『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』 第16話「仲間だからこそ」:感想

2018年5月27日

【ストーリー】

■解釈違い
・個人的には今回は酷いと思いました。
大筋は悪くありませんが登場人物の反応など根本的なところがルパパトらしくないように感じたからです。

・大筋は一点を除いて特に問題ありませんでした。
入れ替わり自体は悪くないと思います。同士討ちはこういうシチュェーションでないとやりづらいのでアクション面では幅が出せて良いことだと思います。手をクッションにして殺傷力を減らす、身を削るやり方は快盗らしいと思いました。
警察が快盗がギャングラーと手を組んだと勘違いするなど多少の捻りもありました(活かされてませんでしたが)。

・「らしくない」と思ったところはたくさんありました。
まず、変装せずに素顔でのこのこ怪人の前に現れるのは快盗らしくないと思います。
その後、ブルーシートを被せた状態で店に行くのもおかしいと思いました。警察側の主な情報源は市民からの通報や監視カメラの映像のはずです。あんな目立つ異様な行動をしたら怪しまれるし、それは快盗も気づけると思います。店に行くのではなく、人目につかない場所に隠れる程度が限界だと思います。展開に無理を感じました。

・警察が店に来たときのリアクションもどれもおかしかったと思います。
魁利たちなら警察に隠していることが気づかれたと感じたら「どうする? 注意を引く方法はないか?」とか、あるいは殺すかどうかの逡巡くらいはすると思います。 ただ、おろおろして手をこまねくなんてあり得ないと思います。
ツカサの反応もおかしいと思いました。たかが蚊がいた程度であんな大騒ぎする人物ではないと思います。そもそも蚊がずっと同じ場所に留まり続けるとも思えません。蚊を潰したいならもうちょっとツカサの目線や移動先が移り変わって然るべきだと思います。ダブルでおかしいです。
くだらない思わせぶりな展開をやりたいがために無理やり登場人物を動かしているようしにか見えませんでした。それもこの後の展開に必須の内容でもありませんでした。登場人物一人ひとりが能動的に動く作品には全く合わない展開だったと思います。 

・最後のコントも酷いと思いました。
私の中の透真の印象だと、ああいう状況になったら状況を把握した時点で自分のイメージを守ることより警察に怪しまれないことを最優先すると思います。下手な弁解をするのではなく、むしろツカサたちの話に乗っかってその場を収めようと試みると思います。

・圭一郎の反応も個人的には違うと思いました。
確かに圭一郎はある程度放任主義で「まぁそれも個人の自由だから」と許容するところはあると思います。だけど「他人に迷惑をかけること」に関しては許さず、怒る気持ちのほうが強いと思います。圭一郎の中で透真は「仮病を店を休んで、心配する同僚をよそに不特定多数の女性と遊び歩いていた不埒者」だったわけですからこれは説教の対象になると思います。到底「刺されないようにな」なんて軽い嫌味で済む話ではなかったと思います。荒川さんとは解釈が全く合いません。

■もったいない
・違うと思った部分はたくさんありましたが、何よりも快盗側の掘り下げになっていないことが残念極まりませんでした。
「仲間だからこそ」というタイトルでしたが、1話で提示した「たとえ仲間が死のうが自分が死ぬことになろうが最後まで生き残ったやつが全員分の願いを叶えればいい」という話の繰り返しでしかありませんでした。そこにまつわるドラマが無かったことが最大の不満です。
「魁利なら助けてくれると信じていた」というドラマも、「なぜ助けた?!」という快盗の約束に基づいた衝突も何も特にありませんでした。更なる掘り下げにしても1話からの変化にしても描けることはいくつもあったと思うので良い材料があっさり使い捨てられてとても残念に感じました。

■金庫について
・そうなのかなと漠然と思っていましたが、ギャングラーの金庫がコアだと作中で解説されました。
やけに説明が細かいように感じました。あの金庫もコレクション関連だとかギャングラーが人造生命体とかそんな話につながるのかなと思いました。


【アクション】

■貴重な対人戦
・今回は身体を乗っ取られたブルーvsレッドの対人戦がありました。
リアルよりな戦い方の快盗には対人戦が映えますね。最後の銃を回しながら撃つアクションもスタイリッシュで良かったです。基本がトリッキーな戦い方だと曲芸も相手の裏をかいた行動として成立するのが強みですね。

・ガジェット総出の締めや巨大戦が必殺技ぶっぱで終わったのは残念でした。
その前にワンアクション欲しかったです。必殺技撃つだけならガジェットが増えてもいつもと大差がなく、ありがたみがありません。

■明るい巨大戦
・セットを大きく映す撮影だと全体的に暗くなる印象があります。今回はかなり明るい感じでセットの細部まで見渡せて面白かったです。個人的にはこういう感じのほうが好きです。公式曰く
「今回の特撮は、監督のたっての希望もありロケーションで一部撮影しております!」
だそうなので撮影は手間がかかるのでしょうが、これからもときどき見られると嬉しいです。

■怪人のデザイン
・エイモチーフでまとまっていて面白かった。
身体のシルエットもエイ。腕の大砲も頭も小さいエイの形で何がモチーフか一目瞭然でした。

・個人的には特に顔のデザインがなるほどと思わされました。
一般に「エイの腹部は”人の顔”のように見える」と言われています。今回の怪人の顔のデザインは思いっきり人の顔になっていて、かつ蛇腹状のスリットを複眼としてデザインに取り込んでありました。エイの特徴をたくさん盛り込みつつ全体のシルエットをまとめてあって良いデザインだと感心しました。


次回はまた荒川さんでシチュエーション優先のギャグっぽい感じでした。今回がいまいちだったので不安です。
最近はどうでもいい回が多いので、そろそろ内容のある回をまとまった量で出してほしいです。


コメント

10 件のコメント :

  1. こんにちは。

    荒川脚本の場合、良くも悪くも「スーパー戦隊にありがちな話」に終始するので大筋ではそこまで変な事してないんですけど枝葉(キャラ描写・解釈)が香村脚本と異なり過ぎるのが難点ですね。
    ぶっちゃけてしまえば端的に「ギャグやろうとしてスベってる」って感じでした。
    まぁ枝葉は所詮枝葉に過ぎないのに気にしすぎと言われてしまえばその通りなんですが…。

    >内容のあるまとまった回
    ルパン側はザミーゴ出して消失事件のネタばらしさせとけば幾分か話が動くのでしょうが、パトレン側の話を動かせる要素か現状不足ないし皆無なのが尾を引いてるんでしょうかね?
    聞くところによると来月末までほぼ荒川脚本みたいなので、「回収された金庫(=コア)からギャングラーが警察施設内で復活」位はやるかも知れませんが。

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    1. 匿名さん、こんにちは。

      >まぁ枝葉は所詮枝葉に過ぎないのに気にしすぎと言われてしまえばその通りなんですが…。

      ストーリー主導で登場人物は駒に過ぎないならそれでもいけますが、登場人物にスポットをあてている作品では問題だと思います。

      >ルパン側はザミーゴ出して消失事件のネタばらしさせとけば幾分か話が動くのでしょうが、パトレン側の話を動かせる要素か現状不足ないし皆無なのが尾を引いてるんでしょうかね?

      私は展開に必要なものがあるなら足せばいいと思います。
      まだ16話で1クール目は戦隊メンバーのほうにスポットをあてていたのですから敵側や外的要因を新規で出してもおかしくないスペースはいくつも空いていると思います。

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  2. こんにちは。

    いつも読ませていただいてます。
    今回の記事見た際の違和感に納得しながら読まさせていただきました。
    今回ルパン側が変装なしで戦闘を始めたことは大きな疑問でしかありませんでした。その後のダメージによる変身解除の可能性を考えるとあまりにあり得なかったですよね。

    また、荒川さんの脚本になるといつもはイキイキしてる6人のキャラが途端に定型的な台詞しか話せていないように感じます。


    来月は来週含め荒川さんが2本、金子さんが1本、香村さんが1本だそうです。
    香村さんの作り上げたキャラの個性が死んでいかないか非常に不安な6月です。

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    1. 匿名さん、こんにちは。

      >今回ルパン側が変装なしで戦闘を始めたことは大きな疑問でしかありませんでした。その後のダメージによる変身解除の可能性を考えるとあまりにあり得なかったですよね。

      突発的に出くわしたならともかく、悲鳴を聞いてもしやと思って駆けつけたわけですから変装しないのは変だと思います。遊園地の例から考えると、最低でもマスクは持っているはずだと思います。今回は三人で出かけていたわけですから仲間に連絡して「ギャングラーがいたから変装して来てくれ」と任せることもあり得ないでしょう。

      >荒川さんの脚本になるといつもはイキイキしてる6人のキャラが途端に定型的な台詞しか話せていないように感じます。

      荒川さんはそういう作風の人だと思うのでルパパトとは相性が悪いと私は思っています。そして残念ながらその印象は未だに覆っていません。

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  3. >最近はどうでもいい回が多いので、そろそろ内容のある回をまとまった量で出してほしいです。
    過去5年の戦隊だけ見ても5月中旬~6月中旬辺りまではどこも「内容のないどうでもいい回(=所謂単発コメディ回)」をやる期間って流れにはなってるみたいなんで概ね「例年通り」と言えるんじゃないんですか?
    一昔前見たく「1クールに1回幹部戦や謎解きをやって話を動かす」と言うような作品ならこの辺りから「内容のある回」をやるんでしょうけど、今作でそれを担ってる枠のザミーゴもドグラニオもついでにコグレも現状いない(出てない)事の方が多いので「まとまった内容のある回」ってのは追加戦士の販促が終わる7月下旬までやんなような気はしますね。

    まぁOwl0079様の言う「まとまった量の内容のある回」と言うのが、何なのか分からないので上記のはただの私見に過ぎないですけど。

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    1. >過去5年の戦隊だけ見ても5月中旬~6月中旬辺りまではどこも「内容のないどうでもいい回(=所謂単発コメディ回)」をやる期間って流れにはなってるみたいなんで概ね「例年通り」と言えるんじゃないんですか?

      言えないと思います。
      何故かと言うと最近の戦隊なら「1クールの終盤に出た追加戦士」か「18話頃に出る追加戦士」の話をしている頃だからです。ルパパトにはそういう予兆は今のところ無いと思います。
      この状況で当面の目標も用意されていないのでは間が保ちません。当面の敵になる幹部を出したり、少しずつ散りばめて謎やストーリーを進展させたり、視聴者の興味を引くものが必要不可欠だと思います。たとえば、一段落した10話から後の11話~16話に「~編」と呼べるほど一貫したものはないと思います。

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  4. >最近の戦隊なら「1クールの終盤に出た追加戦士」か「18話頃に出る追加戦士」の話をしている頃だからです。
    >一段落した10話から後の11話~16話に「~編」と呼べるほど一貫したものはないと思います。

    今年は2戦隊で現状交わっていないため、当初私も1クールの山場と思っていた10話はあくまでルパン側の山場にすぎず、パトレン側の山場が15話で一段落、ここから1ヶ月をサブ月間にして追加戦士登場を遅らせたのではと思います。2戦隊をそれぞれのステップアップも描き、追加戦士の前にある程度絡ませたい、それには例年より段取り期間が長く必要、とスタッフは思われたのではないかと。

    >少しずつ散りばめて謎やストーリーを進展させたり

    クレーンになぜか引き金がついていたこと、デストラがクレーンについても調べていること、Owlさんもご指摘のように冒頭の金庫の説明がやけに細かいことがこれにあたるのではと思いました。個人的にはルパパトの場合はサブ回といえど、謎を放置しっぱなしにするとは限らないとも思えますし。
    また、間を持たせるために戦隊名物の女装/ダブルヒロインて繋ぎ/入れ替わりと派手な展開をここに持ってきたのかもしれません。

    なお、私は荒川さんに不満がないわけではないですが、かといっていろいろとハードルの高いルパパトで単発エピソードをいくつも無難にこなせる方を他に思いつきませんし、これまでのところ仕掛けの派手さに誤摩化されて比較的違和感なく視られております。また今作での荒川さんの役割は、ともするとキャラぶれや距離感を気にしすぎてキャラ同士の踏み込みが浅くなる可能性がある香村さんが後々動かしやすいよう、多少乱暴で強引でも両陣営のキャラ同士を絡ませておく、というのがあるのかなと思いました。

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    1. >ここから1ヶ月をサブ月間にして追加戦士登場を遅らせたのではと思います

      私が問題視しているのは「追加戦士が出ないこと」ではありません。初期の人数が多いのでそれはむしろ当然だろうと思っています。
      問題なのは「追加戦士に代わる盛り上がり」が欠けているように見えることです。それは追加戦士を出すか否かとは別のより根底的な問題です。

      >クレーンになぜか引き金がついていたこと、デストラがクレーンについても調べていること、Owlさんもご指摘のように冒頭の金庫の説明がやけに細かいことがこれにあたるのではと思いました。

      はい、私もそれらの要素はいずれ回収されるだろうと考えています。
      ただ、コレクションや金庫に関することは序盤から続いている伏線の延長線上でしかないと私は受け止めています。言わば「コレクションに関する謎その3」、「その4」程度でしかありません。コレクション関連の伏線をこまめに続けることに異議はありませんが、これで今すぐ盛り上がれというのは厳しいと思います。やるなら謎も一段落させて次のステップに進まないといけないと思います。現段階ではこの謎はサブキャラのようなものなので、それとは別にメインになるものが必要だと私は思っています。

      >間を持たせるために戦隊名物の女装/ダブルヒロインて繋ぎ/入れ替わりと派手な展開をここに持ってきたのかもしれません。

      こちらに関してはそういう線も充分ありえると思います。単に私にとって魅力が感じられないだけかもしれません。
      魅力的か否かは別に、そういった話が「ルパパトに必要な構成要素」かというのは疑問ですが。関連の薄いネタを入れてカンフル剤にしようとするのはルパパトに限らず、私は否定的です。

      >ともするとキャラぶれや距離感を気にしすぎてキャラ同士の踏み込みが浅くなる可能性がある香村さんが後々動かしやすいよう、多少乱暴で強引でも両陣営のキャラ同士を絡ませておく、というのがあるのかなと思いました。

      私はノイズになるだけじゃないかなと思っているので否定的です。
      今回の話とか真面目に受け止めて、「16話ではこういうやり取りがあったし…」なんて考えるには厳しいように思えます。
      今回にしても13話の遊園地回にしても「~と話した」くらいの掘り下げにしかなっておらず、1話使った価値があるとは私は思っていません。

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  5. 「内容のある回」をここまでやってない理由って「追加戦士が出てから一気に動かす算段をしてる」か「“内容のある回”をまとまってやった所で客を呼び込めない(=視聴率が稼げない)と判断されてる」かはたまた「話を動かせるメインライターが夏映画の脚本等々に罹りっきりでローテに話を動かせる材料与えられてない」位にしかならないんじゃないですかね。

    まず「追加戦士に代わる盛り上がり」って何だよって話でもありますが。ザミーゴないし新幹部がドグラニオの首取って組織一新とかそういう方向性を指してるんでしょうか

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    1. >「内容のある回」をここまでやってない理由って

      私が話しているのは「やらない理由」ではなく、「必要だと思うこと」です。理由はいくら考えても推測にしかなりませんし、後ろめたい理由であればインタビューなど正規の情報源で公にされることはまず無いと思います。その話をする気は私にはありません。


      まず「追加戦士に代わる盛り上がり」って何だよって話でもありますが。

      何だよも何も戦隊のフォーマットの範囲でもいくつも挙げられると思います。
      デストラなど幹部クラスを動かしたり、新しいライバルを出したりする方法もありますし、コレクションの話を進展させる、コグレさんに暗躍させる(たとえばギャングラーとの接触の描写)などストーリー面での進展もあります。
      キャラ描写が魅力の一つであろうルパパトなら快盗や警察のメンバーどうしの絡みから快盗と警察の異種組織間での関係の変化など盛り上げ方はいくつもあると思います。現状ではどれも小規模で現行の展開の”柱”と呼べるものが無いと私は思っています。
      というのがこれまでの私の返信の内容です。

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