったり、
本人はヒーローになりたいと思って筋トレとかを頑張っているのに誰もが振り向くような小柄な美少女であるがゆえに容姿を見られた途端に「可愛い。可憐だ=ひ弱である」というイメージを押し付けられてトレーニングで筋肉を付けることすらできない少女(後に全身を覆うパワードスーツを開発してヒーローになる)。
などなど、信頼値はヒーロー自身にもコントロールできない負の側面も有る要素です。
・ストーリーでも中核設定として働いていました。
時には応援がヒーローの力になる熱い展開につながり、時には勝手なことを言う大衆が理不尽に見えたり、良い方向にも悪い方向にも機能していました。
序盤は特にその傾向が顕著でした。To be HeroXは「ヒーローランキングのトップ10のヒーローたち」10人を各2,3話ずつ描いていくオムニバス形式の群像劇です。
ナイス編
・最初の主人公である”ナイス”編では、ヒーローでも何でもない会社員の若者”リンリン”(成人男性の本名です)が偶然ヒーローのナイスが飛び降り自殺をする現場に居合わせたことから物語が始まります。
ナイスの死を隠蔽したい事務所によってナイスの影武者に仕立てられ、ヒーローになりたいという心意気だけは本物だったので偽物のままヒーローとしての階段を順調に登っていき、
最終的には悪党に人質にされた恋人を助けに行くためにナイスのふりを止め、ただのリンリンとして悪党に挑み、ボロボロになりながらも必死に戦う姿勢に胸を打たれた中継の視聴者たちの信頼によって本物のヒーロー「ただの人・リンリン」へと変わっていき逆転するサクセスストーリーはお手本のようなカタルシスがありました。
魂電編
・二人目の主人公”魂電”編は逆に負の側面の塊でした。
子供の頃に両親を失った青年ヤンチョンは、普通の人でも多少は持っている信頼値が孤児であるがゆえに完全にゼロでした。
そのせいで「信頼値ゼロの人はちょっと…」と嫌厭され、新たな信頼を得ることができない理不尽な負のスパイラルの中でずっと過ごしてきた不遇の人でした。
両親を失った事件で犯人から守ってくれたベテランヒーロー”魂電”(”コンデン”と読みます)に憧れ、苦境にめげずに真面目にヒーローショーで魂電を演じてきたことでファンができ、そのファンの少年を守るために命がけで誘拐犯と戦ったことがきっかけで信頼値を得て、本物のヒーローとしての第一歩を踏み出すことができました。
・ですが、その先に待っていたのは不幸と理不尽の連続でした。
ヒーローショーのスーツを着たまま憧れの魂電のように戦ったことで、周りから”魂電”と呼ばれるようになり、現在ではヒーロー活動をしなくなっていた本物の魂電に対するファンの不満と合わさって新魂電と本物の魂電との間での軋轢につながっていきました。
ヒーロー事務所として支援してくれていた同世代のイケメン社長は最初に戦った誘拐犯の報復で殺され、本物の魂電との軋轢も更に高まり命がけの決闘をすることになり、もうヒーロー活動を止めて普通の人に戻ろうと呼びかける好きだった女性の声も無視して最後は敬愛していた本物の魂電の命をその手で奪うことになってしまいました。
・本物の魂電の方も悲惨でした。
何らかの事情があってヒーロー活動を避けていたようですが周りには理解されず、かつて世界を救ったヒーロー第一人者だった立場はどこへやら信頼値は下がる一方です。
決闘においても遠距離攻撃を中心に安全だが着実に相手を削っていき圧倒的優勢だったにも関わらず「戦い方がせこい」と視聴者には思われて戦闘中も信頼値は減少の一途。
最後は「このままだと決闘には勝っても信頼値が下がってヒーロー生命が絶たれる。ファンの期待に応えるには隙の大きい必殺技を使うしかない」という状況に追い込まれて有名過ぎるがゆえに弱点も見破れられている必殺技の隙を突かれて殺されてしまいました。
・これだけでもなんで真面目にヒーローをやっていたはずの2人が死ぬまで戦わないといけないのか理不尽感が強かったのですが、本番はまだその先でした。
魂電編のラストは一連の出来事が全て魂電の所属するヒーロー事務所社長”イェン”の仕組んだ陰謀だったことが明かされて終わります。
実は魂電事務所の社長イェンは「主人公ヤンチョンが働いていたカフェのオーナー」で、ヤンチョンが信頼値を得るきっかけになった誘拐犯もイェンが犯罪者に金を渡してやらせたマッチポンプ。
その前に「魂電の後継者探しオーディション」でヤンチョンを最終選考で失格にするように担当者に指示したのもイェン。
ヤンチョンの友人だったイケメン社長が殺された事件も、イェンが手を回して脱獄させた誘拐犯の片割れを人質に取って無理やりやらせたことで、事が終わったら誘拐犯は工事現場でコンクリに沈めて殺害済み。
本物の魂電が信頼値が下がったせいで決闘をしたり必殺技を使わなきゃいけなくなったのも、イェンがインフルエンサーなどを使って世論を誘導していたから。
全ては自分に従わず信頼値も下降傾向だった本物の魂電を殺して、新しい魂電に信頼値を引き継がせて合法的に代替わりさせるための自作自演だったのです。
・サクセスストーリーだった最初のナイス編の次が、ナイス編とは真逆に全てが陰鬱さにつながっていく悲劇ですらない陰謀で呆然としました。
確かに信頼値というイメージによって左右されるものが力の源とはいえ、ショッキングな出来事でした。
ナイス編を見終わった時点の印象とだいぶ違うのが出てきたな、と思いましたが実際にはナイス編のサクセスストーリーっぷりの方が例外でした。
そのナイス編も「助けたヒロインがリンリンの眼の前で頭を撃たれて殺される(殺害犯は新魂電)」という終わり方だったので魂電編を見終わった後にはそういう路線の方がメインらしいと感じざるを得なくなっていました。
陰謀は続くよ、どこまでも…
・3人目の主人公以降もこのマッチポンプが基本的な構造でした。
「ヒーロー誕生! おめでとう! → まぁそうなるように仕組んだことなんだけどね」か、
「やった! ヒーローが悪を挫いたぞ! →まぁその悪は事務所が差し向けたやつで勝って人気が出るところまで計算通りなんだけどね」
のどちらかでヒーローの活躍が全然喜べなくなってしまいました。
・全体ではこれでもマシな方で、事務所の暗躍は後半になっていくとますます酷くなっていきました。
「1人のヒーローが信頼値を集めすぎると暴走したときに止められなくなるリスクがあるので、これまでに何十人もスキャンダルで失脚させたり暗殺してきました」とか、
「ヒーローが不要になる画期的な技術開発をしてる研究者たちがいるので協力する振りをして刺客を送って皆殺しにする(巻き添えでヒーローの家族や友人も殺されたが当のヒーローは謎の悪党に襲われたとしか思ってない)」
「自分の事務所のヒーローを手っ取り早くランキング入りさせるために今の高位ランカーに凶暴化する薬品を打ち込んでから殺してランキングから排除 &「あのヒーローに勝ったヒーロー」として信頼値をゲット!する一石二鳥作戦」
などなど、もう諸悪の根源にしか見えなくなっていきました。
こんな悪辣な大手事務所が3つも4つもあって事務所同士は「社会秩序の維持」を名目に表向きは協力しているので手に負えません。
もう「社会が真の敵」と言っていい状況です。
・事務所の陰謀が大き過ぎるしヒーロー側が全然気づいていないせいで、一部のヒーローは本当に台無しでした。
自分がチャンピオンになってヒーロー制度を改革すると唱えている”クイーン”なんて完全に茶番になってしまってしまいました。
大半のヒーローは社会を良くしたい、人々を守りたいと思っているのですが、事務所のマッチポンプが横行していて視聴者が見た範囲だと自然発生した悪党よりもマッチポンプで起きた事件や被害の方が多いくらいだったので事務所に所属している時点で本末転倒に見えてしまう環境でした。
・一応、希望は無くもありませんでした。
最後の主人公であり、前人未到の3連覇のかかった現チャンピオン”X”はそういう仕組みなどに気づいていて「運命に抗う」と言っていました。
活躍に期待したいところなのですが、主役が回ってきたのが最終回で、最終回は「これからランカー同士のトーナメント戦が始まる!」というところで終わったので現状だと先の流れは見えないままです。
いかにも「序章・完」というところで終わりを迎え、続編の制作発表すらされていないので本当に導入部分で終わってしまって、期待も失望も気持ちの置きどころが無い状況です。
フルCGのアクションは良かった
・To be HeroXは変則的な作りで、1~7話(と最終回)はキャラも背景も基本的にフルCGで、8~23話は完全に手描きアニメという変わった演出になっています。
・フルCGは最初はあまり印象がよくありませんでした。
登場人物がいわゆる整形顔であり、身体も細めのマネキン体型で人間っぽさが薄いデザインが好みではありませんでした。
でもアクションは良かったです。CGならではの動かしやすさや立体感が活かされていて見応えがありました。
”基本的にフルCG”と書きましたが、バトル中は部分的に手描きパートもありました。手描きパートの方は日本アニメ風の見慣れたデザインと動きでした。
でも見ていて「CGの方が独自性が有って良いのにな」と手描きを残念に思えるくらいにCGの方が良かったです。
・8話以降、手描きのみになってからは内容は比較的普通でした。
映像も演出もクオリティが低いわけではありませんでしたが、良くも悪くも癖がなくCGに慣れた身には刺激が薄く感じるようになっていました。
・最終回の”X”編は「次元を操る能力」を活かして、2次元(手描きアニメ)と3次元(CG)が場面ごとに入れ替わっていく演出は、この作品のバトルの集大成という感じがして良かったです。
2次元と3次元を入れ替わることでほとんど動かずに相手の攻撃を避けたり、相手の射撃を2次元に変換して掴んで相手に投げ返すときに3次元に戻して攻撃に使ったり、看板に描かれた車を実体化して乗り回したり、目まぐるしく変わる立体的なバトルに圧倒されました。
・ただ、私には複雑過ぎてついていけないところもありました。
作中の対戦相手も何が起きたかわからず全く対応できていないように、見ている私も何をどうしてどうなったのかよくわからず、「なんかXが圧倒してる」としか理解できない部分が少なくありませんでした。
【全体感想】
キャラと各主人公編の印象
ナイス編/リンリン
・単純なヒーローものとしてはリンリン編が一番楽しかったです。その印象は最終回まで見終わった後も変わりませんでした。
最初にリンリン編を持ってきたのが正解だったのか、誤解の元だったのかは何とも言い難いと思います。
最初から魂電編とかやってたら話が暗すぎて見るのを止める人が多そうですし、シアンやクイーンみたいな毒にも薬にもならない話だとそれも没個性的に見られてマイナスになりそうです。
・時系列の都合もあってその後音沙汰のなかったリンリンはトーナメント開始時点だとどうなっていたんでしょうね?
復讐心が滾っているという感じの表情ではありませんでしたが、シャオユエチン関連ででたらめな公式発表をしているツリーマングループに所属し続けていることから考えるとイェンへの復讐心に燃えている社長と同じように魂電を憎むリンリンで協調関係を結んでいる可能性は有りそうでした。
続編の方で描かれることを期待している気持ちもある一方で、「結局は事務所のマッチポンプが元凶だから魂電とかと争っても意味無いよなぁ…」という徒労感も感じています。
Xの真相暴露のおかげで綺麗にまとまってくれる方が健全なのですが、それはそれで主体的な意識が失われてキャラとしては面白みが無くなりそうな気もします。
どういう風にやればバランスが取れるんでしょうね…
魂電編
・陰謀ベースだったストーリーももやもや感が強かったですが、個人的にはヤンチョンも本物の魂電も何を考えてるのかよくわからない点ももやもやしました。
ヤンチョンはファンなのに魂電を名乗る気持ちが理解に苦しみました。ファンだったら自分が名乗るなんて恐れ多いと拒否しそうな気がするので自分からも名乗ることが私にとっては不可解でした。
その辺は”信頼値”に絡めて「周りがイメージ戦略として名乗ることを進めファンも歓迎していたから、初めて信頼値を得て周りから認められた心境もあってヤンチョンからは否定しづらかった。そうこうしているうちにイメージや状況が固まってきて今更覆せなくなっていた」
みたいな流れの方がまとまりが良かった気がしました。
・本物の魂電の方もヒーロー活動を止めた理由がはっきりしませんでした。
総合的に状況を考えると、
「信頼値を高めすぎると事務所に排除される or ゼロの再来になるリスクが有るから真の意味で継続的にヒーローをやるために程々を維持しようとしていた」
みたいな話か、あるいは
「事務所のマッチポンプが横行していることに気づいていたからヒーロー活動をするとかえって事件と被害が増えるとわかっていた」
みたいな話だったんでしょうか?
決闘する段階になっても本心が見えてこなかったので人となりすらよくわからないままでした。
ラッキーシアン編
・比較的わかりやすいサクセスストーリーでした。
シアンというキャラクター自体も幸運のおかげというより本人の努力と奮闘のおかげのように見えて応援しやすい造形でした。
・ただ、魂電編の後なので「ヒーローとして成功してもな…」と虚無感が生じていたので素直に楽しめませんでした。
全然戦った様子がなく、アイドル活動しかしてないっぽいのにトップ10入りしている辺りは作中では現代的なヒーローなんでしょうね。
全体から判断すると、孤児院の院長もやってることは事務所社長と似たようなものだったり、あの世界におけるヒーローや人の在り方の普遍性を描く側面も有ったのかなと思いました。
クイーン編
・クイーン編という感じはしませんでした。
シアン編で見た演説以上のクイーンの掘り下げは感じられず、作中世界全体やシアンやリトルジョニー、ボワールなどヒーロー全般を描いた「ヒーロー社会編」という印象でした。
その後も強い以外には特に良いところが無かったのでキャラとしては一番不遇だったと思います。
掲げている理想もこの社会では事務所に阻まれるか、実現した結果ゼロの再来になるかで活路が見当たりませんし…
ロリ編
・名前がすごいですよね。
本名が「ルオ・リー」だから略してロリなんですけど日本語の響きとしては仰け反ります。
父親もそう呼んでるので全く悪い意味は無いはずなんですけどね…
・ロリ編自体はこちらもシアン同様に普通でした。
全体としてはサクセスストーリーでしたし、本人のやりたいことも実現に近づいていて爽やかでした。
・美少女としてもちゃんと機能していたと思います。
登場人物の中だと一番可愛いと思います。性格も活発でヒーローらしく、外見や性格がストーリーや信頼値の設定とも結びついていてお話の完成度も高いと思いました。
・ただ、例によって例のごとくこの世界で幸せになれるタイプじゃないんですよね…
実際、後で父親を殺されたり、友達が意識不明になったり、散々な目に会っていますし。
事務所が結託しての完全なマッチポンプで起きた事件だったので事務所に所属してヒーローになっても解決どころか利用されるだけでとことん悲惨でした。
黙殺編
・全体的にギャグ調でした。
私は登場人物の中では黙殺が一番近い性格だと思うので、リトルジョニーを鬱陶しがる様子などシンパシーを感じるところもありました。
・ただ、人殺しなんですよね…
リトルジョニーの父親を筆頭に殺す正当性が怪しい任務を100件以上行っていた実績があるので客観的に見ると肯定できません。
そうまでして守る価値が有ると思える社会でもありませんし、黙殺自体は自分であまり考えずに事務所や連合の権威性を前提にして正しいのだろうと判断しているところが特に問題だと思いました。
言いなりの思考停止ではなく、「暗殺者で一見すると悪のようで『自分なりの正義=自分に対する確固たるイメージ』を持って歩んできたヒーロー」みたいな自己完結性の高いヒーローとして描くのも深みが出て良かったんじゃないかと思うところもありました。
・事件後は事務所から離れたようだったので、トーナメントに出れるほどの信頼値を維持できていることが不思議でした。
普通にヒーロー活動を行っていたんでしょうか? 描かれたことがシャオユエチン暗殺阻止の失敗(?)くらいだったのでピンと来ません。
リトルジョニー編
・リトルジョニー編としては不遇だったと思います。
3分の1は黙殺編の別視点であり、もう3分の1は「遺跡襲撃事件」というメインストーリーに使われていて、最初の過去編以外はほとんどリトルジョニーの話がありませんでした。
・それとリトルジョニー自体に今のところ良い印象が無いんですよね…
親を殺されたことは可哀想だと思いますし個人としては構わないんですけど、「リトルジョニーはヒーローです」と言われるとどの辺が?と疑問を感じます。
ビッグジョニーのおまけであり暴走を止めることもクイーンでもできたりして、リトルジョニーの力というものを感じたことがありません。
とてもトップ10入りできる器には見えません。事務所の広報戦略の産物という印象で、リトルジョニー自体にはこれといった印象がないままです。
・個人的に「当初の目的を失ったヒーロー」や「事務所のアイドル売りに自覚的で胡座をかいているヒーロー」みたいな立ち位置の方が独自性が出せてそういう方向の方が見たかったなぁと思いました。
そういう路線の方が戦闘力は外付けでリトルジョニーが完全にコントロールできるわけではない点とも相性が良い気がします。
リトルジョニーにそんな気は無いのに活躍しちゃったり、逆に良いところを見せようと意気込んでもビッグジョニーのやる気がなくて失敗したり、状況に流されやすいヒーローというのも信頼値の一つの側面を描けて面白い気がします。
梁龍編
・梁龍は今のところ「悪役/ヒール」という印象しかありません。ヒーローには全然見えません。
虐待した両親?への恨みやアホな配信者への怒りは問題ないと思うんですけど、人質を取ってスマイルを殺したことに関しては擁護の余地を感じません。あれだけでも充分過ぎる悪だと思います。
ここから善玉ぶられても気持ちがついていけそうもないので、土壇場でイェンを裏切ったりして悪役同士で潰し合ってくれないかな、くらいしか期待を持てていない状況です。
・梁龍編の半分くらいはスマイル編であり本物ナイス編という印象でした。
スマイルは短いながらも家族にまつわるヒーロー稼業の悲哀やそれでも明るくヒーロー然として振る舞う高潔さが描かれていて面白かったです。死んで一番悲しいキャラだと思えました。
・本物ナイスは小者っぷりが他には無い魅力がありました。
実情はさておき基本的にはサクセスストーリーだった他のヒーローに対して、基本的に右肩下がりの物語でした。
最初からマッチポンプでヒーローに祭り上げられ、それでもその地位に固執していて、憧れだったスマイルもナイスの愚かさが殺すことになり、どうしようもないやつだけど同情できる部分もある小市民っぷりがこの作品では新鮮でした。
トラ編
・トラ編自体はシアンやロリと同様のサクセスストーリーでした。
飼い主の少女も可愛くて健気だし、敵も見るからに悪辣で素直に応援できるお話でした。
・ただ、ヒーローになっても良いことが無さそうな辺りはやはり素直に喜べませんでした。
地上げやヴィランの大本がツリーマングループの自作自演ですからね…
飼い主の子が人質にされたり、殺されたり、ろくなことが起きそうもありません。
トラの「地位や名声を求めているわけでもなく、ヒーローに憧れたわけでもなく、ただ目の前の少女を助けたいと願って結果的にヒーローになった」という点は最もヒーローらしい動機だったと思います。
この善性が世界を照らす光明になったら嬉しいことですが、そんな精神性が通用する気はしないんですよね…
・本物ナイスはトラ編でも出番がありました。
地上げなんてさせられていて社長から見捨てられた感が有り有りでした。
保身のために子供も殺そうとするわ、恐怖粒子がくっついたときの発言が「あんな風に死にたくない!」だったり、どうしようもないメンタルになっていました。
あれじゃナイスじゃなくて”クズ”です。最後は精神崩壊して飛び降り自殺していましたが、そりゃ死にたくもなるわなぁと納得でした。
X編
・Xの口から謎が明かされる!…かと思ったらそうでもありませんでした。結局、ほとんどわからないことだらけです。
運命とか話が漠然としていて黒幕がいるって話なのか、運命改ざんみたいな能力持ちがいるのか、はたまた斜に構えたヒーローものでありがちなメタ系なのか、どういう話なのか掴めませんでした。
ED部分では続編のPV地味た謎の敵とヒーローたちのバトルが描かれていましたが、あれが黒幕なんですかね?
・X自身の謎も特に語られないままでした。
途中までは超常的な存在のように見えて、神か宇宙船でコールドスリープしてた宇宙人かこの作品の作者かと考えていましたが、最終回の感じだとあくまでこの世界出身の普通の人間のようでした。
普通の人間ならどうやってトーナメント当日にトップ10入りを果たしたんでしょうね?
信頼度の操作でもできない限りは誰にも気づかれずに実現するのは困難だと思います。
本物ナイス
・ラストの本物ナイスの再登場は驚きました。
生きていた事自体はそんなに不思議ではありませんでした。
壁をぶち破りながらふっとばされてもピンピンしてるヒーローが飛び降り自殺くらいで死ねるのかという点は疑問に思っていましたから。
ただ、
A)事務所は何を考えていたのか。
B)どうやって生存を隠したままトップ10入りしたのか。
という点は不可解でした。
・ナイスが生きていたなら事務所はリンリンを影武者にするより、ナイスを再利用する方がリスクは少ないと思います。
あのマネージャーさんなら特にそういう方向を好む気がします。
・ただ、ナイスは自殺するくらいにメンタルが壊れていましたし、トップ10入りする結果も出せていなかったので魂電の代替わりのように交代して再起を図る可能性もあり得ると思います。
しかしその場合には本物ナイスは生きていても口封じのために殺すなりする方が自然だと思うんですよね。
ただでさえ本物が生きてる時点で露見するリスクが高いのに、メンタルが壊れてるなら余計に何をしでかすかわかりませんし。
・順当に行くなら、
「本物ナイスは死体処理or秘密にするついでに恐怖粒子の実験に活用。結果的に蘇ったorパワーアップしたのでトーナメントに出すことにした」
って辺りかなぁと今は考えています。
ひび割れてるし最初は恐怖粒子で死体を動かしているゾンビなのかと思いましたが、ED部分のバトルだと普通にヒーローと協力して敵と戦ってるようだったので意思が無いとかそんな感じには見えませんでした。
・ランク入りに関しては完全に謎です。そんなことが意図してできるなら本物ナイスが生きてる頃からやってるでしょう。
ナイスの生前の信頼値はトップ10入りには足らなかったはずですし、影武者がバレたのでナイスに寄せられていた信頼値の大半はリンリンに還元されて残ってないと思います。
番狂わせを起こしたい真の黒幕の仕業とかでも無い限りは説明がつかない事象のように感じています。いったい何なのでしょう?
「恐怖粒子で動いていて表示上の信頼値をバグらせてる」とかそういうことができるんでしょうか?
続きはどこから始めるのか
・最終回の時点だとXは事務所のヒーローも軍隊も投入したなりふり構わぬ暗殺作戦もあっさりしのいでいるので、事務所側の巨悪感が薄れちゃって余計に印象が微妙なんですよね…
制作側もそれをわかってるから、今まで見たことのない謎の敵との戦いを描いた予告編らしきものを最終回のラストに入れたのでしょう。
・続編ができたとしても、どうせXが優勝するか事務所が結果を認めずにひっくり返されて終わることがわかってるトーナメントから始まるのは微妙な展開だと思います。
ひび割れナイスの存在でトーナメントが狂ったり、Xの真実暴露で急展開を迎えたりするんでしょうか?
最終回のED部分の感じだと、Xのオリジンから始まって1クールくらいXの過去編をやって作中の問題の全体像が見えてから時間軸を戻しそうな気もします。
個人的には素直に設定に基づいたヒーローの悲喜こもごもが見れればそれで良かったのに…
・ユニークで面白いことは面白いし、ヒーローにまつわるお話が見れたことも確かなのですが、「期待していたものとは違う内容が出てきたな…」という印象が有ることは否定できません。
どうしても「ナイス編みたいなのが続いたら楽しかったのにな」と思ってしまうことを止められませんでした。
陰謀がメインならそれはそれでいいんですが、今のところヒーロー側が振り回されっぱなしで問題の認識すらできていないことのストレスが強かったです。
・そういう点では終盤はむしろ小悪党と化した本物ナイスの動向の方が面白かったです。
もはやヒーローと呼べない存在で、救いようもない人格破綻者でしたが、他のヒーローよりはドラマに魅力を感じました。
「最終的には1話の時系列で飛び降り自殺する」というゴールが決まっているので見通しがはっきりしていて、それでいて最後に良いところを見せるのか、どこまでも落ちぶれるのか、上がり下がりする幅も有ったので「どうせ事務所の手のひらの上」という低い天井が決まっていてゴールが見当たらないヒーローよりも進展が感じられることが大きかったと思います
序盤で切ってしまい、最後の方を見て途中が気になったので調べていたらここに辿り継ぎました。ナイス編は楽しかったですが最後が不穏で嫌な予感がして、魂電編でちょっと思ってたヒーロー物と違うなと切ってしまいました。梁龍とかはどこがヒーロー?と思ってしまいますよね(笑)日曜朝から見るにしてはダーク過ぎました…映像に関してはゴリゴリ3Dが好きではないので途中のアニメ絵の方が良かったです。最後のXの2次元と3次元の入替え戦闘演出は好きでした。信頼値システムだったりキャラデザは良かった思うので本当ストーリーが残念でした。
返信削除ストーリーはナイス編で連想するものとは違いましたね。
削除そういう方向性を求めていた人には楽しみづらい作品だったと思います。
ニチアサでない感想記事は珍しいですね
返信削除何があったんですか?
何も無いですけど?
削除ただ、書けるから書いただけです。