『仮面ライダーガヴ』 第14話「奇跡の覚醒!ケーキング」:感想

2024年12月8日
■分け合うこと、奪うこと
・ショウマと双子周りはこういう構図だったのかなと思いました。
ショウマは幸果との思い出やこれから先の未来を糧に立ち上がり、戦う理由はたった1人の家族だった母親を殺されたから。
そしてそれは双子も同じでした。片割れとずっと一緒にいたいという思いも、他に誰も心の拠り所がいないという状況も同じでした。
前回描かれた双子の幸せな誕生日パーティはショウマ目線で切り取ったもので、双子からすれば幸せどころか孤独感を感じる内容で母親と過ごせるショウマの方が羨ましいくらいだったという事実の反転はお見事でした。

・ショウマと双子に大きな違いがあるとすれば、”加害的か否か”だったと思います。ショウマは見知らぬ人間のためにも戦えますが、双子は人間にも他のグラニュートにも無関心で殺すことにも躊躇いがありません。
ショウマは倒す前にも「違う今もあり得たのかも」と最後まで思いやり、子供時代には花をプレゼントして歩み寄りを見せていましたけど、それを踏みにじったのは双子の方ですからね。最終的な問題が双子に有ったことは明らかだと思います。

・これは更に拡大解釈するなら「食べるとは誰かの命を奪うこと」という意味合いもあるのかもしれません。
双子は犠牲にされた人間やバイトのグラニュートなど多くの人を犠牲にその地位を維持してきたし、ショウマも不特定多数の人間のためとはいえ結局は双子を殺す以外の道を見つけられませんでした。
誰かの幸せが他人の幸せを踏みにじることで成立している構図は闇菓子にも共通しているのでそういう利己的思想は作品全体で否定されているように感じます。
ショウマのこれまでの自己犠牲的な姿や今回の幸果の態度からすると、ショウマのような自分をないがしろにする行き過ぎた利他主義も否定されていきそうです。
「他人も自分も幸せになれること」を重視していくことで復讐や無私のヒーローも否定的に描いていく路線でいくのかなと思いました。双子の片割れだけ生き残ったのも復讐の悪い面を描くためでしょうか。

■まとまりはなかった
・ショウマと双子周りは良かったのですが、お話全体としては薄かったです。まとまりがなく、ぶつ切れの展開が多いように見えました。
前回の次回予告の時点で首を傾げていましたが、ショウマの自作ケーキを食べるまでの流れは展開が断絶的でした。双子の追跡もショウマの生還も小競り合いすらないうちに帰れてしまい拍子抜けでした。せめて後をつけて後半で「倉庫に来ないとお前の家を燃やす」と脅すくらいにはつなげてほしかったです。
絆斗とバイトくんはもっと悲惨でした。バイトくんがストマック家について突然過不足無く語るだけ語ったらあっさり逃走して今回の出番はそれっきりでした。絆斗も追いかけようとしないし不自然でした。二人とも話の都合が行動に表れ過ぎです。
ニエルブの登場も良くないタイミングだったと思います。双子を倒す前にも後にも戦闘中にも出ていて、「双子を倒して一段落」という最小単位のカタルシスを阻害していました。次回以降の前フリも平行して進めようとか欲張るタイミングではなかったと思います。そういうのは決戦回より前までにしておいて次回以降に「そういえばこの件が残ってたっけ」と思い出すくらいが限度だと思います。

■仮面ライダーガヴ・ケーキングフォーム
・デザインはそこそこだと思いました。
目新しさや独創性は感じませんが、ケーキの他に王様要素もあって特別感が見るからにありました。強化フォームとしての説得力は充分に感じられました。お菓子モチーフの強化フォームとしては及第点だと思います。

・武器はパッとしませんでした。
ホイップクリーム感を出すために丸っこい部分が多く、剣に見せるには無理があるように見えました。
射撃もクリームだから当たったら動けなくなるかな?くらいの印象で強化フォームらしい破壊力を見せるには説得力が薄いように見えました。
やっぱりお菓子モチーフでシンプルなかっこいい路線を目指すのは無理があるようですね。あくまでギャップ重視で「意外とかっこいい」くらいを狙う方がスマートなようです。

・特徴らしいモブ兵召喚は武器より微妙でした。
モブvsモブだと面白みがありません。ボス相手に使っても袋叩きにするか、やられ役が増えるかでこれも特に面白くないと思います。
槍を掴んで立体的に移動したところは唯一まぁまぁ面白かったです。やるんだったら移動とか使い捨ての盾代わりとかギミックを生やす方向性の方が良いかなと思いました。
次回予告ではポテチソードをつけたりチョコ銃を持ったりフォームチェンジ要素を見せていたので他にも引き出しがあることを期待したいです。

■謎の関係
・今回ニエルブがゴチゾウを誘拐していました。
ということは酸賀とニエルブは完全にグルである線は無くなったようです。もしもグルだったなら酸賀経由でゴチゾウは入手できていたはずですから。
酸賀はニエルブとは別の線なのか。それともニエルブが正体を隠したまま技術提供などをして実験を代行するように誘導していたのか。どの程度の関係なのかは次回に持越しです。


次回は以前からの懸念事項だったバイトグラニュートの更生にまつわるショウマと絆斗の対立が起きる回のようです。
ポッと出のグラニュートならともかく20年前からやってることが確定してるバイトなので視聴者からも印象は悪いです。これを庇うとなると骨が折れそうです。絆斗からすれば母親の事件にもひょっとしたら関わっているかもしれない相手ですから見過ごす気にはなれないでしょう。

個人的には今回の時点でショウマは徹底抗戦の覚悟を決めたのかと思いました。最近決め台詞の「どうする? 二度と闇菓子に関わらないか、それとも俺に倒されるか…」を言ってませんし、今回の双子との決戦でも言うかと思ったタイミングで言いませんでした。
今回の印象だともう黒なら倒すのが既定路線になったのかなと思っていたので、次回でバイトくんを庇うのは少し意外でした。むしろ一旦諦めたからこそ、バイトの方から足抜けしたいと言ってきて余計に希望を持つ展開なのでしょうか。
次回の脚本家がガヴ初参加の毛利さんなのでそんな微妙なさじ加減が期待しづらいところが不安です。






コメント

10 件のコメント :

  1. いつも感想お疲れ様です。
    ケーキングフォームは実際ゴーストのグレイトフル魂の英雄召喚の焼き直しの様に感じました。
    来週の予告を見る限り他のフォームの武器をホイップ兵が使うみたいなのでますますそう感じます。
    そこで差を付けるとしたらやはりアクションなのかなと思いますね。

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    1. 匿名さん、こんにちは。

      >ケーキングフォームは実際ゴーストのグレイトフル魂の英雄召喚の焼き直しの様に感じました。

      はい、基本的な性質は同じだと思います。問題点も似たりよったりだと思います。
      漠然と使ってもモブ同然なので特に面白みがないと思います。何か良い使い方をしてくれると良いのですが、サポートはゴチゾウが魅力的に活躍していたのでハードルが余計に高そうです。

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  2. ケーキングのホイップ兵について、個人的にはとても高く評価しています。


    1. ショッカー軍団のように多くの雑魚兵を一人で蹴散らすシーンが多いライダーにおいて、ライダー側が雑魚兵を召喚して戦う展開は珍しく、とても映えます。
     (同じ理由で、エグゼイドは作品全体では残念な内容でしたが、19話のタドルファンタジーの初陣だけはかなり好きです。)

    2. 本来のグラニュートは眷属ことエージェントを召喚できる能力を持っているため、ショウマがエージェントと同等のホイップ兵を出せるようになったことで、「異形の怪物」「同族殺し」というライダー本来の魅力や哀愁がより際立つ形になっていると思います。

    3. ケー「キング」という名の通り王族のモチーフも含まれているため、下僕を従えるのはモチーフにも合致していて威厳が出ます。
      槍を掴んでの移動など強力して戦うシーンもあり、複数人ならではのアクションも見られました。

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    1. 匿名さんはそう思われたんですね。わかりました。

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    2. Owl0079さんはエグゼイド19話の感想にて「戦闘員を敵にけしかけるのは目新しかったです。」と書かれていましたが、今回はそのようには感じなかったのでしょうか?
      もしそうであれば、その違いはどこだと思いますか?

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    3. 違いの方が多いくらいなので匿名さんがどうして同じだと思われたかの方が私にとっては不思議です。

      A)召喚した物が違う
      エグゼイドはいつものザコ敵。ガヴはホイップ兵という初登場の存在でストマック家の眷属とは見た目も能力も別物。

      B)状況が違う
      エグゼイドのザコ敵は4体5体と複数で数で押してくる相手で、ガヴは一度に二人以上相手にすることは稀で、今回のバトルもホイップ兵含めて3vs3か、3vs2でショウマの方が多いくらいでした。
      エグゼイドの場合は「いつもはライダー側が数で押される側なのに、今回は敵を数に物を言わせて押している」という状況が目新しいといったのです。

      C)目新しさは続かない
      エグゼイドで見た時点で少なくともこれで2度目になりますし、実際にはジオウやら仮面ライダーレジェンド、レインボーガッチャードなど直近でも召喚系は何度も見ています。「これで半年ぶりだ! 目新しい!」なんて言ったらそっちの方がおかしいでしょう。

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  3. 初カキコ失礼します!
    ケーキングフォーム、変身直後のシーンではマントがたなびくほど長かったのに、アクションシーンに入ると同時に腰上まで縮んでいた様に見えたのですが主様はどうでしたか?ギーツIXの様なマントが翻るアクションが好きだったために少し残念でした。
    それと主様も触れていましたが、戦う前にジープ・シータに「全てお前のせいだ」と言われたことに対し、キチンとショウマが怒りを示したことに安心しました…今までの令和ライダーだと「俺の…せいなのか…」なんて要らない一悶着を起こしそうだったので…

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    1. 匿名さん、はじめまして。

      >ケーキングフォーム、変身直後のシーンではマントがたなびくほど長かったのに、アクションシーンに入ると同時に腰上まで縮んでいた様に見えたのですが主様はどうでしたか?

      物理的に長さが違うのだと思います。
      変身シーンと直後の双子を圧倒するシーンでは腰より下くらいまで伸びて翻ったりしましたが、その後は基本的に肩甲骨くらいまでの短いものでした。
      CGで伸ばしているのか、それ用のスーツがあるのかまでは判別できませんでしたが明らかに別物だと思います。

      >戦う前にジープ・シータに「全てお前のせいだ」と言われたことに対し、キチンとショウマが怒りを示したことに安心しました…

      極めてまともな反応で安心して見られましたね。
      あれじゃあ怒りも感じるし、「やっぱりやるしかないか」と倒す決意を固めるのも当然だと思います。
      視聴者の多くもその前の双子の回想で双子にやや同情的になっていたでしょうし、感情面でもショウマとシンクロできて良い流れだったと思います。

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  4. 本編と関係のない話ですみません、14話のみ「未分類」になってます。余計なお世話になってしまい申し訳ないです

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    1. ご指摘ありがとうございます。修正しました。
      今後も間違っていたらお気軽にご指摘ください。

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